熊本で農業の後継者を募集するには?第三者継承の流れ・農地法3条の許可と機械や施設の譲渡の注意点を熊本の弁護士が解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

「息子は県外で勤めていて、帰ってくる気はない。けれど、この園地をそのまま荒らしてしまうのは、どうしても惜しい」。熊本で農業を続けてこられた方から、そうしたお話をうかがう機会が増えました。

親族の中に継ぐ人がいないなら、親族以外の方に継いでいただく——つまり後継者を「募集する」という選択肢があります。実際に、熊本県内でも新規就農を志す方へ経営そのものを引き継ぐ事例が出てきています。

もっとも、農業の場合は会社の株式を渡すのとは勝手が違います。農地を他人へ移すには農業委員会の許可が必要で、機械やハウスには補助金の制約が残っていることもあります。段取りを間違えると、せっかく見つかったお相手を手放すことにもなりかねません。

そこで本記事では、熊本で農業の後継者を募集するときの窓口の使い分け、第三者継承の進め方、農地法3条の許可の見通し、機械・施設・住居の渡し方と税金、そして合意書で必ず決めておきたいことまでを、熊本市・八代市での相談現場の感覚を交えて解説していきます。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

熊本で農業の後継者を「募集する」とはどういうことか

まず押さえておきたいのは、後継者の募集が「働き手を雇うこと」とは別物だという点です。従業員や技能実習生を増やすのは労働力の確保ですが、後継者の募集は経営そのものを渡す相手を探す行為にあたります。

農林水産省の統計でも、基幹的農業従事者の高齢化と減少は続いています。熊本県も例外ではなく、産地としての力を保つために、親族以外への引き継ぎが現実的な選択肢になりつつあるのが実情です。

渡すのは「農地」だけではなく、経営の一式

第三者に継いでいただく場合、動かす対象は大きく4つに分かれます。農地という不動産、ハウスや機械といった設備、出荷先や契約栽培などの販路、そして栽培技術や地域とのつながりです。

このうち、手続きが最も重いのが農地です。他の3つは当事者の合意で動かせる部分が大きいのに対し、農地だけは行政の許可や届出が前提になるのが原則です。

そのため、「人は決まったのに農地が動かない」という状態が起こり得ます。募集を始める前に、農地の名義と権利関係を先に整えておくことが、遠回りに見えて最短の道になります。

熊本で相談が多いのは柑橘・トマト・いちご・畜産

熊本県は品目の幅が広く、玉名・宇城・荒尾の柑橘、八代のトマトやい草、県内各地のいちご、阿蘇の畜産・酪農など、地域ごとに主力が異なります。

品目が違えば、引き継ぐ資産の性質も変わります。柑橘なら成木の園地そのものが価値になり、トマトやいちごなら施設と設備の状態が焦点になり、畜産なら家畜と糞尿処理施設、家畜排せつ物法に関する届出まで視野に入れる必要があります。

「農業の第三者継承」とひとくくりにせず、自分の品目では何が一番渡しにくいのかを見定めることが出発点になるのが原則です。

親族内に候補がいても、募集を検討してよい

ご相談の中には、「子どもがいるのに他人を探すのは筋が通らないのではないか」と気にされる方もいらっしゃいます。しかし、継ぐ意思のない方に無理に渡しても、数年で離農や売却につながることが少なくありません。

大切なのは、親族の方に先に意思を確かめておくことです。あとから「聞いていない」と言われると、農地の贈与や売買の場面で同意が得られず、手続きが止まってしまいます。

別記事では「農業の事業承継とは?農地の許可・相続の注意点と親族内・第三者承継の進め方」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

後継者を募集できる窓口と、熊本での使い分け

熊本で農業の後継者を募集する3つの入口を示した図解

後継者の募集は、一か所に出せば済むものではありません。公的な就農相談の窓口、事業承継の支援機関、民間のマッチングサイトは、それぞれ集まる人の層が違います。

大まかには、「就農したい個人を探すのか」「規模を広げたい農業法人を探すのか」で入口が分かれると考えると整理しやすくなります。

窓口の種類集まりやすいお相手向いている場面費用感
県の新規就農の相談窓口・農業公社これから就農する個人・研修生時間をかけて育てながら渡したい無料の相談が中心
市町村の農業委員会・農林担当課地域内の担い手・近隣の農家農地をまとめて任せたい無料
JAの担い手支援の窓口部会内の若手・既存の生産者販路と栽培をそのまま残したい無料(組合員向け)
事業承継・引継ぎ支援センター(後継者人材バンク)経営を引き継ぎたい個人経営ごと渡したい公的機関のため低廉
民間のM&A・継業マッチングサイト法人・異業種からの参入者早く広く探したい成約時の手数料が生じる形が多い

公的な就農相談の窓口から始める

熊本県内では、県や農業公社が新規就農の相談を受け付けており、就農を希望する方の研修や受け入れ先の紹介を行っています。研修を経た方は基礎的な技術を身につけているため、引き継ぎの話が進めやすい傾向があります。

ただし、こうした窓口の主眼は「就農の支援」です。経営の譲渡そのものの条件づくりや契約は当事者側で整える必要があるのが通常ですので、そこは別に備える前提で考えてください。

市町村の農業委員会とJAは、地域の調整役になる

農地の権利移動の許可を出すのは、原則として市町村の農業委員会です。つまり、最終的に許可を判断する先に、早い段階で相談しておく意味は大きいといえます。

また、水利組合や集落の話し合い、鳥獣害対策の分担といった地域の仕組みは、書面に表れない部分です。JAの部会や農業委員会の委員の方を通して、受け入れの空気を先に作っておくと、後の衝突が減ります。

民間のマッチングサイトを使うときの注意

民間のサイトは、県外の法人や異業種から参入したい方にも届く点が強みです。一方で、匿名の情報だけでは相手の資力や本気度が見えにくく、情報が広がる速さも公的窓口とは違います。

募集を出す段階では、園地の所在地が特定できる写真や、取引先の名称が分かる資料を載せないほうが安全です。地域に「あそこは手放すらしい」と伝わると、価格交渉にも影響します。

詳しい募集の出し方は、別記事でも整理していますので、あわせてご覧ください。

別記事では「熊本県事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談はどこまで?後継者人材バンクの流れ・費用」、「事業承継者を募集する方法5選!第三者承継の流れと注意点」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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農業の第三者継承はどう進むか——募集から引き渡しまでの流れ

農業の第三者継承は、一般のM&Aのように数か月で完結するものではありません。栽培の一巡を見てもらう必要があるため、研修を含めて1年から数年かける前提で組むのが現実的です。

順番を間違えやすいのは、「相手が決まってから農地を調べる」進め方です。先に足元を固めるほうが、交渉で押し込まれずに済みます。

① 農地・施設・販路・借入の棚卸し

最初にするのは、自分が何を持っているかを一覧にする作業です。農地は登記事項証明書と農地台帳で、名義・地目・面積・貸借の有無を確認します。

次に、ハウス・倉庫・乾燥機・トラクターなどの設備について、取得年、補助金を使ったかどうか、残っている借入とひも付いているかを書き出します。

この棚卸しの段階で、親名義のまま耕作していた農地や、口約束で借りていた農地が見つかることがよくあります。そこが見つかっただけでも、着手した意味があります。

② 「どこまで・いつから・いくらで」を決めて募集する

募集を出す前に、渡す範囲を決めます。全部を一度に渡すのか、まずは借地と施設の利用から始めて数年かけて移すのか、住居は含めるのかといった点です。

対価についても、無償で渡す前提なのか、設備の残存価値だけ受け取るのかを、おおよそでも決めておくと話が早く進みます。無償譲渡には税務上の論点があるため、後述の内容も確認してください。

③ 面談と研修期間で見極める

候補者が現れたら、作業を一緒にしながら見極める期間を置くのが一般的です。栽培技術だけでなく、出荷の規格を守れるか、地域の寄り合いに出られるか、家族の同意があるかまで確かめておきたいところです。

この期間の立場をはっきりさせないままにすると、後で「あれは労働だったのに賃金が出ていない」という争いになりかねません。研修なのか雇用なのかを書面で決めておく必要があります。

④ 合意書を結び、農地と資産の手続きに入る

条件がまとまったら、合意書を作ります。そのうえで、農地については農業委員会への許可申請、設備については譲渡契約、販路については取引先への紹介と名義変更を進めます。

農地の許可が下りるまでに時間がかかるため、引き渡しの時期は許可の見通しを踏まえて設定するのが原則です。作付けの時期とずれると、1年分の収穫を失うことになります。

新規就農者でも農地法3条の許可は通るのか

農地法3条の許可についてのイメージ画像

農地を売ったり贈与したりして所有権を移す場合、また賃借権などを設定する場合には、農地法3条に基づく農業委員会の許可が必要になるのが原則です。ここが第三者継承の最大の関門です。

許可は「農地を農地として使い続けられる人かどうか」を見るための仕組みです。したがって、まったくの未経験者でも、体制が整っていれば許可の対象になり得ます。

見られるのは、効率的な利用・常時従事・地域との調和

3条許可の主な判断材料は、取得する農地をすべて効率的に利用できるか、申請者本人や世帯員が農作業に常時従事するか、周辺の農地利用に支障を生じさせないか、といった点です。

そのため、就農計画の中身、確保している機械と労働力、資金の裏付けが問われます。受け入れる側の農家が指導を続ける体制を示せることは、計画の信頼性を補う材料になります。

なお、法人が農地を所有する場合は、農地所有適格法人としての要件を満たす必要があります。法人化を併せて考えるときの論点は、別記事で詳しく整理しています。

下限面積の要件は廃止された

かつては、一定の面積に届かないと許可が出ないという下限面積(別段の面積)の要件がありました。この要件は農地法の改正により廃止され、小さな面積から就農する道が開かれています。

もっとも、面積の要件が外れたことは「誰でも通る」という意味ではありません。効率的な利用と常時従事の要件は残っていますので、計画の実現性は引き続き見られます。

制度は改正が続く分野です。申請の前に、農地のある市町村の農業委員会で最新の運用をご確認ください。

許可が見込めないときは「貸す」から始める

候補者の経験や資金が足りず、所有権の移転まで一気に進めにくい場面もあります。その場合、まず農地を貸して耕作してもらい、実績を積んでから所有権を移す進め方が現実的です。

貸し方には、当事者間の賃貸借のほか、農地中間管理機構を通した貸付けという道もあります。機構を通す形は、相手が離脱したときの手当てや、納税猶予との関係で意味を持つことがあります。

どの形が合うかは、納税猶予を受けているか、将来の相続で誰が農地を取得するかによって変わります。貸す前に確認しておきたい点です。

許可の前に代金を払ってしまう失敗

よくあるつまずきが、話がまとまった安心感から、許可が下りる前に代金の授受や引き渡しを済ませてしまうことです。許可を前提とする権利移動は、許可がなければ効力を生じないのが原則です。

契約書には、許可が下りることを条件とする定めと、下りなかった場合の精算方法を入れておく必要があります。ここは専門家に確認していただきたい部分です。

別記事では「農業の法人化は事業承継に有利?農地所有適格法人の要件・親子間の進め方」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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機械・ハウス・倉庫・住居はどう渡すか——お金と税金の整理

農地の手続きに目が向きがちですが、実際に引き継ぎが止まるのは設備の話であることも少なくありません。価値の見方が売り手と買い手でずれやすいからです。

ここでは、資産ごとの渡し方と、気をつけたい税務・制度上の制約を整理します。

引き継ぐもの主な手続き見落としやすい点
農地(所有権)農業委員会の許可、所有権移転登記許可前の引き渡し、納税猶予の打ち切り
農地(貸借)農業委員会の許可または機構を通した貸付け口約束のままの貸借、相続時の相手方の権利
ハウス・倉庫など施設売買または贈与の契約、必要に応じ登記補助金で取得した設備の処分制限
トラクター等の農業機械売買契約、所有権留保やリースの確認残っている割賦・リースの引き継ぎ可否
販路・契約栽培取引先への説明と名義変更出荷者としての登録・資格の要否
住居(農家住宅)売買または賃貸借建築基準法・農振法上の用途の制約

無償で渡すか、対価を取るか

「お金はいらないから続けてほしい」というお気持ちは、現場で何度もうかがいます。ただ、無償で渡すことには税務上の論点が伴います。個人から個人への無償の移転は、贈与税の対象として扱われるのが原則です。

一方で、対価を取る形にすると、譲渡した側に所得税の課税関係が生じ得ます。どちらが有利かは資産の内容と金額で変わりますので、税理士に確認したうえで決める筋道になります。

無償譲渡そのものの落とし穴については、別記事でも詳しく整理しています。

補助金で入れた施設には処分制限が残っている

ハウスや選果施設、機械を補助金で導入している場合、一定の期間内に他人へ譲渡したり用途を変えたりするには、補助金を交付した側の承認が必要になるのが通常です。

承認を得ずに動かすと、補助金の返還を求められる事態になりかねません。導入年と交付元、処分制限の期間が分かる書類を、棚卸しの段階で必ず探しておいてください。

承認の手続きには時間がかかることもあるため、引き渡しの日程に織り込んでおく必要があります。

納税猶予を受けているかどうかで結論が変わる

農地の相続税・贈与税の納税猶予を受けている場合、その農地を他人へ譲渡したり耕作をやめたりすると、猶予が打ち切られて税と利子税の納付を求められることがあります。

一定の貸付けであれば猶予を続けられる仕組みもありますが、要件は細かく定められています。猶予を受けている方は、募集を始める前に、この点だけでも確認しておくことを強くおすすめします。

個別の事情で結論が変わる領域ですので、税務署や税理士への確認を前提にお考えください。

農家住宅はそのまま渡せないことがある

就農する方にとって、住む場所が確保できるかは大きな条件です。ところが、農業を営む方のための住宅として建てられた建物は、用途や敷地の扱いに制約が付いていることがあります。

住居を含めて渡す前提で募集するなら、その建物が第三者に移せるものかを先に調べておくと、話が途中で崩れずに済みます。

別記事では「事業承継で無償譲渡はできる?税金と契約書に入れる条項・後から覆されるリスク」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

販路・借入・雇用まで含めて引き継ぐときの確認点

農業の価値は、農地と設備だけで決まるわけではありません。安定して買ってもらえる先があるかどうかが、新しく入る方の収支を左右します。

同時に、借入と保証、働いている方の処遇も、引き継ぎの対象として検討から外せません。

出荷先・契約栽培は自動では移らない

JAへの出荷や量販店との契約栽培は、個人や法人に対して結ばれているものです。経営者が替われば、出荷者としての登録や契約の相手方を改めて整える必要が生じるのが通常です。

引き継ぎの時期に合わせて、取引先へ一緒にあいさつに回る段取りを組んでおくと、取引が途切れにくくなります。

逆に、何も伝えないまま名義だけ変わると、取引を見直されることがあります。伝える順番と時期は、合意書を結んだ後に設計するのが安全です。

借入と保証は、相手の与信で組み替えになることが多い

公庫や金融機関からの借入が残っている場合、その債務をそのまま新しい方に引き継ぐには、金融機関の同意が欠かせません。実際には、新しい方が改めて借り入れて、旧債務を整理する形になることもあります。

経営者保証が付いている場合、譲渡後も保証が残っていないかの確認が必要です。ここを曖昧にしたまま引退すると、後になって請求を受けるおそれがあります。

従業員・技能実習生の扱いを先に決める

常雇の方やパートの方がいる場合、個人から個人への引き継ぎでは雇用契約が自動的に移るわけではありません。改めて契約を結ぶか、どこまで条件を維持するかを決める必要があります。

外国人材を受け入れている場合は、受け入れ機関としての手続きが別に生じます。経営の形が変わると在留資格の前提も変わり得るため、早い段階で監理団体や専門家に確認してください。

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研修期間と合意書で必ず決めておきたい5つのこと

研修期間と合意書の取り決めについてのイメージ画像

農業の第三者継承でもめるのは、お金そのものよりも「約束していたはずのこと」の食い違いです。渡す側も受ける側も善意なのに、整理されていないために関係が壊れてしまうのは残念なことです。

弁護士として、最低限ここは書面にしておきたいと考える点を挙げます。

  • 研修期間中の立場(研修か雇用か、賃金・労災保険の扱い)
  • 段階的に移す場合の各段階の時期と、移す範囲
  • 途中で中止になったときの精算(支払った金額、植え付けた作物、改修した施設)
  • 農地の許可が下りなかったときの扱い
  • 親族・地域への説明の時期と、誰が何を伝えるか

研修中の立場をはっきりさせる

作業を手伝ってもらっている期間について、「勉強のために来てもらっている」という認識だけで進めると、後から労働者としての扱いを求められることがあります。指示の有無や時間の拘束といった実態で判断されるのが原則です。

研修として受け入れるのか、雇用して給与を払うのかを決め、書面に残してください。労災保険の適用関係も変わりますので、万一の事故に備える意味でも重要です。

途中で終わったときの精算を先に決める

数年かけて渡す形では、途中で相手が離れることも想定しなければなりません。すでに受け取った対価、相手が負担した施設の改修費、育てている途中の作物の扱いを、あらかじめ決めておきます。

この条項があるだけで、万一のときの話し合いが驚くほど楽になります。関係が良いうちに決めるのが、お互いのためです。

親族の同意と、将来の相続を同時に考える

第三者に渡した後も、渡す側の相続は起こります。農地や施設を他人へ無償で渡していると、他の相続人から遺留分に関わる主張が出る余地があります。

ご家族に説明し、必要であれば遺言書の作成まで含めて整えておくと、引き継いだ方を後の紛争から守ることにつながります。

ここは引き継ぎの条件づくりと相続対策を同時に見る必要があり、弁護士がお役に立てる場面です。

熊本・八代の相談現場で多いつまずきと、よくあるご質問

最後に、熊本市・八代市を中心にお受けしてきたご相談で目にすることの多い、つまずきと疑問をまとめます。

いずれも、早い段階で気づけば手を打てるものばかりです。

「口約束で3年」が一番危ない

良い方が見つかると、信頼関係ができたぶん、書面を作ることを後回しにしてしまいます。しかし、体調が急に変わったり、ご家族の事情が変わったりすると、口約束は何も支えてくれません。

簡単な覚書でも構いませんので、渡す範囲と時期だけは早めに紙にしておいてください。

農地が親名義のまま、相続登記が済んでいない

長年耕してきた農地が、亡くなった親の名義のままという例は珍しくありません。この状態では、第三者へ移す手続きに入れません。

相続登記は義務化されており、相続人が複数いれば遺産分割の話し合いが先に必要です。管轄の法務局や、話し合いがつかない場合は熊本家庭裁判所(八代市などは八代支部)での手続きを視野に入れることになります。

募集を考え始めた時点で、名義の確認から始めるのが結局は早道です。

どのくらいの期間がかかりますか

一概には申し上げられませんが、候補者探しに数か月、研修と見極めに1作から2作、農地の許可と引き渡しにさらに数か月という組み立てが一つの目安になります。

品目によって一巡の長さが違うため、柑橘のように結果が出るまで時間のかかる作目は、より長く見ておく必要があります。

費用はどれくらい見ておくべきですか

公的な窓口の相談は無料のものが中心です。費用がかかるのは、民間のマッチングを使ったときの手数料、登記にかかる登録免許税と司法書士の報酬、契約書の作成や交渉を依頼する場合の専門家の報酬です。

事業承継に使える補助金が使える場面もありますので、公募の時期と対象経費は最新の公募要領をご確認ください。

別記事では「後継者不足の農業家ができる対策は?農地の引き継ぎ手続き・税制・事例」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

熊本で農業の後継者を募集するときの要点を、あらためて整理します。渡すのは農地だけでなく、設備・販路・技術を含む経営の一式であること。農地を他人へ移すには農業委員会の許可が原則として必要で、所有権の移転が難しければ貸すことから始める道があること。

そして、補助金で入れた施設の処分制限、納税猶予の打ち切り、無償譲渡にまつわる税務、研修期間中の立場といった論点は、いずれも後から修正しにくいものです。募集を出す前に、農地の名義と手元の書類を確かめておくことが、結果として一番の近道になります。

本記事で触れた制度や金額は、改正や運用の変更があり得ます。実際に進められる際は、農地のある市町村の農業委員会や税務署、最新の公募要領をご確認いただき、個別の事情に即してご判断ください。

「後継者を募集してみたいが、何から手をつければよいか分からない」「候補者は見つかったが、どんな書面を交わせばよいか不安だ」。そうした段階でのご相談こそ、お役に立てる場面です。熊本市・八代市を中心に事業承継のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。

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