不動産会社の事業承継はどう進める?熊本で宅建業免許を残す方法と専任宅建士・営業保証金・賃貸管理の引き継ぎを熊本の弁護士が解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

「息子に会社を任せたいが、宅建の免許はそのまま使えるのだろうか」「不動産業を知り合いに譲る話が出ているが、免許を取り直すことになると聞いた」——不動産会社を経営されている方で、こうした不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

不動産業の承継がほかの業種と大きく違うのは、宅地建物取引業免許という許認可が、承継の進め方によって「そのまま残る」か「ゼロから取り直す」かに分かれてしまう点です。ここを取り違えると、承継した翌日から媒介も契約もできない、という事態が起こり得ます。

さらに不動産会社は、自社で土地建物を持っていることが多く、自社株の評価が思った以上に高く出ます。熊本では半導体関連の進出をきっかけに菊陽町や合志市の地価上昇が続いており、数年前の感覚で株価を見積もると相続税の見込みが大きく外れることもあります。

そこで本記事では、不動産会社の事業承継について、宅建業免許を残す方法と取り直しになる場面、専任の宅地建物取引士・営業保証金・賃貸管理の引き継ぎ、自社保有不動産が株価に与える影響、そして熊本・八代で相談できる窓口までを、熊本の弁護士が順を追って解説していきます。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

不動産会社の事業承継は「宅建業免許を残せるか」で道が分かれる

承継のかたちで宅建業免許がどうなるかを示した図解(株式譲渡・相続/事業譲渡・合併・会社分割/個人事業主の相続)

不動産会社の承継を考えるとき、最初に決めるべきは「誰に渡すか」ではなく「どの形で渡すか」です。形によって、宅地建物取引業免許が引き継げるかどうかが変わります。

大まかに言えば、会社という法人格をそのまま残して株式だけを動かす方法なら、免許は会社に付いたまま残るのが原則です。これに対して、事業そのものを別の会社や個人に移す方法では、免許は移りません。

この違いは、現場では「明日から営業できるかどうか」という形で表れます。順番を間違えると、承継のタイミングで営業が止まり、進行中の媒介案件を他社に渡さざるを得なくなることもあります。

株式譲渡・相続による承継なら免許は会社に残るのが原則

法人が受けている宅建業免許は、その法人に与えられたものです。社長が交代しても、株主が入れ替わっても、法人格そのものが続いていれば免許は存続するのが原則となります。

したがって、親族内承継で自社株を後継者に贈与・譲渡する場合や、社長が亡くなって相続人が株式を取得する場合、免許の取り直しは必要ありません。必要なのは、役員や専任の宅地建物取引士が変わったことについての変更の届出です。

第三者に譲る場合も、株式譲渡の形をとれば同じ考え方になります。買い手が免許を引き継げることは、不動産会社のM&Aで株式譲渡が選ばれる大きな理由の一つです。

事業譲渡・合併・会社分割では免許は移らない

一方で、事業譲渡によって営業を別の法人へ移す場合、免許は移転しません。譲り受ける側が自分の免許を持っていなければ、新規に免許を取得する必要があるのが原則です。

合併や会社分割についても、宅建業免許が自動的に承継される仕組みにはなっていないと理解しておくのが安全です。存続会社や承継会社が免許を持っていない場合、新規取得の手続きを織り込んだスケジュールを組むことになります。

個人で宅建業を営んでいた方が亡くなった場合も、免許は相続されないのが原則です。後継者が同じ場所で事業を続けるには、改めて自分の名前で免許を受ける必要があります。この点は法人の場合と大きく違うため、個人免許で営業されている方は特にご注意ください。

免許番号のカッコ内の数字と、熊本県知事免許・大臣免許の違い

免許証に記載された「熊本県知事(5)第○○○○号」のカッコ内の数字は、免許の更新回数を表します。5年ごとの更新で一つ増えるため、この数字が大きいほど長く営業してきたことが分かります。

免許を取り直すと、この数字は(1)に戻ります。地元で長く商売をしてきた会社にとって、この数字は信用そのものです。株式譲渡を選ぶ理由として、実務上はここを重く見る経営者も少なくありません。

なお、事務所が熊本県内だけにある会社は熊本県知事免許、複数の都道府県に事務所がある会社は国土交通大臣免許となるのが原則です。知事免許の場合の申請・届出の窓口は熊本県庁の担当課となりますので、提出先や様式は最新の県の案内でご確認ください。

別記事では「事業承継の株式譲渡の方法は?メリットや手続き方法・税金の特例制度についても解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

株式譲渡で承継する場合に必要な手続きと届出

免許が残るといっても、何もしなくてよいわけではありません。代表者や役員、専任の宅地建物取引士が変わったときは、免許権者への変更の届出が必要になります。

届出の期限は、変更があった日から30日以内とされているのが原則です。承継の日取りを決める段階で、この届出と法務局への役員変更登記をセットで段取りしておくと安心です。

役員変更登記と変更の届出はセットで段取りする

代表取締役が交代すれば、法務局への役員変更登記が必要です。熊本市内の会社であれば熊本地方法務局、八代市やその周辺であれば同局の八代支局が窓口になります。

変更の届出には登記事項証明書の添付を求められるのが一般的ですから、順番としては「株主総会・取締役会で選任 → 登記申請 → 登記完了後に変更の届出」という流れになります。登記の完了までに日数がかかることを見込んで、全体の日程を逆算してください。

先代が代表から退く場合、取締役としては残るのか、顧問という形にするのかも先に決めておきます。先代が株式も役職も手放さないまま「代表だけ交代」とすると、後継者が決められないことが増え、現場が混乱しやすくなります。

専任の宅地建物取引士が欠けると事業が止まる

宅建業者は、事務所ごとに、業務に従事する者5人に1人以上の割合で専任の宅地建物取引士を置かなければならないとされています。この要件を満たせなくなった場合、法令上は一定の期間内(2週間以内とされています)に必要な措置をとることが求められます。

問題になりやすいのは、先代社長自身が専任の宅地建物取引士だった場合です。先代が引退した瞬間に要件を欠くことになり、後継者が資格を持っていなければ、新たに有資格者を雇うか、後継者が合格するまで待つかという話になります。

宅地建物取引士の試験は年1回です。後継者が未資格であれば、承継の時期そのものを試験の合否に合わせて設計する必要が出てきます。承継を考え始めた段階で、まず誰が専任になるのかを紙に書いて確認してください。

株主名簿・株券・定款を先に点検しておく

株式譲渡で承継するなら、前提として「誰が何株持っているか」が確定していなければ話が進みません。昭和に設立された会社では、設立時の発起人の名前が残っていたり、実際には出資していない親族が株主として記載されていたりすることがあります。

株券を発行する旨の定めが定款に残っていないか、譲渡制限の定めがあるかどうかも確認します。譲渡制限株式であれば、株主総会または取締役会の承認決議が必要になるのが原則です。

こうした点検は、承継の直前になってから始めると間に合いません。実際のご相談でも、株主名簿の整理だけで数か月を要したケースがあります。早めに着手されることをおすすめします。

別記事では「熊本市で事業承継を進める手順は?自社株・不動産の名義変更と法務局・裁判所の管轄」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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事業譲渡・個人事業からの承継で免許を取り直すときの注意点

事業譲渡や個人事業からの承継を選ぶ場合、免許の新規取得が前提になります。ここで問題になるのが、免許が下りるまでの空白期間です。

新規免許の審査には一定の日数がかかり、さらに保証協会への加入手続きや営業保証金の供託を済ませて免許証の交付を受けるまで、営業はできません。つまり、譲渡日と営業開始日は同じ日にはならないのが通常です。

確認したい点株式譲渡で承継する場合事業譲渡・個人からの承継の場合
宅建業免許会社に残るのが原則(新規取得は不要)移転しない。譲受側で新規取得が必要
免許番号の更新回数そのまま引き継がれる(1)からの再スタートになる
必要な手続き役員・専任宅建士の変更の届出免許申請・保証協会加入・保証金の手当て
営業の空白生じないのが通常免許証の交付まで営業できない
取引先・オーナーの承諾契約当事者が変わらないため原則不要契約ごとに移転の合意・承諾が必要
簿外債務・過去の紛争会社に残るため買い手の調査が厳しくなる引き継ぐ範囲を契約で切り分けられる

免許が下りるまでの間に、進行中の取引をどう扱うか

媒介契約を締結済みの物件や、売買契約から引渡しまでの間にある案件をどうするかは、承継の実務でもっとも神経を使うところです。

宅建業法には、免許が失効した場合でも、すでに締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内では宅建業者とみなされる、という定めがあります。もっともこれは、既存の取引を終わらせるための限られた例外です。新しい媒介や新しい契約をこの規定で続けることはできないと理解しておくべきです。

したがって現実には、免許の交付日を確認してから新規の受託を再開する、あるいは引渡しの時期をまたがないように譲渡日を設定する、といった調整が必要になります。

従業員・宅建士の転籍と、雇用条件の引き直し

事業譲渡では、従業員の雇用契約が自動的に移るわけではありません。一人ひとりから同意を得て、新しい会社との雇用契約を結び直すのが原則です。

不動産会社の場合、宅地建物取引士の資格を持つ従業員が残ってくれるかどうかが、そのまま営業の継続可能性に直結します。賃金・歩合の計算方法、勤続年数の通算、有給休暇の引き継ぎといった条件面を先に整理し、書面で示してから話を始めてください。

伝える順番とタイミングを誤ると、承継前に主要な宅建士が辞めてしまい、専任の要件を満たせなくなることがあります。誰にいつ伝えるかは、譲渡の相手方と事前に取り決めておくのが安全です。

屋号・看板・電話番号・ホームページの扱い

地元で長くやってきた不動産会社では、屋号そのものが集客の中心にあります。事業譲渡であれば、商号や屋号を使う権利、看板、電話番号、ホームページのドメインを、譲渡する財産の一覧に明記しておく必要があります。

商標登録をしていない屋号であっても、譲渡契約書に「譲渡人は同一・類似の商号を不動産業に使用しない」といった条項を入れておくことで、後からの争いを避けられます。

逆に先代が引退後も個人で不動産の仲介を続けたいという場合は、競業を避ける範囲と期間を具体的に決めておきます。ここが曖昧なまま進めると、承継後に顧客の取り合いが起きかねません。

別記事では「事業譲渡で従業員はどうなる?同意書・有給休暇・勤続年数と法律上のルールを弁護士が解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

営業保証金と弁済業務保証金分担金の扱いを先に確認する

営業保証金と弁済業務保証金分担金の扱いを表すイメージ画像

宅建業者は、営業保証金を供託するか、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付するかのいずれかを選びます。承継の場面では、このお金の行方が意外な論点になります。

株式譲渡であれば会社は変わらないため、供託金も分担金もそのまま続きます。しかし事業譲渡や新規免許取得を伴う承継では、譲渡する側は取戻し、譲り受ける側は新たな手当てという二つの作業が同時に発生します。

供託している営業保証金の取戻しには公告と時間がかかる

営業保証金は、主たる事務所について1,000万円、その他の事務所については1か所あたり500万円を供託するものとされています。決して小さい金額ではありません。

免許が失効した後にこれを取り戻すには、還付を請求する権利を持つ者に対して、6か月以上の期間を定めて申し出るよう公告する手続きを経る必要があるのが原則です。つまり、譲渡した日にすぐ資金化できるわけではありません。

この資金を先代の退職金や納税資金に充てる計画を立てている場合、時期のずれが資金繰りに影響します。取戻しの見込み時期は、承継の計画を作る段階で確認しておいてください。

保証協会に入っている場合の分担金と会員資格

熊本県内の宅建業者の多くは、公益社団法人熊本県宅地建物取引業協会や公益社団法人全日本不動産協会といった保証協会の会員になっています。この場合、納付するのは弁済業務保証金分担金で、主たる事務所60万円、その他の事務所1か所あたり30万円とされています。

会員資格は会社に帰属しますので、株式譲渡であれば会員のまま続くのが通常です。ただし代表者が変わった旨の届出は協会にも必要になりますから、免許権者への届出とあわせて手続きしてください。

事業譲渡で新しい法人が引き継ぐ場合は、新規に入会することになります。入会には審査や入会金が必要で、日数もかかります。免許申請と並行して早めに動いておくのが実務上の要点です。

別記事では「事業承継の費用は総額いくら?熊本の中小企業の内訳相場と税金・専門家報酬・登記費用を抑える方法」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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賃貸管理・サブリースを引き継ぐときに確認すること

熊本の不動産会社では、売買の仲介だけでなく、アパートやマンションの賃貸管理を収益の柱にしている会社が少なくありません。毎月の管理料が安定した収入になるため、M&Aでも評価されやすい部分です。

一方で、管理業務の引き継ぎには宅建業免許とは別の規制と、オーナーの承諾という壁があります。ここを見落としたまま進めると、承継後に管理物件が他社に流れてしまうことがあります。

管理受託契約の地位移転にはオーナーの承諾が必要

株式譲渡であれば契約の当事者は変わりませんから、管理受託契約はそのまま続くのが原則です。ただし契約書に「経営権の移動があったときは解約できる」旨の条項が入っていないか、念のため確認しておきます。

事業譲渡の場合は、管理受託契約の地位をオーナーの承諾を得て移していく作業が必要です。管理物件が数百戸あれば、その数だけ承諾を取ることになります。

実務では、オーナーへの説明会を開いたり、個別に訪問して承諾書を集めたりします。この作業をどちらが担当し、どこまで集まったら譲渡を実行するのかを、契約条件として決めておくのが安全です。

賃貸住宅管理業の登録と業務管理者の配置

賃貸住宅の管理戸数が一定数(200戸)以上の場合、賃貸住宅管理業の登録が必要とされています。登録を受けた業者は、事務所ごとに業務管理者を配置しなければなりません。

この登録も宅建業免許と同様、法人に与えられたものです。法人格が続く株式譲渡では維持されるのが原則ですが、事業譲渡では譲り受ける側が自ら登録を受ける必要があると考えて準備してください。

業務管理者には一定の資格・講習の要件があります。管理部門の責任者が先代と一緒に引退する予定なら、後任の育成を承継計画に組み込んでおく必要があります。

預かっている敷金・家賃の分別管理と引き渡し

管理会社は、オーナーに渡す前の家賃や、入居者から預かった敷金を手元に持っています。これらは会社の財産とは分けて管理することが求められています。

承継の実行日をまたぐ家賃の精算、敷金の引き継ぎ、滞納家賃の取り扱いは、金額が確定しにくく、後からもめやすいところです。承継日時点の残高を一覧にし、どちらに帰属するかを契約書で明記してください。

とくに原状回復をめぐって入居者と争いになっている物件があれば、その案件の責任を誰が引き継ぐのかも先に決めておくべきです。

自社保有の不動産が自社株の評価を押し上げる——熊本で起きていること

自社保有の不動産が自社株の評価に与える影響を表すイメージ画像

不動産会社の事業承継で、許認可と並んで大きな論点になるのが自社株の評価です。会社が土地建物を持っていると、その評価額がそのまま株価に反映されます。

取引相場のない株式の評価では、会社の規模や資産の構成に応じて、類似業種比準方式や純資産価額方式などを用いることとされています。資産に占める土地等の割合が高い会社は、純資産価額方式によることとされる場合があり、結果として評価額が高く出やすくなります。

具体的な割合や判定は会社の規模区分によって異なり、個別の事情で結論が変わります。必ず最新の通達と路線価に基づいて、税理士と一緒に試算してください。

論点起こりやすいこと先に手を打つなら
土地の割合が高い純資産価額方式により評価額が高く出る規模区分と資産構成を試算し直す
地価の上昇数年前の見積りより相続税が増える毎年の路線価で株価を更新する
社長個人名義の不動産会社が使っているのに契約書がない賃貸借契約を書面にし、賃料を適正化する
納税資金がない自社株は売れず、現金が足りない生命保険・退職金・金庫株を検討する
相続人が複数いる自社株が分散して意思決定が止まる遺言書・除外合意などを組み合わせる

菊陽・合志の地価上昇が自社株の評価に跳ねている

熊本では、半導体関連企業の進出をきっかけに、菊陽町や合志市、周辺市町の地価が上昇したと報じられています。周辺で賃貸物件や事業用地を保有してきた不動産会社にとっては、資産価値が上がった一方で、自社株の評価も上がったことになります。

ご相談の現場では、「10年前に税理士に計算してもらった株価」を前提に承継を考えていたところ、改めて試算すると相続税の見込みが大きく変わっていた、という例があります。

地価が動いている地域で不動産を持つ会社は、株価の試算を一度きりで終わらせず、毎年更新していくことをおすすめします。

不動産を会社から切り離すという選択

事業用の不動産と、収益目的で持っている不動産を同じ会社に抱えていると、承継の自由度が下がります。買い手が「仲介業だけ欲しい」と考えても、不動産込みの価格では手が出ないことがあるためです。

そこで、会社分割によって不動産保有部分を別会社に移し、営業部門だけを譲渡するという組み立てが検討されます。もっとも、会社分割には債権者保護の手続きや登記が必要で、税務上の取り扱いも慎重に確認する必要があります。

どの方法が有利かは、会社の資産構成と後継者の有無で変わります。思いついた順に実行するのではなく、全体像を描いてから着手してください。

社長個人名義の不動産を会社が使っているとき

店舗や事務所が社長個人の名義で、会社が賃料を払わずに使っている——不動産会社に限らず、熊本の中小企業ではよく見かける形です。

この状態で承継を進めると、買い手や後継者から見て「事業を続けられる保証がない」という評価になります。先代の相続が起きたときに、事業と関係のない相続人が所有者になってしまう可能性もあるためです。

対応としては、会社が買い取る、賃貸借契約を書面にして期間と賃料を定める、遺言で後継者に承継させる、といった方法があります。いずれも税務の影響が出ますので、税理士と一緒に検討されることをおすすめします。

別記事では「事業承継の株価対策とは?自社株評価3方式・引き下げ策と退職金・遺留分の注意点を弁護士が解説」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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後継者がいないときの第三者承継(M&A)で見られる点

親族にも社内にも後継者がいない場合は、第三者への譲渡(M&A)が選択肢になります。不動産会社は免許と宅建士、そして管理物件という分かりやすい資産があるため、買い手が付きやすい業種です。

一方で、買い手は過去の取引に法的なリスクが残っていないかを丁寧に調べます。何を見られるかを先に知っておけば、準備の優先順位が決まります。

買い手が確認する項目具体的に見られるもの
免許・登録免許の有効期限、過去の行政処分の有無、専任宅建士の人数
管理物件管理戸数、管理料率、オーナーとの契約書、解約の動き
保有不動産登記簿、担保の設定状況、境界・越境、賃貸借の条件
過去の紛争重要事項説明をめぐる苦情、瑕疵・契約不適合の請求、訴訟
人宅建士の残留意思、歩合給の仕組み、未払残業の有無
個人保証社長個人の連帯保証、個人名義の借入と会社の資金の混同

重要事項説明をめぐる過去の案件が価格に影響する

不動産会社のM&Aで買い手がもっとも警戒するのは、過去に仲介した取引から後になって請求が来ることです。説明が不十分だったとして損害賠償を求められれば、承継後の会社がその責任を負うことになります。

株式譲渡では会社がそのまま残るため、こうした責任も引き継がれます。だからこそ、過去の苦情や相談の記録を整理し、未解決のものがあれば先に手当てしておくことが、価格を守ることにつながります。

契約書の側でも、表明保証条項や、一定期間内に請求が来た場合の負担の分け方を定めておくのが通常です。ここは弁護士が関与する意味が大きい部分です。

社長個人の連帯保証は自動的には外れない

会社の借入に社長個人が連帯保証をしている場合、株式を譲っただけでは保証が外れません。金融機関との交渉を別に行い、保証の解除または後継者への差し替えの同意を得る必要があります。

不動産会社は保有物件を担保に借入をしていることが多く、保証の額も大きくなりがちです。譲渡の条件として「金融機関が保証解除に同意することを実行の前提とする」と定めておくのが安全です。

経営者保証に関するガイドラインや、事業承継特別保証制度といった枠組みを使える場合もあります。取引銀行に早い段階で相談しつつ、法的な整理は弁護士と並行して進めてください。

別記事では「事業承継で連帯保証人はどうなる?経営者保証の解除要件と相続時の扱いを弁護士が解説」、「熊本でM&Aを進めるには?県内の買い手の探し方・価格の決まり方と仲介会社の選び方」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

熊本・八代で不動産会社の承継を進める手順と相談先

ここまで見てきたとおり、不動産会社の承継は、許認可・自社株・管理物件・個人保証という四つの線を同時に動かす作業です。ひとつずつ順番に片付けるのではなく、全体の工程表を先に作ることが結果を左右します。

熊本には無料で使える公的な相談窓口があり、最初の整理はそこから始められます。

まずは無料の公的窓口で現状を整理する

熊本県事業承継・引継ぎ支援センターでは、後継者の有無にかかわらず無料で相談を受け付けています。後継者人材バンクや、第三者承継の相手探しについても案内を受けられます。

日頃お付き合いのある熊本商工会議所や各地の商工会、八代商工会議所でも、事業承継診断や専門家派遣の制度を利用できる場合があります。費用をかけずに現状を棚卸しする入口として有効です。

ただし、これらの窓口は制度の案内と交通整理が中心です。株主名簿の整理、契約書の作成、保証の解除交渉といった法的な作業そのものは、弁護士など個別の専門家が担うことになります。

弁護士・税理士・司法書士・宅建協会の役割分担

弁護士は、株主の整理、譲渡契約書や表明保証条項の作成、従業員や取引先との紛争予防、個人保証の解除交渉、過去の苦情への対応といった部分を担当します。

税理士は自社株の評価と税金のシミュレーション、司法書士は役員変更登記や不動産の名義変更を担います。免許や届出の様式、協会の手続きについては、熊本県庁の担当課や加入している保証協会に確認するのが確実です。

誰か一人に全部を任せるより、入口で弁護士と税理士が一緒に全体像を描き、そこから各専門家に振り分ける形のほうが、手戻りが少なくなります。

相談の前に用意しておくと話が早い資料

ご相談にお越しいただく際、次の資料をお持ちいただけると、その場で具体的な道筋までお話しできることが多くなります。

  • 宅地建物取引業免許証の写し(免許番号と有効期限が分かるもの)
  • 登記事項証明書(会社のもの。保有不動産があればその分も)
  • 定款と株主名簿(古いものでも、現状が分かるもの)
  • 直近3期分の決算書・勘定科目内訳明細書
  • 管理物件の一覧(戸数・管理料率・オーナー名)
  • 借入の一覧と、連帯保証・担保の状況が分かる書類
  • 専任の宅地建物取引士の氏名と、従業員の人数

別記事では「熊本県事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談はどこまで?後継者人材バンクと無料窓口の使い分け」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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不動産会社の事業承継によくあるご質問

ご相談の際によくいただくご質問を、まとめてお答えします。制度の細部は改正される可能性がありますので、実際に動かれる前に最新の取扱いをご確認ください。

後継者が宅地建物取引士の資格を持っていなくても承継できますか

会社の代表者になること自体に宅地建物取引士の資格は必要とされていません。ただし、事務所ごとに専任の宅地建物取引士を置く要件は満たさなければなりませんので、後継者以外に有資格者を確保する必要があります。

現実には、後継者自身が資格を取るまでの間、先代が専任として残るか、宅建士の従業員に専任を担ってもらう形で橋渡しをすることが多いです。

父が個人で営業していた不動産業を、相続で引き継げますか

個人の宅建業免許は相続されないのが原則です。同じ場所で事業を続けるには、相続人が自ら免許を受ける必要があります。

免許が下りるまでは新しい媒介を受けられませんので、事実上の休業期間が生じます。将来を考えて、生前に法人化しておくことで、この問題を避けられる場合があります。

準備はいつから始めればよいですか

株主名簿の整理、専任宅建士の確保、株価の試算、個人保証の解除交渉は、いずれも短期間では終わりません。実務上は、承継を実行したい時期の3年ほど前から動き始めるのが安心です。

とくに後継者が宅地建物取引士の試験を受ける必要がある場合や、管理物件のオーナーから承諾を集める必要がある場合は、さらに時間を見込んでください。

不動産会社の事業承継は、宅地建物取引業免許を残せるかどうかで進め方がまったく変わります。法人格を維持する株式譲渡であれば免許は会社に残るのが原則で、事業譲渡や個人からの承継では新規取得が必要になるのが原則です。

そのうえで、専任の宅地建物取引士の確保、営業保証金や弁済業務保証金分担金の手当て、管理受託契約とオーナーの承諾、賃貸住宅管理業の登録、そして社長個人の連帯保証という論点を、ひとつの工程表に並べて進めることになります。

熊本では地価の動きが自社株の評価に直接響いています。数年前の試算をそのままにせず、最新の路線価で株価を見直し、納税資金まで含めて計画を立て直すことをおすすめします。制度の細部や金額は改正されることがありますので、実際に動かれる前に最新の情報をご確認ください。

当事務所では、熊本市・八代市を中心に事業承継のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。

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