【弁護士監修】事業承継の失敗事例13選!うまくいかない兆候・原因と紛争を防ぐ回避策を解説!
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法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援
事業承継は、会社の将来を左右する大きな節目になります。
「引き継ぎで失敗したらどうしよう」「うまくバトンを渡せなかったら会社はどうなるのだろう」という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
事業承継の失敗事例や、それによっての廃業・業績の低下などを耳にすると、「うちも同じ道をたどるのではないか」と心配になることもあるかもしれません。
そこで本記事では弁護士の視点から、事業承継の失敗事例13選と、トラブルが生まれる原因や回避策を解説しました。
「もっと早く知っていればよかった」と後悔しないためにも、今のうちにひとつずつ確かめて参考にしていただければ幸いです。

事業承継の「失敗」とは何を指すのか

事業承継の「失敗」とは、社長交代がうまくいかなかったということだけを指すものではありません。
引き継ぎの結果として、次のような状態に陥ってしまうことを「失敗」と呼ぶのではないかと考えます。
- 廃業に追い込まれてしまう
- 業績が大きく落ち込んでしまう
- 信頼していた社員が次々に退職してしまう
- 資金繰りに追われるようになってしまう
後継者が決まらないことや準備不足が原因で、黒字でありながら廃業を選ぶ企業も少なくありません。
「うちはまだ大丈夫」と思っているうちに時間が過ぎ、気付いたときには選択肢がほとんど残っていなかった、というケースも珍しくないでしょう。
事業承継は、単に相続の手続きをおこなえば終わる話ではありません。
これから先、会社をどのような姿にしていきたいのかを考える、経営そのもののテーマだと言えます。
この視点を大切にしながら、少しずつ準備を進めておくとよいでしょう。
事業承継のよくある失敗事例13選

ここからは、実際の現場でよくある事業承継の失敗事例13選をご紹介します。
どれも特別な会社だけに起こる話ではなく、「少し準備が遅れた」「話し合いを後回しにした」といった、小さな判断の積み重ねからはじまるものばかりです。
一つひとつ確認しながら、失敗を防ぐヒントを見つけてみてください。
1.準備が不十分で混乱が生まれる
まず、事業承継の準備が不十分なまま社長交代を迎えると、現場では混乱が生まれます。
例えば、引き継ぐ業務や権限・取引先との窓口などが整理されていないと、「誰に相談すればよいのかわからない」「判断が止まってしまう」といった状況になることもあるでしょう。
その結果、意思決定が遅れ、顧客対応や品質にも影響がおよびます。
主要取引先から「窓口が不明確で対応が遅い」として取引縮小を通告されるケースや、社員が混乱のなか相次いで退職してしまうケースも考えられるのです。
こうした混乱が続くと、社員の不安が高まり、会社全体の空気が重くなってしまいます。
事業承継における準備不足は、目に見えにくいところから大きな失敗へとつながっていく点に注意が必要です。
2.後継者が決まらないまま時間だけが過ぎる
一般的に、事業承継には5年から10年程度の準備期間が必要とされています。
「まだ元気だし今すぐ決めなくても大丈夫だろう」と思いながら、日々の仕事に追われているうちに、あっという間に年月は過ぎてしまいます。
もし後継者候補が頭に浮かんでいても、「本人はどう思っているのだろう」「断られたらどうしよう」と考えるほど話を切り出せなくなり、そのまま先送りしてしまうことも少なくありません。
その結果、後継者が決まらないまま時間だけが過ぎ、気付いたときには選べる道がほとんど残っていない状態になっていることも考えられます。
例えばM&Aによる第三者承継を検討しようにも、判断を先送りにしているうちに経営者の年齢や後継者不在のリスクを理由に企業価値が大きく下がってしまい、満足のいく条件での売却ができなくなるケースもあるでしょう。
「もっと早く向き合っておけばよかった」と後悔する経営者の方も、実は多くいらっしゃいます。
黒字で経営できていたにも関わらず、引き継ぐ人がいないという理由だけで廃業を選ばざるを得なくなることも考えられるのです。
中小企業庁が毎年公表している「中小企業白書」でも、後継者不在を理由とした黒字廃業の課題が継続的に指摘されており、早期着手の重要性が繰り返し強調されています。
別記事で、「事業承継の後継者不在の現状」について詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。
3.意思決定ができない経営体制になる
事業承継が進むなかで、表面上は体制が整っているように見えても、「この判断は誰が責任を持つのか」がはっきりしないままになってしまうことがあります。
社長は交代したものの、株式や決裁権の整理が不十分な場合、重要な経営判断を前にして足が止まってしまうのです。
親族や関係者が複数いると、それぞれの意見を尊重しようとするあまり、最終的な決断を下せなくなるケースも少なくありません。
その結果、設備投資・人材採用・新しい取り組みなど、本来なら進めるべき判断が先延ばしになります。
こうした状態が続くと、会社は少しずつ勢いを失い、気付かないうちに競争力が弱まっていってしまうでしょう。
「誰も間違っていないのに、会社が前に進まない」という意思決定ができない経営体制は、経営そのものにブレーキをかけてしまう点に注意が必要です。
4.社長交代が形だけで終わってしまう
社長の肩書きは後継者に譲ったものの、「最後は自分が見ておかないと心配だ」という想いから、実際の判断を手放せないことがあります。
その結果、後継者は自信を持って動けず、社員も「どちらの指示を優先すればいいのか」と戸惑ってしまう結果につながるでしょう。
現場に漂うこの迷いは、少しずつ組織の勢いを弱めていきます。
社長交代が形だけで終わってしまうと、新しい体制としての一体感が生まれにくく、承継後の成長が止まってしまうことにもなりかねません。
5.社内の理解を得られず人が離れてしまう
承継の背景や後継者の考えが十分に伝わらないまま進むと、長年会社を支えてきた社員ほど不安を感じやすくなります。
「これから会社はどうなるのか」「自分の立場は守られるのか」といった不安は、積み重なると不信感へ変わっていくこともあるでしょう。
その結果、退職という形で表面化し、現場力が一気に落ちてしまうケースも少なくありません。
会社から人が離れると、残った社員の負担が増え、さらに不安が広がるという悪循環に陥りやすい点は、経営者として心に留めておきたいところです。
6.親族トラブルが経営に影響する
事業承継の場面では、「家族だからこそ揉めたくない」という想いが強く働きます。
その結果、相続の公平さを優先し、株式を均等に分けたことで、かえって経営の軸が定まらなくなるケースがあります。
誰も悪気はないものの、親族間で意見が食い違いはじめると、会社としての判断が止まりやすくなってしまうのです。
話し合いが長引くほど感情的な対立に発展し、経営判断が後回しになることも珍しくありません。
親族トラブルが経営に影響してしまうのは、実際の現場で多く見られる失敗のひとつだと言えるでしょう。
また事業承継では、親子で対立してしまうこともあります。
「事業承継での親子対立の原因や対策」については、別記事でまとめていますので、参考にしてください。
7.承継後に業績が落ち込んでしまう

社長交代を終えたことで安心し、その後の経営の方向性が十分に定まらないまま進み、業績が落ち込んでしまう、といったケースもあります。
後継者なりに努力していても、取引先や社員に新しい方針が伝わらず、少しずつ顧客離れや売上減少が起こることがあるのです。
承継直後は、外から見れば会社が不安定に映りやすい時期です。
このタイミングで経営の軸がぶれてしまうと、業績への影響が表面化しやすくなるでしょう。
承継は区切りであると同時に、新たな局面の始まりでもある点を軽視できません。
8.誰にも相談せず独断で進めてしまう
事業承継は、経営者として最後まで自分で責任を負いたいと考える方ほど、誰にも相談せず独断で進めてしまいがちです。
しかし、税金・法律・経営判断が複雑に絡むなかで、すべてをひとりで判断するのは大きな負担になります。
周囲に弱みを見せまいとするほど、視野が狭まり、選択肢を見落としてしまうこともあるでしょう。
その結果、「もっと早く誰かに話していれば違う道があったかもしれない」と、あとから気付くケースも少なくありません。
相談しないまま独断で進めること自体が、思わぬ遠回りになることがあります。
9.資金と保証の整理が後回しになってしまう
事業承継では、つい「人」や「体制」の話に意識が向きがちですが、資金や保証の整理が後回しになるケースも少なくありません。
先代経営者が個人保証を続けたままになっていたり、借入条件の見直しが進んでいなかったりすると、承継後に思わぬ負担が表面化します。
後継者にとっては、経営をはじめた直後から重い責任を背負う形になり、判断を鈍らせてしまうこともあるでしょう。
資金面の整理が不十分なまま承継を迎えると、経営の自由度が大きく制限されてしまう点には注意が必要です。
「事業承継の費用相場」については、別記事にまとめています。
10.想定外の出来事に対応できない
事業承継は、計画どおりに進むとは限りません。
経営者の急な体調不良・後継者の事情変更・取引先や金融機関の対応変化など、想定外の出来事は突然起こります。
準備が十分でない状態だと、こうした変化に振り回され、冷静な判断ができなくなってしまうでしょう。
結果として、場当たり的な対応を重ねることになり、会社全体に不安が広がるケースもあります。
「何かあったときにどうするか」を考えないまま進めてしまうと、承継が一気に難航してしまいます。
別記事で、「事業承継を進めるなかでの注意点や起きやすい問題」をご紹介していますので、こちらもご覧ください。
11.契約や条件を十分に確認せず承継してしまう
事業承継の過程では、取引先との契約・賃貸借契約・金融機関との取り決めなど、多くの条件が関係してきます。
内容を十分に確認しないまま承継を進めてしまうと、名義変更ができない・条件が変わってしまうといった問題が、あとから発覚することがあるでしょう。
承継後にはじめて制約の存在に気付き、思うような経営判断ができなくなるケースも少なくありません。
12.会社の強みや価値を引き継げず競争力を失う
長年続いてきた会社には、数字では見えにくい強みや価値があります。
例えば、取引先との信頼関係や現場で培われた工夫、社内の暗黙のルールなどがそれにあたります。
これらが十分に引き継がれないまま承継が進むと、後継者が本来の力を発揮できなくなります。
結果として、これまで選ばれていた理由が薄れ、競争力が落ちてしまうこともあるでしょう。
ですので、会社の目に見えない価値が引き継がれないことは、承継後の経営に大きな影響を与えてしまうことになります。
13.時代の変化に対応できず事業が縮小してしまう
承継の準備に追われるあまり、時代の変化に対応できず事業が縮小してしまうことがあります。
これまでのやり方が通用していたとしても、環境は少しずつ変わっていくものです。
承継後にその変化が一気に表面化し、売上や取引が減少するケースもあります。
変化に対応できない状態で次の世代に引き継ぐと、後継者は厳しいスタートを切ることになるでしょう。
そのため、時代の流れを見誤ることも、承継における見過ごせないリスクのひとつになります。
ここまでで失敗事例をご紹介しましたが、早めの準備や対策で、スムーズな承継につなげていくことは可能ですので、ぜひ一度TORUTE株式会社にご相談ください。

失敗しやすい会社の共通点と原因は?
事業承継で失敗しやすい会社には、表面上の出来事は違っていても、トラブルの背景にいくつかの共通点があることがわかります。
特に多い原因は、次の2つです。
- 「まだ何とかなるだろう」と判断を先送りしてしまうこと
- 人・お金・権限といった重要なテーマを後回しにしてしまうこと
とはいえ、経営者としては日々の業務を回すことで精一杯になり、事業承継に腰を据えて向き合う余裕を持ちにくいのが実情でしょう。
しかしその結果、準備不足のまま承継を迎え、想定していなかったトラブルが一気に表面化してしまう場合が多いのです。
事業承継を「特別な出来事」ではなく、「会社の将来を考える経営判断のひとつ」として早めに位置づけることが、失敗を避けるための大きな分かれ道になるでしょう。
なお、中小企業庁が策定した「事業承継ガイドライン(第3版)」では、事業承継の全体像や準備の進め方が体系的に示されています。
「何から手を付ければよいかわからない」という段階でも参考にできる内容ですので、一度目を通しておくのもおすすめです。
また、事業承継において自社にはどのくらいのリスクがあるのかを事前に把握したい場合は、別ページで「事業承継リスク診断」が無料でおこなえますので、こちらもご活用ください。
よくある失敗を防ぐのに大切な初動は?

事業承継も失敗のほとんどは「早く動き出せばよかった」という後悔から生まれると考えます。
ですが実際には、「何から始めればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは、よくある失敗を防ぐのに大切な初動として、次の4つをご紹介します。
- 後継者候補と承継方法を整理する
- 現状を見える化する
- 関係者に共有すべき事項を洗い出す
- 相談先とスケジュールを早めに決める
まずひとつでも動き出せると、次のステップが見えやすくなりますので、具体的に解説していきます。
後継者候補と承継方法を整理する
よくある失敗を防ぐ最初の一歩は、「誰に・どのような形で引き継ぐのか」という、後継者候補と承継方法を整理することです。
事業承継の方法は大きく分けて、親族内承継・従業員承継・M&Aによる第三者承継の3つがあります。
後継者候補が社内外に誰もいないと感じている場合でも、M&Aを含めて視野を広げると選択肢が出てくることも考えられます。
まずは「誰が候補になりそうか」を書き出し、それぞれの方法のメリット・デメリットを大まかに把握しておくだけでも、次の判断がしやすくなるでしょう。
「M&Aという選択肢や事業承継との違い」は、別記事も参考にしてください。
現状を見える化する
後継者候補が決まっていても、引き継ぐ「中身」が整理されていなければ、承継は進みません。
そこで大切なのが、会社の現状を見える化することです。
具体的には、次のような内容を一覧にしておくことで、後継者の安心につながります。
- 財務状況
- 株主構成
- 個人保証の有無
- 主要な取引先や契約内容
- 経営者にしかわからない業務や人脈 など
「自分がいなくなっても会社が動けるか」という視点で整理してみると、見えていなかった課題が浮かび上がることも多いでしょう。
関係者に共有すべき事項を洗い出す
承継の話を進めるうえで、思わぬトラブルの原因になりやすいのが「関係者への伝え方」です。
社員・親族・金融機関・主要取引先など、承継に関わる関係者は多岐にわたります。
「誰に・いつ・何を伝えるべきか」というように、関係者に共有すべき事項を洗い出しておくことで、混乱や不信感を防ぐことができるでしょう。
特に、長く会社に関わってきた幹部社員や家族ほど、早めに気持ちを共有する機会をつくることが大切です。
相談先とスケジュールを早めに決める
事業承継の準備を始めたものの、誰に相談すればいいかわからないまま時間が過ぎてしまうケースは少なくありません。
まずは、税理士・弁護士・金融機関・事業承継の専門家など、信頼できる相談先に話してみることが一番の近道だと言えます。
そしてその相手とともに、「いつまでに承継を完了したいか」という逆算の視点で、早めにスケジュールを決めていくと、今やるべきことも明確になってくるでしょう。
「とりあえず話だけ聞いてみる」という気持ちで動き出すことが、失敗を防ぐための大切な一歩になるはずです。
別記事で、「事業承継でまずやるべきこと」をまとめていますので、こちらもご活用ください。
落とし穴を回避するために考えたい7つのポイント
ここまで見てきた失敗事例は、決して特別な会社だけに起こるものではありません。
むしろ、多くの中小企業が同じような場面でつまずきやすいからこそ、「よくある失敗」として繰り返されていると言えるでしょう。
ただし、あらかじめ大切なポイントを理解しておけば、十分に対策を講じることができます。

失敗につながる落とし穴を回避するために考えたいのは、次の7つのポイントです。
- 事業承継を会社の将来戦略として位置付ける
- 後継者と会社の方向性をすり合わせる
- 経営の主導権と役割分担を明確にする
- 関係者の本音を踏まえた合意形成をおこなう
- お金と税金が経営に与える影響を把握する
- 想定外の出来事に備える
- 専門家を経営の伴走パートナーとして活用する
大切なのは、「どこで判断を誤りやすいのか」を知ったうえで、早めに整理しておくことです。
それぞれ解説していきますので、ご自身の状況と照らし合わせながら「今、何を考えておくべきか」を思い浮かべてみてください。
事業承継を会社の将来戦略として位置付ける
事業承継というと、相続や社長交代といった手続きの話に意識が向きがちですが、本来は「これから会社をどうしていくのか」を考える経営のテーマです。
承継だけを切り離して考えてしまうと、引き継いだあとに方向性が定まらず、後継者が迷いやすくなります。
そのため、事業承継を会社の将来戦略として位置付けることを意識していくことが重要です。
これまで大切にしてきた強みや顧客との関係、今後の市場環境を踏まえたうえで承継を考えることで、会社の流れは途切れにくくなるはずです。
つまり、経営の延長線上に事業承継を置く意識を持つことが、次の世代への安心につながります。
後継者と会社の方向性をすり合わせる
後継者が決まっていても、「どのような会社にしていきたいのか」という部分が共有できていないと、承継後に戸惑いが生まれやすくなります。
また、後継者の考えや価値観と、会社が積み上げてきた歩みがかみ合わないまま進むと、社員や取引先との間にも温度差が生じやすくなるでしょう。
ここで大切なのは、会社を引き継ぐかどうかだけでなく、「どのような未来を目指すのか」を一緒に考え、後継者と会社の方向性をしっかりとすり合わせることです。
時間をかけて対話を重ねておくことで、バトンを渡された承継者の不安や迷い、心の負担を少なくすることができます。
経営の主導権と役割分担を明確にする
承継後に混乱が生じやすいのが、「誰がどこまで判断するのか」が曖昧な状態です。
前経営者の経験や存在感は大きな支えでもありますが、関わり方が整理されていないと、現場は指示の受け取り方に迷ってしまいます。
それを防ぐために、経営の主導権と役割分担を明確にしておく必要があります。
具体的には、株式・議決権・役員としての役割・判断の範囲などをあらかじめ整理しておくことで、新しい体制が見えやすくなるでしょう。
主導権と役割分担がはっきりすると、後継者も社員も安心して行動できるようになります。
関係者の本音を踏まえた合意形成をおこなう
事業承継は、経営者と後継者だけで完結する話ではありません。
なぜなら、親族・幹部社員・金融機関・主要な取引先など、関係者それぞれが承継の行方を気にかけているからです。
形式的な説明だけでは、不安や戸惑いは解消されにくいものです。
立場の違いから本音を口にしにくい場合もありますが、時間をかけて話を聞き、気持ちを受け止める姿勢が信頼へとつながっていきます。
ですので、早い段階から関係者の本音を踏まえた合意形成をおこなっておくことで、承継後の協力体制が築きやすくなるため、意識していくと良いでしょう。
お金と税金が経営に与える影響を把握する
事業承継では、人や体制の話に目が向きやすい一方で、お金や税金の問題が後回しになりがちです。
特に、株式の評価・納税資金・借入条件・個人保証の扱いなどは、承継後の経営に直接影響します。
整理が不十分なまま進めると、結果的に資金繰りに追われてしまい、思うような判断ができなくなることもあるでしょう。
数字の話は難しく感じられますが、事前に見える形にし、お金と税金が経営に与える影響をしっかりと把握しておくことで、承継後も落ち着いて経営に向き合いやすくなります。
株式の承継にともなう相続税・贈与税の納税猶予については、国税庁が公表している「法人版事業承継税制」の案内ページで、制度の概要や要件を確認できます。
数字の整理を進める前に、制度の存在だけでも把握しておくと、専門家との相談がスムーズになるはずです。
別記事では、「事業承継特別保証制度」についても解説していますので、あわせて参考にしてください。
想定外の出来事に備える
どれだけ丁寧に準備を進めていても、事業承継では予想していなかった出来事が起こることがあります。
例えば、経営者の急な体調不良や不測の事態、後継者の事情変更などは、決して珍しいことではありません。
こうした想定外の出来事に備え、緊急時の判断体制や連絡の流れをあらかじめ考えておくことは、会社を守ることにつながります。
万が一への備えがあることで、普段の経営にも安心感が生まれるでしょう。
専門家を経営の伴走パートナーとして活用する
事業承継は、税務・法務・経営判断などが複雑に絡み合うテーマです。
社内だけで考え続けているとどうしても視点が偏り、見落としが生じやすくなるため、第三者である専門家が関わることで、冷静な視点から課題を整理しやすくなります。
単に手続きを依頼するのではなく、事業承継のプロの専門家を経営の伴走パートナーとして活用することで、判断の質は高まるでしょう。
ひとりで抱え込まない姿勢が、結果的に失敗を遠ざけてくれます。
TORUTE株式会社では、事業承継を考えはじめた初期の段階でも、経営者さまの想いに寄り添う形でこれからの承継を一緒に考えさせていただいています。
初回は無料でご相談が可能ですので、まずは状況の確認だけしてみたい、などお気軽にお問い合わせください。

事業承継でトラブルが起こってしまった場合の対処法は?
事業承継の途中で問題が表に出てくると、「もう手遅れなのではないか」と不安になる方も多いと思います。
ただ、実際には状況を立て直せるケースは十分にあります。
事業承継でトラブルが起こってしまった場合の対処法としてまず大切にしたいのは、慌てて結論を出そうとせず、今起きていることを一つひとつ落ち着いて見つめ直すことです。
感情が揺れやすい場面だからこそ、「何が事実として起きているのか」を整理するだけでも、気持ちは少し楽になります。
次に、会社のなかで気がかりになっている点を、無理のない形で書き出してみるとよいでしょう。
お金の流れが心配なのか・人との関係に悩んでいるのか・手続き面で引っかかっていることがあるのかなど、すべて洗い出したら、それらを一度に解決しようとせず、今いちばん影響が大きいところから優先順位を付けて向き合っていくことが重要です。
とはいえ、ひとりで考え続けているとどうしても視野が狭くなるため、専門家も活用しながら状況を整理することで、「まだ選択肢はある」と気付ける場合が多いです。
直面している問題を過去の失敗と決めつけず、これからの立て直しの一歩としてとらえてみるとよいでしょう。
「事業承継後のトラブルで起こりやすい事例」については、別記事でまとめていますので、こちらもご覧ください。
「事業承継がうまくいかない」ときに現れる兆候と早めの対応
失敗事例を読むと、「うちも当てはまるかもしれない」と感じる方が多いのではないでしょうか。事業承継の失敗は、ある日突然起こるのではなく、小さな兆候が積み重なって表面化します。兆候の段階で気付けば、立て直しの余地はまだ大きく残っています。
| 時期 | よく見られる兆候 | 早めの対応 |
|---|---|---|
| 承継前 | 後継者の意思を確認していない、株主や借入の状況を社長しか把握していない | 後継者候補との面談、株主名簿・借入金・保証の一覧作成 |
| 承継の最中 | 代表交代後も社長が決裁を握り続ける、役割分担があいまい | 権限の移譲範囲と期限を文書にし、社内に周知する |
| 承継後 | 幹部や従業員の退職、取引先からの問い合わせ増加、資金繰りの悪化 | 面談で本音を聞き、取引先への説明や資金計画を見直す |
社長しか知らない情報が多いほど危うい
借入の保証や、取引先との約束事、社長個人名義の資産など、社長の頭の中にしかない情報は、後継者にとってリスクになります。承継のあとに初めて知ると、「聞いていなかった」という不信感が生まれ、関係がこじれる原因になります。
まずは、会社に関する情報を一覧にし、後継者と共有することから始めましょう。
代表交代後も社長が口を出し続けるケース
社長が会長になっても、実質的な決裁権を手放さないと、後継者は経営判断ができず、社員は誰の指示に従えばよいか迷います。これが続くと、後継者のやる気が下がり、有能な社員が離れることもあります。
「会長は何を決め、社長は何を決めるのか」を、取締役会の運用や社内規程で、できるだけ具体的に決めておきましょう。
兆候に気付いたら第三者の目を入れる
親子や社内の関係者だけで話し合うと、感情が先立って議論が進まないことがあります。顧問の税理士や弁護士など、第三者に同席してもらうと、事実と感情を切り分けて整理しやすくなります。
別記事では「事業承継で親子が対立する理由は?起こりやすいトラブルや失敗例・解決策と相談先」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
事業承継のトラブルが紛争になるとき|法的に問題になりやすい場面
話し合いで解決できなかった場合、事業承継のトラブルは法的な紛争に発展することがあります。弁護士として相談を受ける中で、特に多い場面と、考えられる対応を整理しました。結論は個別の事情により異なりますので、あくまで目安としてお読みください。
後継者以外の相続人からの遺留分の請求
後継者に自社株や事業用の財産を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害することがあります。相続の開始後に、遺留分侵害額請求を受けると、後継者は金銭の支払いを求められます。
会社の資金繰りを圧迫するほどの金額になる場合もあります。生前の対策として、遺言書の作成や、遺留分に関する民法の特例の活用、生命保険による代償資金の準備などが検討されます。
株式の分散による経営権争い
株式が親族や元役員などに分散していると、後継者が株主総会で必要な議決権を確保できないことがあります。重要な決議には、議決権の過半数や3分の2以上の賛成が必要になる場合があり、少数でも反対票が経営に影響することがあります。
名義が曖昧な株式(名義株)や、すでに亡くなった株主の持分が整理されていないケースでは、株主が誰なのかを確定する作業から始めなくてはなりません。
役員の解任や退職金をめぐる争い
承継後に、先代の役員報酬や退職金の支払いをめぐって対立する例もあります。役員退職金は、株主総会の決議や規程に基づいて支払われるのが原則です。規程や決議がないまま口約束だけで進めると、後日の争いの原因になります。
役員の解任や任期満了に関する争いでは、会社法上の手続きに沿って進める必要があります。
話し合い・調停・訴訟の順で考える
紛争が起きた場合は、まず当事者間の話し合いや、弁護士を通じた交渉を試みます。解決しない場合は、家庭裁判所の調停や、地方裁判所の訴訟といった手続きを検討します。
裁判になると、解決までに時間と費用がかかるだけでなく、取引先や従業員に与える影響も大きくなります。可能な限り、早い段階で専門家に相談し、紛争になる前に手を打つことが重要です。
別記事では「事業承継後のトラブルで起こりやすい事例は?原因や対応策・成功例」、「事業承継に遺言書は必要?自社株・遺留分の注意点や作成ステップ」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
失敗を防ぐために書面に残しておきたいこと|熊本・八代の相談現場から
熊本市や八代市の中小企業でも、「口約束で進めていたら、あとで食い違いが出た」というご相談は少なくありません。承継の合意は、時間が経つほど記憶が曖昧になります。次の内容を書面に残しておくだけで、トラブルの多くを予防できます。
承継の時期・役割・報酬に関する覚書
いつ代表者を交代するのか、先代がその後どのような立場で関わるのか、報酬や退職金はいくらを予定するのかを、親子や関係者の間で覚書にまとめておきます。法的な拘束力の強さは内容により異なりますが、考えを共有した証拠として役立ちます。
株式・財産の移転方針を示す遺言書や契約書
自社株や事業用不動産を誰に渡すのか、他の相続人にはどのように配慮するのかを、遺言書や贈与契約書で明確にしておきます。後継者の立場を守るだけでなく、他の相続人の納得感を高めることにもつながります。
見直しの機会を年に1回設ける
一度書面を作っても、会社の状況や家族の事情は変わります。年に1回、承継の進み具合と、書面の内容が今の状況に合っているかを確認する時間を持ちましょう。
状況に応じて専門家に見てもらうと、見落としを防げます。
別記事では「事業承継の注意点や起きやすい問題を解説!事前準備や相談すべき相手」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
失敗を避けるための相談のタイミングは?

事業承継で失敗を避けるためには、相談のタイミングが大切です。
「準備が整ってから」と考えているうちに時間が過ぎてしまうケースは多いため、不安や疑問が浮かんだ時点で動き出すことが理想だと言えます。
とはいえ、「誰に相談すればよいのか」がわからないまま足が止まってしまうことも少なくありません。
そのため、まずは主な相談先とそれぞれの役割を確認しておきましょう。
| 相談先 | 主な役割・相談できる内容 |
|---|---|
| 税理士 | 株式評価・相続税や贈与税の検討・納税資金の見通し整理・会社の数字を踏まえた承継設計など |
| 弁護士 | 親族間トラブル対応・契約内容の確認や調整・法的リスクの整理・紛争予防など |
| 司法書士 | 株式や役員変更の登記手続き・不動産の名義変更・承継にともなう各種実務など |
| 金融機関 | 借入条件や個人保証の整理・資金繰りの見通し確認・承継後の金融対応など |
| 事業承継コンサルタント・仲介会社 | 承継全体の流れ整理・関係者間の調整・専門家連携など |
最初からすべての専門家に相談する必要はなく、まずは信頼できそうな相手に現状を話してみるだけでも十分です。
話をするなかで、「次は誰に相談すればよいか」が自然と見えてくることも多いでしょう。
また、国が設置した公的相談窓口として、「事業承継・引継ぎ支援センター」というものがあります。
無料で相談できるうえ、税理士や弁護士など各専門家につなぐコーディネート機能も持っており、「誰に相談すればよいかわからない」という段階で最初に頼れる場所のひとつです。
そして相談のタイミングに迷ったときは、次のような場面を目安にしてみてください。
- 後継者が決まっていないとき
- 関係者との調整が必要なとき
- 株式・相続・保証・契約が不安なとき
- 承継後の経営に不安があるとき
ここからは、それぞれの状況に合わせて、どのような専門家に何を相談できるのかを確認していきましょう。
後継者が決まっていないとき
「事業承継を考えてはいるが、後継者が決まっていない」というときは、なるべく早いタイミングで動き出すことで、複数の選択肢を比較しながら検討することができます。
後継者探しに強い事業承継の専門家やM&A仲介会社・金融機関などが主な相談先となるでしょう。
「まだ何も決めていない」という段階でも、相談を受け付けているところがほとんどですので、遠慮せず問い合わせてみてください。
関係者との調整が必要なとき
親族間の意見の食い違いや幹部社員への伝え方など、関係者との調整に悩んでいるときも、早めに相談に動くことが大切だと言えます。
感情が絡む場面ほど、第三者が入ることで話し合いがスムーズに進みやすくなるからです。
「揉めてから相談する」のではなく、問題が表面化する前に弁護士や事業承継コンサルタントへ相談しておくことで、関係者全員にとっての安心につながるでしょう。
株式・相続・保証・契約が不安なとき
株式の評価・相続税の試算・個人保証の整理・取引先との契約確認などは、税理士・弁護士・司法書士が力になってくれます。
こうした数字や法律への不安を感じたときには、相談を先送りしないことが重要です。
「何が問題になりそうかよくわからない」という段階でも、専門家が現状を整理するところから一緒に考えてくれます。
そのため、「わからないから相談できない」と思わず、現状を話すことから始めてみるのがおすすめです。
承継後の経営に不安があるとき
実は承継が完了したあとも、不安を感じたときには、すぐに相談するのがおすすめです。
「引き継いだのはいいが、このあとどうするべきかわからない」という悩みも、専門家への相談で整理できることがあります。
実際に、丁寧な準備と専門家の伴走によって、承継後も安定した経営を続けている会社もあります。
そうした歩みも含め、TORUTE株式会社がこれまでに携わらせていただいた事業承継の成功事例を別ページでご紹介していますので、会社のこれからを思い描く際の参考にしてみてください。
承継後の経営課題は、金融機関・中小企業診断士・事業承継コンサルタントなどが対応できる領域です。
気になったときに動き出すことが、失敗を遠ざける一歩になるでしょう。
別記事では、「事業承継の相談先10選」をご紹介していますので、相談先選びにもお役立てください。
事業承継を進めるために専門家は必要なのか
事業承継をスムーズに進めるためには、専門家の関与は必須だと考えます。
事業承継は、税金や法律の話だけで完結するものでなく、経営の方向性・人との関係・金融機関とのやり取りなど、いくつもの要素が重なり合います。
経営者ご自身が真剣に向き合うほど、「自分で何とかしなければ」と抱え込んでしまいがちですが、すべてをひとりで判断し続けるのは大きな負担になるでしょう。
そんなとき、事業承継に詳しい専門家が関わることで、考えが偏っていないか・見落としている点がないかを客観的に確認できます。
専門家は答えを押し付けるのではなく、状況を整理し、選択肢をわかりやすく示していくのが大きな役割です。
早い段階で相談を始めると、「まだ時間がある」「選べる道が残っている」という安心感を持ちながら考えを進めることもできるでしょう。
まずは頭の中を整理するために話を聞いてもらおう、といった気持ちを持って関わることで、専門家もその想いに応え、しっかりとサポートしてくれるはずです。
「事業承継で専門家が必要な理由」については、別記事でも深掘りしているので、参考にしてください。
失敗しない事業承継対策は「TORUTE株式会社」へ

ここまで見てきたように、事業承継の失敗は、特別な判断ミスから起こるものとは言えません。
多くの場合、「何から手を付ければよいのかわからない」「考えることを後回しにしてしまった」といった、ごく自然な悩みの積み重ねから生じていると考えます。
TORUTE株式会社では、そうした悩みを抱える経営者の方と同じ目線に立ち、状況をひとつずつ整理しながら、事業承継のサポートをさせていただいています。
初回は無料ですので、「漠然と不安がある」という状態からでも、安心してご相談ください。
「事業承継に役立つ無料マニュアル【完全版】」もプレゼントしておりますので、失敗を防ぐためにご活用いただけますと幸いです。
\事業承継、何から始めるか迷ったら/
まとめ
事業承継の失敗の多くは、準備不足や判断の先送りが重なった結果として起こります。
実際の失敗事例を知り、つまずきやすいポイントを把握しておくだけでも、選択を誤る可能性は大きく下がるでしょう。
大切なのは、完璧な答えを一度で出そうとしないことです。
関係者や信頼できる専門家と話しながら、一歩ずつ考えを整理していくことで、後悔のない引き継ぎに近付いていきます。
会社のこれまでを大切にしながら、次の世代へ安心してつなぐために、今できるところから向き合っていきましょう。
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