事業承継は他人にもできる?株式の引き継ぎ手続きと会社を継ぐ側の注意点を弁護士が解説
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法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援
後継者がおらず、「このままでは廃業しかないのか」と悩んでいる経営者の方は少なくありません。
事業承継は他人にもできるのか、親族以外へ会社を引き継ぐ方法はあるのか、という不安な想いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、事業承継は他人にもできるのか、親族以外へ会社を引き継ぐ方法やメリット、注意点をわかりやすく解説します。
「他人に会社を任せることへの不安」を一歩ずつ整理するための参考にしていただけますと幸いです。

事業承継は他人にもできる?
結論からお伝えすると、事業承継は他人にもできます。
ここで言う「他人への承継」とは、子どもや親族ではなく、「親族以外の人物に会社を引き継ぐこと」です。
その主な方法として、社内の従業員が後継者になる「従業員承継」と、社外の企業や個人に引き継ぐ「第三者承継(M&A)」があります。
この2つは似て非なる方法で、相手との関係性や手続き、資金の流れが異なります。
もしかすると、「会社を売る」「知らない人に渡す」というイメージがあり、抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、中小企業庁の「2024年版 中小企業白書」によると、2023年時点で半数近くの中小企業で後継者が不在とされており、後継者が見つからないまま廃業を選ぶケースは依然として少なくありません。

だからこそ、他人への承継は従業員の雇用や取引先との関係を守るための、重要な選択肢のひとつだと言えます。
親族以外へ事業承継する主な方法とは
先にも少し触れたとおり、ひと口に「親族以外への事業承継」といっても、その方法はひとつではありません。
大きく分けると、次の4つがあります。

- 従業員へ引き継ぐ
- 社外の第三者へ引き継ぐ
- M&Aで会社や事業を譲る
- 外部人材を後継者として迎える
それぞれ、相手との関係性や手続き、資金の流れなどが異なります。
自社の状況に合った方法を選ぶために、まずはそれぞれの特徴を確認してみましょう。
従業員へ引き継ぐ
まずは、長年一緒に働いてきた幹部社員や役員などの従業員へ引き継ぐ方法です。
会社の内情をよく知っており、取引先や他の従業員にとっても受け入れやすい面があります。
ただし、従業員に会社を譲る際には、株式を取得するための資金を誰がどのように用意するかが大きな課題になります。
借金(融資)を活用する方法も含め、資金面の計画は早めに整理しておく必要があるでしょう。
社外の第三者へ引き継ぐ
社内に後継者が見つからない場合に有力な選択肢となるのが、社外の個人や企業といった、第三者への引き継ぎです。
「第三者承継」と呼ばれ、相手との信頼関係をゼロから築いていく必要がある一方、会社を続けてもらえる可能性が広がります。
そして、第三者承継の代表的な手法が、次にご紹介するM&Aです。
M&Aで会社や事業を譲る
M&Aは、第三者承継を進める際の具体的な方法のひとつになります。
株式会社では株式を譲渡する「株式譲渡」が一般的で、会社そのものを別の企業や個人に譲るため、従業員との雇用契約は法律上継続され、取引先との契約関係も維持されやすいのが特徴です。
後継者がいない中小企業の事業承継において、現実的な選択肢として広がっていると言えるでしょう。
「事業承継とM&Aの違い」については、別記事で詳しく解説しています。
外部人材を後継者として迎える
社長から会社を譲り受ける形で、外部から経営者人材を後継者として迎える方法もあります。
「社長業を担える人物」を外部から採用し、一定期間をかけて経営を移行するイメージです。
後継者として育成する時間が必要になりますが、事業の方向性をある程度コントロールしやすいメリットがあります。
他人に事業承継するメリット
他人への承継方法がわかっても、「他人に会社を任せて本当に大丈夫なのか」と不安を感じる方は多いのではないかと思います。
しかし、他人への事業承継には、親族内承継にはない独自のメリットもあります。
他人に事業承継する主なメリットは、次の4つです。
- 後継者がいなくても会社を残せる
- 従業員の雇用を守れる可能性がある
- 取引先や地域との関係を続けやすい
- 外部の資金やノウハウを活用できる場合がある
それぞれ具体的に解説していきます。
後継者がいなくても会社を残せる
まず、親族に後継者がいなくても、他人への事業承継によって会社を存続させられる可能性があります。
廃業を選んでしまうと、長年一緒に働いてきた従業員の仕事が失われ、取引先にも少なからず影響が出てしまうでしょう。
実際に、帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」によると、2025年時点で日本企業の後継者不在率は50.1%にのぼります。

引用:帝国データバンク|全国「後継者不在率」動向調査(2025年)
改善傾向は続いているものの、依然として2社に1社で後継者が決まっていないのが現状です。
「自分の代で終わらせたくない」という想いをお持ちの場合、他人へ承継することは、その選択肢を現実的に叶える手段になりえます。
従業員の雇用を守れる可能性がある
長年会社を続けてきた経営者にとって、従業員の生活を守りたい、という気持ちは自然なことだと考えます。
廃業という選択と比べたとき、従業員の雇用を守れる可能性がある点は、大きなメリットと言えるでしょう。
M&Aによる株式譲渡の場合、会社の法人格はそのまま存続するため、従業員との雇用契約は法律上継続されます。
ただし、事業譲渡の場合は従業員一人ひとりの個別同意が必要になるため、方法によって扱いが異なる点には注意が必要です。
別記事では、「事業譲渡で従業員はどうなるのか」についてまとめていますので、こちらも参考にしてください。
取引先や地域との関係を続けやすい
長年かけて築いてきた取引先との信頼や、地域での顔なじみの関係は、会社の大切な財産です。
承継によって会社の看板や取引先との契約が引き継がれることで、その関係を続けやすいというメリットもあります。
廃業してしまえば取引先にも迷惑をかける可能性が大きくなりますが、承継という形を選ぶことで、地域とのつながりも次の世代に残していけると言えるでしょう。
外部の資金やノウハウを活用できる場合がある
他人である第三者が後継者になることで、これまでの会社にはなかった外部の資金力や新しい経営のノウハウが入ってくるため、それらを活用できる場合があります。
実際には、「自分の時代よりも会社が成長した」というケースもあり、承継をきっかけに会社が新たな一歩を踏み出す可能性もあるでしょう。
別ページに、TORUTE株式会社がサポートさせていただいた事例をまとめていますので、こちらも参考にしながら、他人への事業承継をイメージしてみてください。
他人に事業承継するデメリットや注意点
他人への事業承継には多くのメリットがある一方で、事前に知っておきたいデメリットや注意点もあります。
主な点は、次の5つです。
- 理念や社風が変わる可能性がある
- 従業員や取引先への説明が必要
- 買い手や後継者探しに時間がかかる
- 価格や引き継ぎ条件で折り合わないことがある
- 借入金や経営者保証の整理が必要
あらかじめ把握しておくことで、承継後のトラブルを防ぎやすくなるはずですので、ひとつずつ確認していきましょう。
理念や社風が変わる可能性がある
長年かけて育ててきた経営理念や社風は、会社の大切な財産です。
しかし後継者が外部の人物になる以上、その文化や価値観が少しずつ変わっていくことは、ある程度避けられない面があります。
「自分がいなくなっても、この会社らしさを残してほしい」という想いがある場合は、引き継ぎの段階で後継者と十分に話し合う時間を設けることが大切です。
契約書に盛り込める条件は限られますが、しっかりと言葉にして伝えておくだけでも、後継者は判断しやすくなるでしょう。
従業員や取引先への説明が必要
承継を進めるうえで、従業員や取引先への説明は避けて通れません。
ですが伝えるタイミングや方法を誤ると、「突然どうしたんだ」「自分たちはどうなるのか」といった不安や混乱を招くことも考えられます。
そのため、「いつ・誰が・どのように伝えるか」を後継者とあらかじめ計画しておくことが重要になります。
そうすることで、関係者も安心して新体制を受け入れやすくなるはずです。
買い手や後継者探しに時間がかかる
M&Aでは、すぐに相手が見つかるというわけにはいかないのが現実です。
相手探し・条件交渉・契約締結まで、数ヵ月から1年以上かかることも珍しくありません。
そのため、「そろそろ考えなければ」と感じた時点が、動き始めるベストなタイミングだと言えます。
準備が早ければ早いほど、納得のいく相手を選ぶ余裕が生まれるでしょう。
価格や引き継ぎ条件で折り合わないことがある
他人への承継では、売却価格はもちろん、従業員の待遇・社名の継続・取引先との関係維持など、引き継ぎ後の条件が折り合わないことがあります。
ここは感情的になりやすい場面でもあるため、事前に「譲れない条件」と「ある程度妥協できる条件」を整理しておくことが大切です。
優先順位を明確にしておくことで、交渉の場でも冷静に判断しやすくなります。
「M&Aの価格の決め方」については、別記事でも解説していますので、こちらも参考にしてください。
借入金や経営者保証の整理が必要
会社の借入金や、経営者個人が保証している「経営者保証」の扱いは、承継の重要な課題のひとつです。
これを曖昧にしたまま進めてしまうと、後継者にとって大きな負担になるだけでなく、承継そのものが難しくなることもあります。
そのため、専門家を交えながら整理を進めるのがおすすめです。
近年は経営者保証の解除に向けた支援も広がっており、早めに動くことで選択肢が広がる可能性も大きくなっています。
なお、「事業承継における失敗事例」については、別記事でも詳しくまとめていますので、あわせて参考にしてください。
TORUTE株式会社では、後継者探しや引き継ぎ条件の整理など、、承継全体のサポートをさせていただいていますので、まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。
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他人へ事業承継するときの流れは?

他人への事業承継は、おおむね以下の流れで進みます。
①現状把握と方針の整理
まず、自社の財務状況や強み・課題を整理します。
「従業員に引き継ぐのか、外部に譲るのか」など、どの方法が自社に合っているかをここで考えます。
②専門家・支援機関への相談
方針が固まってきたら、税理士や弁護士、事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談します。
おひとりで抱え込まず、早めにプロの力を借りることが大切です。
③後継者・買い手の探索
社内に候補者がいないかを確認しつつ、M&Aであれば仲介会社などを通じて買い手を探します。
この段階が最も時間を要することが多く、焦らず丁寧に進めることが重要です。
④条件の交渉・合意
価格・従業員の扱い・事業継続の方針などについて話し合い、お互いが納得できる条件をまとめます。
合意した内容は「基本合意書」として書面に残します。
ただし、基本合意書は最終的な法的拘束力が限定的な場合が多く、最終契約書の締結が重要になります。
⑤デューデリジェンス(買い手による調査)
買い手が会社の財務・法務・税務などを詳しく調査する段階です。
「会社の中身をチェックされる」イメージで、正直に情報を開示することが信頼関係の土台になります。
この段階では、決算書・契約書・登記情報・労務関係書類などの開示を求められることが多いため、事前に資料を整理しておくことが重要です。
⑥最終契約・引き継ぎ
調査の結果をふまえて最終的な契約を結び、代表者の交代や株式の譲渡など、正式な手続きを経て引き継ぎが完了します。
⑦引き継ぎ後のサポート
契約が完了しても、すぐにすべてを手放す必要はありません。
前の経営者が一定期間サポートすることで、後継者も安心して経営をスタートできます。
別記事では、「事業承継の手続きで法人の場合の流れ」も詳しくまとめていますので、こちらも参考にしてください。
他人に事業承継する前に確認したい5つのポイント
他人への事業承継を進める際は、承継が本格的に動き出す前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
ここでは、次の5つをご紹介します。

- 相手に求める条件を整理する
- 方針や社風が合うかを確認する
- 譲れない条件を決めておく
- 関係者への伝え方を考える
- 契約内容を専門家と確認する
「なんとなく進めてしまった」と後悔しないためにも事前に確認し、一度立ち止まって整理しておきましょう。
相手に求める条件を整理する
他人へ事業承継する際は、「どんな人に会社を任せたいか」を最初に言語化しておくことが大切です。
例えば、「従業員を大切にしてくれる人か」「地域とのつながりを理解してくれるか」「事業を続ける意志があるか」など、相手に求める条件は人によって異なります。
しっかりと整理しておくことで、候補者を感情だけで判断せず、冷静に見極めやすくなるでしょう。
方針や社風が合うかを確認する
後継者を選ぶとき、財務状況や経歴だけで判断するのは危険です。
例えば、「数字は問題ないが、どこか話が噛み合わない」と感じるなら、それは大切なサインかもしれません。
実際に何度か会話を重ね、経営に対する方針や、価値観が現在の社風と合うのかを確認するようにしましょう。
「この人になら任せられる」という納得感が、承継後の安心につながります。
譲れない条件を決めておく
交渉の場では、つい相手のペースに流されてしまうこともあります。
そうならないためにも、事前に「社名は変えてほしくない」「長年働いてくれた従業員の雇用は守ってほしい」など、外せない条件を書き出して整理しておきましょう。
譲れる条件と譲れない条件を明確に決めておくことで、交渉をより落ち着いて進めることができます。
関係者への伝え方を考える
先にも解説したように、承継を進めるなかで、従業員・取引先・金融機関など、多くの関係者への説明が必要になります。
そこで大切なのは「いつ・誰に・どの順番で伝えるか」を、後継者とあらかじめ考えておくことです。
特に長く勤めてくれている従業員ほど、「自分たちへの影響はどうなるのか」と敏感に感じ取りやすいでしょう。
丁寧に段取りしておくことが、現場の混乱を防ぐことにつながります。
契約内容を専門家と確認する
承継は、口約束だけで進めてしまうと、あとになって「話が違う」というトラブルに発展することがあります。
そのため、最終的な合意は契約書として残し、契約内容を弁護士や税理士といった専門家と確認するのがおすすめです。
特に経営者保証の扱いや株式の譲渡条件などは、細部まで確認しておくことが、承継後の安心につながります。
ここまでで、他人に事業承継する前に確認したいポイントを5つご紹介しました。
「事業承継全体でやるべきこと」については、別記事にまとめていますので、こちらもご覧ください。
TORUTE株式会社では、事業承継を考えはじめた段階から、経営者さまの想いに寄り添う形で、現実的な承継の進め方をご提案させていただいています。
条件整理や契約内容の確認など、細かい部分までサポートが可能ですので、ご不安がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。

他人への事業承継で資金は誰が用意する?
他人への事業承継を考えると、「資金面はどうなるのか」「誰が用意するのか」と不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、承継の方法によって資金を用意するのが、売り手側なのか買い手側なのかが異なります。
例えばM&Aによる株式譲渡の場合、株式を買い取るための資金は基本的に買い手側が用意します。
一方、従業員承継では、後継者となる従業員が株式取得のための資金を自己資金や融資で準備する必要があります。
いずれの場合も、会社の借入金や経営者保証の扱いが重要なテーマになってくると言えるでしょう。
別記事では、「事業承継特別保証制度」についてもまとめているので、こちらもあわせてご覧ください。
他人に会社を譲ると借金はどうなる?
M&Aによる株式譲渡で他人に会社を譲った場合は、借金(借入金)は基本的に会社に残ったまま引き継がれます。
つまり、会社の負債ごと買い手に渡ることになるため、買い手は会社の財務状況を十分に確認したうえで引き受けるかどうかを判断することになるのです。
従業員に会社を譲る場合も同様に、会社の借金はそのまま残ります。
加えて、後継者となる従業員が株式を取得するための資金を別途用意しなければならないため、「借金を抱えた会社を、自分の資金で買い取る」という二重の負担が生じることがあるでしょう。
この点は従業員承継特有の課題として、早めに専門家や金融機関に相談するのがおすすめです。
経営者保証や担保はどう整理する?
経営者が個人で会社の借入を保証している「経営者保証」や担保の扱いは、承継を進めるうえで避けて通れない課題です。
これを曖昧なままにしておくと、後継者が過大な負担を背負ったまま経営をスタートすることになりかねません。
近年は、全国銀行協会と日本商工会議所が共同で策定した「経営者保証に関するガイドライン」をもとに、金融機関や中小企業庁が解除に向けた支援を広げています。
後継者が安心してスタートできる環境に整理していくためにも、金融機関や専門家と早めに相談しておくのがよいでしょう。
まずは、約3分で「事業承継リスク診断」が無料でおこなえますので、一度試してみてください。
他人への事業承継で使える補助金や融資は?

他人への事業承継では、公的な補助金や融資制度を活用できる場合があります。
まず補助金は、返済不要で活用できる制度です。
他人への事業承継で使える主な補助金としては、主に次のようなものがあります。
M&Aを進める際にかかる仲介会社への手数料や、会社の状態を詳しく調べるための調査であるデューデリジェンスの費用など、第三者承継に関わる専門家費用の一部を補助してもらえる制度です。
売り手・買い手それぞれが対象となる場合があります。
承継をきっかけとして、設備の刷新や生産性向上のための投資を検討している場合に活用できる補助金です。
製造業や建設業など、設備投資が必要な業種に向いています。
承継後の販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者を支援する補助金です。
新たな顧客層の開拓や広報活動などの費用に充てることができます。
なお、これらの補助金は、採択後にすべての取り組みが完了してから実績報告をおこない、内容が適正と認められてはじめて支払われる仕組みです。
「採択されたらすぐにお金がもらえる」というわけではないため、資金計画には注意が必要になるでしょう。
またこれらの補助金は、公募回ごとに要件・補助上限・スケジュールが変わるため、申請を考える場合は、最新の情報を確認するようにしてください。
一方、融資は補助金と異なり返済が必要ですが、まとまった資金を早めに手当てできる点が強みです。
なかでも次にご紹介する日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」は、低金利で返済期間も長めに設定できることが多く、補助金だけでは賄いきれない資金需要を補う選択肢として広く活用されています。
補助金と融資をうまく組み合わせることで、資金面の負担を軽減できる可能性があるでしょう。
「事業承継に使える補助金」については、別記事に2026年の最新版をまとめていますので、こちらも参考にしてください。
「事業承継・集約・活性化支援資金」とは?
日本政策金融公庫が提供する「事業承継・集約・活性化支援資金」は、事業承継に取り組む中小企業を対象とした公的融資制度です。
設備投資だけでなく、株式取得資金や長期の運転資金としても活用できるケースがあるため、使い勝手が広い制度だと言えます。
一般の民間融資と比べて金利が低めで、返済期間も長めに設定できることが多く、中長期的な計画を立てやすい点が特徴です。
申請には、事業計画書や資金繰り表の提出が必要になり、審査にも一定の時間がかかります。
「株式の買い取りと設備更新を同時に検討している」といった場合でも、まとめて相談できる点はメリットだと言えるでしょう。
「事業承継で借りられる融資」については、別記事でも詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。
株式会社を他人へ引き継ぐときの法律上の手続き
親族内の承継と違い、他人へ株式会社を引き継ぐときは「株式を他人に渡す」という手続きを正面から踏むことになります。多くの中小企業は定款で株式の譲渡を制限しているため、社長と相手が合意しただけでは移りません。
ここを飛ばしたまま代金のやり取りを先に済ませてしまい、後から効力を問題にされる例があります。順番を守ることが何よりの防御になります。
| 手続き | だれが行うか | 残しておく書面 |
|---|---|---|
| 譲渡の承認請求 | 株式を譲りたい株主 | 承認請求書 |
| 承認の決議 | 株主総会または取締役会(定款の定めによる) | 議事録 |
| 株式譲渡契約の締結 | 譲渡人と譲受人 | 株式譲渡契約書 |
| 株主名簿の名義書換 | 会社 | 名義書換請求書・書換後の株主名簿 |
| 役員の変更 | 株主総会で選任し、法務局へ申請 | 議事録・登記事項証明書 |
定款の譲渡制限をまず確認する
定款に「株式を譲渡するには会社の承認を要する」と定められているのが中小企業では一般的です。この場合、承認の機関が株主総会なのか取締役会なのかを定款で確かめ、そのとおりに決議を取る必要があります。
古い定款のまま実態と合っていない会社も少なくありません。手続きに入る前に、現在の定款と登記の内容を取り直して突き合わせておくことをおすすめします。
株主名簿の名義書換までやって初めて完結する
契約書を交わし代金を払っても、株主名簿の名義が書き換わっていなければ、会社に対して株主であることを主張できないのが原則です。株主名簿が作られていない会社では、この機会に整備することになります。
株券を発行している会社であれば、株券の交付も必要です。実際には株券が見つからないことも多く、不発行とする手続きから始めることがあります。
役員の交代と登記を忘れない
株式が移っても、代表取締役が交代しなければ経営権は移りません。株主総会での選任と、法務局への登記申請まで済ませる必要があります。登記には期限の定めがあるため、交代の日付から逆算して準備します。
前の代表が取締役として残るのか、完全に退くのかによって、退職金の扱いや責任の範囲が変わります。ここは条件交渉の段階で決めておくべき項目です。
別記事では「M&Aの「0円譲渡」とは?」、「事業承継の失敗事例13選」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
継ぐ側から見た「他人の会社を継ぐ」ということ
ご相談には、譲る側だけでなく「知り合いの会社を継いでほしいと言われた」という継ぐ側からのものもあります。熊本・八代でも、取引先や同業の社長から声をかけられるという形は珍しくありません。
引き継ぐ側にとっては、会社をもらうというより、会社の中身をすべて引き受けるという話になります。確かめておくことを整理しておきます。
引き受ける前に必ず見ておく書類
決算書は3期分以上、借入の一覧と返済予定表、取引先との主要な契約書、許認可の内容と期限、就業規則と従業員名簿、未払いの残業代や社会保険料の有無。この六つは最低限の確認事項です。
数字の良し悪しより、見せてもらえないものがあるかどうかが判断の分かれ目になります。渋られる項目があるときは、そこに理由があると考えるのが安全です。
個人保証を引き受けるかどうか
会社に借入があると、金融機関から新しい代表の個人保証を求められることが通常です。引き受けると、会社が行き詰まったときに個人の財産で返す立場になります。
経営者保証に関するガイドラインに沿って、保証なしで借り換えられないか、保証の範囲を限定できないかを金融機関と協議する余地があります。引き受ける前に相談しておきたい論点です。
買い取る資金をどう用意するか
株式の買取資金は、自己資金、金融機関からの借入、分割払い、役員報酬から段階的に支払う形などを組み合わせます。無理な金額で引き受けると、承継直後に自分の生活が立たなくなります。
返済できる範囲に収めることが前提です。価格が折り合わないときは、引き継ぐ範囲を事業の一部に絞るという選択もあります。
別記事では「事業承継で連帯保証人はどうなる?」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
他人への承継でもめやすい「引き継いだ後」の話
条件がまとまって引き渡しが済んだあとに揉めるケースは、契約書で先に決めておけば防げたものがほとんどです。あらかじめ書き込むべき項目を挙げておきます。
先代がいつまで、どんな立場で残るのか
取引先や職人の引き継ぎのため、先代が一定期間残るのはよくある形です。ただ、立場と報酬、決裁の範囲を決めないままにすると、従業員がどちらの指示を聞くか分からなくなります。
顧問として何か月、報酬はいくら、どの業務に関わるのかを書面にしておくのが原則です。終わり方も最初に決めておくと後で揉めません。
後から出てきた債務はだれが負うのか
引き渡しのあとに未払いの残業代、追徴課税、取引先とのトラブルが出てくることがあります。契約書に表明保証と補償の条項を入れておけば、一定の期間内に判明したものを売主側が負担する形に整理できます。
期間と金額の上限をどう設定するかが交渉の中身です。何も定めずに引き渡すと、引き継いだ側が全部を抱えることになります。
競業避止と従業員の引き抜き
先代が近くで同じ商売を再開すると、引き継いだ事業の価値が失われます。競業を避ける義務の範囲と期間、地域を契約書で定めておくのが通常です。
あわせて、従業員や取引先に声をかけない取り決めも入れておきます。範囲が広すぎると定めが無効とされる余地もあるため、必要な範囲で具体的に書くことが大切です。
別記事では「事業承継のリスクとは?」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
他人への事業承継はどこに相談すべき?
他人への事業承継を考える場合、「相談したいけれど、誰に話せばよいのかわからない」という方も少なくありません。
事業承継は、税務・法務・資金調達など幅広い知識が必要になるため、課題の内容に応じて相談先を使い分けることが大切です。
ここでは、主な相談先として、次の5つをご紹介します。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- M&A仲介会社・マッチングサービス
- 金融機関
- 税理士・公認会計士
- 弁護士
「何から相談すればよいかすらわからない」という段階であれば、まずは無料で相談できる公的窓口から始めてみるのもおすすめです。
それぞれの特徴を確認していきましょう。
事業承継・引継ぎ支援センター
「事業承継・引継ぎ支援センター」は、全国47都道府県に設置されている公的な相談窓口で、中小機構が運営しています。
相談は無料で、従業員承継・M&Aなど承継方法を問わず幅広く対応しているため、「まだ方向性が決まっていない」「何から始めればよいかわからない」という段階でも気軽に話を聞いてもらえるでしょう。
これから事業承継を考えていく方には、最初の一歩としてもおすすめできる窓口だと言えます。
M&A仲介会社・マッチングサービス
M&A仲介会社やマッチングサービスは、買い手候補の紹介から条件交渉のサポートまで、M&Aの実務を一緒に進めてくれる専門機関です。
「どんな相手なら自社を引き継いでくれそうか」「どう交渉を進めればよいか」といった具体的な悩みに対し、経験に基づいたアドバイスをもらうことができます。
費用は成功報酬型が多く、会社の規模によって異なりますので、複数の会社に話を聞き、説明が丁寧で信頼できると感じた相手を選ぶのがよいでしょう。
金融機関
日頃から取引のある銀行や信用金庫といった金融機関は、会社の財務状況をよく把握しているため、気軽に相談しやすい存在ではないでしょうか。
融資や資金計画の相談だけでなく、「今の会社の状況をどう見ているか」といった率直な意見をもらえることもあります。
結論を出す場所というよりも、「考えを整理するための場所」として活用するのがおすすめです。
税理士・公認会計士
株式の評価額の算定・相続税や贈与税の試算・事業承継税制の活用など、お金にまつわる専門的なサポートをしてくれるのが、税理士や公認会計士です。
「自社の株式はいくらになるのか」「税金の負担をどう抑えられるか」といった疑問がある場合は、税理士や公認会計士に相談するのが確実だと言えるでしょう。
普段から付き合いのある税理士がいれば、まず現状を話してみることから始めるのもひとつの方法です。
別記事に、「事業承継での税理士法人の役割」をまとめていますので、こちらもご覧ください。
弁護士
他人への事業承継では、株式譲渡契約書の作成・経営者保証の解除交渉・従業員への対応など、法律に関わる場面が数多く出てきます。
こうした局面で最も心強い存在が、弁護士です。
税理士や仲介会社は税務・マッチングのプロですが、契約内容の法的リスクを精査し、交渉の場で経営者の権利を守ることができるのは弁護士の強みだと言えるでしょう。
他人への承継は、親族内承継と比べて契約内容が複雑になりやすく、「この条件で本当に大丈夫なのか」「あとから不利な条件を押しつけられないか」といった不安を抱える経営者も少なくありません。
そのような場面では、弁護士が交渉・契約の両面からサポートすることで、納得のいく承継を実現しやすくなります。
他人への事業承継を考えたら「TORUTE株式会社」へ

「他人に会社を任せたい気持ちはあるけれど、何から始めればよいのかわからない」「従業員や取引先への影響が心配で、なかなか踏み出せない」といった想いを抱くのは、当然のことだと思います。
長年守ってきた会社だからこそ、簡単に決断できないのは当たり前のことでしょう。
だからこそ、TORUTE株式会社では弁護士が中心となって、事業承継をサポートさせていただいています。
弁護士が事業承継に関わることで、次のようなメリットがあります。
・契約リスクを事前に防げる
株式譲渡契約書や基本合意書の内容を法的観点から精査し、あとから「話が違う」というトラブルを未然に防ぎます。
・経営者保証の解除交渉を代理できる
金融機関との保証解除交渉は、個人では進めにくい場面のひとつです。
弁護士が代理人として交渉することで、後継者への負担を減らす可能性が高まります。
・従業員や取引先への対応も法的にサポートできる
承継の通知タイミングや雇用条件の変更に関する法的なリスクを整理し、経営者と従業員の双方が安心できる形を一緒に考えます。
・ワンストップで承継全体を進められる
TORUTE株式会社では、従業員承継・第三者承継(M&A)のどちらの方法が自社に合うかの整理から、専門家との連携・契約締結までをまとめて対応可能です。
初回のご相談は無料となりますので、「まず話だけでも聞いてほしい」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。
事業承継をスムーズに進めるための「事業承継に役立つ無料マニュアル【完全版】」も、無料でプレゼントさせていただいています。
\事業承継、何から始めるか迷ったら/
まとめ
事業承継は他人にもでき、従業員承継・第三者承継(M&A)・外部人材の招致など、状況に合わせた方法を選ぶことが可能です。
他人への承継には、後継者がいなくても会社を残せる・従業員の雇用を守れるといったメリットがある一方、理念や社風の変化・後継者探しに時間がかかるといった注意点もあります。
資金面にご不安がある場合は、公的な補助金や融資制度を活用できる場合もあるため、おひとりで抱え込まず、まずは専門家に相談することから始めてみてください。
「廃業ではなく、次につなげる」という選択が、長年一緒に働いてきた従業員や取引先を守ることにもつながります。
慌てる必要はありませんが、まずはできることから一歩ずつ進めていきましょう。
まずはお気軽にご連絡ください
受付時間/AM8:30~PM5:30(土日・祝休)
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