建設業での事業承継の注意点は?許可の引き継ぎと認可手続き・必要書類、契約や社会保険の確認点・失敗例も弁護士が解説!
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法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援
建設業での事業承継は、一般的な事業承継よりも確認しておきたいことが多くあります。
特に建設業許可や人員体制は、会社を続けていくうえで大切な部分になるため、早めに整理しておくことが欠かせません。
もし十分に確認しないまま進めてしまうと、許可の更新や取引先との関係に思わぬ影響が出ることもあるからです。
ですが実際には、「何から手をつければよいのか」「申請や書類はどこまで準備すればよいのか」と迷われる経営者の方は少なくありません。
そこで本記事では、建設業での事業承継の注意点や必要な申請手続きと必要書類、気を付けたい失敗例をご紹介します。
長く会社を守ってこられたからこそ、不安を感じる場面もあると思いますので、ぜひ参考にしてください。
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建設業界の事業承継の現状は?
建設業界では、経営者の高齢化が進むなかで、「そろそろ次のことも考えなければ」と感じながらも、具体的な事業承継の準備までは進められていない会社が少なくないのが現状です。
後継者が決まっていないまま時間が過ぎると、将来への不安が少しずつ大きくなることもあります。
建設業は、建設業許可や資格者の配置に加え、取引先や地域との信頼関係も仕事に直結することから、単に代表者を交代するだけでは十分とは言えません。
そのため、現場が止まらず、これまで築いてきた信用をそのまま引き継げる形を考えておくことが大切です。
中小企業庁の「2025年版 中小企業白書」では、中小企業の後継者不在率が「2024年時点で52.7%」とされており、今もなお半数を超える企業で後継者が決まっていない状況が続いています。

黒字経営であっても、後を任せる相手が見つからず、事業の継続に悩むケースは珍しくありません。
さらに建設業は、技術者や資格者の確保が経営に直結する業種です。
帝国データバンクが公表している「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」では、建設業の後継者不在率が57.3%と、全業種のなかでも高い水準にあると示されています。
そのため、後継者だけでなく、許可を支える人の体制まで見ながら進める必要があると言えるでしょう。
事業承継で中小企業が抱える課題や解決策については、以下の記事で解説していますので、参考にしてください。
関連記事:事業承継の中小企業の課題は?進まない理由や具体例・経営者が取るべき解決策も紹介!
建設業での事業承継の注意点
建設業の事業承継では、後継者を決めるだけでなく、会社をこれまでどおり動かし続けられる状態を整えておくことが大切です。
建設業は、建設業許可・資格者の体制・取引先との信頼関係などが日々の受注や工事に直結するため、確認しておきたい点が多くあります。
ここでは、建設業での事業承継の注意点として、次の内容をご紹介します。
- 建設業許可の引き継ぎが必要
- 経営業務管理責任者と専任技術者の体制づくり
- 許可更新と届出の管理
- 経営事項審査・入札参加資格への対応
- 取引先への伝え方
- 工事・借入・保証の整理
- 株式・税金への備え
どれかひとつだけ整えればよいわけではなく、それぞれがつながっているため、全体を見ながら順番に確認していくことが将来の安心につながります。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
建設業許可の引き継ぎが必要
建設業では、会社を引き継いでも建設業許可がそのまま自動で続くとは限りません。
例えば後継者へ経営を任せても、承継の方法によっては行政への申請が必要になり、場合によっては新たに許可を取り直す必要が生じる事態も考えられます。
特に事業譲渡や、個人事業を法人に切り替える場合は、許可を引き継ぐための確認が必要になることがあるでしょう。
許可が切れてしまうと、その間は契約や受注に影響しかねませんので、なるべく早めの段階で一度確認しておくのがおすすめです。
経営業務管理責任者と専任技術者の体制づくり
建設業を続けるには、後継者を決めるだけでなく、許可に必要な人の体制もあわせて整えておくことが大切になります。
その中心になるのが、「経営業務管理責任者」として経営を支える体制と、工事の技術面を担う「専任技術者」の配置です。
後継者が社内にいても、経営に関わる経験がまだ少なかったり、必要な資格を持つ技術者が不足していたりすると、承継の時期にあわせて準備が間に合わないことがあります。
2020年10月の建設業法改正以降は、経営業務管理責任者についてもひとりの経験だけで判断するのではなく、会社全体として経営を支える体制が整っているかが確認されるようになりました。
後継者には、早めのうちから仕事の範囲や立場を少しずつ広げておくと、無理なく引き継ぎやすくなるでしょう。
許可更新と届出の管理
建設業許可には更新期限があり、5年ごとに更新手続きが必要です。
また、社長や役員が変わったときには、変更届を出さなければならない場面もあります。
事業承継の準備とこれらの手続きが重なると、「どの書類を先に出すのか」がわかりにくくなることも考えられるでしょう。
特に役員変更や技術者変更が同時に起こると確認する項目も増えますので、少し早めに許可の更新時期や届出の期限を一覧にして管理することで、スムーズに進めやすくなります。
経営事項審査・入札参加資格への対応
公共工事を受けている会社では、建設業許可だけでなく、「経営事項審査」や「入札参加資格」の対応も必要になります。
社長が変わったり、技術者の体制が変わったりすると、これまでの評価や申請内容に影響することがあります。
特に自治体によって更新時期や必要書類が違うため、「許可があるから大丈夫」と思っていると、思わぬトラブルにつながるかもしれません。
承継後もこれまでどおり仕事を続けられるよう、経営事項審査や入札の予定も一緒に見直しておくと安心です。
取引先への伝え方
建設業では、いつ・どのように社長が変わるのか、取引先への伝え方によってそのあとの受け止められ方が変わることがあります。
特に、元請会社・金融機関・協力会社などは、「今までどおり仕事が進むか」を気にするため、急に交代だけを伝えると不安につながることも考えられます。
そのため、後継者が早い段階から打ち合わせや訪問に同席し、少しずつ顔を覚えてもらうようにすると安心してもらえるでしょう。
「これからこの人が中心になります」と自然に伝わる流れをつくっておくことで、承継後も信頼を保ちやすくなるはずです。
工事・借入・保証の整理
事業承継を進めるときは、今動いている工事や借入金の状況もあわせて整理しておく必要があります。
例えば、進めている工事の途中で社長が変わると、契約相手や現場の担当者が不安に感じるのは当然のことと言えます。
また、金融機関からの借入に経営者保証が付いている場合は、社長が交代しても前の経営者に保証が残ることもあるでしょう。
あとから「まだ自分の責任が残っていた」とならないよう、借入条件や保証の扱いは早めに確認し、金融機関とも少しずつ話を進めておくと安心です。
株式・税金への備え
法人の事業承継では、株式をどのように引き継ぐかによって、かかる税金や必要な準備が変わってきます。
例えば親族へ株式を渡す場合と、役員や従業員へ譲る場合では、手続きの進め方や負担の考え方が異なるのです。
特に長く経営を続けてきた会社では、自社株の評価が高くなりやすく、想定していたより税金の負担が大きくなることもあります。
そのため、後継者が決まった段階で株式の持ち方や承継方法を整理し、早めに税金への備えを始めておくのがおすすめです。
自社に合う進め方を見ながら準備していくと、あとから慌てることなく進めることができるでしょう。
建設業の事業承継を進める流れ

建設業の事業承継では確認することが多いため、しっかりと順番を意識しながら進めることが大切になります。
後継者の経験や資格だけでなく、工事の状況や金融機関との関係も見ながら進める必要があるため、数年かけて少しずつ準備する会社も少なくありません。
実際に、建設業の事業承継を進める流れは、以下のとおりです。
- 1.後継者の選定と育成
- 2.承継方法を決める
- 3.関係者へ段階的に共有する
- 4.実行時期を調整する
それぞれについて、具体的に解説していきます。
後継者の選定と育成
事業承継で、まず大切になるのが後継者の選定と育成です。
建設業では、後継者を決めたあとにすぐ社長を任せるのではなく、少しずつ経験を積めるようにしていくことが欠かせません。
例えば、営業の判断・資金繰り・従業員との関わり方まで、一度に担うのは難しいことがあります。
どれだけ現場経験が豊富でも、金融機関とのやり取りや原価の見方に慣れていないと、社長になったあと、判断に迷いやすくなるでしょう。
建設業許可に必要な経験年数が関わることもありますので、役職や担当を少しずつ広げながら準備しておくと安心です。
承継方法を決める
次に整理したいのが、どの形で会社を引き継ぐかという、承継方法を決めることです。
事業承継では、親族へ引き継ぐのか、社内の役員や従業員へ任せるのか、あるいは第三者へ譲るのかによって必要な準備が変わります。
親族へ承継する場合は株式や相続の整理が必要になりやすく、従業員へ承継する場合は株式をどう持ってもらうかが課題になることがあるでしょう。
第三者へ譲る場合は、建設業許可や主要な技術者をどう維持するかも確認しておきたいところです。
会社が無理なく続く形を基準に考えると、整理しやすくなるはずです。
関係者へ段階的に共有する
承継の方向が見えてきたら、関係者へ段階的に共有することも大切になります。
一度に全員へ知らせるより、順番を考えながら少しずつ伝えた方が、混乱を防ぎやすくなるでしょう。
まずは役員や経理担当など、社内の中心となる人へ伝え、そのあとに金融機関・主要な取引先・協力会社へと広げていく流れが一般的です。
建設業では元請会社や発注者との信頼関係が受注に影響することがありますので、後継者が打ち合わせや訪問に同席しながら、少しずつ顔を覚えてもらうと自然につながりやすくなります。
実行時期を調整する
そして、事業承継を実行する時期の調整です。
同じ承継内容でも、進める時期によって負担の大きさが変わることがあります。
例えば、建設業許可の更新・決算・経営事項審査の申請・大きな工事の区切りなどが重なると、確認することが一気に増えてしまいます。
公共工事が多い会社では、年度の途中よりも経営事項審査の更新時期に合わせた方が進めやすいこともあるでしょう。
金融機関との借入更新とも重なる場合がありますので、会社の流れが落ち着く時期を見ながら進めていくと安心です。
以下の記事では、業種に関わらず一般的な事業承継の手順について解説しているので、こちらも参考にしてください。
関連記事:事業承継の手順は?引き継ぐ3つの要素や必要書類・受けられるサポートもまとめて紹介!
承継への準備や手順は、思ったよりも複雑で、数年かけておこなっていく必要があります。
もし迷うことがある場合は、おひとりで抱え込まず、ぜひ一度TORUTE株式会社にご相談ください。
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建設業の事業承継で必要な申請手続きは?
建設業の事業承継では、承継の方法によって行政へおこなう申請手続きの内容が変わります。
会社を引き継いだからといって、建設業許可がそのまま維持されるとは限らないため、早い段階で「どの手続きが必要になるのか」を整理しておくことが大切です。
ここでは、建設業の事業承継で必要な申請手続きとして、次の2つを解説します。
- 建設業許可の申請・認可手続き
- 変更届・更新申請の手続き
特に建設業は、社長交代の時期と許可の更新時期が重なることもあり、準備が遅れるとあとから対応に追われることも考えられるでしょう。
そのため、まずは全体の流れをつかみ、関係しそうな手続きを確認してみてください。
建設業許可の申請・認可手続き
事業譲渡や合併、会社分割で建設業を引き継ぐときには、建設業許可の申請・認可手続きを早めに確認しておくのがおすすめです。
2020年の建設業法改正で、事業承継にあわせて建設業許可を引き継げる認可制度が設けられ、一定の条件を満たせば許可番号を維持したまま承継できるようになりました。
ただし、この制度を使うには承継の前に認可を受けておく必要があります。
もし先に契約だけを進めてしまうと、許可を引き継げず、新たに許可を取り直さなければならないことも考えられます。
建設業許可が途切れると受注や契約に影響しやすいため、承継の日程を決める前に、行政窓口へ相談しながら進めておくと安心でしょう。
変更届・更新申請の手続き
変更届・更新申請の手続きは、社長交代のあとに見落としやすい部分だと言えます。
役員・経営業務管理責任者・専任技術者に変更がある場合は、その内容に応じた届出が必要になることがあります。
さらに、建設業許可は5年ごとに更新がありますので、承継の時期と重なってしまうと確認作業が増えてしまうことが考えられるでしょう。
提出期限が決まっているものもありますので、「承継後にまとめて対応する」と考えるより、更新時期も含めて早めに整理しておくのがおすすめです。
承継方法で申請内容は変わる?
結論からお話しすると、承継方法で申請内容は変わるため、最初にどの形で引き継ぐかを整理しておくことが大切になります。
例えば、株式譲渡は会社そのものが続くため法人格は変わらず、役員変更などの届出を中心に進めることが多く、比較的整理しやすい方法だと言えます。
一方で、事業譲渡の場合には会社とは別に事業だけを移す形になるため、原則として建設業許可もそのまま移るわけではなく、譲受側で新たに許可の確認が必要です。
ただし、2020年の建設業法改正で設けられた事業承継認可制度を利用し、事前に認可を受ければ、一定の条件のもとで許可を引き継げる場合があります。
また、個人事業を法人へ引き継ぐ場合も、法人は別の事業主体として扱われるため、法人側であらためて許可要件を満たしているか確認しなければなりません。
同じ「引き継ぐ」という流れでも行政上の扱いは大きく異なりますので、承継方法を先に整理しておくことで、そのあとの申請も進めやすくなるでしょう。
建設業の事業承継で必要な書類は?

建設業の事業承継では、承継の方法に応じて準備する書類が変わります。
会社の引き継ぎに関する書類だけでなく、建設業許可に関わる確認資料も必要になるため、早めに確認しておくことが大切です。
ここでは、建設業の事業承継で必要な書類を次の2つに分けて解説していきます。
- 譲渡方法ごとの必要書類
- 建設業許可に関する書類
たとえ手続きそのものは理解していても、必要な書類の整理が後回しになると、申請の直前で確認事項が増えやすくなるので、参考にしてください。
譲渡方法ごとの必要書類
譲渡方法ごとの必要書類は、引き継ぐ内容を明確にするために整えておきたいものです。
建設業の事業承継では、会社そのものを引き継ぐのか、事業だけを移すのかによって必要になる書類が変わります。
内容が曖昧なまま進むと、負債や進行中の工事の扱いで認識の違いが生じることも考えられるでしょう。
代表的な書類としては、次のようなものがあります。
- 株式譲渡契約書
- 事業譲渡契約書
- 株主総会議事録
- 取締役会議事録
条件は口頭だけで済ませず、書面に残しておくことで、あとからでも確認しやすくなるでしょう。
参考:中小企業庁|中小M&Aガイドライン(第3版)
参考:法務局|商業・法人登記の申請書様式
建設業許可に関する書類
建設業許可に関する書類は、許可を引き継ぐときや体制変更を届け出るときに必要になります。
建設業では、後継者が決まっていても、許可の要件を満たしていることを書類で確認できなければ手続きを進められません。
役員や技術者の体制が変わる場合も、その内容に応じた資料をそろえる必要があります。
次のようなものが、代表的な書類です。
- 誓約書
- 経営業務管理責任者を確認する資料
- 専任技術者の資格を示す資料
- 登記事項証明書
地域によっては追加で確認資料を求められることもありますので、早めに行政窓口へ確認しておくと進めやすくなるでしょう。
書類を作成する際の注意点
必要な書類が揃っていても、記載内容にずれがあると手続きが止まることがあります。
書類を作成する際の注意点として、契約内容や会社情報が実際の状況と合っているかを丁寧に確認しておくことが大切です。
建設業の事業承継では、契約書や申請書に書かれた内容が、そのまま承継後の判断基準になることがあります。
例えば、譲渡の範囲・負債の扱い・進行中の工事を誰が引き継ぐかが曖昧だと、あとから認識の違いが生じやすくなります。
また、建設業許可に関する書類は、役職名・就任日・資格情報などに少しでもずれがあると確認に時間がかかることもあるでしょう。
書類は急いで提出するよりも、会社の情報と内容がきちんと合っているかを丁寧に見直すことが大切だと言えます。
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建設業の事業承継における法人と個人の違い
建設業の事業承継では、法人か個人かによって引き継ぎの考え方が変わります。
特に違いが出やすいのは、建設業許可の扱い・契約の引き継ぎ方・税金の考え方・資産や負債をどこまで承継するかという点です。

法人の場合は、会社そのものが続いていく形になりやすいため、株式や役員体制をどう整えるかが中心になります。
一方、個人事業では事業主が変わると別の事業として扱われることがあり、契約や許可をあらためて確認しなければならないケースもあります。
同じ建設業でも進め方によって必要な対応が変わりますので、最初にしっかりと整理しておくのがおすすめです。
建設業許可は個人から法人へ引き継げる?
建設業許可は、個人事業として営んでいた建設業を法人へ引き継ぐ場合、そのまま使えるわけではありません。
個人と法人は別の事業として扱われるため、法人側であらためて建設業許可の要件を確認することになります。
例えば以下のような点を、法人として確認されます。
- 経営業務を管理する体制が整っているか
- 専任技術者を置けるか
- 必要な資金の条件を満たしているか
一定の条件を満たせば事業承継の制度を利用できる場合もありますが、確認が遅れると許可の手続きに時間がかかり、工事の受注に影響することも考えられます。
法人へ引き継ぐ方向が見えた段階で、早めに行政へ相談しておくと安心でしょう。
以下の記事では、業種を問わず個人から法人に事業承継する場合について深掘りしています。
関連記事:事業承継で個人から法人にすべき?それぞれの違いや検討したいケース・手続きの流れも解説!
建設業許可は法人から個人へ引き継げる?
先ほどとは逆に、法人で続けてきた建設業を個人へ引き継ぐ場合も、建設業許可がそのまま引き継げるわけではありません。
後継者が個人で事業を続けるときは、個人事業としてあらためて許可の要件を確認する必要があります。
特に気をつけたいのは、以下の点です。
- 工事契約の名義をどうするか
- 金融機関との契約をどう整理するか
- 元請会社へいつ説明するか
さらに、法人を整理する際には、決算や清算の手続きも伴います。
形としては引き継ぎでも、実際には確認することが多いため、その後の受注や資金管理も見ながら進め方を考えていくことが大切です。
建設業の事業承継で気を付けたい失敗例は?
建設業の事業承継では、どれだけ確認する点がわかっていても、進める順番を誤ることで思わぬ負担が生じることがあります。
建設業は、許可・人・取引先との信頼がそれぞれつながっているため、どれかひとつだけを先に進めてしまうと他の部分にも影響しやすい業種なのです。
ここでは、建設業の事業承継で気を付けたい失敗例として、次のようなケースをご紹介します。
- 社長交代だけ先に進めてしまう
- 許可要件が不足したまま承継する
- 引き継ぎ前に主要人材が離れる
- 取引先への共有が遅れる
それぞれ具体的に解説しますので、参考にしてください。
社長交代だけ先に進めてしまう
まず、社長交代だけ先に進めてしまうことで、形としては承継が進んでいても、実際の判断が前の経営者に残ったままになることがあります。
年齢や体調を考えて代表者変更を急ぐことはありますが、肩書きが変わっただけで現場の判断や対外的な対応までは、自然に引き継がれるわけではありません。
建設業では、元請担当者との関係・金融機関への説明・社内で誰が何を決めるかといった流れもあわせて引き継ぐことが重要です。
前の社長に都度確認しないと話が進まない状態が続いてしまうと、後継者の立場が育ちにくくなります。
承継前から少しずつ判断を任せ、周囲に後継者の存在を知ってもらう形が進めやすいでしょう。
許可要件が不足したまま承継する
後継者が決まっていても、許可要件が不足したまま承継すると、あとで建設業許可の維持に影響することがあります。
例えば、経営業務を担う経験が足りなかったり、専任技術者として必要な資格や実務経験が整理できていなかったりすると、更新や変更の場面で確認が必要になります。
「長く社内にいるから問題ないだろう」と考えていても、行政に示す資料が不足することも考えられるでしょう。
また、主要な技術者が退職予定なのに、後任が決まっていないケースも少なくありません。
承継直前に気付くようなことになれば、準備期間が短くなってしまうため、数年前から計画的に体制を見直しておくと安心です。
引き継ぎ前に主要人材が離れる
建設業では、資格を持つベテラン社員や現場責任者が会社を支えていることが多く、その人たちが将来に不安を感じると離職につながることがあります。
もし引き継ぎ前に主要人材が離れてしまった場合、承継後の体制づくりに大きく影響が出てしまうでしょう。
特に、1級施工管理技士や専任技術者の候補となる人が抜けると、現場だけでなく許可の維持にも影響しやすくなります。
承継準備を進めるときは、主要な人材には早めに方向性を伝え、「会社はこれからも続いていく」という安心感を持ってもらうことが大切です。
取引先への共有が遅れる
建設業は取引先との信頼が受注に直結するため、承継が決まっていても共有が遅れることで、「急に体制が変わった」という印象を与えてしまうことがあります。
特に、元請会社・協力会社・金融機関には、後継者の顔を早めに知ってもらうことが大切です。
承継が近付いてからまとめて説明するのではなく、打ち合わせや訪問に後継者が同席しながら少しずつ関係をつくっておく方が、その後の関係も自然につながりやすくなるでしょう。
事業承継のよくある失敗事例は、以下の記事でも細かく解説していますので、こちらも参考にしてください。
関連記事:事業承継のよくある失敗事例13選!トラブル理由や落とし穴を回避するためのポイントも解説!
承継の方法別に見る、建設業許可の扱いと手続きのタイミング
建設業の事業承継で最も注意したいのは、承継の方法によって許可の扱いが変わることです。方法を決める前に、手続きの違いを確認しておきましょう。
| 承継の方法 | 許可の扱い | 手続きの目安 |
|---|---|---|
| 株式譲渡(会社は変わらない) | 原則として許可は継続する | 役員や技術者が変わる場合は変更届。許可要件を満たすかの確認が必要 |
| 事業譲渡・合併・会社分割 | 事前の認可を受ければ、許可を引き継げる | 譲渡などの実行前に認可を申請する |
| 個人事業主の相続 | 認可を受ければ、相続人が許可を引き継げる | 被相続人の死亡後30日以内に申請する |
事前認可を受けないまま譲渡すると、許可が空白になるおそれがある
事業譲渡や合併などで、認可を受けないまま事業を移してしまうと、譲り受けた側は、改めて新規の許可を取る必要が出てきます。新規の許可が下りるまでの間は、一定の規模以上の工事を請け負えない期間が生じます。
手続きには時間がかかるため、承継のスケジュールを決めるときは、認可の申請と、実行日との前後関係を最初に確認してください。
進行中の工事は、発注者の承諾が必要になることがある
事業譲渡では、請負契約の相手方としての地位を、新しい事業者に移すことになります。契約上の地位の移転には、原則として発注者の承諾が必要です。承諾が得られなければ、工事は引き続き旧事業者が担うことになります。
契約書に、譲渡や承継を制限する条項が入っていることもあります。工事の契約書は、承継の初期の段階で、一覧にして確認しておきましょう。
完成済みの工事の責任は、承継後も続く
引き渡した後の工事に不具合が見つかった場合、請負人は契約不適合責任を負うことがあります。承継によって会社や事業の主体が変わっても、責任が消えるわけではありません。
誰がどこまで責任を引き継ぐのかを、契約書で決めておかないと、承継後に費用の負担を巡って争いになるおそれがあります。
別記事では「事業承継の株式譲渡の方法は?メリットや手続き方法・税金の特例制度についても解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
建設業ならではの契約・労務まわりで確認したいこと
許可の手続きに目が行きがちですが、承継の調査では、契約や労務の状況もあわせて確認されます。後から指摘されて慌てないよう、先に点検しておきましょう。
社会保険の加入状況は、許可の維持にも関わる
2020年10月の建設業法改正により、社会保険への加入が、許可を受けるための要件のひとつになりました。承継の際に、加入状況に問題が見つかると、許可の更新や、買い手の評価に影響することがあります。
従業員の加入漏れがないか、保険料の未納がないかを、承継の前に確認しておきましょう。
財産的基礎の要件を、承継後も満たせるか確認する
一般建設業の許可では、一定の財産的基礎があることが求められます。承継に伴う多額の退職金の支払いや借入金の返済で、純資産が減ると、更新のときに要件を満たせなくなるおそれがあります。
承継の資金計画を立てるときは、決算書の数字が許可の要件に与える影響も、あわせて確認してください。
技能者・従業員の処遇と、元請・下請との関係を整理する
建設業では、特定の職人や技術者に仕事が集中していることが多く、その人が辞めると事業が成り立たなくなります。承継の発表前に、主な従業員へ、処遇や役割について説明しておくことが大切です。
あわせて、元請や下請との取引条件も、書面で確認しておきましょう。支払い条件や契約の期間が曖昧だと、代表交代をきっかけに見直しを求められることがあります。
別記事では「事業譲渡で従業員はどうなる?同意書・有給休暇・勤続年数と法律上のルールを弁護士が解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
熊本・八代の建設業の事業承継で、早めに動いておきたいこと
熊本市や八代市の建設会社からご相談を受けるとき、許可や契約の確認が、承継の直前になって慌ただしくなる例が目立ちます。次の点は、早めに動いておくと安心です。
許可行政庁に、承継の方法を事前に相談する
建設業許可の窓口は、営業所の所在地によって、都道府県か国土交通省の地方整備局のいずれかです。承継の方法によって必要な手続きや書類が変わるため、方法を決める前に、窓口へ確認することをおすすめします。
窓口の運用や必要書類は、時期によって変わることがあります。最新の内容を、直接確認してください。
地元の元請・下請への伝え方を決めておく
地域の建設業では、元請や下請との信頼関係が、受注の土台になっています。代表交代を、どの順番で、誰が伝えるかを、事前に決めておきましょう。
最初に伝える相手は、取引額が大きい元請や、主要な協力会社が基本です。後継者が同行して挨拶することで、新しい体制への安心感を持ってもらいやすくなります。
- 事業承継の方法と、必要な認可や届出の有無
- 進行中の工事と、請負契約の承継に必要な承諾
- 社会保険の加入状況と、財産的基礎の見通し
別記事では「熊本県の事業承継をお考えの方!相談先や補助金・後継者探しと成功ステップまで解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
建設業の事業承継は「TORUTE株式会社」へご相談を

建設業の事業承継では、建設業許可だけでなく、人員体制・契約・税金・金融機関との調整まで、確認することが重なりやすくなります。
そのため、「何から整理すればよいのか」で立ち止まる経営者の方も少なくありません。
実際には、後継者の経験・社内の許可体制・借入の状況・株式の持ち方によって、進め方は会社ごとに変わります。
一般的な流れは参考になっても、自社にそのまま当てはまるとは限らない場面が出てくるのです。
TORUTE株式会社では、弁護士を中心に、必要に応じてほかの専門家とも連携しながら、建設業の事業承継を全体で整理することが可能です。
法律だけでなく、経営者の想いや会社のこれからを踏まえ、現実的な承継の形を一緒に考えていくことを大切にしています。
初回は無料で相談できますので、「まだ具体的には決まっていない」という段階でも、ぜひお問い合わせください。
早めに全体像を確認しておくことで、安心して承継の準備を進めていけるはずです。
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まとめ
建設業の事業承継では、「誰に任せるか」だけでなく、「任せたあとも会社が無理なく回るか」という視点で準備を進めることが欠かせません。
許可・資格・人との関係などはすぐに整うものではなく、少しずつ形をつくっていく必要があります。
後継者が決まっていても、実際に動き始めると想定していなかった確認事項が見えてくることも考えられます。
だからこそ、早い段階で全体を整理し、優先順位をつけながら進めることが大切です。
今ある会社の強みや信頼を次につなげるためにも、無理のない形で一歩ずつ準備を重ねていくのがよいと言えるでしょう。
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