事業承継士とは?資格の取得条件・費用・難易度と、依頼するときの選び方を熊本の弁護士が解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

「事業承継士という肩書きの人から営業を受けたが、どんな資格なのだろうか」「事業承継士に頼めば、承継の手続きをまとめて任せられるのだろうか」といった疑問をお持ちの経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

事業承継士は、事業承継に関する相談に乗る専門家として名前を聞く機会が増えている資格です。一方で、国家資格ではなく民間資格であるため、「何ができて、何ができないのか」が分かりにくいという声も少なくありません。

そこで本記事では、事業承継士の概要・取得条件・費用や難易度の目安から、他の資格との違い、依頼するときの注意点、熊本・八代で専門家を選ぶときの見極め方までを、弁護士の立場から解説していきます。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

事業承継士とは?資格の概要と位置づけ

事業承継士の役割と位置づけを示した図解

事業承継士とは、中小企業の円滑な事業承継を支援する専門家として、一般社団法人事業承継協会が認定している民間資格です。法務・税務・財務・M&Aなど、事業承継に関わる幅広い論点を理解したうえで、経営者の相談に乗ることが期待されています。

ただし、事業承継士という資格を持っているからといって、法律上の代理や税務申告などを行えるようになるわけではありません。まずは「何を目的とした、どのような位置づけの資格なのか」を押さえておくことが大切です。

事業承継士が目指す役割

事業承継は、後継者の選定、株式の移転、相続や贈与の税金、従業員や取引先への説明、金融機関との調整など、論点が多岐にわたります。事業承継士は、それらの全体像を見渡して「今、何から手を付けるべきか」を整理する、いわば窓口役としての役割が想定されています。

熊本市や八代市でご相談を受けていても、経営者の方が最初に抱えるのは「何を誰に相談すればよいのか分からない」という悩みです。入口の整理役がいること自体は、大きな意味があります。

認定しているのはどんな団体か

事業承継士は、一般社団法人事業承継協会が実施する講座の修了と認定試験への合格を経て認定されると案内されています。公的機関が定めた制度ではなく、民間団体が独自に運営する認定制度である点が、国家資格との大きな違いです。

認定の内容や費用、更新の条件などは、団体の運営方針によって見直されることがあります。最新の情報は、必ず協会の公式案内でご確認ください。

国家資格との違いはどこにあるか

弁護士・税理士・司法書士・行政書士などの国家資格は、法律によって業務の範囲が定められています。一方、事業承継士は民間資格であり、資格そのものに独占業務はありません。

このため、事業承継士は「国家資格を持つ専門家が、事業承継に特化した知識を上乗せしている」と捉えるのが実態に近いといえます。資格の名称よりも、その人がもともと持っている本業の資格や経験が何かを確認することが重要です。

事業承継士の取得条件・費用・難易度の目安

事業承継士を名乗る人にご依頼を検討するとき、あるいはご自身が取得を考えるときのために、取得の流れと費用感、難易度の目安を整理しておきます。数字は時期や団体の方針で変わるため、あくまで目安としてご覧ください。

項目目安(案内されている範囲)確認のポイント
受講できる人中小企業診断士・税理士・公認会計士・弁護士・司法書士など、一定の国家資格の保有者対象資格は変更される可能性があるため、協会の最新案内を確認
講座数日間の講座を受講し、出席率の基準を満たす日程・開催方法(会場かオンラインか)を確認
試験選択式・記述式の認定試験で、一定の点数以上で合格合格基準や再受験の扱いを確認
費用入会金・講座料・試験料などを合わせて数十万円規模とされる税込か税別か、更新時の費用が別にかかるかを確認
更新一定期間ごとに研修の受講などが求められる更新を怠った場合の扱いを確認

受講できるのは国家資格の保有者が中心

事業承継士の講座は、すでに士業などの国家資格を持っている方が対象とされていると案内されています。つまり、事業承継士は「まったくの未経験者がこの資格だけで専門家になる」ためのものではなく、既存の専門性に事業承継の知識を加える位置づけです。

逆にいえば、事業承継士の肩書きを名乗る人でも、その人の本業が弁護士なのか、税理士なのか、コンサルタントなのかによって、できることは大きく変わります。

講座と試験の流れ

一般的な流れは、講座の受講、認定試験の受験、合格後の登録という順序です。講座は数日間のコースとして案内されており、試験は選択式と記述式の組み合わせで、合格には一定の点数が求められるとされています。

試験の具体的な出題範囲や日程は年度によって異なる場合があります。詳細は、協会の公式情報で最新のものをご確認ください。

費用の目安と更新の負担

取得にかかる費用は、入会金・講座受講料・試験料を合わせて数十万円規模になると紹介されることが一般的です。さらに、認定後は定期的な研修の受講などが更新の条件とされており、継続的な負担もあります。

この費用負担は、結果として依頼者が支払う報酬に反映される可能性もあります。ただし、資格にかかった費用と、提供されるサービスの質は別問題ですので、報酬の内訳は個別にご確認ください。

難易度はどう考えるべきか

事業承継士は、受講対象が国家資格の保有者に限られていることもあり、「認定の意味合いが強い試験で、難易度は極端に高くない」と紹介されることがあります。ただし、難易度の感じ方は人によって異なりますので、断定はできません。

依頼する側としては、資格の難易度よりも、その専門家が実際に何件の承継案件に関わってきたか、どんな分野が得意かといった実務経験の方が、判断材料として重要です。

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事業承継士にできること・できないこと

事業承継士に依頼するかどうかを考えるうえで、最も大切なのが「何を任せられて、何は別の専門家が必要か」の線引きです。ここを誤ると、手続きの途中でやり直しが生じたり、思わぬ法令違反につながったりするおそれがあります。

事業承継士が得意とする相談・整理の場面

事業承継士が力を発揮しやすいのは、承継の全体像の整理や、課題の洗い出し、承継計画の骨子づくりといった場面です。親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)のどれが向いているかを一緒に検討したり、必要な専門家へつなぐ橋渡しをしたりする役割が期待されます。

熊本県南の中小企業では、後継者候補が県外に出ていて戻るかどうか決めかねているケースも珍しくありません。そうした「迷い」の段階で、選択肢を整理してもらえることには意味があります。

  • 承継の方法(親族内・従業員・第三者)の比較検討
  • 承継までのスケジュールや課題の整理
  • 税理士・弁護士・金融機関などの専門家への橋渡し
  • 自社の現状把握(経営状況・株主構成・後継者候補など)の支援

資格がなければ行えない業務がある

弁護士でない者が、報酬を得る目的で、法律事件に関する法律事務を取り扱うことは、弁護士法により原則として禁止されています。また、税務代理や税務書類の作成は、税理士法により税理士でなければ行えないのが原則です。

このため、事業承継士という資格だけでは、株主間の紛争の代理、契約書の作成・交渉、税務申告などを行うことはできません。これらは、それぞれの資格を持つ専門家の領域となります。個別の事情によって結論は異なりますので、迷われた場合は弁護士などにご確認ください。

契約や株式の手続きは誰が担当するか

事業承継では、株式譲渡契約書や遺言書、役員変更の登記、種類株式の設計など、法的な書面や手続きが必ず発生します。契約書の内容は、承継後のトラブルを防ぐうえで最も重要な部分の一つです。

依頼の最初の段階で、契約書は誰が作るのか、登記は誰が行うのか、税務の確認は誰が担当するのかを明確にしておくと安心です。窓口が事業承継士であっても、実際の書面づくりは弁護士や司法書士、税理士が担う形になることが一般的です。

別記事では「事業承継の専門家は誰に頼む?弁護士・税理士の役割分担と選び方」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継士と他の資格・専門家との違い

事業承継に関する肩書きや資格は、事業承継士のほかにも複数あります。名称が似ているため混同しやすいのですが、認定団体も位置づけも別物です。ここでは代表的なものとの違いを整理します。

資格・専門家位置づけ独占業務の有無主な得意分野
事業承継士民間資格(認定団体あり)なし承継の全体像の整理・相談
事業承継アドバイザー・プランナー等民間の認定資格(団体により内容が異なる)なし承継に関する基礎的な相談・課題整理
中小企業診断士国家資格(経営コンサルタント)なし(名称独占)経営分析・事業計画・補助金支援
税理士国家資格あり(税務代理・税務書類作成など)相続税・贈与税・事業承継税制
弁護士国家資格あり(法律事務全般の代理など)契約書・株式・相続・紛争対応
司法書士国家資格あり(登記の代理など)役員変更・株式関連の登記

事業承継アドバイザーや事業承継プランナーとの違い

事業承継に関する民間資格は、事業承継士のほかにも、事業承継アドバイザーや事業承継プランナーなど複数の名称が存在します。認定する団体や、求められる受講条件、取得できる範囲はそれぞれ異なります。

名称が似ていても内容は別ですので、肩書きだけで判断せず、「どの団体が認定した、どのような内容の資格か」を確認する習慣をつけておくと安心です。

中小企業診断士や税理士との違い

中小企業診断士は経営の分析や事業計画の策定、補助金の申請支援などを得意とする国家資格です。税理士は、税務の代理や書類作成を独占的に行える資格で、事業承継税制の手続きなどで中心的な役割を担います。

事業承継士の講座を受講できる方の多くは、こうした国家資格をすでにお持ちです。そのため、同じ専門家が「事業承継士」と「税理士」の両方の肩書きを持っているというケースもあります。

弁護士との違いと使い分け

弁護士は、法律事務全般を取り扱える国家資格で、契約書の作成や交渉、株式をめぐる紛争の予防・解決、相続を見据えた承継設計などを担います。事業承継では、後継者以外の相続人との関係や、遺留分への配慮など、法的な視点が欠かせません。

承継の入口で全体像を整理してもらう場面では事業承継士や他の専門家を使い、契約や紛争予防の場面では弁護士を使うといったように、場面ごとに使い分けるのが現実的です。

別記事では「事業承継での弁護士の役割は?依頼するメリットや費用・他の専門家との違い」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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事業承継士に依頼するメリットと注意点

事業承継士に依頼するメリットと注意点のイメージ画像

事業承継士に相談することには、一定のメリットがあります。一方で、資格の性質上の限界や、費用面での注意点も存在します。両方を理解したうえで、依頼するかどうかを判断することをおすすめします。

メリット:承継の全体像を整理しやすい

事業承継は、検討すべき論点が非常に多く、経営者の方お一人では優先順位を付けにくいものです。事業承継の知識を体系的に学んだ専門家が相談相手になることで、課題が整理され、次の一手が見えやすくなる場合があります。

また、必要に応じて税理士・弁護士・金融機関などへつないでもらえる点も、窓口役としての大きな利点です。

注意点:資格の肩書きだけで判断しない

事業承継士の資格は、国家資格のような独占業務や強い法的な裏付けを伴うものではありません。そのため、資格を持っていることと、実務経験が豊富であることは必ずしもイコールではありません。

「事業承継士なので安心」と考えて、契約書の内容や報酬の条件を十分に確認しないまま進めてしまうと、後から思わぬ負担が生じるおそれがあります。契約前に、報酬体系や業務範囲を書面で確認することが大切です。

注意点:報酬体系と業務範囲の確認

相談料、着手金、月額の顧問料、成功報酬など、報酬の仕組みは専門家によってさまざまです。M&Aの仲介を伴う場合は、成功報酬の計算方法や最低報酬額が設定されていることもあります。

「どこまでが報酬に含まれるのか」「契約書の作成や登記は別料金か」といった点を、見積もりの段階で明確にしておきましょう。曖昧なまま進めるのは避けるべきです。

  • 報酬の種類(相談料・着手金・月額・成功報酬)
  • 契約書の作成・登記・税務申告が報酬に含まれるか
  • 途中で解約する場合の精算方法
  • 秘密保持の取り決め(社内情報や株主情報の取り扱い)

熊本・八代で専門家を選ぶときの見極め方

専門家の選び方のイメージ画像

熊本市や八代市をはじめとする熊本県内の中小企業では、親族や従業員への承継を前提にしつつ、地域の取引先や金融機関との関係も大切にしながら進めるケースが多く見られます。そのため、地域の事情に通じた専門家を選ぶことも重要なポイントです。

実績と得意分野を具体的に聞く

専門家を選ぶときは、資格の名称よりも「これまでどのような承継案件に関わってきたか」を具体的に質問することをおすすめします。親族内承継が多いのか、M&Aが多いのか、建設業・小売業・農業といった業種に強いのかなど、得意分野は専門家ごとに異なります。

なお、守秘義務の関係上、具体的な会社名は答えられない場合もありますが、案件の類型や件数であれば説明してもらえることが多いはずです。

契約書や株式の手続きを誰が行うかを確認する

最初の面談で必ず確認したいのが、契約書の作成、株式譲渡の手続き、登記、税務申告を誰が担当するのかという点です。事業承継士自身が弁護士や税理士の資格を持っている場合はその範囲で対応できますが、そうでない場合は提携先の専門家が担当することになります。

提携先がある場合、その専門家の費用が別途かかるのか、誰が責任を持つのかも合わせて確認しておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。

公的機関も含めて複数の窓口を比べる

熊本県内には、公的な事業承継の相談窓口もあります。民間の専門家だけに頼るのではなく、公的機関の無料相談も併用しながら、複数の意見を聞いて比べることで、判断の精度が高まります。

また、承継の準備は長い時間がかかるため、1社だけに決め打ちせず、必要に応じて専門家を入れ替えたり追加したりできる柔軟さを持っておくことも大切です。

別記事では「熊本県の事業承継はどこに相談?補助金・支援制度と後継者探し・法律面の注意点」、「事業承継の相談先10選を紹介!相談費用は無料なのか・選び方のポイント」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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場面別に見る専門家の使い分けの考え方

事業承継は、準備から実行まで数年単位の時間がかかることも多く、段階によって必要な専門家が変わっていきます。ここでは、場面ごとの使い分けの考え方を整理します。あくまで一般的な目安であり、実際は会社の状況によって異なります。

検討の初期:全体像の整理と課題の洗い出し

検討を始めたばかりの段階では、「誰に承継するか」「いつまでに行うか」「会社の現状はどうか」を整理することが中心になります。この段階では、事業承継士や中小企業診断士、公的な相談窓口などが力になります。

同時に、株主構成や相続人の状況など、法的な論点の洗い出しも早めに行っておくと、後の手戻りを防げます。

設計の段階:株式・税金・資金の設計

承継の方法が固まってきたら、株式をどう移転するか、税金はいくらかかるか、後継者の資金はどう用意するかといった設計に入ります。ここでは税理士が中心となり、株式の評価や納税猶予の可否を検討します。

あわせて、後継者以外の相続人との関係を踏まえた遺言書や、種類株式の活用といった法的な設計は、弁護士の関与が有効です。

実行の段階:契約・登記・従業員や取引先への説明

実行段階では、株式譲渡契約や役員変更登記など、正確な書面と手続きが求められます。契約は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士というように、それぞれの専門家が分担して進めることになります。

従業員や取引先、金融機関への説明のタイミングと内容も重要です。説明の順序を誤ると、信頼関係に影響することもあるため、事前に専門家と段取りを確認しておきましょう。

別記事では「事業承継での税理士法人の役割は?費用の相場や相談先の選び方・弁護士との違い」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継士に関するよくある質問

事業承継士に頼まないと事業承継はできませんか?

いいえ、事業承継士への依頼は法律上の要件ではありません。事業承継は、税理士・弁護士・司法書士・公的な相談窓口などの支援を受けながら、経営者ご自身が進めることも可能です。

事業承継士は、あくまで選択肢の一つとして考えていただければ十分です。

事業承継士に依頼すれば、契約書や登記もまとめて任せられますか?

事業承継士の資格自体には、契約書の作成や登記の代理を行う権限はありません。これらは弁護士や司法書士など、それぞれの資格を持つ専門家の業務です。

事業承継士の方が弁護士などの資格も併せて持っている場合は、その範囲で対応できますが、個別の事情により異なりますので、依頼前に業務範囲をご確認ください。

資格を持つ専門家と持たない専門家では、どちらがよいですか?

資格の有無だけで優劣は決まりません。大切なのは、その専門家が事業承継の実務経験を十分に持ち、自社の状況に合った提案をしてくれるかどうかです。

複数の専門家と面談し、説明の分かりやすさや、報酬の透明性、相性なども含めて総合的に判断されることをおすすめします。

相談の費用はどのくらいかかりますか?

相談料は専門家や相談先によって大きく異なります。公的な相談窓口は無料で利用できるものが多い一方、民間の専門家は初回相談を無料とするところから、時間単位で費用がかかるところまでさまざまです。

費用の目安は、依頼前の見積もりの段階で必ず確認してください。

事業承継士は、事業承継の相談に乗る専門家として、承継の全体像を整理する役割が期待される民間資格です。ただし、国家資格のような独占業務はなく、契約書の作成や税務申告、登記などは弁護士・税理士・司法書士といった別の専門家が担う領域です。

依頼先を選ぶときは、資格の名称だけで判断せず、実務経験・得意分野・報酬体系・業務の範囲を具体的に確認しましょう。そのうえで、場面ごとに専門家を使い分けていくことが、承継を円滑に進めるポイントです。

熊本市・八代市を中心に事業承継のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。

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