家族経営協定は熊本の農家にも必要?農地や機械の名義・専従者給与と兄弟間のトラブルを防ぐ書き方を熊本の弁護士が解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

「息子が就農してもう10年になるけれど、給料の決め方も、いつ経営を渡すのかも、はっきり話したことがない」。熊本県内の農家の方から、こうしたお話をうかがうことがあります。

家族だけで営んでいる経営では、役割も報酬も「そのときの話し合い」で決まっていきます。うまく回っているうちは問題になりませんが、代替わりや相続の場面になって初めて、取り決めがないことの重さが出てきます。

その入口になるのが家族経営協定です。名前は聞いたことがあるけれど、何を書くものなのか、結ぶとどう変わるのかがよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では、家族経営協定の中身と、熊本の農家が実際に結ぶときの進め方、農地や農業機械の名義の整理、専従者給与の税務上の注意点、そして兄弟間のもめごとを防ぐために協定とあわせて整えておきたいことを、弁護士の視点から解説していきます。

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家族経営協定とは?熊本の農家で3,500戸以上が結んでいる書面

家族経営協定で決まること・決まらないことを3つに分けて示した図解

家族経営協定は、家族で営む農業経営の中で、誰がどの仕事を担い、収益をどう分け、いつ経営を次の世代に渡すのかといった取り決めを、家族の話し合いで決めて書面にしたものです。

農林水産省が普及を進めてきた取り組みで、協定書の様式は市町村や農業改良普及センターが用意しているものを使うのが一般的です。

協定に書く項目具体的に決めておく内容の例
協定の目的家族それぞれの役割を明確にし、働きやすい経営をつくること
経営の役割分担栽培・出荷・経理・資材調達・雇用の管理を誰が担うか
就業条件就業時間、休日の回数、繁忙期の取り扱い、有給に相当する休みの考え方
収益の分配各人の報酬額、支払日、支払方法(個人口座への振込など)
資産の使用農地・農業機械・ハウス・倉庫を誰の名義で持ち、誰が使うか
経営移譲移譲の時期の目安、移譲の方法、移譲後の先代の関わり方
協定の見直し毎年の見直しの時期、変更するときの手続き

家族の間の取り決めを「文書」にしたもの

家族経営協定でまず押さえておきたいのは、これが「国が決めた型にはめる手続き」ではなく、家族が自分たちで内容を決める取り決めだという点です。

国の通知では、協定に盛り込むことが適当と考えられる事項として、協定の目的、経営計画の策定、経営の役割分担、収益の分配、就業条件、将来の経営移譲などが示されているのが原則です。もっとも、それらをすべて書かなければならないという性質のものではありません。

逆に言えば、どこまで踏み込んで書くかで協定の実用性は大きく変わります。「仲良くやっていく」といった抽象的な文言だけで終わっている協定書も見かけますが、それでは後から確認する材料になりません。

熊本県は九州でもっとも締結戸数が多い

九州農政局が公表している調査では、九州管内の家族経営協定の締結農家数は令和6年3月31日時点で1万5,000戸台とされており、そのうち熊本県が3,500戸台でもっとも多いとされています。

熊本県は施設園芸、畜産、露地野菜、果樹と、家族労働が経営の中心になる分野が幅広く、協定が実務に合う土壌があるということでもあります。

一方で、同じ調査では締結戸数が前年より減っているとされています。経営主が亡くなられたり、離農や経営移譲があった際に、協定が更新されずにそのまま終わってしまう例があることがうかがえます。数字は年度によって変わりますので、最新の公表資料をご確認ください。

法律が義務づけた制度ではないが、効力は内容によって変わる

家族経営協定は、締結が法律で義務づけられているものではありません。結んでいないこと自体で不利益を受ける制度でもありません。

他方で、家族の間で交わした合意である以上、内容次第では民法上の契約としての意味を持ち得ます。報酬の額や支払い方法、資産の使用関係を具体的に定めていれば、後から「そんな約束はしていない」という主張を通しにくくなるのが実際です。

どこまで契約としての拘束力が認められるかは、書き方と運用の実態によって変わります。重要な資産の帰属にまで踏み込む場合は、協定書だけで済ませず、別の書面を整えるかどうかを含めて検討されることをおすすめします。

熊本の農家で家族経営協定が必要になる場面

当事務所でご相談をお受けしていると、家族経営協定が課題として浮かぶのは、たいてい次のような状況です。いずれも、揉めてから相談に来られるのではなく、先に整えておけば避けられたものが少なくありません。

後継者が就農して数年、報酬の決め方が定まっていない

息子さんや娘さんが就農したあと、生活費として毎月いくらか渡す形が続いているケースはよくあります。経営がうまく回っているうちは、それで不満も出ません。

問題になるのは、後継者が結婚して家計を独立させるときや、住宅ローンを組むときです。収入を証明する資料が出てこない、という形で表に出ます。

協定で報酬の額と支払い方法を決め、実際に口座へ振り込む形にしておけば、こうした場面で説明ができます。熊本市近郊の施設園芸では、後継者世代が通年で主力を担っていることも多く、報酬の整理は早いほうが望ましいといえます。

夫婦で経営しているのに、通帳も名義も経営主だけ

ご夫婦で長年経営されていても、農地の名義、機械の名義、取引の口座がすべてご主人名義というケースは珍しくありません。

この状態で経営主に相続が発生すると、奥様が「自分も経営を担ってきた」ことを示す資料が乏しく、相続の話し合いで不利に働くことがあります。

家族経営協定で役割分担と収益分配を書面にしておくことは、経営に参画してきた事実を残す意味も持ちます。あわせて、認定農業者の共同申請を検討する価値もあります。

兄弟のうち一人だけが農業を続けている

もっとも紛争になりやすいのが、兄弟のうち一人が実家に残って農業を続け、他の兄弟は県外で勤めているという形です。

残った方は「自分が農地を守ってきた」と考え、出られた方は「相続分は等しいはずだ」と考えます。どちらの言い分にも根拠があるため、話し合いが長期化しやすいところです。

家族経営協定だけでは相続の取り分は決まりませんが、誰がどれだけ経営に関わってきたかを示す資料にはなります。遺言書や生前贈与と組み合わせて考えるのが現実的です。

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家族経営協定を結ぶと受けられる支援と制度上の扱い

家族経営協定を結ぶと受けられる支援と制度上の扱いのイメージ画像

家族経営協定には、書面を整えること自体の効果のほかに、国の制度を使う前提として位置づけられている場面があります。要件は年度や制度の見直しで変わりますので、最新の案内でご確認ください。

制度家族経営協定の位置づけ確認先
認定農業者(農業経営改善計画)夫婦・親子での共同申請の前提とされる市町村の農政担当課
農業者年金の政策支援配偶者・後継者が対象となる要件のひとつとされる農業委員会・農業者年金基金
補助事業・制度資金要件そのものではないが、経営の実態を示す資料になる市町村・JA・金融機関
経営移譲・納税猶予移譲時期を定めておくことで準備の見通しが立つ税理士・弁護士

認定農業者の共同申請ができる

農業経営改善計画の認定(認定農業者)は、通常は経営主が一人で申請します。家族経営協定を結んでいる夫婦や親子は、共同で申請できる扱いとされているのが原則です。

共同申請では、申請者が同一の世帯に属していること、または過去に同一の世帯に属していたことなどの条件が示されているのが一般的です。細かい運用は市町村によって異なります。

共同申請にしておくと、後継者が「認定農業者」としての立場を早い段階で持つことになり、制度の利用や資金の相談で説明がしやすくなります。

農業者年金の保険料の国庫補助(政策支援)の対象になりうる

農業者年金には、一定の要件を満たす方に対して保険料の国庫助成(政策支援)が用意されています。認定農業者で青色申告をしている方、およびその方と家族経営協定を結んで経営に参画している配偶者・後継者などが対象として案内されています。

対象となる区分や年齢の要件、補助の額は制度の見直しで変わってきており、古い資料に載っている金額がそのまま当てはまるとはかぎりません。

また、国庫補助を受けた分を特例付加年金として受け取るには経営継承が必要とされています。経営移譲の時期を協定に書き込むことは、この点とも関わってきます。詳しくは農業者年金基金や市町村の農業委員会でご確認ください。

補助金や融資の場面で、経営の実態を説明しやすくなる

補助事業や制度資金の審査では、誰が経営判断をしているのか、後継者が経営にどこまで関わっているのかを問われることがあります。

家族経営協定があると、役割分担と報酬の事実関係を一枚で示せます。審査の通りやすさを保証するものではありませんが、説明の手間は確実に減ります。

経営の規模が大きくなってきた段階では、協定にとどめるか、法人化まで進むかという判断も出てきます。

別記事では「農業の法人化は事業承継に有利?農地所有適格法人の要件・親子間の進め方と納税猶予の注意点」、「熊本で農業の後継者を募集するには?第三者継承の流れ・農地法3条の許可と機械や施設の譲渡の注意点」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

協定に書いておきたい4つの事項

様式に沿って埋めるだけでも協定は成立しますが、後から役に立つかどうかは中身の具体性で決まります。特に次の4点は、曖昧なまま残さないことをおすすめします。

役割分担と就業条件を数字で書く

「協力して経営する」ではなく、栽培管理は誰、出荷と販売先の対応は誰、経理と資金の管理は誰、というところまで割り振ります。

就業条件では、就業時間と休日の回数を数字で入れておくのが実用的です。自治体の協定書の例では、休日を原則として月4回とし、農作業の状況を踏まえて協議により変更できるという形にしているものがあります。

畜産や施設園芸では毎日の管理が外せないため、休日の取り方を交代制でどう確保するかまで書いておくと、後継者世代が続けやすくなります。

収益の分配は「額」と「支払い方法」の両方を決める

収益の分配は、割合だけでなく、毎月いくらをいつ、どの口座へ支払うのかまで決めておくのが望ましいところです。

自治体が示している協定書の例でも、収益を毎月決まった日に各人の個人口座へ振り込むと定めているものがあります。現金の受け渡しで済ませていると、後から経緯をたどれません。

後述する青色事業専従者給与を使う場合は、届出した金額と実際の支払いが一致しているかどうかが重要になります。協定の報酬額と税務上の届出を別々に決めてしまわないようご注意ください。

農地・機械・施設を「誰の名義で、誰が使うか」

家族経営では、農地は親名義、トラクターは親名義、新しいハウスは子名義、といった具合に名義が入り混じっていることがよくあります。

協定では、どの資産を誰の名義で持ち、誰が使い、維持費や修繕費を誰が負担するのかを整理しておきます。これは次の代替わりのときに、そのまま引き継ぎの一覧表として使えます。

名義そのものを動かすかどうかは、税金と許可手続きが絡むため別に検討が必要です。協定で「使う権利」を整理するところと、名義変更をするところは切り分けて考えてください。

経営移譲の時期と方法の見通しを入れる

もっとも書きにくく、もっとも効果があるのが経営移譲の項目です。自治体の協定書の例では、経営権と経営用資産を全員の合意に基づいて後継者へ移譲すると定め、時期と方法は協議で決めるとしているものがあります。

「後継者が40歳になる頃を目安に」といった形でも構いません。期限が入ることで、毎年の見直しの場で進み具合を確認できるようになります。

移譲後に先代がどう関わるかも一行入れておくと、口を出しすぎる、逆に相談できないという双方の不満が出にくくなります。

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農地・農業機械・ハウスの名義をどう整理するか

協定で使用関係を整理したうえで、次に出てくるのが名義の問題です。ここは農地法と税金が関わるため、思いついた順に動かすと手戻りが生じます。

親名義の農地を子が耕作している状態のリスク

実際にはお子さんが何十年も耕作していても、登記名義が親のままという状態は多く見られます。この状態で相続が発生すると、農地は相続人全員の共有となるのが原則です。

共有になると、貸す、売る、担保に入れるといった判断に他の相続人の同意が必要になり、経営の身動きが取りにくくなります。

名義をいつ、どういう方法で動かすかは、贈与税・相続税の扱いと納税猶予の制度を見ながら決める必要があります。耕作の実績があることと、名義が整っていることは別の話だとお考えください。

農地の名義を動かすときは農業委員会の許可・届出が必要

農地を売買したり贈与したりする場合は、原則として農地法3条の許可が必要です。相続によって取得した場合は許可ではなく届出となるのが原則で、取得を知った時から一定期間内に農業委員会へ届け出る扱いとされています。

熊本市のように区ごとに窓口が分かれている市町村もあり、八代市、玉名市、菊池市などでは市の農業委員会事務局が窓口になります。登記そのものは法務局(熊本地方法務局とその支局)で行います。

許可や届出の要否、添付書類は農地の所在地によって運用に差がありますので、動かす前に所在地の農業委員会へ確認されることをおすすめします。

補助金で導入した機械・ハウスには処分の制限がある

補助事業で導入した農業機械やハウスには、一定期間、処分や目的外使用を制限する条件が付くのが通常です。名義を移すことがこの制限に触れる場合があります。

協定を作る段階で、どの資産が補助事業で入ったものかを一覧にしておくと、代替わりのときに確認漏れが起きません。

名義変更や譲渡を検討される際は、事前に補助事業の担当窓口へ相談してから進めるのが安全です。

別記事では「農業の事業承継の手続きの流れは?必要書類・費用と税金、親子間の名義・相続トラブルへの備え」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

専従者給与と税務上の注意点

家族経営協定で報酬を決めたら、税務上どう扱うのかもあわせて整理しておく必要があります。協定の報酬と確定申告の内容が食い違っていると、どちらの説明も弱くなります。

項目青色申告の場合白色申告の場合
家族への支払いの扱い青色事業専従者給与として必要経費に算入できるのが原則事業専従者控除として一定額を控除する扱いが原則
事前の手続き青色事業専従者給与に関する届出書の提出が前提届出は不要とされている
金額の決め方届出の範囲内で、労務の対価として相当な額法令で定められた上限の範囲内
協定との関係届出額と協定の報酬額をそろえておく協定の報酬額と控除額が食い違う点を説明できるようにしておく

青色事業専従者給与は事前の届出が前提

青色申告をしている個人事業の場合、生計を一にする親族へ支払う給与は、青色事業専従者給与に関する届出書を提出していることなどを前提に、必要経費に算入できるのが原則です。

届出した金額の範囲内であること、労務の対価として相当な額であること、専従していることといった要件が問われます。実際には働いていない家族へ名目だけで支払うことはできません。

届出の期限や記載方法は税務上の手続きになりますので、顧問の税理士や所轄の税務署でご確認ください。

白色申告の事業専従者控除との違い

白色申告の場合は、青色事業専従者給与のような形ではなく、事業専従者控除として一定額を控除する扱いになるのが原則です。

控除できる額には上限が設けられているため、実際に支払っている報酬が大きい場合は、青色申告への切り替えを検討する余地があります。

どちらが有利かは所得の規模と家族の人数で変わります。協定で報酬額を決める前に、税務上の扱いもあわせて検討するのが効率的です。

協定の報酬額と実際の支払いをそろえる

協定書に月額の報酬を書いたのに、実際には繁忙期だけまとめて渡していた、という状態は避けたいところです。

後継者が住宅ローンを申し込む場面、補助事業の審査、そして相続の話し合いのいずれでも、書面と実際の資金の流れが一致していることが前提になります。

毎年の見直しの際に、報酬額が実情に合っているかを確認し、変えるのであれば協定も税務上の届出も同時に直すという運用にしておくと安全です。

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兄弟間のもめごとを防ぐには、協定だけでは足りない

家族経営協定は、現に経営している家族の間の取り決めです。相続の場面で誰が何を取得するかを決めるものではありません。ここを誤解されているご相談が少なくありません。

協定では相続の取り分は決まらない

協定に「農地は後継者が引き継ぐ」と書いてあっても、それだけで相続の際に他の相続人の権利が消えるわけではありません。

協定は、経営に誰がどれだけ関わってきたかを示す資料としては有効です。寄与の事実を裏づける材料にはなりますが、取り分そのものを決める書面ではないとお考えください。

農地と自宅をまとめて後継者に渡したいのであれば、別に手当てが必要になります。

遺言書で農地と自宅の行き先を決めておく

もっとも確実な方法は、遺言書で農地・住居・農業用施設の行き先を指定しておくことです。公正証書遺言にしておけば、形式の不備で無効になる心配も小さくなります。

あわせて、農業を継がない兄弟に何を渡すのかも考えておきます。預貯金や生命保険で手当てできるのであれば、そちらを充てる形が現実的です。

協定を作る場面は、家族が全員そろって将来の話をする数少ない機会です。遺言書の必要性も、この場で切り出しておくと話が進みやすくなります。

遺留分と、農地を分けられないことの難しさ

遺言書があっても、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分が認められているのが原則です。農地と自宅が財産の大半という農家では、遺留分を金銭で支払う余力がないことが課題になります。

この場合、生前からの資金の準備、生命保険の活用、経営承継円滑化法に基づく民法特例の検討といった選択肢があります。どれを使えるかは家族の状況によって異なります。

熊本県内では、八代市や玉名市のような農地が広く分散している地域で、分けられない財産をどう調整するかが特に重たい論点になります。早い段階で方針を決めておくほど、取れる手が多く残ります。

別記事では「事業承継で親子が対立する理由は?起こりやすいトラブル・失敗例と、株式や役職をめぐる法律上の注意点」、「事業承継に遺言書は必要?自社株・遺留分の注意点や作成ステップ」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

熊本で家族経営協定を作るときの相談先と進め方

最後に、熊本県内で実際に協定を作るときの窓口と、現実的な進め方の目安を整理します。

市町村の農政担当課・農業委員会・農業改良普及センター

協定書の様式を受け取り、書き方の相談ができるのは、お住まいの市町村の農政担当課や農業委員会、県の農業普及・振興の窓口です。

熊本市では区ごとに農業担当の窓口があり、八代市、玉名市、菊池市、天草市などでは市の農業委員会事務局が窓口になります。地域の実情に合った記載例を持っていることが多く、最初の相談先として使いやすいところです。

認定農業者の共同申請や農業者年金の政策支援まで含めて相談したい場合は、あらかじめその意向を伝えておくと、一度の相談で必要な書類が揃います。

JAと熊本県の支援窓口

JAの営農指導の担当者は、同じ地域の他の農家の協定の運用を見ているため、現実に回る内容かどうかの感覚を持っています。

経営の規模拡大や法人化まで視野に入れる場合は、県の農業経営・就農支援の窓口や熊本県事業承継・引継ぎ支援センターもあわせて使えます。

どの窓口も無料で相談できる範囲が広いのが利点ですが、相続の取り分や遺留分といった法律上の調整までは踏み込めないのが実情です。

弁護士に相談したほうがよい場面

すでに兄弟の間で意見が割れている、親名義の農地が複数の相続人の共有になっている、過去の贈与の扱いでもめているといった場合は、協定書を作る前に法律上の整理が必要です。

また、協定とあわせて遺言書を作る、経営承継円滑化法の民法特例を検討する、農地以外の事業資産も含めて承継の設計をするといった場面では、弁護士が関わる意味があります。

当事務所では、農地と自宅が財産の大半を占めるご家庭の承継について、相続まで見通した形でご相談をお受けしています。

進め方の目安

実務的には、まず家族全員が集まって現状を出し合うところから始めます。誰がどの仕事をしているか、報酬はいくらか、資産の名義はどうなっているかを紙に書き出します。

次に、様式をもらって下書きをし、報酬と就業条件、経営移譲の時期を詰めます。この段階で税務上の扱いもあわせて確認しておくと、作り直しになりません。

最後に全員が署名して、関係機関へ必要な提出をします。そのうえで、毎年の決算が終わる時期に見直す日を決めてしまうのが、協定を生かすうえでいちばん効きます。

家族経営協定は、様式を埋めるだけなら半日で終わる書面です。しかし、報酬と就業条件、資産の名義、経営移譲の時期まで具体的に書き込めば、代替わりのときに家族が立ち止まらずに進むための土台になります。

一方で、協定だけでは相続の取り分は決まりません。農地と自宅が財産の大半を占める農家では、遺言書や生前の資金の準備とあわせて設計しておく必要があります。制度の要件や税務上の扱いは年度によって変わりますので、最新の案内でご確認ください。

熊本・八代・熊本県南の農家では、後継者が実質的に経営を担っているのに書面が何もない、という状態が今も多く残っています。思い当たることがありましたら、揉める前の段階でご相談ください。

当事務所では、熊本市・八代市を中心に事業承継のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。

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