事業承継とは?意味・3つの種類と進め方、読み方や「事業継承」との違いも熊本の弁護士が解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

「事業承継という言葉は聞くけれど、結局どういう意味なのだろう」「うちの会社は何から始めればよいのだろう」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

事業承継は、社長の椅子を譲るだけの話ではありません。経営、株式などの資産、取引先との信頼関係までを、次の担い手へ引き継ぐ一連の取り組みです。

そこで本記事では、事業承継の意味と3つの種類、進め方の流れ、読み方や「事業継承」との違い、熊本・八代の中小企業で気をつけたい点を、弁護士の視点から解説していきます。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

事業承継とは?意味を一言でいうと

事業承継とは何かを示す図解

事業承継とは、会社や事業を、現在の経営者から後継者へ引き継ぐことをいいます。引き継ぐ対象は、経営権だけではありません。自社株や事業用の資産、従業員との雇用関係、取引先や許認可など、事業を続けるために必要なものすべてが含まれます。

事業承継の読み方と基本的な意味

「事業承継」は「じぎょうしょうけい」と読みます。「承継」は、前の人の立場や仕事を受け継ぐという意味の言葉です。

法律の分野では、相続や合併など、権利や義務を引き継ぐ場面で「承継」という言葉がよく使われます。会社の経営を引き継ぐ場面でも、同じ考え方が当てはまります。

会社の経営者が交代する場面を指す言葉として、中小企業の分野では広く定着しています。単なる社長の交代と違い、株式や財産、保証債務まで含めて切り替える点が特徴です。

「事業承継」と「事業継承」の違いは?

検索すると「事業継承」と書かれた記事も見かけますが、一般に制度や公的な文書で使われるのは「事業承継」です。「継承」は、伝統や精神などを受け継ぐという意味合いで使われることが多い言葉です。

意味は近いため日常会話では混ざることもありますが、契約書や相談の場面では「承継」と書くのが無難です。

引き継ぐものは「経営」「資産」「知的資産」の3つ

図解のとおり、事業承継で引き継ぐものは、大きく経営、資産、知的資産の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

株式の名義変更のような目に見える手続きだけに目が向きがちですが、技術やノウハウ、顧客との関係といった目に見えにくい部分の引き継ぎが、承継後の経営を左右します。

たとえば、熊本の製造業では、特定の職人にしかできない加工技術が会社の強みになっていることがあります。こうした強みは書類に残りにくいため、後継者と一緒に仕事をする期間を設けて、少しずつ引き継ぐことが現実的です。

なぜ今、事業承継が注目されているのか

中小企業の経営者の高齢化が進み、後継者が決まっていない会社が少なくありません。事業承継は、いまや多くの経営者にとって避けて通れない課題になっています。

経営者の高齢化と後継者不在が背景にある

経営者が高齢になっても後継者が見つからず、黒字でも廃業を選ばざるを得ない会社があります。事業が続かなければ、従業員の雇用や地域の取引先にも影響が及びます。

こうした状況を受けて、国や自治体も支援制度や相談窓口を整えています。

後継者の不在は、会社の規模が小さいほど深刻になりやすい傾向があります。また、準備に着手する時期が遅れるほど、取れる選択肢は少なくなるのが一般的です。

熊本・八代でも事業承継の相談は増えている

熊本市や八代市でも、建設、運送、小売、農業など、地域に根ざした会社の事業承継の相談をお受けすることがあります。「子どもに継ぐ意思があるか確かめていない」「誰に相談すればよいか分からない」という段階の方も多くいらっしゃいます。

後継者の状況については、後継者不足の原因と解決策もあわせてご覧ください。

八代市や県南の地域では、先代の代から続く取引先との関係が会社の財産になっているケースが目立ちます。その関係を後継者へどう橋渡しするかが、相談の中心になることが多くあります。

別記事では「事業承継の後継者不足の原因は?担い手がいない理由と解決策」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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事業承継の3つの種類とそれぞれの特徴

事業承継の種類のイメージ画像

事業承継は、誰に引き継ぐかによって、親族内承継、従業員承継(社内承継)、第三者承継(M&A)の3つに分けられます。

種類引き継ぐ相手主なメリット主な注意点
親族内承継子ども・配偶者・兄弟など関係者の理解を得やすく、準備期間を長く取りやすい相続による株式の分散や、他の相続人との公平性
従業員承継役員・従業員事業や社風を理解した人に任せられる株式の買取資金と、経営者の個人保証の扱い
第三者承継(M&A)社外の企業・個人後継者がいなくても事業と雇用を残せる相手探しに時間がかかり、条件交渉と契約が重要

親族内承継の特徴

子どもなど親族へ引き継ぐ方法で、中小企業ではなお多い形です。周囲の理解が得られやすい反面、後継者以外の相続人への配慮が欠かせません。

自社株が相続で分散すると、経営の意思決定が難しくなるおそれがあります。遺言や生前贈与などを組み合わせた設計が必要です。

また、親族内承継では、後継者が会社の借入れの個人保証を引き継ぐかどうかも大きな論点です。事前に金融機関と相談しておくと、承継後の負担を見通しやすくなります。

従業員承継(社内承継)の特徴

役員や従業員に引き継ぐ方法です。現場を知る人が後継者になるため、取引先や従業員の安心感につながります。

一方で、後継者に株式を買い取る資金がないことが多く、金融機関からの借入れや経営者保証の扱いが課題になります。

従業員承継では、後継者本人が株式を買い取るのではなく、会社が自己株式を取得する方法など、複数の手法が考えられます。どの方法が適するかは、会社の財務状況により異なります。

第三者承継(M&A)の特徴

社外の会社や個人へ株式や事業を譲渡する方法です。後継者がいない会社でも、事業と従業員の雇用を残せる可能性があります。

譲渡の条件や契約書の内容次第で、売却後の社長の立場や従業員の処遇が変わるため、契約前の法律面の確認が重要です。

熊本・八代の会社でも、後継者不在を理由に第三者承継を選ぶ例は増えています。譲渡後の従業員の雇用条件や取引先との関係をどう守るかを、契約書で明確にしておくことが大切です。

事業承継の基本的な進め方と流れ

事業承継は、思い立ってすぐに完了するものではありません。一般に、数年単位の準備期間が必要になるとされています。

ステップ1:現状を把握して課題を洗い出す

まず、会社の財務状況、株主の構成、経営者個人の資産や保証債務、後継者候補の有無を整理します。何が引き継ぎの妨げになるかを最初に知っておくことが、後の手戻りを防ぎます。

この段階では、決算書だけでなく、株主名簿、定款、借入金の保証状況、事業用不動産の名義、主要な契約書の確認が必要です。見落としが多い項目として、役員個人から会社への貸付金や、会社が持つ個人名義の資産などがあります。

ステップ2:後継者と承継の方法を決める

親族、従業員、第三者のどれに引き継ぐかを検討し、本人の意思を確かめます。意思を確認しないまま話を進めると、直前になって断られることもあります。

迷う場合は、複数の選択肢を並行して検討する方法もあります。

後継者候補が決まったら、事業を引き継ぐ覚悟があるか、経営に必要な知識や資格を備えているかを、本人と一緒に確認します。一方的に決めず、対話を重ねることが、承継後のトラブルを防ぐ近道です。

ステップ3:承継計画を作り、株式や資産の移転を進める

いつ、誰に、何を引き継ぐかを承継計画にまとめ、株式の贈与・売買、役職の交代、取引先や金融機関への説明を段階的に進めます。

具体的なやるべきことは、事業承継でやるべきことの準備リストで詳しく整理しています。

計画には、数年先までのスケジュールと、誰が何をするかを書き込みます。取引先、金融機関、従業員への説明のタイミングも、あらかじめ決めておくと混乱を避けられます。

別記事では「事業承継でやるべきことは?準備リスト・手順・必要書類」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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事業承継で押さえたい税金・お金の話

事業承継では、株式の移転に伴う税金や、承継のための資金の問題が避けられません。制度や要件は改正されることがあるため、最新の情報を確認する必要があります。

自社株の評価と贈与税・相続税

株式を後継者へ移す方法には、贈与、相続、売買があり、それぞれ課される税金が異なります。自社株の評価額が高いほど、税負担も重くなるのが原則です。

株価の考え方については、事業承継の株価対策の記事が参考になります。

評価の方法は、会社の規模や資産の内容によって異なります。個別の事情により結論が変わるため、税理士など専門家による試算を、早めに受けておくことをおすすめします。

事業承継税制などの優遇制度

一定の要件を満たすと、贈与税や相続税の納税が猶予される事業承継税制があります。特例措置には期限があり、使えるかどうかは個別の事情により異なります。

利用を検討する場合は、期限と要件を税理士や弁護士に確認することをおすすめします。

専門家への報酬と補助金の確認

承継の準備には、税理士、弁護士、金融機関などへの費用もかかります。費用の目安は、事業承継の費用相場の記事で整理しています。

国や自治体の補助金が使える場合もあるため、公募要領の最新情報をご確認ください。

別記事では「事業承継の株価対策とは?自社株評価3方式・引き下げ策」、「事業承継の費用の相場は?税金・専門家報酬の目安」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

熊本・八代の中小企業が事業承継で気をつけること

熊本・八代の中小企業の事業承継のイメージ画像

地域に根ざした会社ほど、取引先や従業員との個人的な信頼関係が事業の土台になっています。この信頼をどう引き継ぐかが、熊本・八代の事業承継で特に問われます。

代表者の個人保証と不動産の名義

地域の中小企業では、経営者が会社の借入れに個人保証をしていたり、事業用の土地建物が社長個人名義だったりすることがよくあります。これらを整理せずに承継すると、後継者に思わぬ負担が残ります。

事業承継特別保証制度のような保証の負担を軽くする制度もあるため、金融機関と早めに話し合うことが大切です。

事業用の土地建物が個人名義の場合は、会社へ売却する、賃貸借契約を整えるなど、承継後も事業を続けられる形にしておく必要があります。

地域の相談窓口を使い分ける

熊本県内には、商工会議所や商工会、事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的な相談窓口があります。第三者承継を考える場合は、これらに加えて、契約や法律面を確認できる弁護士に相談する方法もあります。

県内の窓口や支援制度は、熊本県の事業承継の相談先の記事にまとめています。

窓口ごとに得意分野が異なるため、まず公的機関で全体像を把握し、法律面の個別の論点は弁護士に相談するという使い分けが、実務では多く見られます。

別記事では「熊本県の事業承継はどこに相談?補助金・支援制度と後継者探し」、「事業承継特別保証制度とは?メリット・デメリットや要件」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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事業承継で起こりやすいトラブルと法律面の備え

事業承継では、手続きの漏れや関係者の認識のずれから、紛争に発展することがあります。早い段階で法律面の準備をしておくことで、多くは避けられます。

親族間の対立と遺留分の問題

後継者に自社株を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害する場合があります。親が亡くなった後に、きょうだい間で争いになる例も珍しくありません。

遺言の作成や遺留分への配慮など、生前の対策が重要です。

熊本・八代の中小企業でも、後継者以外の子どもが「自分は何も受け取っていない」と不満を持つ例は少なくありません。生前に家族で話し合い、意思を書面に残しておくことが効果的です。

承継後の契約・債務をめぐるトラブル

第三者承継では、契約書で定めた表明保証や競業避止、債務の引き継ぎをめぐって、承継後に争いになることがあります。

失敗事例や承継後のトラブルについては、事業承継の失敗事例の記事も参考にしてください。

承継前に簿外債務や未払い残業代が見つかり、条件交渉がやり直しになる例もあります。承継前に自社の状況を点検しておくと、こうした事態を減らせます。

別記事では「事業承継の失敗事例13選!うまくいかない兆候・原因と回避策」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継を弁護士に相談するメリットと相談の目安

事業承継は、税務、法務、金融などの専門分野が重なり合います。どの専門家に何を頼むかを整理するだけでも、準備は進めやすくなります。

弁護士が関われる場面

弁護士は、株式の移転や遺言、遺留分対策、M&Aの契約書の作成・確認、親族間の調整などの法律面で関わります。

税理士との役割分担は、事業承継での弁護士の役割の記事で整理しています。

相談の段階では、完成した計画がなくても問題ありません。「何から手をつければよいか分からない」という状態でも、論点を整理するところから一緒に進められます。

いつ相談するのが良いか

「まだ早い」と感じる段階で相談する方が、選択肢は広がります。後継者が決まっていない、株式が分散している、保証債務が重いといった事情がある場合は、早めの相談がおすすめです。

別記事では「事業承継での弁護士の役割は?依頼するメリットや費用」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継とは、経営、資産、知的資産を次の担い手へ引き継ぐ取り組みであり、親族内承継・従業員承継・第三者承継のどれを選ぶかによって、準備すべき内容が変わります。

個別の事情により最適な方法は異なりますので、制度の要件や期限は最新の情報をご確認ください。

熊本市・八代市を中心に事業承継のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。

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