事業承継の費用は総額いくら?熊本の中小企業の内訳相場と税金・専門家報酬・登記費用を抑える方法を熊本の弁護士が解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

事業承継を考え始めたものの、「結局いくらかかるのか見当がつかない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

専門家に見積もりを取れば報酬の額はわかります。しかし実際に経営者の手元から出ていくお金は、専門家報酬だけではありません。税金、登記の実費、後継者が用意する株式の買取資金まで含めると、見積書に書かれていない部分のほうが大きくなることも珍しくありません。

そこで本記事では、事業承継の費用を「誰に何を払うのか」という視点で4つに分け、それぞれの内訳と目安、そして熊本市・八代市をはじめ熊本県内の中小企業が費用を抑えるために使える制度と依頼の順番を解説していきます。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

事業承継の費用は総額でいくら?まず内訳を4つに分けて考える

事業承継の費用を払う相手ごとに税金・登記・専門家報酬・後継者の資金の4つに分けて示した図解

事業承継の費用について調べると、「数十万円」と書かれている記事もあれば「数千万円」と書かれている記事もあります。

金額の幅がこれほど開くのは、何を「費用」に含めているかが記事ごとに違うためです。まずは出ていくお金を4つに分けて整理することから始めると、自社の総額が読めるようになります。

費用の種類誰に払うか金額が決まる要素
①税金国・都道府県・市町村自社株の評価額、不動産の評価額、承継の方法
②名義変更・登記の実費法務局・役所など不動産の数と評価額、登記の件数、許認可の種類
③専門家への報酬税理士・弁護士・司法書士・仲介会社依頼する業務の範囲、会社の規模、関係者の人数
④後継者が用意する資金先代経営者・他の株主・金融機関自社株の価格、株式の分散状況、退職金の額

「費用」は専門家に払う報酬だけではない

ご相談をお受けしていて多いのが、専門家報酬だけを比べて進めてしまい、後から税金や買取資金で資金が足りなくなるという流れです。

専門家報酬は交渉や見積もりの比較である程度調整できますが、税金と登記の実費は、承継の方法を決めた時点でほぼ自動的に決まってしまいます。そのため、先に税金と実費の見込みを立て、そのうえで専門家に何を頼むかを決める順番が合理的です。

払う相手で4つに分けると総額が読めるようになる

上の表のように、払う相手ごとに分けると、どこを削れてどこを削れないのかがはっきりします。

①の税金と②の実費は法令で計算方法が定まっているため、原則として値引きの対象にはなりません。一方で③の専門家報酬は依頼範囲の設計で変わり、④の後継者の資金は株式の評価時期や退職金の設計で変わってきます。

つまり、総額を抑えたいときに手を入れる余地があるのは、主に③と④、そして①のうち特例制度を使えるかどうかという部分だということになります。

承継の方法によって総額の出方が大きく変わる

事業承継は、親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)の3つに大きく分かれます。

親族内承継では、贈与税や相続税が総額の中心になりやすく、専門家報酬は比較的小さくなるのが一般的です。従業員承継では、後継者に株式の買取資金がないことが多く、④の資金調達が最大の論点になります。第三者承継では、仲介会社やファイナンシャルアドバイザーへの報酬とデューデリジェンス費用が加わるため、他の2つとは費用の構造そのものが異なります。

いずれの方法を選ぶかによって、同じ規模の会社でも総額は大きく変わります。金額を調べる前に、どの方法で進めるのかを先に決めておくことが大切です。

【内訳①】税金|事業承継で最も大きくなりやすい支出

4つの内訳のうち、金額が最も大きくなりやすいのが税金です。

とくに業績が安定していて自己資本が厚い会社では、自社株の評価額が経営者の想像を超えて高くなっていることがあります。熊本県内でも、決算書の数字から考えて数千万円単位の評価になる会社は少なくありません。

生前に株式を贈与する場合の贈与税

先代経営者が生きている間に後継者へ自社株を渡す場合、原則として贈与税の対象となります。

贈与税は受け取った側が納める税金で、暦年課税を選ぶ場合は年間110万円の基礎控除を超えた部分に課税されるのが原則です。累進構造になっているため、評価額の高い自社株を一度にまとめて贈与すると税率が高い区分に入りやすくなります。

一定の要件を満たせば相続時精算課税を選択することもできますが、選択後は暦年課税に戻せないのが原則であり、将来の相続までを見通した判断が必要になります。実際の税額や有利不利は個別の事情により異なりますので、税理士に試算を依頼することをおすすめします。

相続で引き継ぐ場合の相続税と納税資金

対策をせずに先代経営者が亡くなった場合、自社株は相続財産として相続税の対象になります。

ここで問題になりやすいのが、自社株は評価額が高くても売って現金に換えられないという点です。非上場株式には市場がないため、相続税の納税資金を別に用意しなければなりません。

相続税の申告と納付の期限は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。会社の資金から退職金や配当という形で資金を出す方法も考えられますが、会社法上の制限や税務上の扱いがあるため、事前の設計が重要になります。

株式を売って引き継ぐ場合の譲渡所得税・住民税

後継者が先代経営者から自社株を買い取る形で引き継ぐ場合、売った側に譲渡所得が生じ、所得税と住民税の対象になるのが原則です。

上場株式以外の株式の譲渡所得は、原則として申告分離課税となり、他の所得と合算されない扱いになります。税率は所得税と住民税を合わせて20パーセント台となるのが原則ですが、取得費の確認や特例の適用によって結果が変わることがあります。

第三者承継(M&A)で株式譲渡の方法を選ぶ場合も、この譲渡所得の扱いが手元に残る金額を左右します。手続きの流れとあわせて確認しておくとよいでしょう。

  • 贈与|受け取る後継者が贈与税を負担するのが原則
  • 相続|相続人が相続税を負担し、納税資金を別に用意する必要がある
  • 売買|売る先代経営者が譲渡所得税・住民税を負担するのが原則

事業承継税制(納税猶予)を使う場合の考え方

一定の要件を満たす場合、自社株にかかる贈与税・相続税の納付を猶予する制度を利用できることがあります。これが事業承継税制と呼ばれる制度です。

負担が大きく軽くなる可能性がある一方で、特例の適用には都道府県知事の認定や計画の提出といった手続きが必要で、適用後も継続して要件を満たしているかの報告が求められるのが原則です。要件を外れると猶予されていた税額を納めることになる場合があります。

期限が設けられている部分もあり、制度の内容は改正によって変わります。利用を検討される場合は、最新の要件を所管の窓口や税理士にご確認ください。

別記事では「事業承継の株式譲渡の方法は?メリットや手続き方法・税金の特例制度についても解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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【内訳②】名義変更と登記にかかる実費はいくらか

税金に比べると金額は小さいものの、必ず発生するのが名義変更と登記の実費です。

とくに不動産を会社や個人で保有している場合、この部分が数十万円規模になることもあります。熊本県内では、本社の土地建物のほかに倉庫・工場・駐車場・農地を保有しているケースも多く、件数が増えるほど実費も積み上がります。

手続きかかる費用の種類負担の考え方
不動産の名義変更(相続・贈与・売買)登録免許税、不動産取得税不動産の評価額に一定の税率を掛けて計算するのが原則
役員変更の登記登録免許税資本金の額の区分によって金額が決まるのが原則
商号・本店・目的の変更登記登録免許税変更する内容ごとに定額で決まっているのが原則
戸籍・登記事項証明書などの取得各役所の手数料枚数に応じた実費。相続では通数が多くなりやすい
許認可の承継・新規取得各手続きの手数料業種ごとに手続きの種類と金額が異なる

不動産を引き継ぐときの登録免許税と不動産取得税

不動産の名義を変えるには、法務局で登記の手続きをし、登録免許税を納めるのが原則です。税率は、相続による移転と、贈与や売買による移転とで異なる扱いになっています。

さらに、贈与や売買で不動産を取得した場合には、都道府県が課す不動産取得税の対象となるのが原則です。相続による取得は不動産取得税の対象外とされていますので、どの方法で引き継ぐかによって実費が変わります。

軽減措置が設けられている場合もあり、適用の有無は物件の用途や時期によって異なります。熊本県内の不動産については、熊本県の県税事務所や熊本地方法務局の窓口で確認できます。

役員変更や商号変更などの会社の登記にかかる費用

代表者が交代すると、役員変更の登記が必要になります。この登記にかかる登録免許税は、資本金の額の区分によって定額で決まっているのが原則です。

商号や本店所在地、事業目的を同時に変更する場合は、それぞれについて登録免許税がかかります。一度にまとめて申請することで、司法書士へ支払う報酬を抑えられる場合があります。

熊本県内の会社の登記は、熊本地方法務局とその支局・出張所が管轄します。八代市に本店がある会社であれば八代支局が窓口となるため、どこへ申請するかを事前に確認しておくと手戻りを防げます。

許認可や農地の承継手続きにかかる費用と注意点

建設業、運送業、産業廃棄物処理業、飲食業、介護事業など、許認可を受けて営んでいる事業では、承継の方法によって許認可を引き継げるかどうかが変わります。

株式譲渡で会社をそのまま引き継ぐ場合は、会社の許認可はそのまま残るのが原則です。これに対して事業譲渡の形を取る場合は、許認可を新たに取り直す必要が生じることがあり、手数料と準備期間が追加で発生します。

農地を含む場合はさらに注意が必要です。農地の権利移動には農業委員会の許可が必要となるのが原則で、相続の場合も届出が求められます。熊本県は農業の比重が大きい地域であり、八代市や県南の事業者では、この農地の扱いが承継全体の進み方を左右することがあります。

【内訳③】専門家への報酬|誰に何を頼むといくらになるか

事業承継で専門家に支払う報酬のイメージ画像

3つ目が専門家への報酬です。ここは依頼する業務の範囲によって金額が変わるため、総額を抑える余地が最もある部分でもあります。

注意したいのは、「事業承継を頼む」という言い方では見積もりが比べられないという点です。税務の試算だけなのか、株主間の調整まで含むのか、契約書の作成と登記まで含むのかによって、同じ言葉でも中身がまったく違ってきます。

専門家主に担う範囲依頼を検討する場面
税理士自社株の評価、税額の試算、申告、納税猶予の手続き総額の見込みを立てたいとき、税負担を比較したいとき
弁護士株主間の調整、契約書の作成と交渉、遺留分・保証の整理株式が分散しているとき、親族間で意見が割れているとき
司法書士不動産の名義変更、役員変更などの商業登記不動産や登記の変更が発生するとき
M&A仲介・FA相手探し、条件交渉の仲介、手続きの進行管理第三者へ引き継ぐとき
公的窓口一次相談、進め方の整理、支援機関への引き継ぎ何から始めるか決まっていないとき

税理士に頼む範囲と報酬の考え方

事業承継で最初に必要になるのは、自社株がいくらと評価されるのかという数字です。これがわからないと、税金も買取資金も見積もれません。

顧問税理士がいる場合でも、自社株の評価と事業承継の設計は通常の顧問業務とは別の作業として扱われることが多く、別途の報酬が設定されるのが一般的です。

依頼の範囲が「評価と試算まで」なのか「申告と納税猶予の手続きまで」なのかで金額は変わります。報酬の相場や高くなりやすいケースについては、下記の記事で詳しく整理しています。

弁護士に頼む範囲と報酬の考え方

弁護士に依頼する場面は、株式が複数の親族に分散している場合、後継者以外の相続人との間で遺留分が問題になりそうな場合、経営者保証や個人資産と会社資産が混ざっている場合などです。

これらは税務の計算では解決しません。株主名簿が実態と合っていない、過去に名義を借りたままになっている、株主の一部と連絡が取れないといった状態では、税金の話に進む前に権利関係を整える作業が必要になります。

報酬は、相談のみ、書面の作成、交渉や調停の代理といった関与の深さによって変わるのが一般的です。紛争になってから依頼するより、予防の段階で関与する方が結果として総額を抑えられる場面が多いと感じています。

司法書士・行政書士に頼む範囲

不動産の名義変更や役員変更の登記は、司法書士に依頼するのが一般的です。報酬は登記の件数と不動産の数によって変わります。

許認可の承継や新規取得の申請書類については、行政書士に依頼する選択肢もあります。業種によって必要な書類の量が大きく違うため、まず自社の許認可がどの扱いになるかを確認してから見積もりを取るとよいでしょう。

見積もりを比べるときに揃えておくべき前提

相見積もりを取ること自体は有効ですが、前提が揃っていない見積もりを並べても比較になりません。

最低限、次の点を同じ条件にしてから依頼することをおすすめします。安く見える見積もりが、実際には必要な作業を含んでいないというケースは珍しくありません。

  • どこまでの作業が含まれ、どこからが追加料金になるのか
  • 自社株の評価を含むのか、評価は別途なのか
  • 登記や申告の実費が報酬に含まれているのか別払いなのか
  • 他の専門家との連携が必要になった場合の費用の扱い
  • 想定より期間が延びた場合に追加の報酬が発生するのか

別記事では「事業承継での税理士の費用相場は?高くなるケース・丸投げの金額と資金計画・弁護士との使い分けも解説!」、「事業承継の株価対策とは?自社株評価3方式・引き下げ策と退職金・遺留分の注意点を弁護士が解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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【内訳④】後継者側が用意する資金と調達の方法

4つ目は、後継者が自社株や事業用資産を引き継ぐために用意する資金です。これは「費用」と呼ばれないことも多いのですが、実際に資金が動く金額としては最も大きくなる場合があります。

とくに従業員承継では、後継者に個人資産が十分にないことが通常です。この資金の目処が立たないまま話を進めてしまい、途中で止まってしまうご相談は少なくありません。

自社株の買取資金をどう用意するか

後継者が先代経営者や他の株主から自社株を買い取る場合、その代金を用意する必要があります。

方法としては、後継者個人が金融機関から借り入れる、持株会社を設立して借入れを行う、会社が自己株式として買い取るといった選択肢が考えられます。

ただし、会社が自己株式を取得する場合には、分配可能額の範囲内で行わなければならないなど会社法上の制限があり、手続きも定められています。資金の出どころを決める段階で、法律上の制限を確認しておくことが重要です。

役員退職金を支給する場合の資金と注意点

先代経営者の引退にあわせて役員退職金を支給する方法は、先代の手元資金を確保しつつ自社株の評価を下げる効果が期待できる場合があります。

一方で、支給の根拠となる定款や株主総会の決議、そして金額の妥当性が問われる場面があります。不相当に高額と判断された部分は税務上の扱いが変わる可能性があるため、支給額の設計には慎重さが求められます。

退職金の支給によって会社の資金が一時的に細くなることもあります。支給の時期と運転資金の見通しをあわせて確認しておく必要があるでしょう。

経営者保証の引き継ぎと借換えにかかる費用

中小企業では、会社の借入れに先代経営者が個人保証を付けていることが多くあります。代表者が交代しても、保証が自動的に外れるわけではないのが原則です。

後継者が新たに保証人となる場合、金融機関との交渉が必要になります。経営者保証に依存しない融資の考え方が広がっており、一定の条件を満たせば保証を求めない取扱いを受けられる場合もあります。

借換えを行う場合は、事務手数料や保証料が発生することがあります。熊本県内では地元の銀行・信用金庫・信用組合との付き合いが長い会社が多いため、承継の方針が固まった段階で早めに相談しておくと進みやすくなります。

第三者承継(M&A)で追加される費用の構造

親族や従業員に後継者がいない場合、第三者へ引き継ぐという選択肢があります。この場合は、これまで挙げた4つの内訳に加えて、相手探しと交渉にかかる費用が発生します。

この部分は料金体系が各社で異なり、同じ規模の取引でも支払う金額に差が出ます。契約前に体系を理解しておくことが欠かせません。

仲介会社の着手金・中間金・成功報酬

M&Aの仲介会社やファイナンシャルアドバイザーの報酬は、着手金、月額報酬、基本合意時の中間金、成約時の成功報酬といった項目に分かれているのが一般的です。

成功報酬は、取引金額に応じて料率が段階的に下がる方式が多く用いられています。ここで確認すべきなのは、料率を掛ける基準となる金額が何かという点です。株式の譲渡代金を基準とするのか、負債を含めた金額を基準とするのかで、同じ料率でも報酬額が変わります。

最低報酬額が定められている場合もあり、小規模な取引では料率よりこの最低額が実際の負担を決めることになります。

デューデリジェンス(買収監査)にかかる費用

買い手は、契約の前に対象会社の財務・税務・法務の状況を調査します。この調査にかかる費用は、原則として買い手側が負担します。

売り手側で費用が生じるのは、調査に備えて資料を整えたり、指摘された問題点を事前に整理したりする場面です。株主名簿の不備、未払残業代、契約書の不備といった論点は、事前に整理しておくことで価格の引き下げ要因を減らせる場合があります。

結果として、売り手が事前の整理に費用をかけることが、手元に残る金額を増やすことにつながる場面があります。

公的窓口を使う場合の費用と民間との使い分け

国が各都道府県に設置している事業承継・引継ぎ支援センターは、相談を無料で受け付けています。熊本県の窓口は熊本商工会議所の中に置かれています。

中立の立場で進め方を整理してもらえるため、何から手を付けるか決まっていない段階の一次相談には適しています。一方で、案件の数や進む速さでは民間の仲介会社が勝る面があります。

費用を抑えたい場合は、まず公的窓口で方向性を整理し、必要になった段階で民間の支援機関に頼むという順番が現実的です。

別記事では「熊本県事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談はどこまで?後継者人材バンクの流れ・費用と弁護士に頼む場面を熊本の弁護士が解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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熊本の中小企業が費用を抑えるために使える制度と依頼の順番

ここまで内訳を見てきましたが、総額を抑えるために実際に取れる手立ては限られています。使える制度と、依頼の順番を整えることが現実的な方法です。

熊本市・八代市を中心にご相談をお受けしていて、費用面で結果が分かれるのは、制度を知っているかどうかよりも「どの順番で手を付けたか」である場面が多いと感じています。

一次相談は無料の公的窓口や商工団体から始める

進め方が決まっていない段階で民間の専門家に有償の相談を重ねると、同じ説明を何度も繰り返すことになり、費用の割に前に進みません。

熊本県事業承継・引継ぎ支援センター、各地の商工会議所・商工会、よろず支援拠点などは無料で相談を受け付けています。まずここで現状を整理し、自社に必要な作業を切り分けてから有償の依頼に進む方が効率的です。

ただし、無料の窓口では法律上の判断や代理交渉はできません。株式の分散や親族間の対立といった論点が見えた段階では、弁護士への相談に切り替える必要があります。

事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用の枠を検討する

国の事業承継・引継ぎ補助金には、承継に伴う専門家への費用や設備投資を対象とする枠が設けられています。要件を満たせば、専門家報酬の一部について補助を受けられる可能性があります。

注意したいのは、補助金は原則として交付決定の後に行った支出が対象となり、申請前に支払ったものは対象外とされることが多い点です。専門家に依頼する前に、補助金の対象となるかを確認する順番が重要になります。

公募の時期や要件は年度によって変わります。最新の公募要領をご確認のうえ、申請の可否を判断してください。

熊本県・市町村・商工団体の支援策もあわせて確認する

国の制度のほかに、熊本県や市町村が独自に設けている支援策、商工団体を通じた専門家派遣の制度もあります。

専門家派遣は、一定の回数まで費用の負担なく、または低い負担で専門家の助言を受けられる仕組みです。自社株の評価や契約書の確認といった限定された論点であれば、この枠で足りることもあります。

八代市や県南、天草地域の事業者では、専門家のもとへ通う移動の負担も実質的な費用になります。オンラインでの相談に対応しているかを事前に確認しておくとよいでしょう。

専門家に頼む順番を間違えないことが最大の節約になる

費用面で最も無駄が出やすいのは、順番を誤ったときです。

たとえば、株主名簿が実態と合っていない状態で自社株の評価や税額の試算を進めても、権利関係を整えた後に数字をやり直すことになります。先に権利関係を確定させ、そのうえで評価と税務の設計に進む方が、結果として費用は少なくなります。

承継の方向性を決める、権利関係を整える、評価と税額を試算する、契約書と登記を整える、という順序を意識して依頼先を選んでいただければと思います。

別記事では「【2026年最新版】事業承継に使える補助金は?対象経費・申請手順・親子間承継・リスキリング助成金との違いも解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

熊本市・八代市の相談現場で起きる費用のつまずきとよくある質問

最後に、熊本県内のご相談で実際に多い費用面のつまずきと、よくいただく質問をまとめます。

いずれも、早い段階で確認しておけば避けられるものです。

株価評価を後回しにして総額が読めないまま進む

自社株の評価額は、事業承継の費用のほぼすべてに影響します。税金の額も、後継者が用意する買取資金も、この数字から決まります。

それにもかかわらず、評価を後回しにしたまま「誰に継がせるか」だけを話し合っているケースがよくあります。評価額が想定の何倍かになっていて、方針そのものを見直すことになる例も見てきました。

まず自社株がいくらと評価されるのかを確認することを、最初の一歩としておすすめしています。

納税資金を考えずに贈与や相続を迎えてしまう

非上場株式は評価額が高くても現金化が難しいという性質があります。そのため、税額だけを計算して「払える」と判断すると、実際の納付の段階で資金が足りないという事態が起こります。

贈与の時期を分ける、退職金や配当で資金を確保する、納税猶予の制度を検討するなど、取れる方法は複数あります。ただしどれも事前の準備が前提です。

相続が起きてから対応を始めると、選べる手立てが大きく狭まります。

赤字や小規模な会社でも費用はかかりますか

業績が赤字であったり小規模であっても、名義変更や登記の実費、代表者交代の登記費用は発生します。これらは会社の規模にかかわらず必要な手続きです。

一方で、赤字が続いている会社では自社株の評価額が低くなる場合があり、税負担はむしろ小さくなることもあります。評価額が低い時期は、株式を移すタイミングとして検討に値する場面です。

総額が小さく収まる可能性もあるため、規模を理由に相談をためらう必要はないと考えています。

親子間の承継なら費用はかからないのではないですか

親子間であっても、株式や不動産を無償で渡せば贈与税の対象となるのが原則です。無償だから税金がかからないということではありません。

また、後継者以外に相続人がいる場合には、遺留分をめぐって将来争いになる可能性があります。この点を整理しておかないと、承継の後に紛争の費用が発生することになります。

親子間であるからこそ、書面を残さずに進めてしまい、後から覆されるという相談が実際に多くあります。身内の承継でも、必要な手続きと書面は整えておくことをおすすめします。

別記事では「熊本市で事業承継を進める手順は?自社株・不動産の名義変更と法務局・裁判所の管轄、地場産業ごとの注意点を熊本の弁護士が解説!」、「八代市の事業承継はどう進める?い草・農業・港湾関連の引き継ぎと八代支部での手続き・相談先を熊本の弁護士が解説!」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継の費用は、専門家に払う報酬だけを見ていると実態を見誤ります。税金、名義変更と登記の実費、専門家報酬、そして後継者が用意する資金の4つに分けて考えることで、自社の総額が初めて見通せるようになります。

このうち、税金と実費は承継の方法を決めた時点でほぼ決まってしまいます。だからこそ、方法を決める前に自社株の評価額を確認し、どの方法でいくらかかるのかを比べることが大切です。

そして費用を抑える最大の方法は、制度を探すことよりも依頼の順番を整えることだと考えています。権利関係を整えてから評価と税務に進むという順序を守るだけで、やり直しの費用を避けられます。

熊本市・八代市を中心に事業承継のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。

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