100万円以下でM&Aされるケースは?安くなる理由・業種と株式譲渡・事業譲渡の注意点を弁護士が解説!
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法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援
もし、会社の売却について相談をしたところ、「100万円以下になる可能性があります」と伝えられたとしたら、心が落ち着かなくなるものではないでしょうか。
「そんなに安いのか」「自分の会社にはもう価値がないのではないか」と考えてしまうのも無理はありません。
しかし、金額が小さくなるのには理由があります。
この記事では、100万円以下でM&Aされるケースや価格が安くなる理由、どんな業種で起こりやすいのか、そして後悔しないため注意点をわかりやすく解説します。
たとえ100万円以下であっても、従業員や取引先を守り、会社の名前を次につなげられる可能性は存在しますので、焦らずにひとつずつ確認してみてください。

100万円以下でM&Aされるケースとは
会社の売却額が100万円以下になると聞くと、どうしても金額の小ささに目が向いてしまうのではないかと考えます。
ただ、M&Aの価格は、単純な売上や利益だけで決まるものではありません。
将来の収益見込み・借入や保証の状況・引き継ぎにかかる負担なども含めて、総合的に会社の価値が判断され、その結果、金額が抑えられることがあります。
ここでは、100万円以下でM&Aされるケースとして、次の4つをご紹介します。
- 事業規模が小さい
- 赤字または債務超過がある
- 経営者個人に依存していて継続性が弱い
- 廃業回避目的である
思い当たる部分がないかを確認しながら読み進めてみてください。
事業規模が小さい
売上や利益などの事業規模が小さいと、買い手は「この会社を引き継いで、どれくらいで投資を回収できるだろうか」と考えます。
利益が少ないと回収までに時間がかかるため、どうしても慎重になりやすいのです。
例えば家族経営に近く、社長が現場に入らなければ回らない体制の場合、買い手は引き継いだあとに仕組みを整え直す必要が出てきます。
そのため、そのぶんの負担を見込み、売却額が抑えられることがあります。
ただし、規模が小さくても、固定客が多い・リピートが安定しているなどの強みがあれば評価は変わってくるでしょう。
赤字または債務超過がある
赤字が続いている場合や負債の総額が資産の総額を上回っている債務超過の状態にある場合、買い手が考えるのは、「引き継いだあとにどれだけ資金が必要になるか」ということです。
設備の更新が必要・在庫が多すぎる・固定費が重いといったことがあると、「立て直しに時間と費用がかかる」と判断されやすくなるため、売却額が小さくなることがあります。
ただし、赤字そのものが問題というよりも、「なぜ赤字なのか」が説明できないことのほうが不安につながります。
原因や改善策を整理しておけば、買い手も将来を見通しやすくなり、評価に繋がる可能性も出てきます。
経営者個人に依存していて継続性が弱い
社長の人脈や経験、技術に支えられている会社は少なくありません。
しかし、売上の多くが経営者個人に依存していて継続性が弱い場合、買い手は「社長が退いたあとも同じように続けられるのか」と心配します。
顧客対応や仕入れ、現場の段取りまでを社長おひとりで担っていることで、引き継ぎに時間がかかりそうに見られるでしょう。
とはいえ、業務の流れをまとめた資料がある・顧客情報が整理されている・従業員に役割が分かれているといった体制があれば、不安は和らぐはずです。
廃業回避目的である
体力や年齢のことを考え、「これ以上続けるのは難しい」と感じながらも、従業員や取引先に迷惑をかけたくないという想いから、廃業回避を目的としてM&Aを検討するケースがあります。
このような場合、売却額よりも「事業を引き継いでもらえるかどうか」が重視されやすくなることから、条件が低めにまとまることもあります。
後継者がいないまま廃業すると、雇用や取引関係が途切れる可能性があるため、会社を閉じる以外の選択肢としてM&Aが広がっています。
金額だけに目を向けるのではなく、「何を守りたいのか」を先に整理しておくことで、後悔の少ない判断につながると言えるでしょう。
M&Aで安くなる業種とその理由
M&Aで100万円以下になりやすい業種には、いくつかの共通点があります。
これは業種そのものが問題というわけではなく、先ほどご紹介した「100万円以下になりやすいケース」に加えて、会社の体制・利益の出方・数字の見せ方などが影響していると考えられます。
ここでは、M&Aで比較的安くなる以下の5つの業種とその理由について解説します。
- 地域密着型の小売・飲食業
- 個人の技術に支えられたサービス業
- 小規模な製造・技能業
- 個人講師・教室型の教育業
- オンライン事業
事前の準備によって条件が改善する可能性もありますので、ご自身の会社に当てはまる点がないかを確認しながら、読み進めてみてください。
地域密着型の小売・飲食業
地域密着型の小売業や飲食業がM&Aで安くなりやすい理由は、「立地」と「人」に売上が強く左右されるからだと考えます。
常連のお客様に支えられる強みがある一方で、店主の接客力や地域での評判が売上の中心になっている場合、買い手は「自分が引き継いでも同じ売上を保てるか」を慎重に確認します。
また、家賃や人件費などの固定費の負担が重く、利益率が高くない業態も少なくありません。
利益が薄いと、将来の収益見通しが厳しく映ることから、結果として評価が抑えられやすくなります。
つまり、地域密着型の小売・飲食業で価格が伸びにくい理由は、引き継ぎ後の安定性が見えにくい点が大きいでしょう。
個人の技術に支えられたサービス業
美容室・理容室・エステサロン・整体院・パーソナルジムなどは、「この人にお願いしたい」という信頼が売上の源になりやすい業種です。
そのため、担当者が変わることで顧客が離れるリスクがあると判断されると、評価は慎重になります。
買い手から見ると、技術そのものよりも「顧客が残るかどうか」が重要です。
売上が社長や特定のスタッフに集中している場合、引き継ぎ後の不確実性が大きいと見なされ、価格が抑えられることがあるでしょう。
ただし、施術内容の標準化・顧客情報の整理・スタッフの育成などが進んでいれば、再現性があると評価される可能性も出てくるはずです。
小規模な製造・技能業
町工場や設備工事などの小規模な製造・技能業が安くなりやすいのは、「その技術をきちんと引き継げるかどうか」と「仕事がこれからも続くかどうか」が重く見られるからです。
例えば、長年の経験や勘が社長ひとりに集中している場合、買い手は「自分や従業員で同じ仕事ができるだろうか」と不安になるのは当然でないかと考えます。
どれだけ技術がすばらしくても、引き継ぎが難しいと判断されると、評価は慎重になりがちです。
また、売上の多くを一社に頼っている場合、その取引が将来も続くかどうかが心配されます。
もしも契約がなくなれば、売上が大きく減る可能性があるからです。
一方で、図面や作業手順が整理されている・見積りの出し方が決まっている・従業員が一定の仕事を任されている、といった体制が整っていれば、買い手側の安心感は高まるのではないでしょうか。
個人講師・教室型の教育業
学習塾や習い事教室など、個人講師・教室型の教育業では、「先生が変わっても生徒が残るかどうか」が大きなポイントになります。
教室の価値は、講師の人柄や指導力に支えられていることが多く、「あの先生だから通っている」という生徒も少なくありません。
そのため、講師が交代すると生徒が減るのではないかと、買い手は慎重になります。
また少人数で運営している場合、集客や保護者対応までをひとりで担っていることも多く、引き継いだあとの負担が大きいと見られ、価格が抑えられることが考えられます。
そのため、カリキュラム・教材・授業の進め方などを整理し、他の講師でも授業が回せる体制があれば、条件は改善しやすくなるはずです。
オンライン事業
Webメディアや小規模なネットショップなどのオンライン事業では、「売上の再現性」が見えにくい場合があることが、安くなりやすい理由です。
例えば、検索順位・SNSの反応・広告の出し方によって売上が大きく変わる場合、買い手は「自分でも同じ結果を出せるのか」と考えます。
また、運営の方法が担当者の頭のなかにだけある状態だと、引き継ぎが難しいと判断されやすくなるでしょう。
収益が特定の広告会社やプラットフォームに強く依存している場合も、将来の変化が不安材料になります。
しかし、運営手順・広告設定・仕入れや発送の流れ・顧客対応の方法などが整理されていれば、引き継ぎはしやすくなります。
数字が大きくなくても、「同じやり方で続けられる」と示せることが評価につながるのです。
以下の記事では、M&Aにおける価格の決め方を解説しているので、こちらも参考にしてください。
関連記事:M&Aの価格の決め方は?算定方法と価格決定の流れ・相場目安や評価ポイントも解説!
100万円以下のM&Aと0円譲渡との違いは?
100万円以下のM&Aと0円譲渡は、どちらも金額が小さいという点では似ていますが、中身の考え方には違いがあります。
まず100万円以下のM&Aは、たとえ少額でも対価を支払うことで、「どこまでを引き継ぐのか」「誰がどの責任を負うのか」をきちんと整理して進める形です。
例えば、従業員は全員継続雇用とする・一定期間は売り手が引き継ぎを支援する、といった条件を話し合いながら決めていきます。

一方で0円譲渡は、「とにかく事業を止めずに引き継ぐこと」を優先する方法です。
借入や設備の更新負担などを買い手が引き受けることで、結果として無償になるケースが少なくありません。
それぞれには会社の状況に合わせ、向いているケースがありますので、解説していきます。
100万円以下のM&Aが向くケース
100万円以下のM&Aが向いているのは、「金額よりも引き継ぎの中身を大切にしたい」と考える場合です。
例えば、従業員の雇用をできるだけ守りたい・屋号を残したい・取引先にきちんと説明したうえで引き継ぎたい、といった想いがあるときです。
少額でも対価をともなう形にすると、契約内容や責任の範囲を丁寧に話し合いやすくなるため、引き継ぎ期間を設けて顧客や取引先にあいさつをする時間を確保することも可能になります。
条件をひとつずつ整えながら進めたい場合には、少額でもM&Aの枠組みを選ぶ意味が出てきますので、落ち着いて承継を進めたいときに検討しやすい方法と言えるでしょう。
0円譲渡が向くケース
0円譲渡が向いているのは、「とにかく廃業を避けたい」「引き継いでくれる人が見つかることを最優先にしたい」という状況の場合です。
赤字が続いている・借入や設備の負担が大きいといった場合には、買い手がそのリスクを引き受けることで無償になることがあります。
ただし、0円だからといって手続きが簡単になるわけではありません。
借入や保証の扱い・従業員の雇用条件・引き継ぎの範囲など、価格がつかないからこそ条件面の整理が重要になります。
また0円譲渡を個人間でおこなう場合、株式や事業の時価との差額について贈与税や所得税が課される可能性もありますので、専門家や公的な相談窓口に早めに相談し、冷静に状況を確認しておくと安心です。
M&Aの0円譲渡については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:M&Aの「0円譲渡」とは?条件やメリット・デメリットと考えられるリスクも徹底解説!
自社の状況を確認したい場合や、どんな承継方法を選んでいくべきかと不安に感じる場合は、ぜひ一度TORUTE株式会社にご相談ください。

100万円以下でも売却を選ぶメリット
実際に自分の会社の価格が100万円以下と聞くと、「そんなに安いのか」と気持ちが沈むのも当然のことと考えます。
しかし、事業承継は金額だけで判断できるものではありません。
長年ともに働いてきた従業員・支えてくれた取引先・地域で築いてきた信用など、守りたいものは数字に表れにくいからです。
たとえ100万円以下でも、売却を選ぶメリットには以下のようなものがあります。
- 従業員の雇用を守れる
- 会社の名前を残せる
- 引き継ぎをスムーズにできる
それぞれについて、具体的に解説します。
従業員の雇用を守れる
M&Aで会社が引き継がれれば、従業員の雇用を守れる、というメリットがあります。
廃業となれば同時に解雇や転職活動が始まり、生活への影響も小さくないため、長年一緒に働いてきた従業員の将来を思うと、心が重くなる方も多いでしょう。
もちろん、雇用条件は契約のなかで決まります。
ただし、「できる限り雇用を守りたい」という方針を最初に示しておけば、交渉の軸がぶれにくくなり、買い手にとっても経験ある人材が残ることは大きな強みになる場合もあります。
以下の記事では、事業譲渡で従業員はどうなるのかを解説しているので、こちらも参考にしてください。
関連記事:事業譲渡で従業員はどうなる?説明や通知のタイミング・退職金・必要書類についても徹底解説!
会社の名前を残せる
会社名や屋号は、単なる看板ではありません。
長年の商売のなかで積み重ねてきた信用そのものであり、「その名前だから頼んできた」という顧客もいらっしゃるはずです。
M&Aによって事業が続けば、会社の名前を残せる可能性があります。
特に地域密着の事業では、名前が変わるだけで不安が広がることがありますが、屋号がそのままであれば、取引先への説明も比較的スムーズに進みます。
屋号や商号の扱いは契約で定めることができますので、残したい想いがある場合は、早い段階で伝えておくのがよいでしょう。
引き継ぎをスムーズにできる
廃業は「終わらせる」作業が中心になりますが、M&Aは「次につなぐ」ための準備が中心になります。
一定の期間を設ければ、顧客や取引先へのあいさつ・業務の流れの共有・従業員の体制づくりなど、引き継ぎをスムーズに進められます。
社長が現場の中心になっている会社ほど、数ヵ月間サポート役として関わることで売上の急な落ち込みを防ぎやすくなるため、引き継ぎは時間をかけたほうが安心だと言えるでしょう。
混乱を抑えながら承継を終えられれば、「きちんと引き渡せた」という実感も得やすくなるはずです。
100万円以下で売却をおこなうデメリット

100万円以下で売却をおこなうことにメリットはありますが、現実的な課題など、デメリットがあることも知っておく必要があります。
金額が小さいからこそ、交渉の進め方や引き継ぎの条件に影響が出ることがあり、事前に理解しておかないと「思っていた形と違う」と感じてしまうかもしれません。
100万円以下で売却をおこなうデメリットには、次のようなものがあります。
- 売却額が小さくなる
- 買い手が限られる
- 引き継ぎが長期化しやすい
ただし、デメリットは避けられない壁というよりも、あらかじめ備えておくべきポイントと考えるのがよいでしょう。
事前に対策することで、リスクは小さくできますので、具体的に解説します。
売却額が小さくなる
100万円以下での売却では、当然ながら大きな資金は手元に残りません。
「会社を売って老後資金に充てたい」と考えていた場合、現実に戸惑うこともあるでしょう。
ただし、売却額が小さくなるからといって意味がないわけではありません。
廃業にかかる費用を抑えられる・従業員の雇用を守れる・取引先との関係を続けられるといった「お金以外の価値」が残ることもあります。
生活資金に不安がある場合は、退職金の受け取り方や資産の整理なども含め、全体で設計し直しておくと安心につながるはずです。
買い手が限られる
買い手にとって100万円以下の案件は、初期投資が小さいという点では魅力があります。
しかし、事業規模が小さかったり引き継ぎの負担が大きかったりすると、手を挙げる買い手が限られ、相手探しに時間がかかることも考えられます。
ただ、こういったときに焦ってしまうと、条件を十分に確認しないまま話を進めてしまう恐れがあるでしょう。
買い手が少ないからこそ、会社の状況や課題を整理し、丁寧に説明できる準備が重要になります。
強みや改善策を示せれば、候補の幅が広がる可能性もありますので、準備を怠らないことが大切です。
引き継ぎが長期化しやすい
少額のM&Aでは、買い手が「本当に回るのか」を慎重に見るため、引き継ぎ期間を長めに設定することがあります。
特に、社長が現場の中心となっている会社では、段階的な移行が必要になる場合が多いです。
引き継ぎが長期化すれば、時間的な拘束だけでなく精神的な緊張も続くことから、売り手側の負担も増えます。
そこで、引き継ぎの内容や期間、役割分担を契約で具体的に決めておくことが大切になるでしょう。
「どこまで関わるのか」を明確にしておけば、あとの行き違いやトラブルも防ぎやすくなります。
M&Aはこういった手続きや調整が重なるため、「難しいのではないか」と考える方も少なくありません。
実際にM&Aが難しいと言われる理由や整理すべきポイントを以下の記事にまとめているので、こちらもご覧ください。
関連記事:M&Aが難しいと言われる理由は?中小企業の失敗率やよくある事例・整理すべきポイントも解説!
M&Aの手数料は誰が払うの?
M&Aを進めるときに気になるのが、手数料の負担であり、誰が払うのかということではないでしょうか。
これについては、「必ずどちらが払う」と決まっているわけではありません。
仲介会社を利用する場合は、売り手と買い手の双方が手数料を支払う形もありますし、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)方式では、それぞれが自分側の専門家に報酬を支払うこともあります。
また、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬など、料金の仕組みもさまざまです。
最終的な売却額だけでなく、トータルでいくらかかるのかを事前に確認しておく必要があるでしょう。
金額については必ず書面で確認し、納得してから契約することが大切です。
M&Aの売り手側の手数料については、以下の記事でもご紹介していますので、参考にしてください。
関連記事:M&Aの売り手側の手数料相場は?計算方法や安く抑えるポイント・不成立の場合も解説!
TORUTE株式会社では、初回は無料でのご相談が可能です。
承継にかかる金額はもちろん、会社に合った承継の進め方や現状の整理などもサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

100万円以下のM&Aで使われる譲渡方法|株式譲渡と事業譲渡の違い
売却額が小さいM&Aでも、どの方法で引き継ぐかによって、売り手と買い手の負担やリスクは大きく変わります。金額の安さだけで進めてしまい、後から「こんなはずではなかった」とならないよう、代表的な2つの方法の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 引き継ぐ対象 | 会社そのもの(資産も負債も契約も) | 選んだ資産・契約・従業員だけ |
| 簿外債務のリスク | 買い手が引き継ぐおそれがある | 原則として引き継がない対象を選べる |
| 契約・従業員の移転 | 会社に残るため、原則そのまま | 個別に相手方や本人の同意が必要 |
| 許認可 | 会社が持つため、原則そのまま | 引き継げない場合は取り直しが必要になることもある |
| 手続きの手間 | 比較的少ない | 資産・契約ごとの移転手続きが必要 |
株式譲渡は手続きが簡単でも簿外債務に注意
株式譲渡は、会社ごと引き継ぐため、従業員や取引先との契約をそのまま維持しやすい方法です。一方で、帳簿に載っていない債務や未払いの税金、未払い残業代なども、会社に残ったまま買い手に引き継がれます。
売り手にとっては、譲渡後に問題が見つかったときに、買い手から責任を問われる可能性があります。小規模な案件でも、契約書に責任の範囲を明記しておくことが重要です。
事業譲渡は引き継ぐ範囲を選べるが手間がかかる
事業譲渡は、引き継ぐ資産や契約を選べるため、負債を残して事業だけを引き継ぐといった設計ができます。買い手にとって安心感が高く、金額が小さいM&Aでよく選ばれます。
ただし、取引先との契約は相手の同意を得て切り替える必要があり、従業員も個別に同意を得て雇用契約を結び直すのが原則です。許認可が必要な事業では、引き継ぎの可否を事前に確認しておきましょう。
事業譲渡をした売り手は競業を制限される
会社法では、事業を譲渡した会社は、特約がない限り、同じ市町村と隣接する市町村の区域内で、20年間は同一の事業を行えないとされています。個人事業主の場合は法律の定めが異なるため、契約書で競業避止の範囲を定めておくのが一般的です。
譲渡後に同じ地域で別の仕事を始めたい場合は、契約の段階で範囲と期間を明確にしておかないと、トラブルになるおそれがあります。
別記事では「事業譲渡は対価なしでもできる?無償譲渡の手続きや税金・注意すべきリスク」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
「100万円で買える会社」を探す買い手が確認したい法律上のポイント
「100万円で買える会社」と検索される方は、買い手として少額で事業を始めたいと考えている場合も多いでしょう。ただ、価格が安い会社には、安いなりの理由があります。購入前に最低限、次の点を確認しておくことが大切です。
借入・保証・未払い金の有無を確認する
会社を買う場合、株式の代金が100万円でも、会社に数百万円の借入があれば、実質的な負担は大きくなります。金融機関の借入や、買掛金、未払いの税金や社会保険料がないかを、資料で確認しましょう。
売り手が個人保証をしている場合は、買い手がその保証を引き継ぐのか、金融機関が解除するのかを、契約前に決めておく必要があります。
従業員・取引先・許認可が引き継げるか確認する
従業員の雇用条件や未払い賃金、取引先との契約の解除条項、許認可の要件を確認します。売上が特定の取引先や社長個人に集中している場合は、譲渡後に取引が続くかどうかも見ておきたい点です。
契約書に、売り手が引き継ぎ期間に協力する義務や、重要な事実を告げる義務を入れておくと、後のトラブルを減らせます。
少額案件でも契約書を省略しない
金額が小さいと「簡単な覚書でよい」と考えがちですが、トラブルが起きたときに頼れるのは契約書の内容です。譲渡の範囲、代金の支払い時期、表明保証、競業避止、損害が生じたときの責任を、最低限書面に残しておきましょう。
費用を抑えたい場合でも、契約書のひな形を使うだけでなく、弁護士にスポットで確認してもらうという方法もあります。
別記事では「M&Aの「0円譲渡」とは?条件やメリット・デメリットと考えられるリスク」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
100万円以下のM&Aで成功するためのポイント
100万円以下のM&Aでは、金額そのものよりも「どのように引き継ぐか」が結果を左右すると考えます。
特に長年会社を守ってこられた経営者の方にとっては、数字以上に大切にしたい想いがあるはずです。
だからこそ、焦って決めるのではなく、比較と準備を重ねることが成功への近道になります。
ここでは、100万円以下のM&Aで成功するためのポイントとして、次の3つをご紹介します。
- 廃業とM&Aの損得を比べる
- 守りたい条件を決める
- 価格を下げる要因を減らす
早めに動き出すことで、納得できる承継に近付きやすくなるはずですので、まずはできそうなことから確認してみてください。
廃業とM&Aの損得を比べる
まず最初に取り組む大切な作業は、廃業とM&Aの損得を比べることです。
廃業には、原状回復費・設備の撤去費・在庫処分の値引き・従業員への対応費用など、思いのほか多くの負担がかかります。
取引先への精算やあいさつ回りも必要になり、時間と気力も消耗することが想像できるでしょう。
一方で、M&Aによって事業が引き継がれれば、雇用や取引が継続する可能性があります。
廃業にともなう出費を抑えられる場合もありますし、「会社を止めずに済んだ」という安心感も得られるかもしれません。
単に売却額だけを見るのではなく、廃業とM&Aの損得を広い視点で比べてみてください。
そうすることで、いざ決めるときにも迷いにくくなるはずです。
守りたい条件を決める
次に交渉を進めるうえで、従業員の雇用を優先したいのか・屋号を残したいのか・一定期間は自分が関わりたいのかなど、守りたい条件を決めましょう。
条件が曖昧なままだと、提案を受けたときに気持ちが揺れやすくなります。
反対に、守りたい条件が明確であれば、迷ったときの判断基準になるはずです。
すべてを叶えるのは難しくても、譲れない点を2つか3つに絞っておくことで、納得できる着地点も見えやすくなります。
価格を下げる要因を減らす
そして、価格を下げる要因を減らすことも、成功に近付く大切な取り組みです。
価格が抑えられる背景には、買い手の不安がありますので、それを小さくすることが結果として条件の改善につながります。
例えば、赤字の理由を説明できる資料を用意する・主要な契約関係を整理する・業務の流れを文章にまとめるといった工夫ができるのではないでしょうか。
社長しかわからない情報が多い状態は、評価を下げやすくなります。
顧客情報・見積もり基準・従業員の役割を整理し、第三者にも理解できる形にしておくのがおすすめです。
100万円以下のM&Aにおける契約上の注意点

100万円以下のM&Aでは、「金額が小さいのだから手続きも簡単だろう」と考えてしまいがちです。
しかし実際には、価格が小さい案件ほど、契約内容を丁寧に確認することが大切になります。
ここでは、100万円以下のM&Aにおける契約上の注意点として、次の4つをご紹介します。
- 従業員の引き継ぎ条件
- 屋号・商号の扱い
- 引き継ぎ期間と役割の明確化
- 債務・保証の引き継ぎ範囲
特に売り手の立場では、口約束で終わらせないよう注意する必要があります。
あとになって認識のずれが生じると、時間だけでなく、これまで築いてきた信頼にも影響が出かねませんので、具体的なポイントを確認しておいてください。
従業員の引き継ぎ条件
従業員の引き継ぎ条件は、承継後の会社の安定に直結します。
雇用は続くのか・給与や勤務時間は変わるのか・退職金はどう扱うのかなど、事前に話し合うべき点は少なくありません。
買い手が体制を見直す可能性がある場合は、特に慎重な確認が必要です。
売り手としては、情報が曖昧なままだと社内に不安や噂が広がりやすくなるため、「いつ・誰が・どのように説明するか」をあらかじめ決めておくと安心です。
雇用条件の整理と説明の段取りを、契約書や合意書に明記しておくようにしましょう。
屋号・商号の扱い
屋号や商号の扱いも、契約で明確にしておきたい重要な点です。
長年使ってきた会社の名前には信用が積み重なっていますが、買い手の方針によっては変更されることもあります。
残したいという想いがある場合は、早い段階で希望を伝え、契約書に反映させることが大切です。
また、商標・ホームページのドメイン・SNSアカウントなど、名前に関わる資産も確認しておきましょう。
どれを引き継ぐのか・使用を許可する形にするのかを決めておかないと、承継後に買い手がその名称やアカウントを利用できず、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
引き継ぎ期間と役割の明確化
引き継ぎ期間を設ける場合は、売り手がどこまで関わるのかを具体的に決めておくことが大切です。
取引先への紹介は何件までおこなうのか・現場の指導は何日間か・トラブルが起きた場合は誰が対応するのかなどを決めておかないと、売り手側が予定以上に長く関わることになり、引退後の生活設計にも影響が出かねません。
引き継ぎ期間と役割の明確化をしておくことで、双方の期待がずれにくくなります。
追加の対応が必要になった場合の条件も、話し合っておくのがおすすめです。
債務・保証の引き継ぎ範囲
債務や保証の引き継ぎ範囲は、売り手にとって見落とせない部分です。
借入金・リース契約・未払金を誰が引き継ぐのかを明確にしないと、承継後も責任が残る可能性があります。
特に経営者保証が外れていない場合、引退後も金融機関との関係が残ることがあるでしょう。
ただし2024年4月以降、金融機関にはM&A時の経営者保証解除に向けた対応が求められるようになっていますので、金融機関への相談と専門家を交えた調整を早めにしておくのがおすすめです。
M&Aのご相談は「TORUTE株式会社」へ

ここまで見てきたように、100万円以下のM&Aは「金額が小さいから簡単」というものではありません。
むしろ、雇用の扱い・屋号の継続・引き継ぎ期間の設定・債務や保証の整理など、契約上の確認を丁寧に積み重ねることが欠かせません。
条件を曖昧にしたまま進めると、あとから思わぬ負担が残ることもありますし、内容の詰め方ひとつで引退後の安心感が大きく変わります。
TORUTE株式会社では、事業承継の目的やお気持ちを丁寧に伺いながら、低額M&Aであっても後悔のない形での実現をサポートさせていただいています。
まだ方向性が固まっていない段階でも構いませんので、まずは現状を整理するところからご相談ください。
事業承継をスムーズに進めるための「事業承継に役立つ無料マニュアル【完全版】」もプレゼントいたします。
第三者の専門家が入ることで、「何を優先すべきか」「どこに注意すべきか」も見えやすくなるはずですので、ご活用いただけますと幸いです。
\事業承継、何から始めるか迷ったら/
まとめ
M&Aで100万円以下と言われたとき、まず大切なのは「金額の大小」だけで判断しないことです。
事業規模・赤字の状況・社長への依存度・廃業を避けたい事情などが重なると、評価額が抑えられることは珍しくありません。
金額が安いからといって、会社の歩みまで否定されたわけではないのです。
少額であっても、M&Aによって雇用や屋号、取引関係をつなげられる可能性があります。
そのためには廃業との違いを冷静に比べ、守りたい条件を整理し、契約内容を丁寧に確認しながら、不安材料をひとつずつ減らしていく姿勢が欠かせません。
できるだけ早めに専門家へ相談し、選択肢を広げておくことが、納得できる引退につながるはずです。
\じっくり相談したい方は、メールでもお受けしています/
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