玉名市の事業承継はどう進める?農業・海苔・旅館の家族経営を引き継ぐ手順と玉名支部での手続き・相談先を熊本の弁護士が解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

玉名市でみかんやトマトを作ってきた、有明海で海苔を養殖してきた、玉名温泉で旅館や飲食店を続けてきた——そんな家族経営の事業を、「そろそろ息子に渡したい」「でも何から手を付けるのかが分からない」とお感じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

玉名市の事業は、農地・漁業権・温泉の利用権・建物といった、それぞれ別の法律で動く権利が組み合わさっていることが少なくありません。会社の株だけを渡せば終わる、という話にならないのが実情です。

そこで本記事では、玉名市で事業承継を進めるときの考え方を、農業・海苔養殖・旅館業という地場の事業ごとに分けて解説していきます。家族経営でもめやすい論点、熊本地方法務局玉名支局や玉名支部での手続き、相談先の使い分けまで整理します。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

玉名市で事業承継の相談が増えている背景

玉名市は、菊池川の流域に広がる農地と、有明海に面した海、そして玉名温泉という三つの資源の上に事業が積み重なってきた地域です。

その事業の担い手が、いま一斉に世代交代の時期を迎えています。相談の入り口になりやすい事情を、三つに分けて整理します。

農業は「土地」ではなく「設備と販路」が一代で作られている

玉名市の農業は、みかん・いちご・トマト・米と幅が広く、いずれも施設や機械への投資が前提になっています。

ハウス、選果機、乾燥施設、冷蔵庫といった設備は、現経営者が自分の代で借入を入れて揃えたものが多いのが実情です。農地そのものは先代から受け継いでいても、事業を成り立たせている中身は一代で作られている、という構造になりやすいのです。

そのため承継の場面では、農地の名義だけでなく、設備の所有者が誰で、借入の名義と担保がどうなっているかを同時に動かす必要が出てきます。ここを分けて考えてしまうと、後継者が農地だけを引き継いだのに事業が回らない、という事態になりかねません。

海苔養殖は担い手の高齢化が早く進んでいる

有明海の海苔養殖は、冬場に集中する過酷な作業と、加工機械への大きな投資を必要とする事業です。

そのため、玉名市の沿岸部では、後継者がいないまま経営者が高齢になり、「あと何年続けられるか」という相談が持ち込まれることが珍しくありません。

海苔養殖には、後述する漁業権や漁業協同組合の組合員資格という、他の事業には出てこない論点があります。親から子へ継ぐ場合でも手続きが必要になるため、早い段階で漁協と相談しておくことが欠かせません。

旅館・飲食は建物の所有と経営が分かれていることが多い

玉名温泉の旅館や、市内の飲食店では、建物を親や親族の個人名義で持ち、経営は法人で行っている、という形が少なくありません。

この形は、経営を渡すことと建物を渡すことが別の手続きになるため、どちらかを忘れたまま承継が進んでしまうリスクがあります。

とくに、建物の所有者が亡くなって相続が起きると、経営を引き継いだ後継者とは別の相続人が建物の共有者になり、賃料や修繕の話が止まってしまうことがあります。経営の承継と資産の承継を、同じ時期に設計しておく必要があるのです。

玉名市の事業承継で最初に確かめるのは「名義」と「権利」のずれ

玉名市の事業を引き継ぐときに動かす4つの権利(農地・漁業権・許可と建物・会社の株式)を示した図解

どの事業であっても、承継の第一歩は「いま誰が何を持っているのか」を紙の上で確かめることです。

実際に相談をお受けすると、登記や名簿の記載と、現場の実態がずれていることがほとんどです。ずれを放置したまま承継を進めると、後で税金や紛争の形で表に出てきます。

個人事業か法人かで、引き継ぐ対象がまったく変わる

個人事業の場合、引き継ぐのは「資産と契約の束」です。農地、設備、取引先との契約、許認可、借入を、一つずつ名義を替えていくことになります。

一方で法人の場合、原則として株式を移せば会社が持っている資産と契約はそのまま後継者の支配下に移ります。手続きは軽くなりますが、株価の評価という別の問題が出てきます。

玉名市では、農業も旅館業も個人事業のまま続けてこられた例が多く、「法人にしてから渡すべきか」という相談がよくあります。どちらが有利かは、資産の内容と相続人の数、納税猶予を使っているかどうかで結論が変わるのが実情です。

農地・海面・温泉・建物は、それぞれ別の法律で動く

事業用の資産を「まとめて渡す」ことはできません。農地の権利移動には農地法の許可や届出が必要で、漁業権の行使には漁業法と漁協の規則が関わります。

温泉の利用は、源泉を自ら持っているのか、配湯を受けているのかで法律関係が変わります。建物は不動産登記で動かします。

つまり、一つの旅館や一つの農業経営を渡すために、複数の窓口と複数の手続きを並行して進めることになります。先に全体の一覧を作り、どれを誰がいつ処理するのかを決めておくのが、遠回りに見えて最も早い進め方です。

家族名義になっている資産を棚卸しする

家族経営では、長年の便宜で、配偶者や子、すでに亡くなった先代の名義のまま事業に使われている資産が残っていることがあります。

農地が先代名義のままで相続登記が済んでいない、作業場の土地が兄弟の共有になっている、軽トラックや機械が家族の個人名義になっている——こうした例は決して珍しくありません。

承継の話を始める前に、登記事項証明書と固定資産税の課税明細を突き合わせて、事業に使っている資産の名義を一覧にしておくことをおすすめします。相続登記は申請が義務化されており、放置するほど関係者が増えて手続きが重くなるのが原則です。

別記事では「熊本県の事業承継はどこに相談?補助金・支援制度と後継者探し・法律面の注意点」、「事業承継でやるべきことは?準備リスト・手順・必要書類を承継タイプ別に解説」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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みかん・いちご・トマト・米——玉名市の農業を引き継ぐときの注意点

玉名市の農業承継では、農地の権利と、設備・販路の引き継ぎを分けて設計します。

とくに農地は、当事者が合意しただけでは権利が移らない仕組みになっている点に注意が必要です。

農地の権利移動には農業委員会の許可か届出が必要になる

農地の売買や贈与、貸し借りによって権利を移すときは、原則として農業委員会の許可が必要とされています。許可を受けないままの契約は、効力が認められないのが原則です。

一方で、相続によって農地を取得した場合は、許可ではなく農業委員会への届出で足りるとされています。生前に渡すのか、相続で渡すのかで手続きの組み立てが変わるということです。

玉名市では玉名市農業委員会が窓口になります。許可には受付の締切と審査の期間がありますので、渡す時期を決めてから動くのではなく、締切に合わせて準備を進めるのが実務的です。要件や運用は改正されることがあるため、最新の取扱いは農業委員会にご確認ください。

ハウス・選果機・倉庫は農地と別に譲渡の書面を作る

ハウスの骨材やビニール、選果機、乾燥機、保冷庫、トラクターや防除機といった設備は、農地とは別の財産です。

親子間だから書面はいらない、とお考えになる方もいらっしゃいますが、書面がないと、後になって他の相続人から「あれは父の財産だったはずだ」と言われたときに反論が難しくなります。

譲渡の対象を一覧にした目録を付けて、渡す時期と対価(無償ならその旨)を書いた簡潔な書面を作っておくことをおすすめします。リースや割賦の残っている機械は、契約上の名義変更に相手方の承諾が必要なことが多いため、先に確認が必要です。

出荷先と取引名義の切り替えを忘れない

農協の組合員資格、市場への出荷者登録、直販の取引口座、ふるさと納税の返礼品の事業者登録、インボイスの登録番号——事業を回しているのは、こうした「名義」の集まりです。

経営者が交代したのに名義が前のままだと、代金の振込先が合わない、インボイスが発行できない、補助金の申請者が実態と合わない、といった不都合が起きます。

誰の名義で、どこに、いつまでに届け出るのかを一覧にして、承継の日付に合わせて順番に処理していくのが確実です。

別記事では「農業の事業承継の手続きの流れは?必要書類・費用と税金、親族内・第三者承継の注意点」、「農業の法人化は事業承継に有利?農地所有適格法人の要件・親子間の進め方と納税猶予の注意点」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

海苔養殖を引き継ぐときに見落としやすい「組合員資格」

有明海での海苔養殖は、海を自由に使えるわけではありません。漁業権という権利の仕組みの中で営まれています。

この点を知らないまま承継の話を進めると、後継者が決まっているのに海に出られない、という事態になりかねません。

共同漁業権は漁協に帰属し、組合員がこれを行使する

海苔養殖のような沿岸の漁業では、漁業権そのものは漁業協同組合に与えられ、組合員が組合の定める規則に従ってこれを行使する、という構造になっているのが原則です。

つまり、権利を持っているのは個々の漁業者ではなく組合であり、漁業者は「組合員だから海を使える」という立場になります。

この構造があるため、漁業権は事業の資産として自由に売り買いできるものではありません。承継にあたっては、まず後継者が組合員になれるかどうかが出発点になります。

親から子へ継ぐときも組合の手続きが必要になる

親子間の承継であっても、後継者が自動的に組合員になるわけではありません。加入の申込みと組合の承諾、出資金の払込みといった手続きが必要とされるのが通常です。

組合員資格の要件は各組合の定款で定められており、居住地や年間の従事日数などの条件が置かれていることがあります。後継者が市外に住んでいる場合、要件を満たせるかどうかを先に確かめておく必要があります。

また、漁場の行使についても組合内での調整が必要になることがあります。渡す時期を決める前に、地元の漁業協同組合に相談しておくのが実務上の順序です。

第三者や法人に渡す場合は漁協との調整が前提になる

親族に継ぐ人がいない場合、養殖施設と加工設備だけを第三者に譲る、という形を検討することになります。

しかし、設備を買った相手が組合員になれなければ、その設備で海苔を育てることはできません。したがって、設備の売買契約を結ぶ前に、買い手が組合員資格を得られる見込みがあるかどうかを確認しておく必要があります。

法人として参入する場合も同様で、法人の組合員資格を認めるかどうかは組合の定款によります。契約書には、組合員資格を得られなかった場合の取扱い(解除や代金の返還)を書いておくのが安全です。

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玉名温泉の旅館・ホテル・飲食店を引き継ぐときの注意点

宿泊業と飲食業は、許可がなければ一日も営業できない事業です。

そして許可は「事業」ではなく「事業をしている人(法人格)」に与えられているため、どの形で渡すかによって結論が変わります。

旅館業の許可は、渡し方によって引き継げるかが変わる

株式を譲渡する形で会社ごと渡す場合、営業している法人は変わりませんので、許可はそのまま維持されるのが原則です。

これに対して、事業譲渡で建物と営業だけを別の人や会社に渡す場合は、譲り受けた側が新たに許可を受け直すのが原則になります。相続や合併・分割については承継の定めが置かれていますが、届出や承認の手続きが必要です。

営業できない期間が生じると、予約の受け入れや従業員の雇用に直接響きます。引渡しの日付を決める前に、管轄の保健所に手続きと所要期間を確認しておくことをおすすめします。運用は自治体によって異なることがあります。

温泉の利用権は、源泉を持っているのか配湯なのかで変わる

自ら源泉を持っている場合、その掘削や採取には温泉法に基づく許可が関わります。土地の所有権とは別に、源泉を使う権利が誰にあるのかを登記や契約で確かめる必要があります。

一方、温泉地では、組合や事業者から配湯を受けて営業している形も見られます。この場合の権利は民間の契約に基づくもので、契約書に譲渡や名義変更についての定めが置かれていることがあります。

「お湯が来るのは当たり前」と思われているところほど、契約書が見つからない、口約束のまま代が替わっているというケースがあります。承継を機に、配湯の条件と負担金、名義変更の要否を書面で確認しておくべきです。

建物の所有者が別人のときは賃貸借と修繕負担を先に整える

建物を個人名義で持ち、法人が借りて営業している場合、まず賃貸借の内容を確認します。賃料、期間、修繕の負担、増改築の可否、転貸や契約上の地位の移転についての定めが要点です。

親族間では賃貸借契約書すら作っていないことがあり、その状態で所有者に相続が起きると、借りている根拠を示せずに立場が不安定になります。

大規模修繕を控えている場合は、誰が費用を負担するのかも承継の条件になります。経営を渡す話と、建物をどうするかの話を、同じテーブルで決めておくことが大切です。

別記事では「飲食店の事業承継はどう進める?営業許可の引き継ぎ・店舗の賃貸借と造作譲渡の注意点」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

家族経営の事業承継でもめやすい3つの論点

家族経営の事業承継でもめやすい3つの論点のイメージ画像

玉名市でお受けする相談で最も多いのは、制度や税金の話ではなく、家族の間の納得の問題です。

家族経営は、生活と事業が重なっているぶん、感情と法律のずれが大きくなりやすい構造にあります。

一緒に働いてきた貢献は、相続分には反映されにくい

何十年も親と一緒に畑に出て、海に出て、帳簿をつけてきた後継者にとって、事業用資産は「自分が守ってきたもの」です。

しかし相続の場面では、法定相続分という決まった割合が出発点になります。長く働いてきたという事情は、寄与分などの枠組みで考慮される余地はあるものの、主張して認められるには具体的な立証が必要になるのが実情です。

だからこそ、生前に遺言書を作り、事業用資産を後継者に集める意思を明確にしておくことに意味があります。同時に、他の相続人への配慮も書面で設計しておくことが、争いを避ける現実的な方法になります。

家族経営協定と、給与・名義の実態がずれている

農業では家族経営協定を結んでいる場合がありますが、協定を作ったときと現在で、実際の役割分担や収入の配分が変わっていることがあります。

専従者給与の金額、経営主の名義、各種の補助金や共済の名義が、協定の内容と合っていないと、承継の際に「誰の経営だったのか」が曖昧になります。

承継を機に、協定と実態を突き合わせて更新しておくことをおすすめします。協定の内容は、法人化する場合には定款や役員報酬の設計にそのまま引き継ぐことになります。

遺留分と、事業用資産を分けられないという問題

兄弟姉妹のうち一人に農地や旅館を集めると、他の相続人の遺留分を侵害する結果になることがあります。遺留分は遺言によっても奪えない権利とされており、請求されれば金銭での支払いが必要になるのが原則です。

事業用資産は切り分けて渡すことができないため、この請求に応じる現金をどう用意するかが実務上の難所になります。生命保険の活用や、経営承継円滑化法に基づく民法の特例の検討が選択肢になります。

どの方法が使えるかは、相続人の構成と資産の内容、会社の形によって異なります。渡す側が元気なうちに、金額の見通しを立てておくことが何よりの備えです。

別記事では「事業承継で親子が対立する理由は?起こりやすいトラブル・失敗例と株式や役職をめぐる注意点」、「事業承継に遺言書は必要?自社株・遺留分の注意点や作成ステップ」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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玉名市で手続きを進めるときの管轄と相談窓口

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玉名市は熊本市の事務所から車で向かえる距離にありますが、登記や裁判所の手続きには管轄が決まっています。

どこへ出すのかを最初に押さえておくと、書類の作り直しや二度手間を避けられます。

手続きの種類玉名市の場合の窓口(原則)主に出てくる場面
不動産・会社の登記熊本地方法務局玉名支局農地や建物の名義変更、役員変更、本店移転
相続放棄・遺産分割の調停・後見開始熊本家庭裁判所玉名支部相続が絡む承継、判断能力が落ちた場合
民事の訴訟・調停(請求額による)熊本地方裁判所玉名支部・玉名簡易裁判所株式や代金をめぐる争いになったとき
農地の権利移動の許可・届出玉名市農業委員会農地の贈与・売買・貸借、相続による取得
旅館業・飲食業の許可管轄の保健所宿泊業・飲食業の承継、事業譲渡
漁業権の行使・組合員資格地元の漁業協同組合海苔養殖など沿岸漁業の承継

登記は熊本地方法務局玉名支局で扱われるのが原則

玉名市内の不動産の登記や、玉名市に本店を置く会社の登記は、熊本地方法務局玉名支局が管轄とされています。荒尾市や玉名郡の一部も同じ支局の管轄区域に含まれます。

農地の名義変更では、農業委員会の許可書や届出の受理通知が登記の添付書類として必要になります。許可が下りる時期と登記の時期が連動するため、段取りが大切です。

管轄区域は変更されることがありますので、申請前に法務局にご確認ください。

相続や後見が絡むと家庭裁判所玉名支部の手続きが入る

遺産分割がまとまらない場合の調停、相続放棄の申述、成年後見の開始の申立てなどは、熊本家庭裁判所玉名支部が窓口になります。

事業承継の相談でとくに多いのが、経営者の判断能力が落ちてから慌てて相談に来られるケースです。後見が始まると、後見人は本人の財産を守る立場に立つため、自社株の贈与のような本人の財産を減らす行為は原則として認められません。

つまり、判断能力があるうちにしか選べない手段があるということです。「まだ早い」と感じる段階で動き始めることが、結果として選択肢を広く保つことにつながります。

商工会議所・県のセンター・弁護士の使い分け

玉名商工会議所や地域の商工会は、日々の経営相談と国や県の施策の入り口として頼りになります。補助金の情報や、専門家の紹介もここから始まることが多いです。

熊本県事業承継・引継ぎ支援センターは、無料で相談でき、後継者人材バンクやマッチングの仕組みを持っています。相手探しの段階では有力な選択肢です。

一方で、遺留分、株式の集約、経営者保証、親族間の対立、契約書の条項といった権利義務の設計は、弁護士が扱う領域です。入口は公的機関、紛争の芽がある部分は弁護士、という使い分けが現実的です。

別記事では「熊本県事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談はどこまで?後継者人材バンクの流れと弁護士に頼む場面」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

親族内に継ぐ人がいないときの選択肢と費用の見通し

玉名市でも、「子は熊本市や福岡で勤めていて戻らない」というご家庭が増えています。

親族内に継ぐ人がいない場合でも、事業をたたむ以外の道はあります。順番に見ていきます。

選択肢最大の論点準備にかかる期間の目安
従業員への承継株式の買い取り資金と、経営者保証の引き継ぎ1〜3年程度
第三者への承継(M&A)情報の出し方と、譲渡契約の条件設計半年〜2年程度
廃業・解散清算農地・漁業権・許可の整理と、債務の清算半年〜1年程度

従業員承継は、買い取り資金と保証の引き継ぎが論点になる

長く働いてきた従業員に渡す形は、取引先や従業員の納得が得られやすく、玉名市のような地域では現実的な選択肢です。

難しいのは資金です。従業員個人に株式を買い取る資金がないことが多く、持株会社を作って借入で買う、分割で支払う、退職金と組み合わせるといった設計が必要になります。

さらに、金融機関への経営者保証を誰が引き受けるのかが、最後の関門になります。経営者保証に関するガイドラインの考え方に沿って、保証を外せるか、新しい経営者に求められるのかを早めに金融機関と詰めておくことが欠かせません。

第三者承継(M&A)は情報の出し方を先に決めておく

第三者に譲る場合、最初に決めるべきは「誰にいつ知らせるか」です。玉名市のような地域では、売却を検討しているという話が広がるだけで、従業員の離職や取引先の警戒を招きかねません。

そのため、社名を出さない概要資料の段階から、秘密保持契約の取り方、従業員や取引先へ伝える順序とタイミングを決めておく必要があります。

譲渡の条件面では、従業員の雇用をどう約束させるか、売り手がいつまで残るか、表明保証の範囲と期間をどう区切るかが要点です。金額だけで判断せず、契約条項を含めて比べることをおすすめします。

廃業を選ぶ場合も、農地・許可・債務の整理が残る

事業をたたむ場合も、手続きは残ります。農地を貸すのか売るのか、漁業権の行使をやめる手続き、許可の廃止の届出、リース契約の清算、従業員の雇用の終了といった処理が必要です。

とくに、黒字のまま廃業すると、本来は買い手が付いたはずの価値が失われてしまいます。設備や取引先、ブランドだけでも引き継げる相手がいないかを検討したうえで判断されるのがよいでしょう。

借入が残っている場合は、清算の順序と経営者保証の扱いを金融機関と事前に調整する必要があります。手続きを始めてから相談するのでは遅いことが多い領域です。

別記事では「事業承継で連帯保証人はどうなる?経営者保証の解除要件と相続時の扱い」、「事業承継の費用は総額いくら?内訳相場と税金・専門家報酬・登記費用を抑える方法」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

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玉名市の事業承継についてよくあるご質問

最後に、玉名市や荒尾市、玉名郡の方からよくいただくご質問にお答えします。

農地と会社の株は、どちらを先に動かすべきですか

一般に、許可や届出に時間がかかる農地の方が先に段取りを始めることになります。農業委員会の受付には締切があり、許可が下りるまでに一定の期間を要するのが通常です。

ただし、農地の相続税・贈与税の納税猶予を受けている場合は、動かす順序を誤ると猶予が打ち切られることがあります。この場合は、株式より先に農地を動かすという判断が適切でないこともあります。

納税猶予を使っているかどうかで結論が変わりますので、順序を決める前に税理士と弁護士に状況を確認していただくことをおすすめします。

個人事業でも事業承継の相談はできますか

もちろんご相談いただけます。玉名市の農業・海苔養殖・飲食は、個人事業のまま続けてこられた例が多く、むしろ個人事業の承継の方が検討することが多いといえます。

個人事業では、資産と契約を一つずつ移していく必要があるため、何を渡して何を渡さないのかを整理する作業が欠かせません。

この整理の過程で、法人化した方が渡しやすいと分かることもあります。まず現状を一覧にすることから始めていただければ十分です。

荒尾市や玉名郡でも同じ流れになりますか

基本的な流れは同じです。登記や裁判所の管轄も、荒尾市や玉名郡の一部は玉名支局・玉名支部の区域に含まれるのが原則ですので、玉名市と同じ窓口になることが多いです。

ただし、農業委員会は市町ごとに置かれているため、農地の手続きはその市町の農業委員会が窓口になります。漁業協同組合も地域ごとに異なります。

複数の市町にまたがって農地や事業所をお持ちの場合は、窓口が分かれますので、どこに何を出すのかを最初に一覧にしておくと進めやすくなります。

玉名市の事業承継は、農地・漁業権・温泉の利用権・建物といった、別々の法律で動く権利を同じ時期に整える作業になります。会社の株を渡せば終わり、という単純な話にはなりにくいのが実情です。

だからこそ、最初にやるべきことは制度を調べることではなく、いま誰が何を持っているのかを一覧にすることです。名義のずれが見えてくれば、どの手続きをどの順番で進めるべきかが自然に決まってきます。

そして、判断能力があるうちにしか選べない手段があることを、どうか忘れないでいただきたいと思います。「まだ早い」と感じる段階が、実は選択肢がいちばん広い時期です。

熊本市・八代市を中心に事業承継のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。

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