事業承継の消費税は個人事業主でもかかる?相続や贈与・売却時の違いと必要な手続きを解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

個人事業主の方のなかには、「長年続けてきた事業をそろそろ後継者へ引き継ぎたいが、消費税はどうなるのだろう」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

承継の方法によって扱いが変わることも、漠然とした不安につながっている原因かもしれません。

そこで本記事では、事業承継の消費税は個人事業主でもかかるのかという疑問にお答えしながら、相続・贈与・売却時の違いと必要な手続きをわかりやすく解説していきます。

ご自身に合った承継の進め方を考える際の、参考にしていただけますと幸いです。

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事業承継の消費税で個人事業主だと問題になる理由

法人の場合、経営者が交代しても会社そのものは同一の法人格として存続するため、消費税の納税義務もそのまま引き継がれます。

しかし個人事業主の場合は、事業主本人が消費税の納税義務者となっているため、経営者が変わればその義務者自体が入れ替わってしまいます。

つまり、事業承継のときに消費税が個人事業主にもかかるのかどうかは、「誰が納税義務者になるか」という点まで含めて考える必要があり、法人よりも注意が必要な問題なのです。

これは、親子間の承継であっても変わりません。

それまで課税事業者だった現経営者が廃業し、後継者が新たに開業するという扱いになるので、届出や納税義務の判定を一からやり直す必要が出てきます。

そのため、「今までどおり引き継げばよい」と考えていると、思わぬところで消費税の手続き漏れが起こりやすくなるでしょう。

まずは、事業承継の入り口として、消費税の基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。

承継方法で消費税の扱いはどう変わる?

個人事業主の事業承継では納税義務者そのものが入れ替わりますが、消費税の扱いを考えた場合、次のどの方法で承継するかによっても大きく変わってきます。

  • 相続の場合
  • 生前贈与の場合
  • 売却(事業譲渡)の場合

まずは3つの承継方法の違いを、表で確認してみましょう。

承継方法消費税はかかる?押さえておきたいポイント
相続資産の移転自体にはかからない亡くなった先代の売上次第で、早い段階から納税義務が発生することがある
生前贈与かからない後継者は原則2年間免税事業者になれるが、インボイス登録をすると課税事業者になる
売却(事業譲渡)資産によってはかかる建物・設備・在庫などは課税、土地や株式は非課税など、資産ごとに扱いが分かれる

ここから、それぞれの特徴をさらに具体的に解説します。

相続の場合

事業承継において、相続で資産を引き継ぐこと自体には、対価のやり取りがないため消費税はかかりません。

ただし、亡くなった先代の売上が一定額を超えていた場合は、相続人がそれまで免税事業者であったとしても、相続後すぐに消費税を納める義務が生じることがあります。

「相続なら消費税は関係ない」と思い込まず、先代の事業規模を確認しておくことが大切です。

生前贈与の場合

生前贈与の場合も無償での引き継ぎのため、消費税はかかりません。

後継者は新しく開業した扱いになるため、原則として承継後2年間は消費税を納めなくてよい免税事業者になります。

ただし、インボイスを発行する事業者として登録すると、その2年間であっても課税事業者として扱われる点には注意が必要です。

売却(事業譲渡)の場合

売却(事業譲渡)は、対価を受け取って事業を引き継ぐ方法のため、資産の内容によっては消費税がかかります。

ただし、すべての資産に一律でかかるわけではなく、課税されるものと非課税のものに分かれます。

どの資産がどちらにあたるのかは、このあと詳しく確認していきましょう。

なお、「売却」と聞くとM&Aと同じものだと思われるかもしれませんが、両者は同じ意味ではありません。

事業承継とM&Aの違い」については、別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継で消費税がかかる資産は?

事業譲渡による承継では、資産ごとに消費税がかかるものとかからないものに分かれます。

ここでは、次の代表的な区分について見ていきましょう。

  • 課税資産
  • 非課税資産

それぞれどのような資産が該当するのか、解説していきます。

課税資産

事業譲渡で消費税の課税対象となる主な資産には、次のようなものがあります。

  • 土地を除く有形固定資産:建物・車両運搬具・機械装置など
  • 無形固定資産:特許権・商標権など
  • 棚卸資産:商品在庫など

これらの資産は事業用に使用していたものであっても、譲渡によって対価を得ている以上、通常の売買と同様に消費税の課税対象になると理解しておきましょう。

非課税資産

国税庁の案内によると、土地・借地権・株式などの有価証券の譲渡は、非課税取引にあたるとされています。

そのため、事業譲渡に土地や自社株式が含まれている場合でも、その部分については消費税がかかりません。

ただし、課税資産と非課税資産が混在した状態で譲渡がおこなわれるケースも多いため、契約書や資産目録の段階で、それぞれの資産をきちんと区分して整理しておくことが大切です。

別記事では、「事業承継全体の費用相場」についても解説していますので、こちらも参考にしてください。

後継者の消費税の納税義務はどう決まる?

後継者の消費税の納税義務はどう決まるのかのイメージ画像

後継者が消費税を納める義務を負うかどうかは、「基準期間」と「特定期間」と呼ばれる2つの期間の売上高によって決まります。

国税庁の案内によると、消費税は一定規模以下の小規模な事業者の事務負担に配慮し、売上高が少ない場合は原則として納税義務を免除する仕組みになっています。

ただし、この原則がそのまま当てはまるとは限りません。

事業承継の場面では、承継方法によって先代の売上実績が判定に加わることがあるほか、インボイス登録をするかどうかによっても結果が変わってきます。

「開業したばかりだから消費税は関係ない」と思い込んでいると、思わぬタイミングで納税義務が発生してしまうこともあるため、判定の考え方を順番に確認していきましょう。

基準期間と特定期間の考え方

基準期間とは前々年の1年間を指し、この期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。

仮に基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(前年の1月1日から6月30日まで)の課税売上高が1,000万円を超える場合は、課税事業者として扱われます。

ただし、特定期間についてはこの課税売上高に代えて、その期間中に支払った給与等の金額で判定することも認められており、どちらか有利な方(金額が低く収まっている方)を選んでの判定が可能です。

そのため、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等の支払額が1,000万円以下であれば、引き続き免税事業者のままでいられるのです。

後継者についても、この2つの基準に当てはめて判定することになります。

2年間免税になりうるケース

生前贈与や売却によって新たに開業した後継者は、開業した年とその翌年については基準期間が存在しません。

そのため、原則として承継後2年間は消費税を納めなくてよい免税事業者としてスタートできます。

ただし、この2年間の免税は絶対的なものではありません。

特定期間の課税売上高や給与等の支払額が1,000万円を超える場合や、適格請求書発行事業者として登録する場合には、免税の適用を受けられなくなる点に注意が必要です。

インボイス登録をするとどうなる?

インボイス登録をすると、たとえ本来なら免税事業者にあたる期間であっても、課税事業者として消費税の申告・納税が必要になります。

また、この登録は事業者ごとにおこなうものであり、先代経営者が登録を受けていたとしても、その地位が後継者に自動的に引き継がれることはありません。

後継者がインボイスを発行したい場合は、あらためて登録申請書を税務署に提出する必要があります。

消費税がかかる資産や納税義務については、どれだけ理解しているつもりでも、迷う場面が出てくるかもしれません。

TORUTE株式会社では、引き継ぐものの整理から承継の進め方まで、経営者さまに寄り添った形でサポートさせていただきますので、ご不安がある場合はぜひ一度ご相談ください。

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事業承継に必要な消費税関連の届出は?

個人事業主の事業承継では、現経営者と後継者それぞれが、消費税に関連する届出を税務署へ提出する必要があります。

次の2つの立場によって、提出する必要書類は異なります。

  • 現経営者がおこなう廃業時の届出
  • 後継者がおこなう開業時の届出

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

現経営者がおこなう廃業時の届出

現経営者が事業を引退する際には、国税庁の案内に示されているとおり、廃業の事実が発生してから1ヵ月以内に、税務署へ次の届出をおこなう必要があります。

届出書名提出が必要なケース
個人事業の開業・廃業等届出書廃業する場合は必須
事業廃止届出書廃業前に消費税の課税事業者であった場合は必須
消費税簡易課税制度選択不適用届出書簡易課税制度を適用していた場合、提出しておくと望ましい
消費税課税事業者選択不適用届出書課税事業者選択届出書を提出していた場合、提出しておくと望ましい

該当する届出を事前に整理しておくと、後々の手続きがスムーズになるでしょう。

後継者がおこなう開業時の届出

後継者は、開業の事実があった日から1ヵ月以内に、状況に応じて次の届出を税務署へ提出することになります。

国税庁の資料でも、これらの届出はそれぞれ提出先や提出期限が個別に定められていることが示されています。

届出書名提出が必要なケース
個人事業の開業届出書開業する場合は必須
所得税の青色申告承認申請書青色申告を希望する場合
消費税課税事業者選択届出書多額の設備投資を予定しており、消費税の還付を受けたい場合
消費税簡易課税制度選択届出書簡易課税制度の適用を受けたい場合
適格請求書発行事業者の登録申請書インボイス発行事業者としての登録を希望する場合

必須の書類に加え、ご自身の状況に当てはまる届出がないか、あわせて確認しておきましょう。

簡易課税・課税事業者選択の注意点

後継者がおこなう届出のなかでも、簡易課税制度や課税事業者選択は、一度提出すると一定期間は取り消せないため、特に注意が必要です。

簡易課税制度は、実際の仕入額を計算せず、業種ごとに定められた一定の割合で仕入にかかる消費税額を見積もる仕組みである「みなし仕入率」をもとに仕入税額控除を計算できる制度で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が対象です。

事業承継のタイミングで簡易課税を選択する場合、一度届出をおこなうと2年間は原則として継続適用となるため、承継後の売上見込みを踏まえたうえで慎重に判断する必要があります。

同様に課税事業者選択届出書を提出した場合も、原則として2年間(一定の要件に該当する場合は3年間)は、強制適用となり免税事業者へは戻れませんので、あわせて注意しておきましょう。

事情承継では、届出を含めて全体の流れを事前に把握しておくことも重要になります。

事業承継全体でやるべきこと」は別記事にまとめていますので、こちらもご活用ください。

事業承継で確認すべき消費税以外の税金は?

事業承継で確認すべき消費税以外の税金のイメージ画像

事業承継では、消費税以外にも、資産の移転方法に応じて相続税・贈与税や所得税といった税金も関わってきます。

特に承継方法によって、どの税金が問題になるかが変わってきます。

  • 相続税・贈与税
  • 売却時の所得税

ここではこの2つに分けて、解説していきます。

相続税・贈与税

まず相続による事業承継では、事業用の不動産・設備・在庫といった資産が、相続税の課税対象になります。

そして生前贈与の場合は、後継者が受け取った資産の評価額に応じて、贈与税が課される点にも注意が必要です。

いずれの場合も、一定の要件を満たせば、事業用資産にかかる相続税・贈与税の納税を猶予できる「個人版事業承継税制」を活用できる可能性があるでしょう。

ただしこの制度の適用を受けるには、事前に「個人事業承継計画」を都道府県知事へ提出し、認定を受ける必要があります。

適用対象となる相続・贈与等の期限や計画の提出期限が定められている時限的な措置ですので、活用を検討する場合は早めに専門家へ相談し、スケジュールを確認しておくことが重要です。

売却時の所得税

事業を売却して承継する場合、譲渡によって得た利益は、譲渡所得として所得税の対象になります。

また、時価よりも著しく低い価格で資産を譲渡したり、無償で贈与したりすると、「みなし譲渡」として時価で譲渡したものとみなされ、所得税が課税されることがあるため注意が必要です。

特に、個人から法人へ資産を移す場合はこうした扱いになりやすいため、価格の設定には慎重な確認が求められます。

別記事では、「事業承継の税制優遇」について詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。

かかる税金や必要な届出など、事業承継では事前に把握しておきたい内容がいくつも重なります。

TORUTE株式会社では、弁護士を中心に他の専門家とも連携しながら、承継をスムーズに進められるようサポートさせていただいておりますので、おひとりで抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。

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個人事業主の事業承継で専門家に相談したいケースは?

事業承継を進めるなかで、消費税の判断が難しく感じられる場面に直面したときは、早めに専門家へ相談するのがおすすめです。

特に個人事業主の事業承継で専門家に相談したいケースは、次のとおりです。

  • 資産が多く課税区分が難しい場合
  • インボイス登録の扱いで迷う場合
  • 相続・贈与・売却のどれを選ぶべきか迷う場合

自己判断のまま進めてしまうと、あとから思わぬトラブルにつながる可能性も考えられます。

それぞれ具体的に解説していきますので、イメージしながら読み進めてみてください。

また、「事業承継そのものが難しいと感じる背景」には、税務以外にもさまざまな理由がありますので、別記事にまとめています。

資産が多く課税区分が難しい場合

土地・建物・機械・在庫など、事業用の資産をいくつも持っている場合、「これは消費税がかかる資産なのか、かからない資産なのか」を一つひとつ見極めるのは、思っている以上に骨が折れる作業です。

判断を誤ったまま譲渡を進めてしまうと、あとから消費税の計算がずれてしまうこともあります。

資産の種類や数が多く課税区分が難しい場合は、早めに専門家へ相談し、資産ごとの整理を手伝ってもらうと安心です。

インボイス登録の扱いで迷う場合

後継者がインボイスを発行できる事業者として登録すべきかどうかは、取引先との関係や事業の内容によって答えが変わってきます。

登録すれば、免税期間中であっても消費税を納める必要が出てきますが、そのぶん取引先との関係を保ちやすくなるという面もあります。

「うちの場合はどちらがよいのだろう」と迷ったときは、専門家に相談しながら決めていくとよいでしょう。

相続・贈与・売却のどれを選ぶべきか迷う場合

相続・生前贈与・売却は、それぞれ消費税をはじめとした税金の負担や必要な手続きが違います。

ご自身の資産の状況・後継者との関係・事業の先行きなどによって、どの方法が合っているのかは変わってくるものです。

「結局どれを選べばよいのだろう」と迷ったときは、早めに専門家へ相談し、全体像を整理してもらうことをおすすめします。

こうした個別の判断に迷う場面も含め、事業承継の全体的な考え方や手順を先に押さえておくと、スムーズに進めやすくなります。

別記事では、「事業承継ガイドライン」についてまとめていますので、こちらも参考にしてください。

個人事業主の事業承継は「TORUTE株式会社」へ

TORUTE株式会社への相談をイメージした画像

個人事業主の事業承継では、消費税をはじめとした税務の判断に加え、契約書の整理や許認可の引き継ぎなど、法律に関わる手続きも数多く発生します。

そんなとき、法律の専門家である弁護士に相談することで、契約上のリスクや後々のトラブルの芽を早い段階で見つけやすくなるというメリットがあるのです。

TORUTE株式会社では、事業承継に精通した弁護士が中心となり、税理士など他の専門家とも連携しながら、法務・税務の両面から個人事業主の事業承継をサポートさせていただいています。

数字の話だけでなく、経営者おひとりおひとりの想いに寄り添いながら、無理のない現実的な承継の形を一緒に考えていくことを大切にしております。

初回のご相談は無料となりますので、消費税や税務手続きに不安がある場合は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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まとめ

個人事業主の事業承継では、法人と違い、承継のたびに消費税の納税義務者そのものが入れ替わります。

相続・生前贈与・売却のどの方法を選ぶかによって、消費税がかかるかどうかや必要な届出も変わってくるため、それぞれの違いを知っておくことが、承継への確かな一歩になるはずです。

届出や納税義務の判定は複雑に思えるかもしれませんが、一つひとつ整理していけば、決して手に負えないものではありません。

まずはご自身の事業がどのケースに当てはまるのかを確認するところから、承継への準備を始めてみてください。

不安な点があれば専門家の力も借りながら、後継者に負担を残さない、納得のいく事業承継を実現していきましょう。

まずはお気軽にご連絡ください

0120-055-737

受付時間/AM8:30~PM5:30(土日・祝休)

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