事業承継の5年間とは?事業承継税制の手続きと5か年計画の作り方・何年かかるかを弁護士が解説

CATEGORY

西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

事業承継を考えるなかで、事業承継税制を検討する場合、避けて通れないのが「5年間」という期間です。

顧問税理士などから「制度を使えば税金が軽くなる」と聞いても、適用後も5年間は何かしらの対応が続くと知り、「具体的に何を守ればよいのか」「5年経過後はどう変わるのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、事業承継の5年間の意味や重要と言われる理由、事業承継税制の手続きと注意点、5年経過後の対応までをわかりやすく解説します。

これから税制の活用を検討していく際の参考にしてください。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

事業承継で「5年間」が重要と言われる理由

「事業承継税制」とは、後継者が自社株などを贈与・相続によって引き継ぐ際にかかる贈与税や相続税の納付を、一定の要件を満たすことで猶予・免除してもらえる制度です。

承継の際は株式の評価額が高いほど税負担も大きくなり、何も対策をしないまま承継すると後継者に重い納税義務がのしかかってしまうことから、多くの経営者がこの制度に注目しています。

この制度において「5年間」が特に重要と言われる理由は、承継後5年間の経営状況によって、猶予されている税金の行方が左右されるからです。

いわば、制度の恩恵を受け続けられるかどうかを決める、最初の試練の期間だと言えるでしょう。

事業承継の5年間は何を指すのか

事業承継の5年間は何を指すのかのイメージ画像

事業承継税制における5年間とは、制度の適用を受けたあと、後継者が代表として経営を続け、対象となる株式を保有し続けなければならない期間のことを指します。

これは「経営承継期間」とも呼ばれ、この間に一定の要件を満たし続けることで、はじめて猶予の恩恵を受け続けることができます。

なぜ事業承継税制では5年間が節目になるのか

先にも述べたとおり、事業承継税制は適用を受けた時点で税金がすぐに免除されるわけではなく、後継者が実際に経営を担い続けているかを確認しながら猶予を継続していく仕組みです。

5年間というのは、その確認が最も厳密に求められる期間にあたり、ここを過ぎると都道府県への年次報告が不要になるなど、管理上の負担が一部軽減されます。

だからこそ、5年という区切りが制度上の大きな節目となっているのです。

事業承継にかかる年数で知っておくべきこと

事業承継にかかる年数でまず知っておくべきことは、「準備期間」と「経営承継期間(5年間)」は別物だということです。

事業承継の準備から実行までは、後継者の選定や育成・自社株評価の整理・社内体制の構築など、一般的に数年から10年程度かかるとされています。

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも早期着手の重要性が強調されており、時間的な余裕を持って進めることが大切です。

そして先にも述べたとおり、税制上の「5年間」はその準備期間とは切り離された、承継完了後に始まる別の管理期間です。

この2つを混同してしまうと、スケジュール管理に誤りが生じることもあるため、あらかじめ区別して整理しておくようにしましょう。

そしてもうひとつ大切なのが、「承継にかかる年数が長くなるほど、後継者の負担も積み重なりやすい」という点です。

準備期間中から後継者が関与する場面は多く、経営承継期間の5年間まで含めると、後継者が担う役割は10年以上にわたることも珍しくありません。

だからこそ、後継者の育成や役割分担を早い段階から整理し、負担が一点に集中しない体制をあらかじめ考えておくことが、長期的に見ても安心な承継につながると言えるでしょう。

事業承継税制の5年間はいつから数える?

事業承継税制における5年間は、贈与や相続によって株式を承継し、納税猶予の適用を受けた日から数え始めます。

先代経営者が引退を決めた日や、特例承継計画を提出した日からではありませんので、注意が必要です。

「もう準備を始めているから5年間のカウントも始まっている」と思い込んでいると、実際の起算日とのズレが生じることがあります。

そのため、承継が完了したタイミングを正確に把握し、そこを基準にスケジュールを組み立てるようにしましょう。

5年の数え方を間違えると起こりやすいトラブル

もし5年の数え方を間違えると、年次報告や継続届出の提出時期がずれてしまい、期限を過ぎてから気付くというトラブルにつながりやすくなります。

期限を1日でも過ぎると、猶予が取り消されるリスクがあるため、起算日はカレンダーや管理表へ正確に書き込んでおくのがおすすめです。

万が一のためにも、専門家と一緒に確認しておくのがよいでしょう。

事業承継税制の5年間で毎年確認すべきこと

事業承継税制の5年間で毎年確認すべきことのイメージ画像

事業承継税制の5年という期間中は、後継者の経営状況や株式の保有状況など、毎年確認しなければならない事項があります。

なかでも、特に意識しておきたいのは、次の4つのポイントです。

  • 後継者が代表として適切に経営しているか
  • 対象株式の保有状況に問題がないか
  • 雇用や会社の状況に大きな変化がないか
  • 年次報告や継続届出の期限管理ができているか

どれかひとつでも見落とすと、猶予が取り消されるリスクにつながることがあるため、年間を通じた管理の習慣が大切になります。

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

後継者が代表として適切に経営しているか

制度を継続するうえで、後継者が代表者として適切に経営していることは基本的な条件のひとつです。

体調不良や経営方針の対立など、やむをえない事情で代表を退く場合でも、事前に制度への影響を確認しておく必要があります。

肩書きが残っているかどうかだけで判断せず、専門家にも相談しながら対応するようにしましょう。

対象株式の保有状況に問題がないか

納税猶予の対象となった株式を安易に譲渡したり、担保として提供したりすると、猶予が打ち切られる可能性があります。

対象株式の保有状況に問題がないかは5年間しっかりとチェックされるので、もし将来的にM&Aを検討している場合も、株式の取り扱いは慎重な判断が求められます。

そのため、動く前に専門家へ相談する習慣をつけておくのがおすすめです。

雇用や会社の状況に大きな変化がないか

事業承継税制の特例措置では、2026年8月時点で雇用維持要件が緩和されていますが、事業内容の大幅な変更や資産管理会社への該当など、会社の状況によっては要件に影響することがあります。

経営上の大きな判断をおこなう際は、事業承継税制への影響もあわせて確認しておくことが大切になるでしょう。

年次報告や継続届出の期限管理ができているか

都道府県への年次報告と税務署への継続届出は、提出先も時期もそれぞれ異なります。

決算対応など多忙な時期と重なりやすいため、期限管理をしっかりとし、毎年の年間スケジュールにあらかじめ組み込んでおくのがおすすめです。

「事業承継税制の要件」については、別記事でも詳しくまとめていますので、こちらも参考にしてください。

ただ、どれだけしっかりと把握しているつもりでも、思わぬところで見落としがある場合も考えられます。

専門家とともにしっかりと管理をしていくことが重要だと考えますので、ご不安がある場合は、ぜひ一度TORUTE株式会社にご相談ください。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

事業承継税制の5年間で必要な手続きや提出書類は?

事業承継税制の5年間で必要になる主な手続きは、都道府県への年次報告と税務署への継続届出書の提出の2つです。

それぞれ提出先・提出時期・必要書類が異なるため、混同しないよう整理しておくことが重要になります。

ここでは、それぞれの手続きの内容と必要書類、そして提出漏れを防ぐための管理方法を順にご紹介します。

都道府県への年次報告の内容と必要書類

毎年おこなう都道府県への年次報告では、主に以下の内容が確認されます。

  • 後継者が代表者として経営を続けているか
  • 雇用状況に大きな変化がないか
  • 対象株式を適切に保有しているか

報告にあたっては、株主名簿・決算書類・後継者の代表者就任を確認できる書類・雇用状況を示す書類などの提出が必要です。

ただし、必要書類は会社の状況や都道府県によって異なる場合があるため、提出前に管轄の都道府県または認定経営革新等支援機関へ確認することをおすすめします。

税務署への継続届出書の提出時期と必要書類

税務署への継続届出書は、承継後5年間は毎年、報告基準日から3ヵ月以内に提出が必要だと国税庁の資料にも示されています。

提出にあたっては、株主名簿や貸借対照表などの添付書類が求められます。

都道府県への年次報告と時期が近くなることもあるため、両方の期限をまとめてスケジュールに入れておくと対応が漏れにくくなるでしょう。

提出漏れを防ぐためのスケジュール管理

2つの手続きの期限を一覧にまとめ、毎年同じ流れで準備できる管理体制を整えておくことが、提出漏れを防ぐうえで効果的になります。

決算対応など多忙な時期と重なる場合もあるため、年度始めの段階でスケジュールに組み込んでおくのがおすすめです。

専門家と連携して進めるべき理由とは

書類の準備は社内でおこなえても、記載内容の確認や提出タイミングの判断には専門的な知識が必要になる場面があります。

そのため、税理士などの専門家と継続的に連携して進めていくことで、記載ミスや提出漏れのリスクを大幅に減らすことができるでしょう。

5年間を通じた伴走者として、早い段階から専門家との関係を築いておくのがおすすめです。

別記事にも「事業承継で専門家が必要な理由」を詳しくまとめていますので、こちらもご覧ください。

事業承継税制の5年間で注意したい取消事由とリスク

5年間で注意したい取消事由とリスクのイメージ画像

事業承継税制は、一定の条件を守り続けることで猶予が継続される仕組みです。

裏を返せば、条件から外れた場合、猶予されていた税額の全部または一部と、利子税を納める必要が生じることがあります。

ここでは、事業承継税制の5年間で注意したい取消事由とリスクとして、次の4つをご紹介します。

  • 株式を安易に譲渡・移動しない
  • 届出や報告の期限遅れを軽視しない
  • 会社の重要な変更は事前に確認する
  • 「5年経てば終わり」と考えない

事前に把握しておくことで、5年間の計画も立てやすくなりますので、それぞれについて解説していきます。

事業承継全体においての自社のリスクを事前に把握したい場合は、「事業承継リスク診断」もご活用ください。

株式を安易に譲渡・移動しない

対象株式を第三者へ譲渡したり、担保に提供したりすることは、取消事由に該当する代表的なケースのひとつです。

それが経営上の判断であっても、株式を安易に譲渡・移動することは、制度の継続に直結するリスクがあります。

そのため、まずは専門家に確認してから進めるようにしましょう。

届出や報告の期限遅れを軽視しない

継続届出や年次報告は、原則として、期限を1日でも過ぎると取消事由となる場合があります。

「忙しかったから」では済まされないため、期限の遅れを軽視せず、会社全体の課題として管理に取り組むことが重要です。

会社の重要な変更は事前に確認する

代表者の交代や組織再編など、会社にとって重要な変更をおこなう際は、動き出す前に事業承継税制への影響を確認しておくことが欠かせません。

判断してから取消事由に気付くケースもあるため、専門家へ事前に相談する習慣を持つようにしましょう。

「5年経てば終わり」と考えない

事業承継税制では、5年を過ぎれば一部の要件は緩和されますが、制度が完全に終了するわけではありません。

もし気を緩めてしまうと、6年目以降の継続届出を見落とすなど、思わぬトラブルにつながる可能性があります。

5年はゴールではありませんので、「5年経てば終わり」と考えるのではなく、制度との長い付き合いの途中にある節目ととらえておくことが大切です。

「事業承継税制のメリット・デメリット」については、別記事も参考にしてください。

事業承継税制で5年経過後に変わること・変わらないこと

5年間の経営承継期間を無事に終えると、制度上の一部の負担が軽減されます。

ただし、すべての義務がなくなるわけではありません。

事業承継税制で5年経過後に変わること・変わらないこととして覚えておいていただきたいのは、主に次の3つです。

  • 5年経過後は都道府県への年次報告が不要になる
  • 継続届出書は3年ごとの提出に変わる
  • 5年経過後も株式保有などの条件確認は続く

5年経過後に何が変わり、何が続くのかを正確に把握しておくことで、安心して制度を使い続けられるでしょう。

5年経過後は都道府県への年次報告が不要になる

まず、事業承継税制の適用から5年経過後には、毎年おこなっていた都道府県への年次報告が不要となります。

承継後の事務負担のなかでも、この年次報告の対応は決して軽くはないため、5年経過はひとつの区切りとして実感できるポイントだと言えるでしょう。

継続届出書は3年ごとの提出に変わる

一方で、税務署への継続届出書は6年目以降も完全になくなるわけではなく、3年ごとの提出へと変わります。

頻度は下がりますが、引き続き期限管理が必要な点は変わりません。

5年経過後も株式保有などの条件確認は続く

5年経過後も、対象株式を保有し続けることなど、一部の条件は継続して求められます。

そのため、株式の譲渡や移動を検討する際は、5年を過ぎたあとも慎重な対応が必要です。

事業承継税制は最終的にどうなるのか

事業承継税制は、「結局、最終的にどうなるのか」と気になる方も多いのではないかと考えます。

後継者が次の世代へ承継する場合や後継者が死亡した場合など、一定の事由に該当したときに、猶予されていた税額が免除されます。

つまり、制度を正しく使い続けることができれば、将来的に猶予税額の免除が認められる可能性がある仕組みになっているのです。

5年間はその免除に至るまでの長い道のりの通過点となりますので、制度の最終的な姿を見据えながら長期的に向き合っていくことが大切です。

とは言え、申請の段階はもちろん、承継の進め方や承継後の事業計画など、不安を抱えることもあるのではないかと思います。

TORUTE株式会社では、経営者さまの想いに寄り添いながら、事業承継税制を含めた現実的な承継をご提案させていただきます。

初回は無料となりますので、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

事業承継税制の「特例承継計画」とは?

「特例承継計画」とは、事業承継税制の特例措置を受けるにあたって、都道府県へ提出する計画書のことです。

後継者の情報や承継の見通しなどを記載するもので、この計画書の提出が特例措置を受けるための前提条件となります。

制度の活用を検討しているのであれば、内容と期限をしっかり把握しておくことが大切です。

提出期限と適用期限の違い

特例承継計画には、提出期限と適用期限という2つの異なる期限があります。

提出期限と適用期限の違いのイメージ画像

2026年8月時点で、計画書の提出期限は2027年9月30日、実際に贈与や相続による承継をおこなう適用期限は2027年12月31日です。

この2つを混同してしまうと、「計画書を出したからまだ大丈夫」と誤解したまま承継のタイミングを逃すことにもなりかねないため、区別して把握しておくようにしてください。

「事業承継税制の延長はいつまでなのか」については、別記事にもまとめています。

特例承継計画の提出先と進め方

特例承継計画は、税理士などの認定経営革新等支援機関から指導や助言を受けたうえで作成し、会社の主たる事務所がある都道府県へ提出します。

まずは、支援機関への相談から始めるのが一般的な進め方になるでしょう。

期限が近いときに急いで確認したいポイント

もし期限が近付いている場合、まず次のポイントを早急に確認する必要があります。

  • 後継者が決まっているか
  • 自社株の評価額を把握しているか
  • 認定経営革新等支援機関への相談が済んでいるか

計画書の提出期限はあくまで締め切りにすぎず、その前に整えるべきことが数多くあります。

そのため、「まだ時間がある」と思っているうちに準備が追いつかなくなることも考えられるのです。

できるだけ早めに動き出すことが理想ですが、期限が近付いてしまい上記が未対応の場合は、すぐにでも専門家へ相談することをおすすめします。

事業承継の「5か年計画」はどう作る?

5年という言葉は、税制の要件とは別に、承継そのものの段取りを示す「5か年計画」として使われることもあります。熊本・八代のご相談でも、金融機関や支援機関に提出するために作ることが多い書面です。

様式が決まっているものではありませんが、入れておく項目はおおよそ共通しています。だれに、何を、いつまでに渡すのかを時間軸で並べた表になっていれば、計画として役に立ちます。

  • 承継の形:親族内か、従業員か、第三者か
  • 引き継ぐもの:株式・事業用資産・許認可・取引関係・ノウハウ
  • 後継者の育成:どの業務をいつ任せ、いつ代表を交代するか
  • 資金:株式や資産の買取資金、納税資金、借入と保証の整理
  • 関係者への説明:家族・従業員・取引先・金融機関にいつ伝えるか

1年目から5年目までの配分の例

最初の1年を現状の把握に充て、2年目から3年目で後継者に実務と対外の付き合いを渡し、4年目に資金と保証を整え、5年目で代表を交代するという並べ方が一つの型です。業種や後継者の経験によって前後します。

時期主にやることこの時期の山場
1年目資産・契約・許認可・借入の棚卸し、後継者の意思確認後継者が本当に継ぐ気があるか
2年目後継者へ実務の権限を渡す、取引先への同席社長しか知らない仕事の洗い出し
3年目株式・事業用資産の移転方法を決める、税務の設計贈与と売買のどちらで動かすか
4年目経営者保証の解除協議、金融機関への説明金融機関の同意が得られるか
5年目代表の交代、登記・名義変更、関係者への正式な説明決裁の範囲を本当に渡せるか

特例承継計画との違い

紛らわしいのですが、事業承継税制の適用を受けるために都道府県へ出す「特例承継計画」とは別のものです。特例承継計画は制度の要件として提出先と記載事項が決まっている書面で、自社で作る5か年計画はそれより広く経営全体を扱います。

もっとも、5か年計画を先に作っておくと、特例承継計画に書く内容もほぼそのまま埋まります。順番としては、自社の計画を作ってから制度の書面に落とすのが効率的です。

計画は作って終わりにしない

計画は、年に一度は見直す前提で作るものです。業績、後継者の状況、金融機関との関係はいずれも動きます。決めた日付に意味があるのではなく、ずれたときに気づける形になっていることに意味があります。

作った計画を家族や後継者と共有していないケースも多く見かけます。社長の机の中にあるだけでは計画として機能しません。

別記事では「事業承継とは?意味・3つの種類と進め方」、「事業承継税制の要件とは?」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継は実際に何年かかる?引き継ぐ相手による違い

どのくらいの年数を見ておけばよいのかは、だれに引き継ぐかで大きく変わります。あくまで目安ですが、実務での感覚をお伝えします。

親族内で引き継ぐ場合

後継者が既に社内で働いているなら3年から5年、まだ外で働いているなら5年から10年を見ておくことが多いです。長くなるのは育成と、株式・資産の移転にかかる税務の設計に時間が必要だからです。

贈与を複数年に分けて進める場合は、その年数がそのまま計画の長さになります。早く始めた人ほど選べる手が多いのは、この部分が理由です。

従業員へ引き継ぐ場合

仕事はすでに分かっているため育成は短くて済みますが、株式の買取資金と経営者保証の差し替えに時間がかかります。3年から5年を見るのが現実的です。

金融機関との協議が山場になるため、保証の話を最後に回さないことがそのまま期間の短縮につながります。

第三者へ引き継ぐ(M&A)場合

相手探しから成約までは、早ければ半年から1年、相手が見つかりにくい業種や地域では2年以上かかることもあります。成約後も引き継ぎの期間が数か月から1年ほど続くのが通常です。

ただし、資料が整っていない状態で始めると、調査の段階で止まって時間だけが過ぎます。期間を短くしたいなら、交渉より前の準備に手をかけるのが結果的に一番速い道です。

別記事では「事業承継の後継者不在の現状は?」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

5年のあいだに起きやすい想定外と、そのときの打ち手

5年という期間は、思っていたより長いものです。計画どおりに進まないことを前提に、起きやすい事態への備えを決めておきます。

後継者が途中で辞退したとき

実際に経営の重さを知ってから気持ちが変わることは珍しくありません。すでに株式を贈与していた場合、戻してもらう手続きと税務の扱いが問題になります。

辞退の可能性を織り込むなら、株式の移転を一度に行わず段階を踏むこと、そして第三者承継という別の道も並行して検討しておくことが備えになります。

先代が急に亡くなったとき

計画の途中で相続が起きると、株式が法定相続分に従って分散し、後継者が過半数を握れなくなることがあります。遺言がないまま進めている計画は、この一点で崩れます。

計画の初年度のうちに遺言を整えておくのが原則です。あわせて、株主間の取り決めや定款の見直しで、分散しても経営が止まらない形にしておくと安全です。

業績が落ちたとき・税制の要件を満たせなくなったとき

業績の悪化は、買取資金の調達や保証の解除協議に直接響きます。税制を使っている場合は、要件を満たせなくなると猶予が打ち切られ、納税が必要になることがあります。

打ち切りの事由に当たりそうだと分かった時点で、専門家に相談するのが肝心です。手続きの前に動けば選べる手があり、事後では選べないという場面が多い分野です。

別記事では「事業承継に遺言書は必要?」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継の5年間をスムーズに進める方法

事業承継の5年間をスムーズに進める方法のイメージ画像

事業承継では、「誰が・何を・いつまでに」を事前に整理しておくことが重要です。

事業承継の5年間をスムーズに進める方法は、次の4つをご紹介します。

  • 管理スケジュールを見える化する
  • 社内と専門家の役割分担を決める
  • 後継者に負担を集中させない進め方を考える
  • 税務・法務・経営を同時に見る体制を整える

制度の適用を受けたあとに慌てて体制を整えるのでは間に合わないこともあるため、承継前から少しずつ準備を進めておくのがよいでしょう。

管理スケジュールを見える化する

年次報告や継続届出の時期を一覧にまとめ、社内の共有カレンダーや管理表に落とし込んでおくと、特定の担当者だけに依存しない体制がつくりやすくなります。

管理スケジュールを見える化しておくことが、提出漏れを防ぐ基本だと言えるでしょう。

社内と専門家の役割分担を決める

毎年の対応に備えて、書類の準備は社内で、内容の確認と提出は専門家でといったように、あらかじめ役割分担を明確にしておくとスムーズになります。

役割が曖昧なままだと、繁忙期には対応が後回しになりやすいため、社内と専門家の間で早めに決めておくのがよいでしょう。

後継者に負担を集中させない進め方を考える

承継後、まだ経営に慣れていない後継者に報告や届出の対応まで一任すると、負担が重なりすぎてしまいます。

後継者が経営に専念できる環境を整えるためにも、先代経営者や信頼できる社内スタッフが補佐するなど、負担を集中させない進め方を考え、あらかじめ仕組みをつくっておくのがおすすめです。

税務・法務・経営を同時に見る体制を整える

事業承継税制は税務だけの問題ではなく、株式の取り扱いや代表者交代など法的な判断が求められる場面も多くあります。

税務・法務・経営を同時に見られるよう、税理士・弁護士など複数の専門家が連携できる体制を整えておくことで、想定外の事態にも落ち着いて対応しやすくなるでしょう。

事業承継では、思ったよりも多くの手順があります。

「事業承継でやるべきこと」を別記事にまとめていますので、こちらもぜひ一度ご覧ください。

事業承継税制で専門家に相談すべきタイミングは?

ここまで解説したとおり、事業承継税制は適用を受けるまでの手続きだけでなく、5年間の管理や5年経過後の対応まで、長期にわたって専門的な判断が求められる制度です。

「何かあってから相談する」では手遅れになることもあるため、適切なタイミングで専門家を頼ることが大切になります。

ここでは、相談先別に相談すべきケースやタイミングをご紹介します。

  • 税理士に相談したいケース
  • 弁護士に相談したいケース
  • 事業承継支援の専門家に相談したいケース

自社では今どのような段階か、どのようなサポートが必要そうかをイメージしながら読み進めてみてください。

税理士に相談したいケース

税理士への相談が特に必要になるのは、次のようなケースです。

  • 制度の適用可否や自社株の評価額を確認したいとき
  • 納税猶予額の試算や申告手続きを進めるとき
  • 年次報告・継続届出の準備や内容確認をおこなうとき

税務に関わる場面では税理士のサポートが欠かせないため、制度を検討し始めた早い段階から相談しておくとよいでしょう。

「事業承継での税理士法人の役割」については、別記事にもまとめています。

弁護士に相談したいケース

弁護士への相談は、次のようなケースで必要になります。

  • 株式の譲渡や担保提供を検討しているとき
  • 代表者交代にともなう契約関係の整理が必要なとき
  • 取消事由に該当しないか確認したいとき
  • 親族間のトラブルへの対応や株主間の合意形成が必要なとき

税理士だけでは判断しきれない法的な場面こそ、弁護士への相談を検討するのがよいでしょう。

事業承継税制の活用中に想定外のトラブルが起きた際も、早めに相談することで対応の選択肢が広がります。

別記事に「事業承継での弁護士の役割」をまとめていますので、こちらも参考にしてください。

事業承継支援の専門家に相談したいケース

事業承継支援の専門家への相談が必要になるのは、次のようなケースです。

  • 事業承継全体の進め方や優先順位を整理したいとき
  • 後継者育成や社内体制作りについて相談したいとき
  • 親族内承継とM&Aのどちらが自社に合うか検討したいとき

中小機構の「事業承継・引継ぎ支援センター」では無料での相談も受け付けており、状況に応じた専門家の紹介も受けられます。

「何から始めればよいかわからない」という段階での相談にも対応してくれるのでおすすめです。

5年間の途中で不安が出たときの相談先

5年間の途中で、何かしらの不安が出てきたときには、次の相談先がおすすめです。

具体例相談先
税務面の不安届出の期限が迫っている報告内容に自信がない など税理士(顧問税理士)
法務面の不安代表者交代が必要になった株式の取り扱いで迷っている など弁護士
経営面の不安後継者が経営に行き詰まっている事業の方向性を見直したい など事業承継・引継ぎ支援センターや事業承継専門のコンサルタント

いずれの場合も、おひとりで抱え込まず、早めに相談することが大切です。

相談のタイミングが早いほど、対応の選択肢も広がるでしょう。

事業承継のご相談は「TORUTE株式会社」へ

TORUTE株式会社への相談をイメージした画像

事業承継税制の5年間は、毎年の報告・届出の管理から、株式の取り扱いや代表者交代といった法的判断まで、幅広い対応が求められます。

「何かあってから動く」では手遅れになることもあるため、ぜひお早めにTORUTE株式会社へご相談ください。

TORUTE株式会社では、事業承継を専門とする弁護士が中心となってサポートさせていただいています。

取消事由に該当しないかを法的な視点から事前に確認できるのはもちろん、株式の譲渡や代表者交代などリスクをともなう場面でも、問題が表面化する前に手を打つということが可能です。

また、親族間のトラブルや株主間の合意形成においても、法的な根拠を持って対応できますので、経営者さまにとって大きな安心材料となるのではないでしょうか。

税理士など他の専門家とも連携しながら、税務・法務の両面から一体的なサポートを提供できる点も、大きなメリットになるはずです。

初回は無料でご相談ができますので、「まだ制度を使うか決めていない」という段階からでも、ぜひお気軽にお問い合わせください。

事業承継をスムーズに進めるための、「事業承継に役立つ無料マニュアル【完全版】」もプレゼントさせていただいています。

\事業承継、何から始めるか迷ったら/

まとめ

事業承継税制の5年間は、毎年の報告・届出の管理から株式の取り扱い、代表者交代への対応まで、気を抜けない期間が続きます。

しかし、正しく理解して備えておけば、決して乗り越えられないものではありません。

大切なのは、「何かが起きてから動く」のではなく、「起きる前に整えておく」という姿勢だと考えます。

スケジュールを見える化し、専門家と役割分担を決め、後継者が経営に専念できる環境を整えておくことで、5年間の管理は格段にスムーズになるでしょう。

長年守り続けてきた会社を次の世代へ安心して引き継ぐために、専門家の力も借りながら、まずは一歩踏み出してみてください。

まずはお気軽にご連絡ください

0120-055-737

受付時間/AM8:30~PM5:30(土日・祝休)

コラム一覧に戻る