事業承継と相続の違いは?自社株の分散リスクや税制・手続きの比較を弁護士が解説!
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法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援
事業承継と相続は似ているようで目的も手続きも異なるため、「何から手をつけるべきか」と迷う方も多いと考えます。
特にその違いが曖昧なままだと、準備の順番を誤ったり思わぬ手戻りが起こったりすることもあるかもしれません。
ご家族や従業員の将来を思えば思うほど、「どちらの話を進めればよいのか」「税金や手続きの扱いは同じなのか」と、不安が募るものです。
そこで本記事では、事業承継と相続の違いをわかりやすく整理し、税制の対象や手続きの進め方、起こりやすいリスクとその対策まで丁寧に解説していきます。
ご自身の会社を安心して次の世代へつなげるための第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。

事業承継と相続との違いは?
事業承継とは、会社や事業を次の世代へ引き継ぎ、継続と発展を目指す取り組みです。
一方で相続は、個人の財産や地位を、法律に従って受け継ぐ仕組みと言えます。
(※相続発生により、結果として事業承継に至ることもありますが、ここでは割愛させていただきます。)
相続は民法に基づき、本人の死後に自動的に始まりますが、事業承継は生前からの計画と実行が欠かせません。
株式や経営権だけでなく、人材・取引先との信頼関係・技術・会社の信用までも引き継ぐ必要があるため、時間をかけて丁寧に進めることが望ましいでしょう。
次に、事業承継と相続の違いをより具体的に整理するため、以下の4つの観点から見ていきます。
- 目的の違い
- 人の違い
- タイミングの違い
- 引き継ぐ財産や権利の違い
これらを順に確認することで、「自分の会社はどの準備から始めるべきか」がより明確になるはずです。
目的の違い
事業承継の目的は、会社がこれまで積み上げてきた価値や雇用、取引先との信頼を守りながら、次の世代へ経営を引き継ぐことにあると考えます。
単に株式や資産を渡すことが目的ではなく、会社という「生きた組織」をしっかりと次につなぐことが大切です。
会社の存続を通じて、従業員や地域社会への責任を果たすための取り組みであり、言い換えれば「会社の未来を守るための経営上の準備」と考えておくとわかりやすいかもしれません。
一方で相続の目的は、亡くなった方が残した財産や権利・義務を、家族などの相続人へ正しく受け継がせることです。
現金や不動産などの財産をきちんと整理し、家族が安心して次の生活を始められるようにすることが大きな目的と言えるでしょう。
人の違い
事業承継では、関わる人の範囲が広くなります。
先代経営者と後継者に加えて、株主・取引先・金融機関・会社を支える従業員・専門家なども深く関わることになるでしょう。
事業をスムーズに引き継ぐためには、後継者を中心に周囲の理解と協力を得ながら、段階的に進めていくことが大切なポイントになります。
一方で相続の場合に関係するのは、配偶者や子など、法律で定められた相続人です。
誰が相続人となるかは戸籍によって確定し、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用すれば、家族関係を示す図を公的に証明できます。
この制度を活用しておくと、相続に関する各種手続きをまとめて進めやすくなるでしょう。
タイミングの違い
事業承継は、元気なうちから少しずつ準備を進めておくことが大切です。
例えば、最初のうちは後継者の仕事をそばで見守り、必要に応じて助言をする段階から始めます。
次に、重要な判断を一緒におこないながら経験を積ませ、最後は経営を安心して任せられるようにしていく流れです。
株式や事業用の資産を整理したり、社内外へ引き継ぎ方針を伝えたりすることも、早めに取りかかっておくとよいでしょう。
一方、相続はご本人の死後に自動的に始まります。
いざ発生してから動く「事後対応型」といえるため、準備がないままでは手続きが複雑になったり、家族の負担が大きくなったりすることがあります。
そのため、生前のうちに基本的な整理をしておくと安心です。
引き継ぐ財産や権利の違い
事業承継では、株式や代表権のほかに、人材や取引先との関係・技術やノウハウ・ブランド・会社が積み重ねてきた信用まで引き継ぎます。
つまり単なる資産の移動ではなく、「会社の力」そのものを次の世代へつなぐ取り組みと言えるでしょう。
経営の意志や信頼関係をしっかりと受け継ぐためには、組織の仕組みや体制づくりまで考えておくことが大切です。
一方で相続の対象となるのは、現金・不動産・有価証券・債務といった個人の財産全般です。
会社に関わるものとしては、自社株式・個人名義の事業用不動産・個人保証などが含まれます。
これらは相続人が法律に従って受け継ぐ形となるため、事業承継のように「経営をどう続けるか」という視点は含まれません。
会社の相続には種類がある?
結論からお伝えすると、「会社そのものが相続されるわけではありません」が、会社に関係する財産の相続には大きく2つの形があります。
ひとつは、経営者が持っていた株式などを相続するケース(会社に関わる財産の相続)、そしてもうひとつは、土地・設備・取引契約などを引き継ぐ相続です。
ただし、株式を相続した人は会社の株主にはなっても、経営者になるわけではありません。
実際に会社の代表を交代するには、株主総会や取締役会の決議、登記などの手続きを経る必要があります。
そのため、相続が起きたあとに会社を存続させるためには、単なる財産の承継にとどまらず、「経営をどう引き継ぐか」という事業承継の準備が欠かせないと言えるでしょう。
言い換えれば、相続は会社の所有権を移すことであり、事業承継は会社を動かし続けるための引き継ぎです。
- 法人の場合
- 個人事業の場合
それぞれの特徴と手続きの違いを見ていきましょう。
法人の場合
株式会社などの会社では、相続が起きると株式の持ち主は変わりますが、代表取締役の立場そのものは相続の対象になりません。
代表を交代するには、社内での正式な決定を経て、登記の手続きをおこなう必要があります。
また株式が複数の相続人に分かれてしまうと、誰が会社の方針を決めるのかが曖昧になり、経営の判断が遅れる可能性があるでしょう。
そのため、できるだけ株式を後継者にまとめておく仕組みを考え、必要に応じて会社のルールを見直しておくことも有効と言えます。
登記の際は、法務局が公表している書類のひな型や提出書類の一覧を確認し、書類の抜けや誤りがないかを事前に確かめておくようにしましょう。
個人事業の場合
個人事業の場合は、事業に使っていた土地や建物・機械・仕入れの支払いなどを、相続人がそのまま引き継ぐ形になります。
屋号・許可・銀行口座・取引先との契約など、名義を変えなければならないものが多く、手続きが少し複雑になることもあるでしょう。
青色申告を続ける場合や事業用の口座を使い続ける場合は、税務署や銀行へ届け出が必要なので、どのような手続きが必要かを事前に書き出しておくと、あとから慌てずに進められるはずです。
また、事業で借入をしている場合や、経営者個人が保証人になっている場合は、金融機関と早めに話し合っておきましょう。
準備を前もって進めておくことで、ご家族の負担を減らし、安心して事業を引き継ぐことができるはずです。

会社の相続の手続き方法は?

会社の相続手続きは、「相続全体の手続き」と「会社を動かすための手続き」の二つを並行して進めるイメージで考えるとわかりやすいでしょう。
まずは亡くなった方の財産や相続人を確定し、遺産の分け方を決めるなど、一般的な相続手続きをおこないます。
そのうえで、会社を継続させるために必要な登記の変更や社内の手続きを進めていく流れです。
つまり、「家族の相続」と「会社の運営」という二つの側面を意識しながら整理していくことが大切になります。
一般的な相続手続き
相続の基本的な流れは、以下のような順になります。
- 1.亡くなったことの確認
- 2.戸籍などを集めて相続人を確定
- 3.遺産の内容を調べる
- 4.家族で分け方を話し合う(遺産分割協議)
- 5.相続税の申告・納付
戸籍を集めるのが大変な場合は、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用すると、一覧図でまとめて確認できるため便利です。
また、相続財産に借入金などの負債が多い場合は、相続放棄や限定承認といった方法もあります。
これらの手続きには期限があるため、できるだけ早めに準備を始めるようにしましょう。
会社(経営権)の引き継ぎ手続き
会社(経営権)を動かすためには、株式の引き継ぎと代表者の変更が大きなポイントと言えます。
相続で株式が家族に分配されると、意思決定に時間がかかり、経営がスムーズに進まなくなることがあります。
そのため、話し合いのなかで後継者に株式をまとめるようにし、必要に応じて会社の規則を見直しておくのがよいでしょう。
代表を交代する場合は、社内の決定を経て、法務局で登記の変更をおこないます。
また金融機関や主要な取引先には、代表変更の旨を早めに伝えておくことで誤解や不安を防ぎ、会社への信頼を保つことにつながります。
事業承継の手続き方法は?
事業承継の手続きは、以下の三つの段階で進めていくとわかりやすくなります。
1.準備の段階
まずは、会社の現状を整理し、誰に・どのように引き継ぐのかを考えましょう。
株式や資産を整え、後継者が経営を理解できるよう少しずつ教育しておくと安心です。
2.実行の段階
次に、実際の引き継ぎを進める段階です。
最初は後継者をそばで支えながら、徐々に経営判断を任せていくようにするのが理想です。
あわせて、登記・税務・関係者への説明などもこの時期に整えておきましょう。
3.定着の段階
最後に、新しい経営体制を会社に根づかせます。
後継者を中心に経営計画を見直し、組織の仕組みや人の配置を整えることで、会社の安定につながるはずです。
事業承継の手続き方法について、以下の記事では法人の場合の流れをまとめています。
必要書類や税金なども把握しやすいと思いますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:事業承継の手続きで法人の場合の流れは?必要書類や税金などの費用・補助金もまとめて解説!
事業承継税制は相続でも対象?
事業承継税制とは、後継者が会社の株式を引き継ぐ際に、贈与税や相続税の支払いを一定の条件のもとで猶予または免除できる制度です。
この制度は、生前に株式を贈与する場合だけでなく、相続によって引き継ぐ場合にも適用されることがあります。
ただし、相続で制度を使うためには、事前に承継の計画を立てておくことや一定の条件を満たす必要があります。
準備のタイミングや要件によっては、制度を利用できない場合もあるため、早めに専門家へ相談しておくと安心でしょう。
ここから、相続発生後に制度が使えるケースや後継者が亡くなった場合の取り扱いについて、さらに詳しく解説します。
事業承継税制は相続発生後も適用される?
経営者の相続発生後でも、一定の手続きを期限内におこなえば、事業承継税制の特例措置を適用できる可能性があります。
ただし、利用するには事前の準備が重要となり、特に以下の2つの期限には注意が必要です。
・特例承継計画の提出期限:2026年3月31日まで
認定経営革新等支援機関の助言を受け、都道府県知事へ提出しておくことが必要
・贈与・相続の実行期限:2027年12月31日まで
この期限までに株式の移転を完了させることが条件
すでに相続が発生している場合でも、相続税の申告期限である10ヵ月以内までに必要な手続きを終えれば、特例が適用されるケースもあります。
ただし、事前に特例承継計画を出していない場合は短期間での対応が必要になるため、早めに専門家へ相談しておくのがよいでしょう。
事業承継税制を利用した相続人が死亡したらどうなる?
事業承継税制を利用していた相続人が亡くなった場合、原則として猶予されていた税金は課税対象となり、納税が必要になる可能性があります。
ただし国の制度では、一定の条件を満たせば「免除」や「猶予の継続」といった扱いになる場合もあるでしょう。
例えば会社を引き継ぐ新しい相続人が決まり、経営を続けるなどの条件を満たせば、税金がすぐに発生しないケースも考えられます。
いずれにしても、相続人が急に不在になると、家族や会社が大きな負担を抱えるおそれがあります。
そのため、万が一に備えて後継者の補佐役を育てておく・株式の議決権をどう引き継ぐかを決めておくなど、次の体制を早めに整えておくことが大切だと言えるでしょう。
日頃から専門家に相談し、突然の事態にも対応できる準備をしておくのがおすすめです。
事業承継税制には要件があり、しっかりと理解しながら進めることが大切になります。
以下の記事では、特例措置と一般措置の違いやメリット・デメリットも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:事業承継税制の要件とは?特例措置と一般措置の違いやメリット・デメリットも解説
もし事業承継税制の要件や相続の場合の手続きでわからないことがあれば、ぜひ一度、TORUTE株式会社にご相談ください。

会社の相続で起こりやすいリスクとは
会社の相続では、準備不足や話し合いの遅れによって、思わぬトラブルが起こることが考えられます。
代表的なのは、以下のようなケースです。
- 経営権が掌握できない場合がある
- 負債まで相続する可能性がある
- 他の相続人とのトラブルになる可能性がある
どの問題も、後回しにすることがいちばん危険と言えるでしょう。
会社を守り、大切な家族に安心してもらうためにも、専門家の力や制度を上手に使いながら、できることからひとつずつ整えていくことが必要です。
それぞれについて、対応策もあわせてお伝えします。
経営権が掌握できない場合がある
会社の株式が兄弟や姉妹など複数の相続人に分かれると、後継者が経営権を十分に握れなくなることがあります。
このような状況になると、会社の方針を決める権限が分散し、人事・資金の使い方・会社の仕組みを変えるような大切な判断が必要な際に話し合いが進まなくなることが考えられるでしょう。
こうした事態を防ぐには、株式をできるだけ後継者にまとめておくことが重要と言えます。
例えば、遺産を分ける段階で後継者に株を集めておく、あらかじめ株主同士で取り決めをしておくなどの方法があります。
また、会社の基本ルールを見直しておくと、将来のトラブルを防ぎやすくなるはずです。
経営の安定は会社を守るうえで欠かせない要素なので、家族や関係者と早い段階から話し合いを重ね、後継者がスムーズに経営を引き継ぐことができる環境を整えておくようにしましょう。
負債まで相続する可能性がある
会社の業績が思わしくない場合や借入が多い場合には、家族が思いがけない負担を抱える可能性が考えられます。
相続では、現金や不動産などの資産だけでなく、会社の借入金や個人で負っている保証などの負債も一緒に引き継ぐことになるからです。
もし「借金が大きい」「返済が難しそう」と感じたときは、相続を放棄する、または受け継ぐ範囲を限定する制度を利用できる場合があります。
こうした制度を使えば、借金を引き継がない、あるいは相続した財産の範囲内でだけ責任を負うことが可能です。
制度を利用するには期限があるため、できるだけ早めに専門家へ相談しておくのがおすすめです。
また経営者個人の保証がある場合は、金融機関と事前に話し合い、保証の引き継ぎ方や解除の方法を確認しておくようにしましょう。
他の相続人とのトラブルになる可能性がある
例えば、会社を継ぐ長男が株式を引き継ぎ、他の兄弟姉妹が現金や不動産を望むといった状況は決して珍しくありません。
しかしこうした場面では、「自分だけ損をしているのでは」と感じる人も出やすく、家族間で意見の食い違いが生じる可能性もあり得るでしょう。
一度気持ちがすれ違うと、関係の修復に時間がかかることも少なくありません。
こうしたトラブルを防ぐには、事前に資産の全体像を共有し、家族へ丁寧に説明しておくことが大切です。
そのうえで会社の株式は後継者にまとめ、他の相続人には現金などで補う「代償分割」という方法を取ると、公平さを保ちやすくなるでしょう。
また遺言書を作成しておく以外にも、家族で話し合った内容を記録として残しておくと、後になって誤解や不満が生まれにくくなり、家族全員が納得して事業承継を迎えられる環境を整えられるのでおすすめです。
事業承継後のトラブルについては、以下の記事もお役立てください。
関連記事:事業承継後のトラブルで起こりやすい事例は?原因や対応策・成功例までまとめて紹介!
会社の相続をスムーズに進めるためのポイント

会社の相続をスムーズに進めるためには、いくつかの段階を意識して準備を整えておくことが大切です。
特に次の4つのポイントを押さえておくと、トラブルを防ぎながら安心して引き継ぎを進められるでしょう。
- 早めに準備を進めておく
- 後継者を計画的に育成する
- 経営権を安定させ相続トラブルを回避する
- 専門的な課題は適切に対処する
それぞれについて、詳しく解説していきます。
早めに準備を進めておく
事業承継は一般的に、5年から10年程度の準備期間が必要と言われていることもあり、思い立ったときが一番の始めどきだと考えます。
「まだ先の話」とのんびり構えているうちに、体調の変化や取引環境の悪化など、思わぬ事情で時間が限られてしまうことがあるため、順調なうちに早めに動き出すことが何より大切と言えるでしょう。
まずは、会社の現状を整理することから始めてみてください。
株の持ち分・借入の状況・主要取引先・社内で中心となって動く人材など、基本的な情報を把握しておくと、その後の計画が立てやすくなります。
次に数年の見通しを立て、「誰に・いつ・どのように」引き継ぐかを大まかに考えてみるとよいでしょう。
完璧な計画でなくても構いませんので、早めに方向性を決めておくことで、関係者との調整や税金対策などを落ち着いて進められるはずです。
後継者を計画的に育成する
事業の引き継ぎを成功させるには、後継者を計画的に育成することが欠かせません。
いきなり経営のすべてを任せるのではなく、少しずつ役割と責任を広げていくのがよいでしょう。
例えば最初は会議で意見を述べる機会を増やし、次に取引先や金融機関への対応を任せ、最終的には経営判断を一人でおこなえるようにするなど、段階を踏んで引き継ぐと、無理なく自信を育てることができるはずです。
先代経営者は口を出しすぎずに見守る姿勢を大切にしながら、ときには失敗を経験させることも、後継者にとって大きな学びになります。
また、育成の方針や進め方を書面にまとめて関係者と共有しておくと、社内全体で後継者を支える体制がつくりやすくなるでしょう。
後継者不在に悩む場合は、以下の記事でその現状や解決策などもまとめていますので、参考にしてください。
関連記事:事業承継の後継者不在の現状は?年代・業界別の問題や原因・解決策もまとめて解説!
経営権を安定させ相続トラブルを回避する
会社を次の世代へしっかり引き継ぐためには、経営権を安定させて相続トラブルを回避する仕組みづくりも大切なポイントと言えるでしょう。
特に、会社の意思決定を左右する「議決権」の配分を、事前にきちんと設計しておくことが大切です。
例えば、相続の段階で後継者が過半数の株式を持てるようにしておくと、重要な判断をスムーズに進めやすくなるはずです。
また、特別な権限をもたせた株式を発行し、経営の方向性がぶれないように整える方法も考えられるでしょう。
さらに、株を誰に譲るか・将来売るときはどうするか・相続が起きたときは誰が引き継ぐかなど、家族や株主の間であらかじめ話し合っておくことも大切です。
その内容を文書にして残しておけば、あとになって「聞いていない」「そんなつもりではなかった」といった行き違いを防ぐことができます。
会社の規模や家族の事情によっては、信託や持株会社の仕組みを活用する方法もありますので、専門家と相談しながら検討し、経営権を安定させて円満な事業承継につなげていくようにしましょう。
専門的な課題は適切に対処する
会社の相続や承継には、税務・法務・労務などの専門的な課題が数多く関わります。
例えば株式の評価・税金の計算・定款の見直し・登記や就業規則の整備などは、判断を誤るとあとで大きな負担になることが考えられるでしょう。
こうした専門分野は自分だけで抱え込まずに、顧問税理士・弁護士・司法書士・社会保険労務士などの専門家と連携して進めるのがおすすめです。
それぞれの立場から意見を出し合うことで、見落としを防ぎ、安心して手続きを進められます。
TORUTE株式会社では、さまざまな専門家と連携を取りながらワンストップで事業承継のサポートをさせていただいています。
初回相談は無料となりますので、ぜひ一度ご相談いただけますと幸いです。

相続で承継すると自社株はどうなる?分散するリスクと法律上の整理
「相続が起きれば、自然と子どもが会社を継ぐ」と考える方は少なくありません。しかし、法律上は相続と経営の承継は別の問題です。相続人が複数いる場合、自社株は原則として相続人全員の共有になり、そのままでは経営が不安定になるおそれがあります。
遺産分割が終わるまで自社株は共有状態になる
社長が亡くなって遺言がない場合、自社株は遺産分割協議が成立するまで相続人の共有(準共有)になります。共有株式の議決権を行使するには、会社法106条により、共有者の中から権利行使者を1人定めて会社に通知する必要があります。
権利行使者の指定は、持分の過半数で決めるとされています(最高裁平成27年2月19日判決)。相続人の間で意見が割れると、株主総会で議決権を行使できず、役員の選任や決算の承認が進まないという事態になりかねません。
遺言と生前の対策で自社株を後継者に集める
自社株を後継者に集中させたいのであれば、遺言書で後継者に承継させる旨を明記するのが基本です。あわせて、生前贈与や売買、種類株式の活用、家族信託などを組み合わせる方法もあります。
どの手段が適しているかは、株価の水準や相続人の人数、後継者の資力によって異なります。遺言の書き方は、自社株や遺留分の注意点を整理した記事も参考になります。
相続人に株式を売り渡させる定款の定め
会社法174条に基づき、定款で「相続によって株式を取得した人に対し、会社が株式の売渡しを請求できる」と定めておく方法があります。後継者以外の相続人に株式が渡ってしまった場合でも、会社が買い取ることで株の分散を防げる可能性があります。
ただし、売渡しの請求には株主総会の特別決議が必要で、相続を会社が知った日から1年以内という期限もあります。また、買い取りには財源の規制もあるため、導入前に条件を確認しておく必要があります。
別記事では「事業承継に遺言書は必要?自社株・遺留分の注意点や作成ステップを解説」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
相続・贈与・売買はどう違う?承継方法ごとに比較
会社を次の世代に引き継ぐ方法は、「相続」だけではありません。生前に贈与したり、後継者に売却したりする方法もあり、それぞれ向き不向きがあります。ここでは、親族内承継で使われる3つの方法を整理します。
| 方法 | 承継の時期 | 主な特徴 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 相続 | 経営者の死亡時 | 遺言や遺産分割で株式を引き継ぐ | 準備不足だと株が分散し、経営が止まるおそれがある |
| 生前贈与 | 経営者の存命中 | 計画的に株式を後継者へ移せる | 贈与税の負担や、他の相続人の遺留分への影響を確認する |
| 売買(譲渡) | 経営者の存命中 | 対価を支払って株式を取得する | 後継者に買い取り資金が必要で、譲渡価格の決め方も論点になる |
相続は「いつ起きるか分からない」ことが課題
相続による承継は、経営者の死亡という時期を自分で選べない点が最大の特徴です。急に代表者が不在になると、金融機関や取引先への対応、従業員の動揺など、短期間で多くの判断を迫られます。
後継者への引き継ぎを経営者の元気なうちに進められるかどうかが、承継全体のスムーズさを左右すると言えます。
生前贈与・売買は準備の期間を確保できる
生前に株式を移す方法は、経営者が後継者を指導しながら段階的に引き継げるのが利点です。一方で、贈与や売買の対価として適正な株価を算定する必要があり、価格によっては税務上の問題が生じることもあります。
株価の評価方法は複数あり、評価額によって贈与税や譲渡の対価が大きく変わります。具体的な水準は、税理士など専門家に確認することをおすすめします。
どの方法を選ぶかは後継者と相続人の関係で決まる
後継者に十分な資金がなければ贈与や遺言が中心になり、他の相続人が多ければ遺留分への配慮が欠かせません。反対に、後継者に資力があれば、売買によって他の相続人との公平を図る方法もあります。
「うちはどれが合うのか」という点は、家族関係や会社の財務状況によって個別に変わります。株価対策も含めて、早めに全体像を整理しておくと選択肢が広がります。
別記事では「事業承継の株価対策とは?3つの評価方式や自社株の引き下げ対策をまとめて解説」、「事業承継の株式譲渡の方法は?メリットや手続き方法・税金の特例制度についても解説」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
後継者以外の相続人への配慮|遺留分と熊本・八代の相談現場から
会社の相続で最もご相談が多いのが、後継者とそれ以外の相続人との間の公平をどう保つかという問題です。熊本市や八代市でも、会社の資産が自社株や事業用の土地建物に偏っているため、分け方で行き詰まる例が見られます。
遺留分を侵害すると金銭請求を受けることがある
兄弟姉妹以外の相続人には、最低限保障される取り分である遺留分があります。後継者に自社株を集中させた結果、他の相続人の遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求を受けて、金銭の支払いを求められる可能性があります。
2019年7月の民法改正以降、遺留分は原則として金銭で請求する仕組みになりました。後継者が現金を用意できない場合、会社の運転資金に影響が出るおそれもあります。
経営承継円滑化法の民法特例という選択肢
中小企業の経営承継円滑化法には、後継者が贈与で取得した自社株について、遺留分算定の対象から除外したり、評価額を固定したりできる民法の特例があります。利用するには、後継者を含む推定相続人全員の合意と、所定の手続きが必要です。
要件が細かく決められているため、使えるかどうかは会社の状況によって異なります。検討する場合は、早い段階で専門家に相談するのが安心です。
家族で話し合うときに押さえたい進め方
遺留分や株の分け方は、経営者が元気なうちに家族で話し合っておくのが理想です。話し合いの結果は、遺言書や合意書として書面に残しておくと、後のトラブルを減らせます。
感情的な対立が起きやすい問題ですので、第三者である弁護士が間に入ることで、冷静に整理できる場合もあります。
別記事では「事業承継の相続対策とは?具体的な方法や気をつけたい落とし穴・活用できる税制も解説」についても解説していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
相続とは「法律に基づいて財産を受け継ぐこと」、一方の事業承継は「会社という事業を、次の世代へ引き継いでいくこと」を意味すると考えます。
相続は亡くなったあとに始まる事後の手続きですが、事業承継は生前からの準備と設計が何よりも大切です。
会社の相続では、一般的な相続手続きに加えて経営権の引き継ぎや登記など、実務面での対応も欠かせません。
また、株式が分かれて意思決定が止まる・借入や個人保証がそのまま引き継がれる・家族間で意見が食い違うなどといったトラブルも起こりやすくなるでしょう。
こうしたリスクを防ぐには、早めに準備を進め、後継者を計画的に育てながら経営権を安定させる仕組みを整えることが重要と言えます。
経営者の集大成として、専門家の力も借りながら、会社を守り次の世代へ想いをつなげる準備を一歩ずつはじめてみてください。
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