事業承継を進めたいと考えてはいるものの、「何から手をつければよいのか」と悩んでしまう方は少なくありません。
事業承継は、順番を決めてひとつずつ取り組むことで、迷いや不安を減らせます。
とはいえ、税金・相続・後継者の育て方など考えることが多く、大変に感じる場面もあるでしょう。
本記事では、事業承継の流れを準備から引き継ぎ、そして引き継いだあとまで順を追ってわかりやすくまとめました。
引き継ぐ内容・必要な書類・利用できる支援制度・事業承継税制の手続きについても詳しく解説します。
ぜひ参考にしていただき、大切な会社の未来を守るための準備を今日から少しずつ始めていきましょう。

目次
事業承継の手順は?
事業承継は、次の手順で進めると整理しやすくなります。
・初期準備【承継前5年~】
会社の現状を見直し、何を引き継ぐか・誰に任せるかを考え始める
・具体的な承継計画と実行準備【承継前1~2年】
承継の計画を形にし、必要な手続きや後継者の準備を進める
・承継の実行と完了手続き【承継実行時】
株式や役職の引き継ぎ・社内外への正式な発表など、実際にバトンを渡す
・新しい会社を安定させる【承継後】
新体制がスムーズに動くように整え、会社を落ち着かせていく
順を追って進めることで、無理なく引き継ぎが進むはずです。
ここから、それぞれの時期に何をするのかを具体的に見ていきましょう。
初期準備【承継前5年~】
事業承継の準備は、できれば5年以上前から進めておくのがおすすめです。
早めに着手することで、会社の現状をしっかり整理でき、後継者の育成や社内外の体制づくりにも余裕が生まれます。
まずは「会社をどの状態で次の世代に渡したいか」という理想像を描き、そのうえで一歩ずつ準備を進めていくのがよいでしょう。
- 現状分析と課題の特定
- 後継者候補の選定と育成計画
- 事業承継の基本方針の決定
初期準備の段階では、これらのポイントに取り組んでいきます。
現状分析と課題の特定
まずは、会社の現状をしっかり把握することです。
以下のような、会社を支える大切な要素をひとつずつ確認していきましょう。
- 売上
- 利益の状況
- 資金の流れ
- 人の配置
- 主要な取引先
- 社内に受け継がれてきた技術やノウハウ
社長だけが把握している情報が多いと、後継者が困ってしまうため、基本的な数字・契約・設備などは早めに整理しておくと安心です。
また、自分だけの視点では気付きにくい点もあるため、専門家などの意見も取り入れることで、取り組むべき優先事項が自然と見えてきます。
一度に完璧を目指す必要はありませんので、できるところから整えていき、次の世代が引き継ぎやすい環境をつくりましょう。
後継者候補の選定と育成計画
後継者を選ぶときは、会社の想いを理解し、落ち着いて判断できる人かどうかを見極めたいところです。
お金・人・現場の状況をバランスよく考えられるかも大切な視点になるため、誰を後継者に選ぶ場合でも、早めに外の経験に触れさせて視野を広げてもらうとよいでしょう。
いきなりすべてを任せるのではなく、段階を踏みながら育てていくのが安心です。
まずは会議や取引先訪問に同席して考え方を共有し、そのあとに一部の業務を任せ、最後に会社全体を託す流れが想定できます。
必要に応じて研修や取引先との面談など、経験を積む場を用意しておくとよいでしょう。
引き継ぐのは仕事の方法だけではないので、「どのように判断するか」という経営の軸を伝えながら、慌てず時間をかけて向き合っていく姿勢が大切と言えます。
もし後継者不在に悩む場合は、以下の記事も参考に、その現状や原因・解決策を知ることからはじめてみてください。
関連記事:事業承継の後継者不在の現状は?年代・業界別の問題や原因・解決策もまとめて解説!
事業承継の基本方針の決定
事業承継の方法には、家族に引き継ぐケース・社内の人に任せるケース・外部の人材や企業に引き継ぐケースがあり、どの方法がよいかは会社の状況や時間の余裕で変わります。
長年の信頼や技術が強みなら社内承継が向いており、成長や再編を進めたい場合は外部の力を借りる選択もあるでしょう。
自身の将来の姿・引退時期・家族の希望・従業員の雇用などを総合的に考え、関係者と意見を揃えておくと安心です。
迷う場合は、事業承継の専門家に早めに相談すると選択肢が広がります。
具体的な承継計画と実行準備【承継前1~2年】
事業承継の方向性が固まったら、ここからは計画を形にする時期に入ります。
会社をどのように引き継ぎ、後継者に何を託すのかを、より具体的に整理していきましょう。
この時期は、主に次の内容に取り組みます。
・事業承継計画書の策定
経営理念や方針、引き継ぎの時期などを文書にまとめて道筋を明らかにする
・後継者への経営指導と引継ぎ
会議や商談へ同席して判断の場を設けながら、徐々に実務と意思決定を任せていく
・株式・資産移転の準備
株式の扱い・契約関係・許認可など、必要な手続きの確認と準備を進める
これらを整理しておくと、いざ承継のタイミングが来たときにスムーズに進められるはずです。
事業承継計画書の策定
事業承継計画書は、会社の未来を描く道しるべと考えます。
- どのような会社にしていきたいか
- どのように役割を引き継ぐか
- 資金や株式をどう扱うか
こういった、これから数年間の方針を整理しておきましょう。
また計画は作って終わりではなく、定期的に振り返り必要に応じて見直すことで、実情に合った「生きた計画」になります。
特に引き継ぎの初年度は会社にとって大切な時期なので、最初の数ヵ月に取り組むことや社内への伝え方を決めておくと周りの理解と協力を得やすくなり、後継者の一歩を支えることができるでしょう。
後継者への経営指導と引き継ぎ
後継者への引き継ぎでは、これまで社長が積み重ねてきた「感覚」や「判断のコツ」を、言葉や手順に落とすことが大切です。
例えば大切なお取引先への訪問に同行させたり、価格の決め方やお金の流れ、人の育て方などをひとつずつ伝えていきましょう。
設備や安全面など、現場で気をつけるポイントも整理しておくと安心です。
また、どこまで任せるかを明確にし、必要以上に承認の手間がかからないようにしておくと後継者が動きやすくなります。
金融機関や主要取引先には、事前に引き継ぎの方針を伝えておくと、外部からの信頼も守れるでしょう。
途中で不安や食い違いが出たときは早めに話し合うなど、小さなことでも放置せず、丁寧に向き合う姿勢がスムーズな承継へとつながるはずです。
株式・資産移転の準備
株式や事業用の財産を引き継ぐ準備は、税金のことや法的な手続きなど、いくつかの視点を合わせて進める必要があります。
会社の価値の算定方法によっては金額が変わることもあるため、早めに試算しておくのがおすすめです。
贈与・相続・売買のどれが自社に合うのか、費用や資金計画とあわせて検討しましょう。
さらに、役員の体制・会社の規程・保証や担保の見直しもおこない、引き継ぎ後に経営が動きやすい状態を整えておくことが大切です。
金融機関とも話をし、経営者保証の扱いについて相談しておくと、後継者の負担を軽くできるでしょう。
こうした手続きは期限が決まっているものも多いため、専門家と計画を共有し、段階ごとに進めると迷いが少なくなります。
承継の実行と完了手続き【承継実行時】
ここまでの準備が整ったら、いよいよ引き継ぎの本番です。
株式や役職の変更、関係者への正式な報告など、会社の代表が変わる大切な節目となります。
スケジュールや手続きが集中する時期なので、専門家と相談しながら確実に進めると安心です。
・株式・資産の正式な譲渡
法的手続きを踏まえ、書類や契約に基づいて確実に進める
・社長交代の法的手続き
登記・印鑑変更・金融機関への届け出など新体制を整えるための手続きをおこなう
・関係者への正式な発表
社内外に新しい体制を伝え、信頼関係を守りながら次のスタートを切る
これらを一つひとつ着実に進めていきましょう。
株式・資産の正式な譲渡
株式や事業用の資産を正式に引き継ぐ段階では、契約や評価の根拠をしっかり残し、手続きを丁寧に進めることが大切です。
贈与・相続・売買のいずれの方法を取る場合でも、株式の価値や受け渡しの内容を、書類にきちんと記録しておきましょう。
このタイミングでは、登記や税の申告など、関連する手続きが続きます。
もし事業の一部を譲る場合には、許認可・契約先の名義変更・従業員の雇用や情報の扱いも確認しておくと安心です。
なお許認可のなかには、事業承継にともなって再取得が必要となるものもあるので、早めに確認しておきましょう。
また、税金の申告には期限が定められています。
事業承継の税制を使う場合は、必要な書類や順番を確認し、チェックリストで管理しておくと抜け漏れなく進められるはずです。
社長交代の法的な手続き
社長が交代する際は、法律に関わる手続きもしっかり済ませる必要があります。
- 代表取締役の変更登記
- 役員の更新
- 会社印や銀行口座の届出
- 許認可の名義変更
これらはまとめておこなうと、手続きが滞りなく進みます。
さらに、社内の規程・書類の管理方法・承認の流れなども新しい体制に合わせて整え、電子契約や経費精算など、日頃使っている仕組みの権限も忘れずに切り替えておきましょう。
法律・税務・労務などの手続きが同時期に重なることも多いため、専門家と役割分担し、期限を確認しながら丁寧に進めていくと安心です。
関係者へ正式に発表する
社長交代は静かに済ませるより、関係者へ正式に発表することが大切と言えます。
まず、従業員には会社のこれからの姿や大切にする考え方を伝え、質問にも丁寧に向き合いながら、安心できる環境づくりを意識しましょう。
取引先や金融機関には、代表交代のお知らせとあわせて事業方針や担当窓口などを明確にしておくことで、相手も安心して取引を続けられるはずです。
名刺やホームページ、会社案内などもあわせて更新すると混乱を防げます。
特に地域とともに歩んできた会社であれば、直接顔を合わせて感謝と決意を伝える姿勢が周囲の応援を生み、よいスタートを後押ししてくれるでしょう。
新しい会社を安定させる【承継後】
承継が完了すれば、そこで終わりというわけではありません。
新しい経営体制を軌道に乗せて社内外の信頼をしっかりと育てていく期間が続くため、前社長の役割や距離感も整理し、後継者が自分の力で舵取りできる環境づくりを進めましょう。
承継後に意識したいポイントは、次の3つです。
・新しい社長の体制を固める
組織体制や意思決定の仕組みを整えて会社としての方向性を示す
・前社長の引退と役割整理
必要なサポートは続けつつも徐々に現場から離れていく
・承継後の安定化に向けた管理
資金繰りや業務管理を見直して新体制が無理なく動く状態をつくる
この時期は、会社の未来がゆっくり固まっていく大切な時間となります。
新しい社長の体制を固める
承継したばかりの時期は、判断のスピードとぶれない姿勢が大切です。
まずは「この1年で取り組むこと」をいくつか決め、毎月の振り返りで進み具合を確認していきましょう。
役割や目標もシンプルにし、評価の考え方を早めに示しておくと、社内の安心につながるはずです。
お金の流れ・在庫・取引先の状況など、経営の足元もこまめに見守りながら、必要に応じて計画を見直します。
また、主要な顧客への挨拶や人材の確保など、将来に向けた動きも早めに始めておくとよいでしょう。
落ち着いて向き合い、迷う場面では最初に立てた計画に立ち戻ることで、周りも安心して協力してくれるはずです。
前社長の引退と役割整理
長く守り育ててきた会社を誰かに託すことには、誇らしさと同時に、寂しさや不安もつきものです。
「本当に任せて大丈夫だろうか」と胸がざわつく瞬間もあって当然と考えます。
だからこそ承継後は、少し距離を置きながら見守る姿勢が大切になります。
しばらくは会長や顧問として、取引先や金融機関との橋渡しを担い、日々の判断は後継者に委ねていきましょう。
どこまで関わるか・会社に来る頻度をどうするかは事前に話し合い、ご自身のこれからの暮らしや資産も整えておくと、気持ちに余裕が生まれます。
現場に口を出すよりも相談に乗り、考えるヒントを渡す役割に回ることで、後継者は自信を持って前に進めるはずです。
引退とは、会社から離れることではなく、支え方が変わるということです。
穏やかにバトンを渡しながら、新しい歩みを見守っていきましょう。
承継後の安定化に向けた管理
引き継ぎが落ち着いたあとは、新しい体制に合わせて会社のやり方を整えていく時期です。
利益の考え方・在庫の管理・設備の点検・書類の整理など、日々の仕組みを少しずつ見直し、新しい会社に合う形に整えていきましょう。
定期的に計画と実績を振り返り、金融機関や取引先とも情報を共有しておくと、信頼関係がさらに強まります。
活用した補助金や制度の効果も見直し、次の投資や人材育成につなげられることが理想的です。
焦らず着実に歩みを続け、新しい会社の力を育てていきましょう。
ここまでで、事業承継の手順についてまとめましたが、以下の記事では「やるべきことリスト」もご紹介しています。
関連記事:事業承継でやるべきことリストを紹介!必要な知識や書類・課題についても解説!
TORUTE株式会社では、無料相談も受け付けておりますので、迷いがある場合は一度ご相談ください。

法人も個人事業主も手順は同じ?
法人でも個人事業主でも、事業承継の考え方そのものは同じです。
今の状況を整理し、どのように引き継ぐかを決めて計画を立てて実行し、会社に定着させるという流れは変わりません。
ただし、手続きはそれぞれ異なります。
法人では、主に株式の引き渡し・役員変更・登記が関わりますが、個人事業の場合は、事業用の財産・許認可・屋号・取引関係の引き継ぎが中心となります。
どちらの場合も、許認可や届出には期限があるため、早めに確認しておくのがよいでしょう。
また、金融機関との関係や保証の扱いが変わることも考えられます。
迷ったときは専門家にも相談しながら、「何を引き継ぐのか」を一覧にして順番にチェックして進めると、漏れなく安心して取り組めるはずです。
事業承継の必要書類は?

事業承継の必要書類は、内容によって異なりますが、一般的には次のようなものが中心になります。
- 株主総会や取締役会での議事録
- 株主名簿や株式の譲渡契約など株式に関する書類
- 役員変更などの登記関係書類
- 税務申告や事業承継税制を使う場合の申請書類
- 許認可や届出の名義変更
- 主要取引先との契約変更
- 就業規則など人事・労務に関する書類
- 銀行手続きや保証に関する届出
どの書類が必要になるかは会社の状況によって変わるので、まずは必要な書類を一覧にまとめ、担当者と期限を決めて進めていくとよいでしょう。
また、事業承継税制を利用する場合は書類や手続きに決まりがあり、都道府県の認定が必要になることもあるため、事前に確認しながら進めるのがおすすめです。
事業承継で引き継ぐ3つの要素とは?

事業承継では、次の3つを引き継ぐことが大切です。
1.資産
株式・設備・土地や建物・運転資金など目に見える財産
2.人と仕組み
役割・権限・会議の進め方・規程やマニュアルなど会社が動くための土台となるもの
3.見えない価値
顧客との信頼関係・職人の経験や勘・会社の評判やブランド・地域とのつながりなど「その会社らしさ」を形づくるもの
事業承継は、これら3つをバランスよく引き継ぐ取り組みと考えます。
目に見える資産だけでなく、仕組みや信頼といった「目に見えない価値」まで丁寧につないでいくことで、次の世代が安心して経営に挑めるでしょう。
事業承継で受けられるサポートはある?
事業承継では、国・自治体・金融機関などから、さまざまなサポートを受けられます。
ひとりで抱え込まず、利用できる制度をうまく活用することで、負担を減らしながら進められるでしょう。
相談窓口や専門家のサポートを通じて幅広い面で支援を得られますが、どの制度にも要件や期限があるため、早めに情報を確かめて計画に組み込んでおくと安心です。
例としては、次のようなものがあります。
- 税制面のサポート
- 融資のサポート
- 経営者保証の解除のサポート
- 補助金や助成金でのサポート
ここからそれぞれの内容をわかりやすく解説するので、必要に応じて活用していきましょう。
税制面のサポート
事業承継では、株式を相続したり贈与したりする際の税負担を大きく軽減できる「事業承継税制」という制度があります。
一定の条件を満たすと株式にかかる相続税や贈与税の納税が猶予され、さらに継続要件を満たし続けた場合には将来的に免除される可能性がある制度です。
ただし、雇用確保要件や事業継続要件など満たすべき条件は複数あり、要件を満たせない場合は猶予が取り消され、利子税とともに納税する必要が生じます。
制度は改正されることもあり、状況によって活用できるかも変わってくるため、しっかりと確認しておくと安心です。
まずは制度の全体像をつかみ、早めに専門家に相談しておくと準備が進めやすくなるでしょう。
融資のサポート
事業承継では、資金面のサポートも受けられます。
例えば日本政策金融公庫には、事業を引き継ぐための資金や設備の入れ替え、運転資金などに使える融資制度があります。
条件を満たすと低い金利で借りられる場合もあるため、後継者にとって心強い仕組みと言えるでしょう。
さらに、資本性ローンという制度を利用すれば、借入金でありながら「自己資本」とみなしてもらえることがあります。
これにより、民間の銀行融資を受けやすくなる場合があるうえ、自治体や信用保証協会の融資制度と組み合わせて使えることも多いので、選択肢を広げながら検討しておくと安心です。
融資を検討する際は、早めに金融機関へ事業計画を伝えておくと、審査も進みやすくなるでしょう。
経営者保証の解除のサポート
会社の借入に対して、社長が個人で責任を負う「経営者保証」については、負担を軽くするためのサポートが広がっています。
一定の条件を満たすことで、保証を外したり条件を緩和してもらえる仕組みが利用できるようになってきました。
例えば法人と個人の資産・経理が明確に分離されていること、財務基盤が安定していること、適時適切に財務情報が開示されていることなどがポイントになります。
国や金融機関の方針として、後継者が保証の負担を背負わなくて済むように支援する方向に進んでおり、保証なしで融資を受けられる制度や保証料の負担を軽くする支援も用意されています。
事業承継のタイミングは、保証の見直しを進めるいい機会です。
後継者の負担が減ることで安心して経営にチャレンジしやすくなるため、金融機関にも早めに相談しながら、無理のない形で進めていくとよいでしょう。
補助金や助成金でのサポート
事業を引き継ぐ際には、国や自治体から、設備投資や新しい販路づくりなどを後押しする補助金・助成金が用意されています。
うまく活用できれば、負担を抑えながら次の成長に踏み出せるでしょう。
代表的なものが「事業承継・M&A補助金(旧:事業承継・引継ぎ補助金)」で、事業承継やM&Aを契機として、新たな取組みをおこなう中小企業等を支援する制度です。
事業承継をきっかけに、新しい取り組みに挑戦する企業を支援する制度で、設備導入や事業転換などに使えるうえ、条件を満たすと補助額の上限が広がる場合もあります。
申請では、今後の計画がしっかりしていることや、地域への貢献が見られるかが評価されます。
電子申請の準備や見積書の用意など、整える書類も多いため、早めにスケジュールを確認して少しずつ準備を進めるとよいでしょう。
事業承継・M&A補助金以外にも、事業承継で活用できる補助金や助成金はいくつかあるので、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:事業承継の補助金や助成金は?2025年度はいくらもらえるのか・対象経費も解説!
TORUTE株式会社でも、さまざまな専門家と連携しながらのサポートが可能ですので、一度お話しをお聞かせいただけますと幸いです。

事業承継税制の手続きの流れは?

事業承継税制には「特例措置」と「一般措置」の2つがあり、それぞれ使える期間や提出期限が異なります。
特例措置に関しては、2027年(令和9年)12月31日までの期間限定の制度であり、特例承継計画の提出期限は2026年(令和8年)3月31日とされています。
事業承継税制を利用するには、都道府県の認定や税務署への届出など、いくつかの手続きが段階的に必要です。
ここでは、手続きの流れを以下の3段階に分けて解説します。
- 承継実行前
- 承継実行時
- 納税猶予期間中
途中で書類や期限を間違えると活用できないこともあるため、無理のないスケジュールでひとつずつ確認しながら進めていきましょう。
承継実行前
まずは、「自社が制度の対象になるか」を確認するところから始めましょう。
株式の状況・雇用の継続・先代や後継者の条件など、制度を利用するためのポイントを整理しておくと安心です。
次に、期限がある「特例承継計画」を作成して提出します。
そのあと、都道府県の認定手続きへと進みますが、日付が決まっている手続きも多いため、スケジュールは早めに確認しておくとよいでしょう。
贈与や相続のタイミング・必要な書類・申告期限は、一覧表にしておくと見落としにくいのでおすすめです。
承継実行時
事業を引き継ぐときは、贈与・相続・売買の方法に合わせて、以下の順に手続きを進めていきます。
- 株主総会などの議事録を作成
- 贈与・相続に関する契約書類を整える
- 登記の変更をおこなう
- 税務申告と納税猶予の申請をおこなう
納税猶予を使う場合は、特に申告期限や認定のタイミングが大切になるため、必要な書類や条件をあらかじめ整理しておきましょう。
また承継後も年次報告などが続きますので、書類や記録の保管方法は最初に決めておくと安心です。
専門家に役割を分担してもらうことで、手続きが止まらずスムーズに進むので、困ったときに相談できる体制を早めにつくっておくのがおすすめです。
納税猶予期間中
事業承継税制を利用したあとは、毎年の報告や決められた条件を守り続ける必要があります。
代表者の変更・組織の見直し・株式の扱いなど、会社の大きな動きがあるときは、事前に制度の要件を確認しておくようにしましょう。
届出が必要な場合もありますから、忘れないよう注意したいところです。
また、雇用や事業規模が変わる可能性がある場合は、早めに専門家へ相談して対応方針を決めておくのがおすすめです。
事業承継税制は、「使って終わり」ではありません。
中長期の計画を持ち、定期的に振り返りながら進めることで、制度のメリットを最大限に活かすことができます。
事業承継税制は、要件をしっかりと理解しておくことも重要なので、以下の記事もぜひご覧ください。
関連記事:事業承継税制の要件とは?特例措置と一般措置の違いやメリット・デメリットも解説
スムーズな事業承継は「TORUTE株式会社」へ

事業承継は、会社ごとに課題も進め方も異なるため、「何から手をつければいいのか」「自社ではどんな制度が使えるのか」など、最初の一歩に迷うこともあるでしょう。
TORUTE株式会社では、現状整理・後継者の育成・計画づくり・株式や資産の承継・税制や補助金や融資の活用・実行後の定着まで、道のりを一緒に歩むスタイルでお手伝いいたします。
必要な手続きは工程表やチェックリストで見える化し、金融機関や他の専門家とも連携しながら、期限や条件をしっかり押さえて進めることが可能です。
社長の思いと、これまで大切に育ててこられた会社の「らしさ」が、次の世代にしっかりと受け継がれるような承継を実現してまいりますので、ぜひ一度ご相談ください。
今日の小さな一歩が、未来の大きな安心につながるはずです。
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まとめ
事業承継は、会社の現状を整理してこれからの進め方を決め、準備・実行し、次の体制をしっかり定着させていくプロセスです。
大切なのは、早めに準備を始め、順番に取り組むことだと考えます。
引き継ぐのは株式や資産だけではなく、人材や日々の仕組み、そして社長が築いてこられた信頼や技術といった「会社の力」も一緒です。
税制や融資などの制度も活用しながら丁寧に進めれば、「今が引き渡すいい機会だった」と実感できる日が来るでしょう。
最初は小さな整理からでも十分なので、行動することこそがこれからの会社を守る力になっていくはずです。
この記事を監修した弁護士
西田 幸広 法律事務所Si-Law代表
弁護士・法律事務所Si-Law/(株)TORUTE代表・西田幸広 熊本県を中心に企業顧問70社、月間取扱160件以上(2025年8月時点)。登録3,600社・20超業種を支援し、M&A・事業承継を強みとする。弁護士・司法書士・社労士・土地家屋調査士の資格保有。YouTubeやメルマガで実務解説・監修/寄稿多数。LINE登録特典で「事業承継まるわかりマニュアル」提供。
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