事業承継補助金は親子間でも対象?要件や申請方法・利用するときの難易度も解説!

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事業承継補助金は親子間でも使えるのか、気にされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特にご家族へ事業を引き継ぐ場面では、「私たちの場合も対象になるのだろうか」と不安を抱かれることも少なくありません。

親子での承継に補助金を活用できるか、どのような条件や手続きが必要なのかをあらかじめ理解しておくことで、安心して準備を進められます。

さらに補助金の仕組みは細かい決まりごとが多く、調べてみても「結局どう進めればいいのか」と迷う場合もあるでしょう。

そこで本記事では、親子間の承継でも対象になるのかという疑問にお答えしながら、必要な条件・申請の進め方・注意点・活用例まで、順を追ってわかりやすく解説します。

まずは何を準備していくべきかが自然と見えてくるはずなので、一歩ずつ取り組んでみてください。

目次

事業承継補助金は親子間でも対象になるのか?

親子間の事業承継でも、事業承継補助金の対象になります。

家族による引き継ぎは、制度のなかでも正式に想定されている形のひとつです。

「親子の間なら、形式だけ整えればよいのではないか」と思われる方もいらっしゃいますが、実際には第三者承継と同じく、しっかりとした準備が求められます。

「何となく引き継ぐ」という進め方になりやすいですが、書類や手続きが曖昧になりがちな点には注意したいところです。

補助金を使うことで、事業承継の流れや役割をあらためて整理し、会社として次のステージに進む態勢を整えられる点も大きなメリットと言えるでしょう。

「親の代から築いてきた会社を、次の世代でさらに伸ばしていく」ための一歩として、計画づくりに取り組むのがおすすめです。

親子間で事業承継・M&A補助金を利用できる要件は?

事業承継・M&A補助金を利用できる要件として、押さえておきたいポイントは3つあります。

1.経営を引き継ぐ実態があること

名義だけではなく、株式・事業用の資産・代表としての権限などが、実際に後継者へ移る必要があります。

2.承継をきっかけとして事業を前に進めること

例えば、設備の更新・ITの活用・人材育成などに取り組み、生産性の向上や賃金の引き上げにつながる計画を示すことが大切です。

3.手続きを正しく進めること

補助金が正式に認められる前に契約や支払いをおこなうと対象外になるため、見積りから支払いまでの流れを丁寧に整えておくと安心です。

親子間の承継でも、第三者承継と同じ条件が適用されるため、形式と内容の両方をしっかり整えておくほど審査でも信頼を得やすくなります。

少し手間はかかりますが、それだけ「安心できる継承」につながると考え、落ち着いて準備を進めていきましょう。

次に、親の立場や会社の形によって確認するポイントをご紹介します。

  • 親が法人代表者の場合
  • 親が個人事業主の場合

状況に合わせて、参考にしてください。

親が法人代表者の場合

親御さんが株式会社や合同会社の代表を務めている場合、まず大切になるのは、「株式」と「代表としての権限」がきちんと次の世代に移ることです。

これは単なる肩書きの変更ではなく、経営の舵取りそのものをしっかり引き継ぐという意味を持ちます。

そのため、株主総会での決議や法務局での役員変更登記の時期、株式の移転割合や議決権の扱いなどを、あらかじめ整理して計画に示しておくことで、あとの混乱を防げるでしょう。

また、古くなった機械の更新・作業工程の自動化・原価管理のクラウド化などといった、承継後の設備投資や業務改善の計画も重要です。

取り組む内容と、生産量・作業時間・利益率の改善などの効果をあわせて示しておくと、説得力が高まるでしょう。

なお、承継後に前経営者が顧問として関わる場合でも、最終的な意思決定は後継者がおこなう体制にしておくことが大切です。

こうして役割を整理しておけば、補助金の審査でも評価されやすくなり、何より社内外に安心感が生まれます。

法人の場合の事業承継の詳しい手続きについては、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:事業承継の手続きで法人の場合の流れは?必要書類や税金などの費用・補助金もまとめて解説!

親が個人事業主の場合

親御さんが個人事業として経営されている場合は、会社の形とは少し異なり、日々の商売の実態をきちんと引き継ぐことが大切になります。

具体的には、以下のようなものを無理のない形で後継者へ移していきます。

  • 事業で使っている設備・車両・工具などの資産
  • 許認可の名義
  • 取引先との関係
  • 従業員の雇用

屋号だけ名前を変えるやり方では不十分で、実際に使っているものや取引の流れまで引き継ぐ必要がある、と考えるとわかりやすいかもしれません。

また、事業をしっかり運営していける体制が整っているかを確認するため、後継者の方がこれまでどのような形で事業に関わってきたかも重要になります。

例えば、現場での経験や事務作業の関わりなど、おおむね3年以上の実務経験を示せると安心でしょう。

設備投資の内容としては、以下のように日々の負担が軽くなり、仕事が回しやすくなる内容を選ぶのがおすすめです。

  • 作業工程を見える化して無駄をなくす取り組み
  • 車両や機械の更新
  • 受発注や経理のクラウド化 など

さらに許認可の名義変更や手続きのタイミングと、補助事業のスケジュールがちぐはぐにならないよう、あらかじめ順序を決めておくとよいでしょう。

親子間だと事業承継・M&A補助金でいくらもらえる?

補助金の上限額は申請のタイミングや制度の区分によって変わる場合がありますが、一般的な事業承継・M&A補助金の「事業承継促進枠」では、数百万円規模の支援を受けられる場合があります。

さらに一定の条件を満たすことで上限が上がる仕組みで、補助率は通常、費用の3分の2以内(条件によっては2分の1以内)となり、残りは自身での負担という形になります。

また、事業を引き継ぐ際に廃業をともなう場合は、店舗の原状回復や登記など一部の費用が追加で支援されることもあるでしょう。

補助金の金額だけに目が向きがちですが、「どの投資をどのタイミングでおこなうか」を事前に考えておくことが大切です。

資金繰りの流れを意識し、あとで慌てないよう準備しておくと、実績報告まで落ち着いて進められます。

なお、上限額に合わせて無理に投資内容を広げる必要はなく、本当に必要な部分に絞って着実に取り組むほうが、結果として成功につながりやすくなるでしょう。

親子間の事業承継・M&A補助金の対象経費

親子間の補助金の対象経費をイメージした画像

補助金の対象になりやすい費用には、機械や設備の購入・システム導入・建物の改修といった設備投資に関わるものがあります。

その他、以下のようなものも含まれます。

  • 外部の専門家にお願いする費用
  • 特許など知的財産の取得費用
  • 事業を広く知っていただくための広報費
  • 必要に応じた旅費 など

ただし、どの費用でもよいというわけではなく、事業承継を機に、会社をより良くしていく取り組みかどうかが判断の基準になります。

維持費や普段の給与のような人件費は、対象外と考えておくとよいでしょう。

一方で、以下のような内容は原則として認められません。

  • 株式の取得代金
  • 前経営者の退職金
  • 補助金が正式に決まる前に支払った費用 など

補助金を使う場合は、費用の見積書や支払いの記録をきちんと揃えておくことが必要になるため、対象となる支出ごとに内容がわかる見積書を用意しましょう。

できれば複数社から見積りを取って比較するのが基本で、金額だけでなく、仕様や納期なども確認しておくと安心です。

また、領収書や振込の明細、納品書などの支払いに関する書類は、時系列で整理しておくとあとの手続きがスムーズになります。

親子間の事業承継・M&A補助金の申請方法

事業承継・M&A補助金の申請は、基本的にインターネット上でおこないます。

まず、後継者が申請用のIDを取得し、会社情報や担当者の登録を進めたうえで、必要な書類を揃えていきます。

例えば、以下のようなものが必要です。

  • 事業の見通しをまとめた事業計画書
  • お金の流れを示す収支計画
  • 組織の体制図
  • 承継の進め方を示した資料
  • 設備などの見積書一式
  • 認定経営革新等支援機関による確認書類確認書類 など

計画書では、以下の内容を、順を追ってわかりやすく書くとよいでしょう。

親子間の補助金の申請方法をイメージした画像

読み手にとって理解しやすい流れにしておくと、内容がしっかり伝わり、審査も進めやすくなるはずです。

提出後、内容の確認で差し戻しが入る場合がありますが、焦らず、指摘事項に沿って落ち着いて丁寧に進めていきましょう。

2025年の事業承継・M&A補助金のスケジュール

2025年の「事業承継・M&A補助金」は、すでに以下の3回の期間で募集がおこなわれており、いずれも締め切り済みです。

  • 5月9日〜6月6日
  • 8月22日〜9月19日
  • 10月31日~11月28日

2025年12月時点で、2026年のスケジュールについては公表されていません。

参考:事業承継・M&A補助金

一概には言えませんが、毎年春〜秋にかけて複数回の募集がおこなわれる傾向があるため、この期間に向けて事前に準備を進めておくと安心でしょう。

また、事業の引継ぎ時期や登記の手続きと補助事業の期間がずれないよう、早めに無理のないスケジュールを組んでおくことで落ち着いて進められます。

今後の正式な日程を早めに把握できるように、国や支援機関から発表される情報を定期的に確認しておくのがおすすめです。

事業承継・M&A補助金の募集に向けて、着実に準備を進めたい場合は、TORUTE株式会社にご相談いただけますと幸いです。

​​親子で事業承継をする場合の税金は?

親子で事業を引き継ぐ場合でも、税金の考え方はとても大切です。

株式や事業用の財産を贈与するのか、前経営者が亡くなったあとに相続で受け継ぐのか、それとも売買という形を取るのかによって、負担する税金が変わります。

【承継の方法と主な税金】

  • 贈与で引き継ぐ場合:贈与税
  • 相続で引き継ぐ場合:相続税
  • 売買で引き継ぐ場合:譲渡所得税

【名義変更にともなう税金】

  • 登録免許税(名義変更時)
  • 不動産取得税(土地・建物がある場合)

家族間の事業承継は、家族だからこそ「なんとなく進めてしまう」こともあるかもしれませんが、制度上は選び方ひとつで税負担が変わることがあります。

早めに方向性を整理し、安心してバトンを渡せる準備をしておくと、家族にも従業員などの関係者にも納得してもらいやすくなるでしょう。

そのうえで、状況によっては「事業承継税制」が活用できる場合もあります。

税額を抑えたり、納税の時期を後ろにずらすこともできる制度なので、専門家と相談しながら検討しておくと心強いです。

税金対策で使える補助金はある?

結論からお伝えすると、税金そのものを直接減らす補助金はありません。

ただし補助金を活用して設備投資やIT化を進めることで、事業の収益力を高め、結果として税負担に対応できる余力をつくることは可能と言えるでしょう。

例えば以下のような取り組みは、将来の利益と資金余力を生み、納税資金の確保にもつながります。

  • 生産効率の高い機械を導入して原価を抑える
  • 経理や受発注をクラウド化し、残業削減や人件費の最適化を進める

つまり「税金を減らす補助金」というより、税負担に備えられる体質に変えるための後押しと考えるとわかりやすくなるでしょう。

なお、複数の制度を併用する際は、同じ経費を2つの補助金に使えないというルールがあります。

そのため、「どの費用をどの制度に使うか・実施時期をどう分けるか」を事前に整理しておくと、スムーズに進められるはずです。

事業承継の費用は誰が負担するの?

事業を引き継ぐ際には、誰がどの費用を負担するのかを、最初に整理しておくことが安心につながると言えるでしょう。

一般的には、株式を買い取るお金や前経営者の退職金など承継そのものに関わる費用は、後継者や承継後の会社が自己資金や借入で準備します。

一方で、承継後におこなう設備投資や必要な廃業費用の一部などは、補助金の対象になる場合があります。

資金計画を立てる際は、以下の3つをまとめ、お金が入る時期・出る時期を並べて確認することが大切です。

  • 自己資金
  • 銀行からの融資
  • 補助金の入金時期

事業の引き継ぎは支払いが先に発生することも多く、手元のお金が一時的に少なくなる場合があるため、そういった時期を事前に把握しておくことで、資金が不足して慌てる心配を減らせるでしょう。

また、支払いに使う口座名義・領収書の宛名・振込人の記載などは、申請者に揃えておくと手続きがスムーズになります。

誰がどの費用を負担するのかは、親子間で書面に残しておくと、後々の誤解や負担感を防げるはずです。

以下の記事では、事業承継の費用の相場についても解説しています。

具体的な費用感がつかめれば、費用負担についてもイメージしやすくなると思うので、ぜひ参考にしてください。

関連記事:事業承継の費用の相場はどれくらい?税金対策や補助金・誰が負担するのかも解説!

事業承継・M&A補助金は何年以内なら使える?

事業承継・M&A補助金は、一律の「〇年以内」という決まりはありませんが、枠ごとに「承継の時期」に関する条件があります。

例えば、申請時点で承継がすでに完了していることを求める枠もあれば、申請時は予定でもよく、補助事業期間内に承継を完了させることを条件にする枠もあります。

共通して気をつけたいのは、交付決定より前の支払いは対象外という点です。

株式の移転・代表交代・設備の発注や支払いは、補助金の対象期間のなかでおこなう必要があるため、先に動いてしまわないよう順番と時期を前もって決めておくのがおすすめです。

もし承継を段階的に進める場合は、次のように考えると整理しやすくなるでしょう。

  • 第1段階:株式を引き継いで、代表を交代する
  • 第2段階:設備投資やIT導入を進める

それぞれの期限や必要書類をあらかじめまとめておくと、あとから「どの段階が終わっていて、何が残っているのか」がひと目でわかり、手続きに追われることがなくなるはずです。

親子間の事業承継・M&A補助金を利用するときの注意点

親子間で補助金を利用するときの注意点をイメージした画像

親子で事業承継・M&A補助金を利用する場合、家族間ならではの安心感がある一方で、制度上は一般の承継と同じルールが適用されます。

少し慣れない部分もあるかもしれませんが、「どの枠が使えるのか・どんな準備が必要か」をあらかじめ把握しておくと、手続きがぐっと楽になるでしょう。

ここでは、親子間で事業承継・M&A補助金を利用するときに、特に気をつけたいポイントを6つご紹介します。

  • 利用できる「枠」が制限されている
  • 代表権を完全に交代させる必要がある
  • 後継者(子)の実務経験が問われる
  • 贈与・相続でも正式な手続きが必要になる
  • 事業承継前の費用は補助対象外になる
  • 補助金にも税金がかかる

安心して事業承継を進めるためにも、参考にしてください。

利用できる「枠」が制限されている

事業承継・M&A補助金にはいくつかの申請枠がありますが、親子で事業を引き継ぐ場合に使える枠は限られています。

なかでも利用しやすいのが、次の2つです。

  • 事業承継促進枠:親子・親族内での代表交代や株式の移転をともなう承継に対応
  • 専門家活用枠:専門家の支援を受けながら承継を進める場合に活用できることがある

※工場や店舗を閉じるケースでは、廃業・再チャレンジ枠が対象になる可能性もあります。

制度上、選べる枠はひとつだけなので、途中で枠を変更すると資料の作り直しが必要になることで準備が大幅に遅れてしまう可能性が考えられます。

ですから最初の段階で、「どの枠が最も適切か」を家族や専門家と相談しながら決めておくと、申請準備を迷わずに進められるでしょう。

代表権を完全に交代させる必要がある

補助金を利用する際は、「名義だけの交代」ではなく、実際に経営の権限が後継者へ移っていることが求められます。

例えば親が株式の大半を持ったままの状態や、形式上だけ社長を交代する形では、十分な承継とは判断されにくいでしょう。

  • 株式や議決権の移し方
  • 役員体制の見直し
  • 銀行口座や印鑑の管理権限
  • 社内の決裁ルール

これらを通じて、会社の大切な判断は後継者がおこなう体制に整えておくことが大切です。

前経営者が相談役や顧問として関わり続けること自体は問題ありませんが、あくまでも最終判断は後継者、という形にしておくと制度の要件にも合い、周りの安心にもつながります。

後継者(子)の実務経験が問われる

補助金の申請では、後継者が会社の仕事をしっかり理解し、運営できる力を持っているかが確認されます。

  • どれくらいの期間、会社で働いてきたか
  • どんな部署や業務に関わってきたか
  • 役員経験があるか

こういった点を、資料や経歴で示さなければなりません。

もし、「まだ経験が少ないかもしれない」と感じる場合でも心配はいりません。

  • 社内での引き継ぎ計画
  • 技術指導や経理・税務のサポート体制
  • 顧問税理士や外部専門家による支援

これらのようなバックアップ体制を、補助金を活用する期間に一緒に示せば大丈夫と言えるでしょう。

贈与・相続でも正式な手続きが必要になる

親から子へ株式や事業の財産を引き継ぐ場合、贈与であっても相続であっても、正式な手続きが必要です。

「親子だから口約束で大丈夫」「あとでまとめて処理すればいいだろう」という対応では、後々トラブルになったり、補助金の要件を満たさないと判断されてしまう可能性も考えられます。

税金の計算や評価が必要になるため、専門家にも相談しながら、以下のような流れをきちんと踏んでいきましょう。

  • 契約書を交わす
  • 登記や名義変更をおこなう
  • 贈与税や相続税の申告を準備する

書類の日付・金額・当事者名なども書面として残しておき、「家族のなかで自然に引き継いだつもり」ではなく、外から見ても正しく引き継いだとわかる状態にしておくことが大切です。

事業承継前の費用は補助対象外になる

補助金は、国からの交付決定を受けてから発注した費用だけが対象になります。

つまり、交付決定の前の契約や発注、支払いなどの費用は、補助の対象外です。

「早く準備したいから」と先に設備を押さえてしまい、気付いたら日付が交付決定より前だった、というような失敗はよく見られます。

こうしたトラブルを防ぐために、以下のような工夫をしておくと安心でしょう。

  • 見積書は有効期限を長めに確保する
  • 発注する日をスケジュール表で決めておく
  • 納品・検収の時期も補助期間内に収める

もし、どうしても先に動く必要がある場合は、その費用は補助の対象外として扱うという選択肢もあります。

大切なのは、焦らず、計画全体の流れを優先しながら丁寧に進めることと言えます。

補助金にも税金がかかる

補助金は助けになる一方で、受け取った金額は利益として扱われ、税金の対象になります。

そのため、入金があっても「自由に使えるお金がそのまま増える」というわけではなく、納税分を見込んでおく必要があるのです。

また、設備投資をした際の減価償却や、収益をいつ計上するかといった会計処理の方法によって、実際の税負担が変わることもあるでしょう。

不安があれば専門家と相談しながら、納税のタイミングと必要な資金を早めに確保しておくのがおすすめです。

銀行と話す際も、「補助金の進み具合」とあわせて納税資金の予定を伝えておくと、資金繰りの相談がスムーズになるはずです。

事業承継・M&A補助金の難易度は?

事業承継・M&A補助金は、決して「簡単に通る制度」とは言えません。

応募が多い時期は特に、しっかりと準備した計画でなければ採択が難しくなるでしょう。

とはいえ、難しさの理由は「特別な専門知識が必要だから」ではありません。

ポイントは、以下の道筋がしっかりと通っているかどうかです。

  • いま会社にどんな課題があるのか
  • その課題を解決するために何をするのか
  • その結果どんな良い変化が生まれるのか

反対に、承継と関係の薄い投資や目的がぼんやりした計画だと、残念ながら選ばれにくくなるでしょう。

  • 早めに制度の条件を確認する
  • 認定支援機関に相談しながら進める
  • スケジュールや必要書類を前もって整える
  • 賃上げや地域貢献といった評価ポイントも意識する

採択に近づくためには、こうした準備が大切になります。

手間はかかりますが、そのぶん承継後の会社が強くなるサポート制度だと考え、丁寧に取り組んでみてください。

事業承継・M&A補助金をスムーズに進めるための3つのポイント

親子での事業承継は、気持ちの面でも実務の面でも大きな節目と考えます。

補助金をうまく活用できれば、設備更新やIT化など、次の成長につながる後押しになるでしょう。

その一方で手続きには細かなルールがあるため、「申請してみたけれど準備不足でやり直しになった」「採択されたのに支払い手順でつまずいた」といったトラブルを防ぐためにも、最初の進め方がとても大切です。

スムーズに進めるために、特に意識しておきたいポイントは次の3つです。

  • 要件を確実に把握して早めに計画を立てる
  • 専門家のサポートを受けて税制との両立を図る
  • 交付決定後の厳密な費用管理と納税資金を準備する

ここから、それぞれの進め方について解説します。

要件を確実に把握して早めに計画を立てる

まず最初に、補助金を受けるための条件をひと通りまとめてみましょう。

  • どうやって事業を引き継ぐのか
  • どんな設備や取り組みにお金を使うのか
  • 売上や効率などでどんな成果を目指すのか
  • いつ・どの順番で進めるのか
  • 必要な書類や証明は何か

こうしたことを見える形にし、登記の日程・設備の納品日・支払い日・報告期限などを並べてスケジュールを作るのがおすすめです。

わからないところは、まず大まかな計画をつくり、早めに支援機関や専門家へ相談しましょう。

専門家のサポートを受けて税制との両立を図る

補助金の申請では、税金の扱いも同時に考える必要があります。

例えば株式を移す時期や設備投資のタイミングによって、補助金の要件だけでなく、贈与税・相続税・法人税の負担にも影響することがあります。

ただこうした点を一人で判断するのは、どうしても不安が残ると考えますので、専門家と早めに連携し、役割を分けて動くことをおすすめします。

書類はしっかりと整理し、月に一度くらいのペースで、「進み具合はどうか」「必要な手続きに抜けはないか」を話し合う時間をつくると安心できるでしょう。

社内の担当者にも一緒に参加してもらうことで、現場の理解も深まり、承継の体制が自然と整っていくはずです。

交付決定後の厳密な費用管理と納税資金を準備する

補助金は、先に会社が費用を支払い、あとで国からお金が戻ってくる仕組みです。

つまり、機械を購入したり工事をおこなったりしたあと、証明書類をそろえて報告し、審査を経てから補助金が振り込まれます。

そのため、支払いのタイミングと入金のタイミングにずれが生じ、一時的に手元の資金が減る時期があることを、あらかじめ想定しておきましょう。

支払いは、基本的に会社名義の銀行口座からおこないます。

  • 領収書
  • 振込明細
  • 納品書

これらの金額や納品日が見積書と合っているかを確認し、まとめて保管しておきましょう。

また必要に応じてつなぎ融資を検討したり、納税分のお金も別に控えておくと、あとから慌てることを減らせるはずです。

親子で事業承継・M&A補助金を活用した事例は?

ここでは、親子で事業承継・M&A補助金を活用し、会社の新しい一歩につなげた例を2つご紹介します。

まず奈良県の「あたらしや旅館」では、先代の体調が優れなくなったことをきっかけに、父から養子である現経営者へとバトンを渡されたそうです。

その際、事業承継・M&A補助金(経営革新×創業支援型)を活用し、浴場のろ過器の入れ替えや脱衣所の拡張など、設備の改修を進めています。

日帰り温泉サービスの開始に向け、無理のない形で新たな一歩を踏み出した事例と言えるでしょう。

参考:事業承継・M&A補助金 実例集|1. 経営革新 × 創業支援型

また山形県の「小松写真印刷」では、祖母から孫へ経営を引き継いだあと、AI搭載のデジタル印刷機を取り入れ、自社の生産体制を見直したそうです。

こちらも事業承継・M&A補助金(経営革新×経営者交代型)を活用し、将来を見据えた設備投資をおこなっています。

家族が思いをつないだうえで、新しい取り組みに挑む姿勢が示されています。

参考:事業承継・M&A補助金 実例集|2. 経営革新 × 経営者交代型

その他にも親子間で使える補助金や助成金はある?

事業を引き継ぐ際には、ほかの補助金を上手に組み合わせると、より効果が高まります。

例えば設備の導入には「ものづくり補助金」、システムやクラウドの導入には「IT導入補助金」、販路開拓には「小規模事業者持続化補助金」が活用できます。

まず事業承継補助金で土台となる設備や体制を整え、そのうえで別の制度を使い、必要な機能を少しずつ広げていく流れを意識するとよいでしょう。

ただ、同じ経費で複数の補助金を受け取ることができない点には注意しなければなりません。

また、制度ごとに手続きの時期や報告の期限が異なるため、しっかりとスケジュールを組み、社内にも共有しやすいようにしておくのがおすすめです。

事業承継で使える補助金や助成金の詳細や具体的な金額については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:事業承継の補助金や助成金は?2025年度はいくらもらえるのか・対象経費も解説!

事業承継・M&A補助金のお手続きは「TORUTE株式会社」へ

TORUTE株式会社への相談をイメージした画像

親子での事業承継は、経営だけでなく、心のバトンを受け渡す大切な時間と考えます。

補助金の活用は大きな助けになりますが、要件の確認・計画書作成・申請手続きなど慣れない点が多く、戸惑う場面もあるかもしれません。

そんなときは、どうぞ抱え込まず、ご相談いただければと思います。

TORUTE株式会社では、承継の計画づくりから申請、そして採択後のフォローまで、専門家と連携しながら丁寧にお手伝いさせていただきます。

「家業をしっかり未来につなぎたい」「失敗なく落ち着いて進めたい」という思いを理解し、無理のない形で伴走するスタイルです。

もし少しでも不安や悩みがございましたら、初回は無料で相談が可能ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

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ご家族の思いと会社の未来が穏やかにつながっていくような承継を、ともに叶えられますと幸いです。

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まとめ

事業承継補助金は、親子で会社を引き継ぐ場合でも利用できます。

ポイントは、名義だけでなく実際の経営や判断をしっかり次の世代に渡しながら、設備の更新や新しい取り組みに少しずつ挑戦することと言えるでしょう。

補助金の決定前にお金を使ってしまうと対象にはならないため注意しながら、領収書や契約書などの書類を早めに整理しておくのがおすすめです。

焦らず、専門家にも相談しながらご家族や社員の気持ちにも心を配り、できるところから一歩ずつ取り組んでみてください。

しっかり備えておくことで、次の世代へ安心して事業を引き継ぐ道が開けていくはずです。

西田 幸広 弁護士

この記事を監修した弁護士

西田 幸広 法律事務所Si-Law代表

弁護士・法律事務所Si-Law/(株)TORUTE代表・西田幸広 熊本県を中心に企業顧問70社、月間取扱160件以上(2025年8月時点)。登録3,600社・20超業種を支援し、M&A・事業承継を強みとする。弁護士・司法書士・社労士・土地家屋調査士の資格保有。YouTubeやメルマガで実務解説・監修/寄稿多数。LINE登録特典で「事業承継まるわかりマニュアル」提供。

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