事業承継とは?基本的な考え方や支援制度・手順までをわかりやすく徹底解説!

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事業承継とは、会社の舵を次の担い手に渡し、これまで積み上げてきた信用・技術・人脈を未来へつなぐための取り組みです。

とはいえ、「事業承継とは何かをわかりやすく知りたい」「専門用語が多くてとっつきにくい」と感じ、先送りしてきた経営者の方も多いのではないでしょうか。

実際に事業承継は「社長交代」の一言では片付かず、人(経営権)・資産・知的資産をバランスよく引き継ぐ計画が求められます。

本記事では、基本概念の整理から、親族・社内・第三者(M&A)の選択肢、事業承継を進めるための準備と手順、費用や支援制度、成功のポイントまでをわかりやすく解説します。

読み終える頃には、自社の状況に合った進め方が具体的に描け、家族や従業員、取引先に自信を持って「次の一手」を説明できるようになるはずです。

目次

この記事を監修した弁護士

西田 幸広 弁護士

西田 幸広 法律事務所Si-Law代表

弁護士・法律事務所Si-Law/(株)TORUTE代表・西田幸広 熊本県を中心に企業顧問70社、月間取扱160件以上(2025年8月時点)。登録3,600社・20超業種を支援し、M&A・事業承継を強みとする。弁護士・司法書士・社労士・土地家屋調査士の資格保有。YouTubeやメルマガで実務解説・監修/寄稿多数。LINE登録特典で「事業承継まるわかりマニュアル」提供。

事業承継とは?

事業承継とは、経営権(代表権・議決権)と株式・不動産・設備などの資産、そして目に見えない知的資産(ブランド・顧客との信頼・技術やノウハウ・社内の暗黙知)を後継者へ計画的・段階的に引き継ぐことです。

単なる役職交代でも、株式の名義変更だけでも十分ではありません。

会社の価値を壊さず、むしろ高めながらバトンを渡すためには、

  • 誰に
  • 何を
  • どの順番で
  • どうやって
  • どこまで引き継ぐか

といったことを言語化し、工程表に落とし込む必要があります。

さらに金融機関や主要取引先、従業員といった利害関係者に対し、「変えるべき点」と「守るべき点」を明確に伝えるコミュニケーション計画も不可欠です。

事業承継と事業継承の違いとは?

「事業承継」と「事業継承」は似た言葉ですが、実務では事業承継が正式な用語として用いられます。

「跡を継ぐ」という意味に、法務・税務・人事・金融などの総合的設計を含んでいるのが、事業承継です。

一方、事業継承はより一般的な「引き継ぎ」を表す言葉に近く、会社の経営資源全体を包括するニュアンスは必ずしも強くありません。

計画書・社内規程・外部説明資料では「事業承継」で用語を統一し、対象資産や意思決定の流れ・時系列・責任者を書面で明確化することがトラブル防止につながります。

事業承継とM&Aの違いは?

事業承継は「誰に引き継ぐか」を含んだ大きな概念で、M&Aはその具体的手段の一つです。

親族や従業員へ引き継ぐ場合は、相続・贈与や株式移転、役員体制の変更が中心となります。

第三者へ託す場合は、株式譲渡・事業譲渡・会社分割などのM&Aスキームを活用します。

具体的には、以下のようなプロセスです。

  1. 1.相手探し(マッチング)
  2. 2.基本合意(LOI)
  3. 3.デューデリジェンス(DD)
  4. 4.最終契約
  5. 5.クロージング
  6. 6.PMI(統合)

秘密保持と情報開示のバランス・価格や表明保証・統合計画の実行力が成否を分けます。

事業承継とM&Aの違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:事業承継とM&Aの違いは?メリットとデメリットや選び方のポイント・課題も徹底解説!

事業承継の株式譲渡と事業譲渡の違いは?

株式譲渡は、会社の価値を構成する要素を包括的に引き継ぐ概念です。

これに対し事業譲渡は、対象事業や資産・負債を項目ごとに譲り渡す手法で、譲渡範囲を柔軟に選べる一方、許認可の再取得が必要になるなど手続き負担が増える場合があります。

工場や特定ブランド事業のみを切り出す際に有効ですが、譲渡後の人材・顧客の定着をどう担保するかが実務上の焦点となります。

事業承継の現状とは

中小企業の経営者の高齢化が進むなか、後継者の確保は全国的な課題です。

親族内での事業承継が相対的に減り、社内承継や第三者承継(M&A)の選択が増えています。

廃業を避けるためのM&Aは、身売りではなく地域に残したい技術・雇用・ブランドを守るための判断としてとらえられるようになりました。

一方で、税負担や相続人間の公平・社内の合意形成・買い手とのカルチャーフィットなど、検討すべき論点は多岐にわたります。

共通して言えるのは、早い段階から準備を始めた会社ほど選択肢が広がり、交渉力も高まるということです。

事業承継の3つの要素

事業承継の中核は、「人(経営権)・資産・知的資産」の三位一体です。

事業承継の3つの要素をイメージした画像

いずれか一つでも欠けると、社長交代後に価値毀損が生じやすくなります。

ここでは、それぞれの要素について解説していきます。

人(経営権)の承継

人(経営権)の承継とは、代表権・議決権・役員構成・意思決定プロセスの移行です。

印鑑や実印カード・ネットバンキング権限・重要契約の当事者変更・金融機関の与信見直しなど、名義と権限の実務を抜け漏れなく整理します。

就任発表は「守るもの・変えるもの」を明確にし、最初の90日で信頼を獲得する計画(クイックウィン)を用意すると、社内外の不安が和らぎます。

資産の承継

資産の承継とは、株式集約・資本政策・不動産や設備・知的財産権・借入金の保証や担保を含む資産や負債の移転設計です。

相続・贈与・売買を組み合わせ、遺留分や他の相続人の生活設計にも配慮します。

事業承継税制をはじめとした制度活用や、分割・持株会・信託の活用により、事業継続性を最優先に据えた設計がポイントになります。

知的資産の承継

知的資産の承継は、顧客との信頼・仕入先との暗黙のルール・工程のコツ・ブランドストーリーなど形式化しづらい価値の引継ぎです。

マニュアルや動画化・同行訪問・社内Wiki・OJTの設計により、「なぜそれをやるのか」まで含めた背景を後継者へ背景も含めて後継者へ引き継ぎます。

キーパーソンの離職を防ぐため、評価制度や報酬の見直し等についても検討の必要があるかもしれません。

事業承継の3つの種類

事業承継の方式には、以下の3つの種類があります。

  • 親族内承継
  • 従業員承継
  • M&Aによる第三者承継

どの方法を選ぶのが正解なのかは、会社の規模・財務・家族構成・人材状況・地域性によって変わります。

実務では、複数の選択肢を並走させながら時間軸で意思決定するのが安全です。

親族内承継

まず親族内承継とは、親族(子・配偶者・兄弟姉妹など)に引き継ぐ方式です。

理念や会社の歴史を自然に共有しやすく、社内外に受け入れられやすい一方で、相続の公平性や税負担は課題にあがりやすくなります。

そのため、後継者の意思と適性を早期に確認し、教育ロードマップと資本政策を連動させるのがおすすめです。

オーナー家の資産分配と会社の経営安定はしばしば緊張関係にあるため、「株式は集中・現金で調整」の原則を意識することが大切になります。

家族会議でもしっかりと議事録を残し、合意形成を積み上げるようにしてください。

親族内承継のメリット

親族内承継は、価値観や経営哲学の連続性が保たれやすく、主要取引先や金融機関からの信頼を得やすい点が大きなメリットです。

幼少期から現場の様子を見て、学生時代に工場作業や営業同行を経験するなど早期からの育成が可能で、社内の心理的安心を維持しやすいのも強みになります。

また、社外に情報を広く開示しなくても準備が進めやすく、プライバシー確保の観点でも有利です。

親族内承継のデメリット

一方、相続人間の公平性(遺留分)や、同族内の力学が摩擦を生みやすく、後継者の適性・覚悟・健康状態がともなわない場合は「名目だけの交代」に陥るリスクがあります。

親族ならではの遠慮や甘えが、意思決定速度を鈍らせることもデメリットです。

これを避けるために、売上責任・採用権限・投資承認額などの権限移譲の数値目標を事前に合意し、社外メンターを配置しておく等の対策も有効です。

従業員承継

次に、従業員承継とは、役員・幹部・有力社員など社内の人材に引き継ぐ方式です。

現場理解が深く、顧客・従業員の不安を抑えて移行しやすいのが特徴です。

一方で、株式取得資金やガバナンス設計が課題になりやすく、オーナー家の資産分配との両立に時間を要するケースがあります。

持株会・信託・第三者割当増資などを使いつつ、責任と権限のバランスを整えることが鍵です。

従業員承継のメリット

従業員承継は事業の連続性が高く、業務の中で自然に身につけた言葉にならないノウハウ(暗黙知)や社内の慣習が、日々の業務の延長でスムーズに新しい経営者へ大量に引き継がれます。

顧客接点や現場の段取りを変えずに移行でき、取引先への影響を最小化できます。

外部への情報開示を最小限に抑えられるため、競合に動きを察知されにくい点も実務上のメリットです。

従業員承継のデメリット

一方、従業員承継の最大の壁は、資金調達です。

後継者が株式を取得できないと、権限と責任の不一致が続き、意思決定が歪みます。

また「前例踏襲」が強く、変革の速度が落ちる懸念もあるでしょう。

解決策として、業績連動のストックオプションなどの段階的な株式取得と、外部取締役による変革が有効です。

M&Aによる第三者への事業承継

M&Aによる第三者への事業承継とは、外部の買い手に株式または事業を譲渡し、経営を託す方式です。

後継者不在の解決策として有力で、買い手の販路・人材・資本力を取り込んで成長を加速できます。

買い手選定・価格妥当性・情報開示の範囲・PMI(統合)の設計など専門性が高いため、支援機関や専門家チームの品質が結果を左右します。

第三者承継のメリット

第三者承継では、創業者利益の回収と、雇用維持・技術継承の両立を狙えることが大きなメリットになります。

買い手の経営資源により、新規顧客開拓や設備投資を一気に進められることも多く、第二の成長カーブに乗りやすい点が魅力です。

オーナー家の相続問題から会社を切り離し、プロ経営への移行で企業価値を高める選択にもなります。

第三者承継のデメリット

ただ第三者承継では、買い手とのカルチャーフィットが悪いと、キーパーソンの離職や顧客離れを招くリスクがあります。

表明保証・価格調整条項・競業避止・役員退職慰労金など、契約論点も多岐にわたり、交渉に時間を要します。

PMIの準備が不十分だと、統合後100日の混乱で収益が毀損するおそれがあるため、統合のKPI(人・組織・IT・顧客)を事前に設計しておくことが不可欠です。

事業承継の準備と方法の手順

事業承継の準備と方法の手順をイメージした画像

事業承継は、「イベント」ではなく「プロジェクト」です。

3〜5年を目安に、以下のような流れで進めます。

  1. 1.意思決定
  2. 2.現状把握
  3. 3.計画
  4. 4.育成
  5. 5.資産・株式移転
  6. 6.発表・新体制

途中で状況が変わっても修正できるよう、四半期ごとに計画をレビューするのがおすすめです。

親族内・従業員等承継の場合

親族内・従業員等承継の場合は、以下の流れで進行します。

  1. 1.事業承継の意思決定と現状把握
  2. 2.事業承継計画の策定
  3. 3.後継者の育成と能力強化
  4. 4.資産と株式の承継
  5. 5.後継者の社長就任と新体制の周知

親族への承継、従業員等への承継のいずれでも、内部の合意形成が鍵です。

後継者候補の意思と覚悟を早期に確認し、役割・評価・報酬・権限・株式の取得計画を一つの計画書に束ねます。

金融機関や主要取引先への説明タイミングも工程表に落とし、噂や不安が先行しないように進める必要があります。

それぞれの手順について、詳しく解説します。

事業承継の意思決定と現状把握

事業承継を進める前に、まずは意思を決定し、現状を把握することが重要です。

「なぜ今なのか」をしっかりと考えたうえで、健康・家族の年齢・経営環境・設備更新・主要人材の定年など時間依存の要因を書き出し、3〜5年後に起きうる変化を想定します。

損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書といった財務・顧客・技術の陳腐化・人材の年齢構成を棚卸し、外部の第三者レビューでバイアスを補正します。

事業承継計画の策定

現状の把握ができたら、事業承継を具体的に計画していきます。

「誰に・何を・いつまでに・どうやって」引き継ぐかを、工程表とチェックリストに落とし込みます。

顧客や品質基準といった「守るべきもの」と、組織やIT、在庫規律などの「変えるべきもの」に分け、四半期KPI(重要業績評価指標)を設定します。

家族会議や役員会、金融機関説明会のスケジュールも事前に織り込むようにしてください。

後継者の育成と能力強化

後継者が経営者の視座を身につけるには、現場・財務・人事・法務・営業を横断するOJTが不可欠です。

1〜2年かけて部門ローテーションをおこない、投資判断と撤退判断の意思決定訓練を重ねます。

外部講座・メンター制度の併用、社外取締役からのフィードバック会も効果的です。

資産と株式の承継

資産や株式の承継は、以下の手順で進めていきます。

  1. 1.評価(株価・不動産)
  2. 2.移転スキーム(相続・贈与・売買)
  3. 3.資金調達(自己資金・金融・補助金)
  4. 4.登記・税務

遺留分や相続人の生活設計を尊重しつつ、経営権の集中を崩さないバランスを取ります。

保証・担保の切替を金融機関と計画的に進め、与信の空白期間を作らないことが重要です。

後継者の社長就任と新体制の周知

上記の手順を踏み、いよいよ就任となったときには、「就任の言葉」「最初の90日計画」「1年の重点テーマ」を明確に示します。

キーパーソンとの1on1を短期集中で実施し、懸念の吸い上げと早期の合意形成をおこないます。

主要顧客と仕入先へは前任者同席で挨拶回りをし、変えない約束や改善する約束を明確な言葉にして、先方の安心感を醸成します。

M&A(第三者承継)の場合

M&A(第三者承継)の場合は、以下の手順で進めていきます。

  1. 1.M&Aの意思決定と専門家への相談
  2. 2.企業の磨き上げ
  3. 3.買い手候補の探索と交渉
  4. 4.最終契約の締結と株式・資産の譲渡
  5. 5.PMI(統合プロセス)の実行と引き継ぎ

第三者承継は準備が非常に重要です。

売り手の磨き上げと情報整備、守秘と透明性の設計が価格と条件を左右します。

専門家とチームを組み、役割分担と意思決定ルールを最初に決めましょう。

M&Aの意思決定と専門家への相談

まずは事業の承継・成長・資金回収・リスク移転といった「売却の目的」を明確にし、雇用・屋号・拠点・価格帯など「守りたい条件」に優先順位を付けます。

そして複数の支援機関から提案を受け、手数料体系と提供業務範囲・守秘体制・実績を比較します。

顧問税理士や弁護士を早期に巻き込み、税務・契約の論点を洗い出しておくようにしてください。

企業の磨き上げ

方向性が固まったら、しっかりと企業を磨き上げておくことが重要です。

収益性の見える化、特定顧客比率や特定仕入先比率の改善など依存リスクの低減、在庫・与信管理の強化、労務とコンプラの整備を進めます。

管理会計の月次化・KPIダッシュボード・ノンコア資産の整理で、買い手が評価しやすい姿に整えます。

買い手候補の探索と交渉

販路拡大や垂直統合、技術補完といったシナジー仮説を持ち、相対交渉か競争入札かを選択します。

  1. 1.NDA(秘密保持契約)
  2. 2.ティーザー
  3. 3.IM(企業概要資料)
  4. 4.マネージメントQ&A
  5. 5.LOI(​​意向表明書)

このような流れで進め、期間と独占交渉権の扱い、ブレークフィーの要否など交渉ルールを合意します。

最終契約の締結と株式・資産の譲渡

過去や現在の事実の正確性である表明保証と補償、価格調整条項(キャッシュ・デット・ワーキングキャピタル)、クロージング前提条件を明確にします。

保証の切替や重要契約の承継可否、IT権限移行など、引継ぎの範囲をチェックリスト化し、クロージング日に抜け漏れがないよう準備します。

PMI(統合プロセス)の実行と引き継ぎ

PMIは、「人・文化・顧客・IT・会計」の100日計画が肝要です。

評価制度・報酬・権限の整理を早期に示し、不安を期待に変えます。

顧客コミュニケーションは旧新二枚看板で移行し、品質・納期・価格の安定を第一に据えます。

離職率・顧客リピート・在庫回転・受注粗利といった統合KPIで、進捗を可視化するようにしてください。

事業承継は個人事業主も可能?

事業承継は、個人事業主でもできます。

個人事業は「人=事業主」のため、法人と異なり、資産・負債や契約、許認可の再取得を個別に手当てすることが必要です。

2019年に創設された個人版事業承継税制により、一定要件の下で相続・贈与税の猶予が認められる制度もあります。

参考:中小企業庁|個人版事業承継税制の前提となる認定

店舗・設備・屋号・仕入先・顧客の引き継ぎ方法をチェックリストにし、事前に関係者と合意しておくとスムーズです。

将来の発展を見据え、法人成りをおこなってから承継するという、二段階設計を検討する価値もあります。

事業承継の費用は誰が負担するの?

事業承継の費用は誰が負担するのかをイメージした画像

事業承継の費用を誰が負担するのかは、スキームと契約で決まります。

親族・社内承継では、贈与税・相続税の納税義務者は原則後継者です。

一方、株価算定・登記・議事録作成・顧問税理士等の専門家費用は、会社負担とするケースが多くなっています。

後継者の納税原資は、役員報酬・配当・オーナー貸付・家族間資金援助で賄う設計が一般的です。

M&Aをおこなう際、費用負担は以下のように分かれるのが一般的です。

・売り手(会社を売却する側)

主に、M&Aアドバイザーへの成功報酬(FA/仲介報酬)や、売却に必要な資料の準備費用を負担

・買い手(会社を取得する側)

主に、企業の詳細調査(財務・法務・ビジネス面のデューデリジェンスやDD)にかかる専門家への調査費用を負担

ただし仲介手数料(片手・両手)・表明保証保険料・クロージング費用の分担は最終契約で個別に定めるため、見積書を事前に明文化しておくことが重要になります。

補助金で一部を相殺できる場合もあります。

事業承継に使える支援制度はある?

事業承継に使える支援制度は、大きく分けて以下の3つです。

  • 事業承継税制
  • 事業承継・M&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金)
  • 各自治体の補助金

制度は年度更新されるため、適用要件・締切・報告義務を最新情報で確認するようにしてください。

事業承継税制

事業承継税制とは、後継者が非上場企業の株式等を贈与または相続で取得する際、一定の要件を満たせば、贈与税や相続税の納税が猶予・免除される制度です。

これにより、事業承継時の税負担を軽減し、中小企業の円滑な世代交代を支援することを目的としています。

事業承継税制には、法人版(非上場株式の相続・贈与税猶予)と個人版(個人事業用資産の相続・贈与税猶予)があります。

特例の適用期間・担保提供・継続雇用の要件・毎年の報告義務など、事後管理まで含めた運用設計が不可欠です。

自社の資本政策・親族内の公平・将来の上場や売却の可能性を踏まえ、適用するかどうかを税理士と早期に検討しましょう。

参考:国税庁|事業承継税制特集

事業承継・M&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金)

事業承継・M&A補助金(旧:事業承継・引継ぎ補助金)とは、中小企業や個人事業主の円滑な事業承継やM&Aを支援するため、それにともなって発生する専門家への手数料や新たな設備投資などの費用の一部を補助する制度です。

これにより、経営資源が途絶えることなく次世代へ引き継がれ、生産性の向上や地域経済の活性化を目的としています。

公募回・締切・採択倍率は年度により異なるため、工程表と公募スケジュールの連動がポイントです。

申請書では、「承継による継続的な価値創出」を明確に言語化するようにしてください。

参考:事業承継・M&A補助金

各自治体の補助金

都道府県・市区町村レベルでも、承継計画策定支援・専門家派遣・M&A費用の一部補助など独自施策が用意されています。

まずは事業承継・引継ぎ支援センターに相談し、地域の最新メニューと要件、締切を確認してください。

国の制度と二階建てで活用できる場合もあります。

事業承継に使える補助金については以下の記事でも解説したので、ぜひ参考にしてください。

関連記事:事業承継に使える補助金は?2025年度のスケジュールや申請方法・対象経費なども解説!

事業承継を成功させるためのポイント

事業承継を成功させるには、以下のようなポイントが重要になります。

  • 早めに事業承継について考える
  • 家族で十分に話し合う
  • 後継者の選定や条件設定を適切におこなう
  • 税負担額の把握や遺留分対策をする
  • 専門家のサポートを受ける

それぞれについて、詳しく解説していきます。

早めに事業承継について考える

事業承継では、「元気なうちに決める」ことが最大のリスク対策です。

後継者育成・税制適用・買い手探索・許認可の再取得には時間がかかります。

健康リスクや市況変化は予測できないため、いつでも動ける状態を作っておくことがおすすめです。

家族で十分に話し合う

事業承継は、家族にとっても人生設計の一大テーマです。

遺留分・生活設計・役割分担・住居や介護の見通しまで含め、定期的な家族会議で合意を積み上げるようにしてください。

家族会議でも議事録を残すことで、誤解や感情の行き違いを最小化できます。

後継者の選定や条件設定を適切におこなう

事業承継では、後継者の選定や条件設定を適切におこなうことが重要です。

能力・覚悟・健康・生活環境を総合評価し、役割と達成基準を明文化します。

親族・社内・第三者のそれぞれで成功条件は異なるため、メンターや外部取締役、権限の段階移譲、株式取得計画など、必要な補完策をセットで設計するようにしてください。

税負担額の把握や遺留分対策をする

事業承継で見落としがちなのが、税金と相続人間の公平性です。

まず株式や不動産を含めた会社の暫定評価をおこない、相続・贈与・売買といった方法ごとの税額を試算します。

そのうえで、数年先までのシミュレーションを立てて「どの時期に、どの方法を取るのが最も負担が少ないか」を把握しておくことが大切です。

また、兄弟姉妹など他の相続人が最低限の取り分(遺留分)を主張する可能性も考慮しなければなりません。

現金や生命保険、不動産などを組み合わせて代償措置を用意しておけば、承継後のトラブルを未然に防ぎ、家族の理解と協力を得やすくなります。

専門家のサポートを受ける

事業承継は、専門家のサポートを受けることでスムーズに進みやすくなります。

税理士・弁護士・司法書士・M&A支援機関・社会保険労務士などで小さなチームをつくり、窓口を一本化します。

相談先を一本化することで、重複作業と行き違いを防ぎ、スピードと精度を両立できます。

まずは公的窓口を起点に全体像をつかみ、必要に応じて専門家を活用してください。

TORUTE株式会社では、経営理念・経営戦略・経営ノウハウ等を承継することを目指して、他の専門家とも提携しワンストップでサポートさせていただいております。

事業承継をおこなう場合は、ぜひご相談ください。

まとめ

事業承継は、会社の価値を未来へつなぐ経営の一大プロジェクトです。

どの方法の承継を選ぶにしても、「人・資産・知的資産」を損なわず、むしろ高めながら引き継ぐことが重要です。

早期着手で選択肢を広げ、工程表・合意形成・資本政策・税制・補助金を一つの計画に束ねておきましょう。

社内外への丁寧なコミュニケーションと、専門家チームの伴走で、廃業の不安は「次の成長カーブ」への期待に変わります。

まずは現状を把握して、専門家に相談することから始めてみてください。

最初の一歩が、会社と地域の未来を大きく変えます。

まずはお気軽にご連絡ください

0120-055-737

受付時間/AM8:30~PM5:30(土日・祝休)

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