承継会社とは?分割会社との違い・手続きの流れ・債権者や従業員の保護もわかりやすく解説!

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西田 幸広 弁護士

監修者:弁護士 西田幸広

法律事務所Si-Law代表 / 熊本県八代市出身 / 熊本を中心に企業法務支援

会社分割について考えるなかで承継会社や分割会社という言葉を耳にする機会はあっても、いざ自社の状況に当てはめようとするとその違いがつかみにくく、戸惑いを覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に事業承継の場面では、これらの用語をきちんと理解しておくことが、会社の将来を守るための大切な準備につながると考えます。

「承継会社と分割会社は、どこがどう違うのだろう」

「会社分割を選ぶと、どのような流れで手続きが進むのだろう」

こうした疑問が解消されないままでは、後継者や取引先との話し合いも一歩を踏み出しにくくなることもあるでしょう。

本記事では、承継会社と分割会社の違いや、会社分割の種類や流れ、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

事業承継を前向きに進めるための、参考にしていただければ幸いです。

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承継会社とは?

承継会社とは、会社分割において事業や資産、負債を受け継ぐ側の会社のことです。

いわば「事業を引き継ぐ立場」にある会社であり、分割会社から移転される事業を今後も確実に運営していく役割を担います。

あとから詳しく解説しますが、会社分割には、吸収分割と新設分割の2種類があります。

吸収分割では既存の会社がそのまま承継会社となり、新設分割では新しく設立する会社が承継会社として機能する仕組みです。

承継会社が引き継ぐ内容は幅広く、契約・資産・従業員・許認可など多くの項目が含まれます。

これらの扱いは、会社法の会社分割に関する規定(会社法第757条以下)に定められており、法律に基づいて手続きが進むため、移転が明確で整理しやすい点が特徴と言えるでしょう。

また承継会社では、すべての事業をそのまま受け取る必要はなく、分割会社が選んだ特定の部門だけを引き継ぐこともできます。

この柔軟さによって、分割会社側が自社の事情に合わせて事業を整理しやすくなり、その結果として承継会社も引き継ぐ事業の範囲が明確になるのです。

事業の移転範囲が適切に整理されていることは、承継会社にとっても大きなメリットであり、今後の経営方針も描きやすくなります。

参考:会社法|会社分割

承継会社と分割会社の違いは?

承継会社と分割会社は、会社分割において向かい合う関係にある、と考えます。

簡単に説明すると、承継会社は「事業を受け取る側」であり、分割会社は「事業を移す側」になります。

まずこの違いを押さえておくと、会社分割の全体像が理解しやすくなるでしょう。

そして、それぞれの役割を整理すると、以下のような関係になります。

承継会社移転される事業を受け取り、その後の運営を担う会社
分割会社事業・資産・負債を切り分けることで、再構築していく会社

次に、それぞれの会社分割の目的について解説していきます。

承継会社における会社分割の目的

承継会社が会社分割を活用する大きな目的は、移転される事業を受け入れ、それを自社のなかで確かな形に育てていくことにあると考えます。

例えば後継者が経営を引き継ぐ際、承継会社が事業の受け皿となることで、新しい体制がはっきり示され、社内外に安心感を与えられるはずです。

また複数の事業を持つ企業では、承継会社に「伸ばしたい事業」を集約することで、経営資源を集中させやすくなります。

組織や財務の整理が進み、事業ごとの役割分担も見えやすくなるため、無理のない運営体制を築きやすくなるでしょう。

さらに承継会社は、分割会社から契約や取引関係をそのまま受け継ぐため、顧客や仕入先との関係性が途切れにくく、事業の継続性を考えるうえで大きなメリットと言えます。

分割会社における会社分割の目的

分割会社が会社分割を活用する主な目的は、自社の事業構造を見直し、将来に向けて望ましい姿へ整えることにあります。

分割会社は「事業を移す側」として、自社のなかで強化したい部分と手放すべき部分を仕分ける役割を担うことで、経営全体の整理が進みやすくなるでしょう。

例えば、不採算部門を切り離して本業に経営資源を集中させたいとき、会社分割は強い効果を発揮します。

また、後継者が引き継ぐ事業と、現経営者の代で終わらせたい事業を分けたい場面にも有効です。

さらに、事業ごとにリスクを分散できる点も分割会社にとっては大きなメリットです。

複数の事業を抱える企業であれば、リスクが高い事業を切り離すことで、分割会社そのものの財務的な安定にもつながります。

そして、事業再編に踏み出す姿勢を示すことで、金融機関や取引先からの信頼が高まるケースもあるでしょう。

分割会社は、自社の現状を落ち着いて見つめ直し、どの事業を残してどの事業を移すことで会社がより健全になるのかを判断していく立場と言えます。

また、会社分割はM&Aにおける代表的な手法のひとつです。

M&Aについては、以下の記事で簡単にわかるよう解説しているので、参考にしてください。

関連記事:M&Aについて簡単にわかりやすく解説!目的・手順・費用など丸わかり完全ガイド!

会社分割の種類とは

先にも少し触れましたが、会社分割には「吸収分割」と「新設分割」の2つの方式があります。

吸収分割は、既存の承継会社が事業をそのまま受け継ぐ方法です。

もともとある会社がそのまま事業の受け皿になるため、新しい会社をつくる必要がなく、全体の流れを比較的つかみやすい方法といえます。

後継者がすでに経営している会社がある場合は、その会社を承継会社として使えるため、この方法が選ばれる場面も多く見られます。

契約や許認可も一括でできるため、移行にかかる時間を短くできる点もメリットと言えるでしょう。

一方、新設分割は、新しく会社を設立してその会社に事業を承継させる方法です。

既存の組織とは切り離して事業を運営できるため、まっさらな環境で体制を整えたいときに向いています。

例えば、新規事業を独立させたい場合や後継体制を一から組み立てたい場面では、会社の設立手続きが必要になるぶん手間は増えますが、それだけ事業内容や組織づくりを柔軟に設計できる点が大きな魅力と言えるでしょう。

いずれの方式も、事業の性質や今後の方針を踏まえて選ぶことが大切になるため、自社にとって無理のない形を選択できるよう、早めに検討を進めておくのがおすすめです。

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会社分割と事業譲渡の違いは?

会社分割とよく比較される仕組みに「事業譲渡」があり、どちらも事業を移す点では共通していますが、実際の手続きや考え方は大きく異なります。

会社分割は「包括承継」と呼ばれ、契約・従業員・資産・負債といった関係する要素をまとめて移す方法です。

取引先への個別の同意取得は不要ですが、従業員に対しては労働契約承継法に基づく事前通知が必要です。

会社法に沿って進めることで、全体の流れを比較的整えやすい点が特徴と言えるでしょう。

一方、事業譲渡は「個別承継」となるため、契約や許認可ごとに相手方の確認が必要になります。

従業員を移籍させる場合も本人の同意を得なければならず、手続きの負担は大きくなりがちです。

取引先との再協議が必要になるケースもあるため、慎重な調整が求められます。

事業をまとめて移したい場合や、従業員・取引先との関係を大きく変えずに承継したい場合は、会社分割のほうが適していることが多いでしょう。

事業譲渡の場合、従業員がどうなるのかについては、以下の記事をご覧ください。

関連記事:事業譲渡で従業員はどうなる?説明や通知のタイミング・退職金・必要書類についても徹底解説!

会社分割と合併の違いは?

合併とは、複数の会社がひとつにまとまる制度です。

「吸収合併」は、事業や資産・負債を存続会社がまとめて引き継ぎ、吸収される会社はその役目を存続会社へ引き渡す形になります。

「新設合併」では、参加する会社はそれぞれ解散し、新しく設立された会社に事業をまとめて引き継ぐ形です。

「会社を残すかどうか」 が、合併と会社分割の大きな違いと言えるでしょう。

例えば製造部門だけを別会社に移したい場合、合併では対応できません。

しかし会社分割であれば、移したい事業だけを切り離せるため、事業単位で柔軟な再編が可能です。

会社全体ではなく、特定の部門だけを見直したい場合は、会社分割のほうが適した選択肢になるでしょう。

以下の記事では、事業承継とM&Aの違いについても、詳しく解説しています。

関連記事:事業承継とM&Aの違いは?メリットとデメリットや選び方のポイント・課題も徹底解説!

会社分割手続きの流れは?

会社分割手続きの流れをイメージした画像

会社分割は、会社法に基づいて進める必要があり、いくつかの手順を順序立てて踏んでいく流れです。

まずは「どの事業をどの会社へ移すのか」を整理し、分割計画を作成します。

続いて、分割会社と承継会社の間で分割契約を交わし、株主総会で承認を受けます。

出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得なければならない「特別決議」が必要となるため、議決権の確認や日程調整は早めに進めておきましょう。

そのあとは、債権者の権利を守るために公告をおこない、「異議があれば申し出てください」という期間を設けます。

従業員に対しても、労働契約がどう扱われるのか丁寧に説明し、移行への不安を解消しておく姿勢が大切です。

これらを経て登記を済ませると、会社分割が正式に効力を持ちます。

計画の作成から登記の完了まで半年ほどかかることもあるため、早めの準備がおすすめです。

ここからは、吸収分割と新設分割の違いを、それぞれの手続きの流れに沿って見ていきましょう。

吸収分割の場合

吸収分割は、既存の承継会社が事業を引き継ぐ方式です。

基本的な手続きの進め方は、前述の会社分割手続きの流れと同様になりますが、吸収分割ならではの特徴もあります。

まず、分割会社と承継会社の双方で分割計画を整えたうえで分割契約を締結し、両社の株主総会で特別決議による承認を得ます。

もともと存在する承継会社が受け皿となるため、新会社の設立手続きがない点が大きな違いです。

承認後は、債権者保護のための公告をおこない、意見を受け付ける期間を確保します。

取引先や金融機関には、事前に移行の背景を伝えておくことで、混乱を防ぎやすくなるでしょう。

そのあと、登記をおこなうことで吸収分割が効力を持ちます。

工程は比較的少ないものの、移す契約や資産の範囲は事前にしっかり整理しておくと安心です。

新設分割の場合

新設分割は、新しくつくる会社が承継会社となる方式です。

基本的な流れは、こちらも会社分割手続きと同様ですが、新会社を設立するための工程が追加されます。

まず、分割会社が分割計画を作成し、株主総会で承認を受けます。

そのうえで、新会社の定款を準備し、役員構成・資本金・株主構成などの基本事項を決めていきます。

新設分割では、設立登記と会社分割の登記をあわせておこなう必要があるため、吸収分割より手続きの数が増えます。

また、新会社としての組織づくりや運営体制の準備も進めなければならず、事前準備はより重要になるでしょう。

体制が整った段階で登記をおこない、新会社の成立と会社分割の効力が同時に発生します。

準備期間が長くなる傾向があるため、余裕を持ったスケジュールで進めるのがおすすめです。

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会社分割は合名会社でもできる?

結論からお伝えすると、合名会社は、事業を移す側である「分割会社」 にはなれません。

会社法の仕組み上、会社分割を実施できるのは「株式会社」か「合同会社」に限られているためです。

ただし合名会社は、事業を受け取る「承継会社」としてであれば、会社分割に関わることができます。

つまり、事業を受け継ぐ側としては利用できるものの、自社がおこなっている事業を分割して別会社へ移すことはできない、という点が重要です。

承継会社として合名会社を選ぶ場合は、無限責任社員がいる会社形態である点を踏まえ、金融機関や取引先への説明を丁寧におこなう必要があります。

また、許認可が必要な事業では、会社分割によって許可の再取得が求められる場合があります。

業種によって手続きが異なるため、事前に確認し、分割計画に組み込んでおくと安心です。

会社形態によって進め方が変わるため、合名会社が関わる分割を検討する際は、専門家に相談しながら慎重に判断しておくとよいでしょう。

会社分割のメリット

会社分割のメリットをイメージした画像

会社分割には、事業承継や会社の見直しを進めるうえでメリットがいくつもあります。

例えば、今の会社のなかでどの事業を残してどの事業を切り離すのかといった整理がしやすく、後継体制づくりにも活かしやすい方法です。

また、比較的お金をかけずに進められるうえ、従業員や取引先が大きな不安を感じにくい形で移行できる点も魅力と言えるでしょう。

会社の状況に合わせて柔軟に使えるため、選択肢として知っておくのがおすすめです。

主なメリットとしては、次のような点が挙げられます。

  • 債権者や従業員の同意が不要
  • 多額の資金を準備する必要がない
  • 関連する契約や組織を丸ごと引き継げる
  • 既存の取引先との関係が維持しやすい
  • 特定の部門を切り離して売却(購入)できる
  • 新事業や子会社の設立に活用できる

ここからは、それぞれのメリットについて解説します。

債権者や従業員の同意が不要

会社分割は包括承継の仕組みが使われているため、債権者や従業員から個別に同意を得る必要がありません。

この点は、事業譲渡と比べても移行の負担が小さく、手続きを進めやすいポイントになります。

特に従業員の雇用については、労働契約が法律に基づいてそのまま引き継がれるため、従業員にとっても安心材料になるでしょう。

ただし、同意が不要であっても、説明を省いてよいというわけではありません。

会社の今後や移行の理由を丁寧に伝えておくことで、従業員の不安が和らぎ、社内の落ち着きにもつながります。

取引先に対しても事前にしっかり情報を共有しておくことで、取引条件が変わらず、これまでの関係を保ちやすくなるでしょう。

多額の資金を準備する必要がない

事業譲渡では、買い手が事業の価値に応じてまとまった資金を準備しなければならず、その負担が大きくなることがあります。

これに対して会社分割は、基本的に金銭のやり取りをともなわない方法です。

多額の資金を用意する必要がないため、資金面で余裕のない企業でも取り組みやすい点が特徴と言えるでしょう。

準備した資金を別の投資や運転資金にまわせるため、会社にとって選択肢が広がります。

また、後継者が個人で資金を調達する必要もなく、承継計画を柔軟に設計しやすい点もメリットです。

関連する契約や組織を丸ごと引き継げる

契約・従業員・許認可などを一括して引き継ぐ会社分割は、事業の流れを止めずに移行しやすい仕組みになっています。

例えば長年続いてきた取引先との関係や、会社の技術を支える従業員の働き方を変えることなく承継できるため、事業の価値を損なわずに受け渡すことができます。

事業譲渡の場合は、契約ごとに確認や同意が必要になりますが、会社分割では「包括承継」により、こうした個別の手続きをまとめて進められる点が強みです。

組織全体をそのまま引き継ぐことで、後継者も早い段階から経営に力を注ぎやすくなり、承継後の立ち上がりもスムーズにできるでしょう。

既存の取引先との関係が維持しやすい

会社分割では、これまで続けてきた取引関係や業務の流れをそのまま新しい会社へ移せます。

そのため、取引先にとって大きな変化が感じられにくく、「これまでどおり取引しても問題なさそうだ」と判断してもらいやすくなるでしょう。

取引先は、契約条件が急に変わったり担当会社が大きく入れ替わったりすると不安を抱きやすいものです。

会社分割であれば、事業の仕組みを丸ごと引き継ぐため、こうした心配を抑えながら移行できます。

その結果、後継体制の説明もしやすく、移行期の取引トラブルを避けやすくなる点が大きな安心材料となるはずです。

特定の部門を切り離して売却(購入)できる

事業を部門ごとに分けて移せる会社分割は、不採算部門だけを切り離して売却したい場合に向いています。

反対に、自社に必要な事業だけを選んで引き受けることもできるため、状況に応じた柔軟な再編が可能です。

この仕組みを活用すれば、会社の体制を見直し、力を入れるべき事業へ経営資源を集中しやすくなります。

複数の事業を抱える企業にとっては、特に使い勝手のよい方法と言えるでしょう。

必要な事業だけを承継会社へ移すことで、収益力の向上にもつながりやすくなるはずです。

新事業や子会社の設立に活用できる

新設分割を使うと、事業を切り離して子会社として独立させることができます。

新しい事業をじっくり育てたい場合や、既存の会社とは別の文化や仕組みをつくりたいときに向いている方法です。

子会社として独立させることで、経営判断のスピードが上がり、責任範囲もはっきりします。

将来、株式上場や事業売却を考える場合にも組織を整えやすくなるため、有効な選択肢と言えるでしょう。

会社分割のデメリット

会社分割にはメリットが多い一方で、デメリットもいくつかあります。

これらのポイントも把握しておくことで、不意のトラブルを避けやすくなるでしょう。

デメリットには、次のようなものがあります。

  • 必要な手続きが多い
  • 税務の手続きが複雑になる
  • 借金や負債もまとめて引き継ぐことになる
  • 簿外債務を引き継ぐリスクがある
  • 許可の再取得が必要な場合がある

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

必要な手続きが多い

会社分割は会社法に基づく正式な手続きであり、公告・株主総会・契約の締結・登記など、いくつもの工程を順に進めていく必要があります。

特に株主総会の日程調整や、債権者保護のためにおこなう公告は時間がかかりやすいため、計画には余裕を持たせておくのがおすすめです。

早い段階から専門家と相談し、無理のないスケジュールを組んでおくと、落ち着いて取り組めるでしょう。

あらかじめ全体の流れを整理しておけば、手続きもスムーズに進みやすくなります。

税務の手続きが複雑になる

会社分割では、法人税・消費税・登録免許税などの取り扱いが、選ぶ分割方法によって変わってきます。

処理を誤ると余計な税負担が発生するおそれがあるため、税務面の確認は早めに進めておくのがおすすめです。

特に新設分割の場合は、新会社の税務登録など追加の作業も生じます。

こちらも初期段階から専門家に相談し、無理のない進め方を整えておくと負担を減らすことができるでしょう。

借金や負債もまとめて引き継ぐことになる

会社分割は包括承継の仕組みのため、資産だけでなく借入金やリース契約などの負債も移ることになります。

そのぶん、承継会社の財務内容にどのような影響が出るのか、事前にしっかり確認しておく姿勢が欠かせません。

金融機関と取引のある企業では、事前に説明しておくことで誤解やトラブルを避けやすくなるでしょう。

簿外債務を引き継ぐリスクがある

簿外債務とは、帳簿には載っていないものの、実際には会社が負っている義務のことです。

例えば、未払残業代や契約上のトラブルに関する負担といった簿外債務が、会社分割では承継対象となる場合があります。

思わぬ負担を避けるためにも、分割前にデューデリジェンスと呼ばれる調査を丁寧におこない、リスクを洗い出しておくと安心です。

事前に確認しておくことで、あとのトラブルを大きく減らせるでしょう。

許可の再取得が必要な場合がある

会社分割により会社の体制が変わることで、業種によっては許認可の再取得が必要となることがあります。

例えば、建設業許可や産業廃棄物処理業の許可などが代表的です。

許可の再申請には時間がかかるため、会社分割のスケジュールと並行して準備を進めておきましょう。

会社分割を含む、M&Aは難しいのかを以下の記事でも解説しています。

関連記事:M&Aが難しいと言われる理由は?中小企業の失敗率やよくある事例・整理すべきポイントも解説!

迷うことがある場合は、TORUTE株式会社の無料相談もぜひご活用ください。

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会社分割で守るべき債権者・従業員の保護手続きと期限

会社分割は「債権者や従業員の個別の同意が不要」と説明されることがあります。ただし、これは「何も手続きをしなくてよい」という意味ではありません。法律上、債権者と従業員それぞれに対して守らなければならない手続きがあり、不備があると分割の効力を争われるおそれもあります。

相手主な手続き押さえておきたい点
債権者官報公告と個別の催告、異議申述の受付異議を述べられる期間は原則1か月以上。分割後に債務の履行を受けられなくなるおそれがある債権者が対象
従業員労働契約承継法に基づく事前の通知と協議移籍する労働者には通知、承継対象外とされる労働者には異議申出の機会がある
株主株主総会の特別決議(原則)反対株主には株式買取請求権が認められる場合がある

債権者異議手続きで見落としやすい点

分割会社に残る債権者にとって、会社の財産の一部が承継会社に移ることは大きな関心事です。債務の履行を請求できなくなる債権者に対しては、公告に加えて個別の催告が必要になるのが原則です。

知れている債権者への催告を漏らしたまま分割を進めると、その債権者との関係で分割の効力を主張しにくくなる可能性があります。取引先や金融機関の一覧を早めに作り、誰にどの手続きが必要かを整理しておきましょう。

従業員への通知と協議は「同意不要」でも省けない

会社分割では、承継される事業に主として従事している従業員の労働契約は、原則として承継会社に引き継がれます。個別の同意は不要ですが、事前の通知が必要です。通知は、株主総会の2週間前までなど、法令や指針で定められた時期までに行うこととされています。

あわせて、労働者への説明や協議も求められます。従業員が不安を抱えたまま移籍すると、離職につながることもあるため、通知の前後に丁寧な説明の場を設けることが大切です。

スケジュールは余裕を持って組む

債権者異議の期間、従業員への通知、株主総会、登記と、複数の手続きが連動します。登記の直前になって通知漏れが見つかると、予定が大きく遅れることもあります。

取引先や許認可の関係で効力発生日を動かせない場合は、逆算してスケジュール表を作っておくと安心です。

別記事では「事業譲渡で従業員はどうなる?同意書・有給休暇・勤続年数と法律上のルール」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

承継会社が負うリスクと詐害的な会社分割への備え

会社分割には、承継会社側が思わぬ責任を負うおそれがあります。特に、不採算部門や債務だけを切り離すなど、債権者を害する目的で行われた分割(いわゆる濫用的会社分割)は、法律上も問題になりやすい類型です。

残された債権者から承継会社へ履行を求められる場合

分割会社が、承継会社に財産だけを移し、債務は分割会社に残したとします。このとき、分割会社に残された債権者は、一定の要件のもとで、承継会社に対して承継した財産の価額を限度に債務の履行を請求できると定められています(会社法759条4項など)。

つまり、承継会社の立場では、分割会社の債権者との間に直接のトラブルが生じる可能性があります。承継する財産の中身と、分割会社に残る債務の状況は、事前に確認しておきたいところです。

デューデリジェンスで確認したい項目

承継会社が受け入れる事業については、簿外債務や未払い残業代、係争中の案件がないかを確認しておきましょう。次のような点がチェックの目安です。

  • 承継する契約書の解除条項(支配関係の変更や分割で解除される条項がないか)
  • 未払い賃金や社会保険料、税金の滞納の有無
  • 許認可の承継可否(再取得が必要かどうか)
  • 分割会社に残る債務の額と返済見込み

契約書で備えておく工夫

吸収分割契約では、承継する資産・負債の範囲を明確に特定しておくことが重要です。範囲が曖昧だと、後日「これも承継した」「いや承継していない」という争いになりかねません。

また、承継後に発覚した債務への対応方法を、分割会社との間で話し合っておくと安心です。具体的な条項は事案により異なりますので、契約前に専門家のチェックを受けることをおすすめします。

別記事では「M&Aが難しいと言われる理由は?中小企業の失敗率やよくある事例」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

事業承継で「別会社」に事業を切り出す場面と注意点

「事業承継 別会社」という検索があるように、後継者に継がせる事業を新しい会社や後継者の会社へ移したい、というご相談は、熊本市や八代市でも少なくありません。会社分割はその有力な手段のひとつですが、使いどころを間違えないことが重要です。

後継者向けの事業と、現経営者に残す資産を分けたい場合

例えば、本業は後継者の会社に移し、事業用の土地建物は現経営者の側に残して賃貸する、という形が考えられます。これにより、後継者の資金負担を抑えつつ、現経営者の老後の収入を確保できる場合があります。

一方で、事業に不可欠な不動産を分けるなら、賃貸借契約の条件や借入金の担保の扱いを金融機関と事前に調整する必要があります。

税制と登記の費用も見落とさない

会社分割は、一定の要件を満たす「適格分割」に当たるかどうかで、課税関係が大きく変わります。適格かどうかは、事業の継続や従業員の引き継ぎ、支配関係の有無などで判断されます。

また、不動産を移す場合は、登録免許税や不動産取得税などの負担も検討が必要です。軽減措置が使えるかは個別の事情により異なるため、税理士と弁護士が連携して確認するのが望ましいでしょう。

会社分割以外の方法も並べて比べる

事業を移す方法には、事業譲渡や株式譲渡もあります。会社分割は包括的に引き継げる反面、手続きが多く、承継会社が簿外債務の影響を受ける可能性もあります。

どの方法が適しているかは、会社の規模や許認可、従業員数、後継者の資力によって変わります。複数の方法を比較したうえで選ぶようにしましょう。

別記事では「事業承継とM&Aの違いとは?選び方やメリット・デメリット」についても解説していますので、あわせてご覧ください。

まとめ

承継会社と分割会社の違いを知っておくことは、事業承継を安心して進めるための大切な一歩と考えます。

会社分割にはメリットが多いものの、手続きや税務で注意が必要な部分もあるため、まずは自社の事業を整理し、どの方法が合っているのかを確認しておきましょう。

また専門家に任せながらも、経営者ご自身が全体の流れをしっかり理解しておくことで、後継者や従業員、取引先にとっても安心につながるはずです。

事業承継は早めに準備を始めるほど、選べる方法が増えて無理なく進められるため、次の一歩を踏み出す手助けになれば幸いです。

\じっくり相談したい方は、メールでもお受けしています/

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