承継会社とは?分割会社との違いやメリット・デメリット、手順などを解説

会社分割は、事業承継の手法の一つです。
会社分割とは、既存の会社から事業の一部を切り離して、新たな会社(承継会社)に承継させることをいいます。
本記事では、承継会社と分割会社の違い、会社分割のメリット・デメリット、手続きの流れなどについて解説します。
※事業承継の基本的なスキームについては、「事業承継とは」のページをご覧ください。

事業承継とは?

承継会社とは

承継会社とは、会社分割という方法で、他の会社(分割会社)から事業の一部を引き継ぐ会社のことです。
会社分割は、事業を引き継がせる時やM&Aの時によく使われる方法の一つで、2つの種類があります。

新設分割_吸収分割

1.吸収分割

分割会社から切り離された事業が、もともとある会社(承継会社)に吸収される方式

  • 分割会社
    事業の一部を切り離して、承継会社に譲る会社
  • 承継会社
    分割会社から事業の一部を引き継いで、自分の会社の事業として運営する会社

2.新設分割

分割会社から切り離された事業を引き継ぐために、新しい会社(承継会社)を作る方式

  • 分割会社
    事業の一部を切り離して、新しく作った会社に譲る会社
  • 承継会社
    分割会社から切り離された事業を引き継いで、独立して運営する新しい会社

会社分割以外の事業承継やM&Aの方法には、株式譲渡、事業譲渡、合併などがあります。
これらの方法については、「事業承継 M&A」のページをご覧ください。

事業承継におけるM&Aとは?

分割会社と承継会社の違い

分割会社と承継会社の主な違いは以下の通りです。

■分割会社

分割会社:会社分割で、事業の一部を切り離して他の会社に譲る会社

  • 吸収分割の場合は、事業の一部を既存の承継会社に譲る
  • 新設分割の場合は、事業の一部を新しく作った会社(承継会社)に譲る

会社分割した後も、残りの事業は自分で続けます。

■承継会社

承継会社:会社分割で、分割会社から事業の一部を引き継ぐ会社

  • 吸収分割の場合は、分割会社から事業の一部を吸収して、自分の会社の事業として運営する
  • 新設分割の場合は、分割会社から切り離された事業を引き継いで、独立して運営する新しい会社

分割会社は、会社分割を使って、事業を絞り込んだり、経営資源を再配分したりできます。
一方、承継会社は、分割会社から引き継いだ事業を大きくしていくことが期待されます。

事業譲受会社と承継会社の違い

事業譲受会社と承継会社の主な違いは以下の通りです。

■事業譲受会社

事業譲受会社:事業譲渡という方法で、他の会社から事業の一部か全部を譲り受ける会社

  • 事業譲渡の契約に基づいて、譲ってもらう資産や負債を一つ一つ移す
  • 譲り受けた事業を自分の会社の事業として運営する

■承継会社

承継会社:会社分割という方法で、分割会社から事業の一部を引き継ぐ会社

  • 会社分割の計画や契約に基づいて、事業に関する資産、負債、契約などをまとめて引き継ぐ
  • 分割会社から引き継いだ事業を運営する

事業譲受会社と承継会社は、どちらも他の会社から事業を取得するという点では同じですが、事業の移し方に違いがあります。

事業譲渡では、譲ってもらう資産や負債を一つ一つ移して、関連する契約も一つ一つ移さないといけません。
しかし、会社分割では、事業に関する資産、負債、契約などをまとめて引き継げるから、手続きがシンプルになるというメリットがあります。

会社分割で承継会社化するメリット・デメリット

会社分割で承継会社化する際のメリットとデメリットについて、それぞれ詳しく解説していきます。

メリット

資金の用意が不要

会社分割では、分割会社の株主に承継会社の株式を割り当てることで、資金を用意せずに事業を承継できます。
新たな資金調達が不要なため、財務的な負担が少なくて済みます。

事業の一部を切り離せる

会社分割を利用すれば、分割会社の事業の一部を切り離して、承継会社に承継させることができます。
不要な事業を切り離すことで、分割会社は主力の事業に集中でき、承継会社は引き継いだ事業に特化して経営できます。

契約関係の承継が容易

会社分割では、分割会社の権利義務は自動的に承継会社に引き継がれます。
そのため、取引先との契約関係も承継会社に引き継がれるため、個別の承諾を得る必要がなく、契約関係の承継が簡単です。

デメリット

統合の手間がかかる

会社分割で事業を承継した後は、分割会社と承継会社の業務を統合する必要があります。
組織体制の再編や業務フローの見直しなど、統合作業には時間と手間がかかるため、入念な準備が求められます。

債務の扱いが複雑

会社分割では、分割会社の債務も承継会社に引き継がれます。
債務超過の事業を承継した場合、承継会社の財務状況が悪化するおそれがあるため、債務の扱いについては慎重な検討が必要です。

関係者の合意形成が必要

会社分割を行うには、分割会社と承継会社の株主総会の特別決議が必要です。
また、分割会社の債権者の保護手続きも必要になります。
関係者の合意形成には時間がかかるため、スケジュール管理が重要になります。

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会社分割による承継会社化の手続き

会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」の2種類があります。
それぞれの手続きを解説します。

吸収分割の場合

■吸収分割の手続き

1.吸収分割契約の締結
分割会社と承継会社が、吸収分割の条件(分割する事業、承継会社の株式の割当など)を決めて契約を結びます。
この契約には、分割する事業の範囲、承継会社が分割会社から承継する資産・負債、従業員の取扱い、分割の効力発生日などを定めます。

2.分割会社の株主総会で吸収分割契約を承認
分割会社の株主総会で、吸収分割契約について特別決議(発行済株式の過半数の株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成)を行います。
これにより、株主の承認を得ます。

3.債権者保護手続き
分割会社は、官報に吸収分割をする旨を公告し、知れている債権者には個別に通知します。債権者は一定期間内に異議を述べることができます。
異議を述べた債権者がいる場合、分割会社は弁済や担保提供などの措置を取ります。

4.吸収分割の効力発生
吸収分割の登記をすることで、分割会社から承継会社に事業が承継されます。登記の日が効力発生日となります。

■まとめ

吸収分割では、分割会社と承継会社が契約を結び、分割会社の株主総会で承認を得た後、債権者保護手続きを経て、登記によって効力が発生します。
事業の承継先となる会社が既に存在している場合に利用されます。

新設分割の場合

■新設分割の手続き

1.新設分割計画の作成
分割会社が、新設分割の条件(分割する事業、新設会社の資本金など)を決めて計画を作成します。
この計画には、分割する事業の範囲、新設会社に承継させる資産・負債、従業員の取扱い、分割の効力発生日などを定めます。

2.分割会社の株主総会で新設分割計画を承認
分割会社の株主総会で、新設分割計画について特別決議(発行済株式の過半数の株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成)を行います。
これにより、株主の承認を得ます。

3.債権者保護手続き
分割会社は、官報に新設分割をする旨を公告し、知れている債権者には個別に通知します。
債権者は一定期間内に異議を述べることができます。異議を述べた債権者がいる場合、分割会社は弁済や担保提供などの措置を取ります。

4.新設分割設立会社の設立登記
新設分割計画に基づいて新設分割設立会社を設立し、登記を行います。この登記によって新設分割設立会社が成立します。

5.新設分割の効力発生
分割会社から新設分割設立会社に事業が承継されます。新設分割設立会社の設立登記の日が効力発生日となります。

■まとめ

新設分割では、分割会社が新設分割計画を作成し、株主総会で承認を得た後、債権者保護手続きを経て、新たに設立する承継会社に事業を承継します。
事業の承継先となる会社を新たに設立する場合に利用されます。

会社分割による承継会社化の費用

会社分割の手続きには、以下のような費用がかかります。

【登録免許税】 承継会社の資本金額の0.7%

会社分割の登記に必要な登録免許税は、原則として承継会社の資本金額の0.7%です。ただし、分割会社が中小企業である場合、資本金の額が30万円以下であれば、0.15%に軽減されます。

【官報公告費】 約5万円~10万円

会社分割の手続きでは、官報に分割する旨を公告する必要があります。
官報公告費は、文字数によって異なりますが、およそ5万円から10万円程度です。

【専門家へ依頼した場合の報酬】 数十万円~数百万円

会社分割の手続きは複雑なため、弁護士や税理士などの専門家に依頼することが一般的です。
専門家への報酬は、分割する事業の規模や内容によって異なりますが、数十万円から数百万円程度が目安です。

詳しい費用については専門家に相談して、報酬の目安を確認しましょう。

承継会社について不明点があれば「この街の事業承継」にご相談ください

会社分割による承継会社の設立は、事業承継の有力な選択肢の一つですが、デメリットやリスクも考慮する必要があります。
分割する事業の選定、承継会社の設立手続き、税務処理など、専門的な知識と経験が不可欠です。

会社分割による承継会社化について、ご不明な点がございましたら、ぜひ一度お問い合わせください。
弁護士の視点から、会社分割のメリットを最大限に活かしつつ、デメリットやリスクを最小限に抑えるお手伝いをいたします。

西田 幸広 弁護士

この記事を監修した弁護士

西田 幸広 法律事務所Si-Law代表

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