生命保険を活用した事業承継対策を徹底解説!メリット・デメリットや注意点
事業承継には自社株の取得費用や納税費用など多くの費用がかかりますが、生命保険を有効活用することでその対策が可能です。
この記事では、生命保険を事業承継に活用する際のメリットとデメリット、注意点をわかりやすく解説します。
目次
生命保険を活用した事業承継対策とは?
事業を次の世代に引き継ぐ際、生命保険を利用する方法があります。
これは、将来必要になるお金を保険で準備しておく考え方です。
多くの企業が生命保険を利用し、様々なリスクに備えています。
例えば、経営者が亡くなった時に保険金が支払われ、その資金で事業を続けられるようにします。
事業承継で起こりがちなトラブル・リスク
事業を引き継ぐ際には、思わぬ問題が起きることがあります。
例えば、経営者が急に亡くなり、会社株の相続に伴う高額な税金、経営者保証付の借金、自社株の遺産相続によるトラブルなどが挙げられます。
これらの問題は主にお金の問題であり、後継者に負担をかけるものです。
そこで生命保険が役立ちます。
万が一の場合に備え、保険で必要な資金を用意することで後継者の負担を軽減し、事業を安心して次の世代に引き継ぐことができます。
事業承継で生命保険を活用するメリット
事業承継において生命保険を活用することで、様々なメリットが得られます。
以下に主な5つのメリットや活用方法、活用のポイント等を解説します。
相続税・贈与税の納税資金を確保できる
事業承継時の大きな課題である相続税や贈与税の支払いに、生命保険が有効です。
資金面での不安を軽減することができ、後継者は経営に集中しやすくなり、会社の将来的な成長にもつながります。
■メリット
• 株式売却せずに納税資金を確保できる
• 他の資産を急いで売却する必要がない
• スムーズな事業承継が可能になる
■具体的な活用方法
1. 経営者が生命保険に加入
2. 後継者を受取人に指定
3. 万が一の際、保険金を納税資金として活用する
■ポイント
保険金の額は慎重に決めましょう。
税金の制度は変わることがあるので、定期的に確認が必要です。
自社株式の評価額を引き下げられる
特に非上場企業において、自社株式の評価額を下げることで後継者の負担を軽減できます。
■メリット
• 後継者の株式取得時の負担が軽減される
• 納税額を抑えることができる
• 会社の税金も節税できる
■生命保険活用の仕組み
1. 会社が生命保険に加入し、保険料を支払う
2. 保険料支払いにより会社の資産が減少
3. 結果として株式の評価額が低くなる
■ポイント
この方法は、後継者の経済的負担を減らすだけでなく、会社全体の税負担も軽減できる一石二鳥の効果があります。
ただし、適切な保険設計が重要なので、専門家のアドバイスを受けましょう。
保険金を運転資金に充てられる
生命保険の活用により、後継者は比較的落ち着いて経営を引き継ぐことができ、取引先や従業員の信頼も維持しやすくなります。
■メリット
• 経営者の急な死亡時でも、会社運営を継続できる
• 従業員の給与や取引先への支払いを滞りなく行える
• 一時的な売上減少にも対応可能
■具体的な活用方法
1. 生命保険の受取人を法人や後継者に指定
2. 保険金を会社の運転資金として活用
3. 事業の継続性を維持
■ポイント
生命保険は「もしも」の時に財務的に事業承継時の資金繰りを支える手段になります。
普段から会社のお金の管理をしっかりしましょう。
遺産分割や代償分割の財源を確保できる
事業承継時の相続問題解決に、生命保険が大きな役割を果たします。
会社の支配権を維持しつつ、家族間の争いを未然に防ぐことができ、結果として、事業の継続性を確保しながら、家族関係も良好に保つことができます。
■メリット
• 相続争いのリスクを軽減できる
• 他の相続人との公平性を確保できる
• スムーズな事業承継と家族の和を両立できる
■生命保険を活用した解決策
1. 経営者を契約者、後継者を受取人とする生命保険に加入
2. 保険金を他の相続人への代償金として活用
3. 遺留分侵害額請求にも対応可能
■ポイント
遺言書を書くなど、他の方法も合わせて検討し紛争のリスクを減らしましょう。
金庫株の分配可能額を増やすことができる
生命保険は、金庫株の活用を通じて経営権の安定化に貢献します。
ただし、分配可能額を超える自社株買取はできないため、適切な保険設計が重要です。
また、金庫株の活用には法的制限もあるため、専門家のアドバイスを受けましょう。
■主なメリット
• 自社株式の分散を防ぐ効果がある
• 剰余金分配可能額を増やせる
• 経営権の安定化につながる
■生命保険活用のメリット
1. 保険金が会社の雑収入となり、剰余金分配可能額が増加
2. 自社株買取資金の確保が可能に
3. より多くの株式を社内に留められる
■ポイント
金庫株の取得・保有には会社法上の規制があり、取得の際は株主総会の特別決議が必要です。
また、取得できる株式の総数にも制限があります。
生命保険と金庫株を組み合わせた戦略は、これらの法的要件を踏まえた上で検討する必要があります。
これらのメリットを理解して、自分の会社に合った方法を選択することが大切です。
事業承継で生命保険を活用するデメリット
生命保険は事業承継の際に役立ちますが、デメリットもあります。
以下に主な2つのデメリットや注意するポイントを解説します。
保険料の支払いが必要
生命保険加入に伴う定期的な保険料支払いは、企業の財務に影響を与える可能性があります。
■注意点
• 高額な保険料は企業の利益やキャッシュフローを圧迫する恐れがある
• 一方で、保険料が低すぎると十分な事業承継対策とならない可能性がある
■重要ポイント
• 企業の財務状況と事業承継対策のバランスを取ること
• 適切な保障額と保険料のバランスを見極めること
• 企業の財務体質に合致した保険設計を行うこと
解約時期によっては損失が出ることもある
保険の解約返戻金は時期によって変動するため、解約のタイミングが重要となります。
■注意点
• 返戻率にはピークがあり、そのタイミングを外すと返戻金が大幅に減少する
• ピーク前後の解約では、支払った保険料総額を下回る返戻金となる可能性がある
• 解約によって財務上の損失が発生する可能性がある
■重要ポイント
• 解約時期の選定には慎重な検討が必要
• 企業の財務状況、事業計画、市場環境などを総合的に判断すること
• 最適な解約タイミングを見極めること
• 解約以外の選択肢(契約内容の見直しなど)も含めて検討すること
これらのデメリットを認識した上で、最終的には、生命保険が最適な選択かどうか総合的に判断しましょう。
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事業承継で活用できる生命保険の種類
事業承継で活用できる生命保険には主に4種類の保険があり、それぞれ特徴が違います。
それぞれの保険について詳しく解説します。
一般的な生命保険
一般的な生命保険(定期保険)は、例えば「今後10年間で事業承継を完了させたい」といった具体的な計画がある場合に適しています。
経営者の万が一の際に必要な資金を、最小限のコストで確保できます。
■特徴
・一定期間の掛け捨て型保険
・保障期間中の死亡時のみ保険金支払い
・満期保険金や高額の返戻金はない
■メリット
・比較的低コストで必要な保障を確保できる
・資金需要が明確な期間に合わせて設計可能
■デメリット
・他の保険に比べて保険料が安い
・解約返戻金がほとんどない
■活用のポイント
・コスト重視の企業に適している
・明確な期間の保障が必要な場合に有効
終身保険
終身保険は、事業承継の時期が明確でない場合や、長期的な視点で会社の資産を形成したい場合に適しています。
ただし、コストが高いため、その分の資金を事業に投資するほうが有利かどうか、慎重に検討する必要があります。
■特徴
・生涯にわたる保障
・必ず保険金が支払われる(死亡時または満期時)
・解約時にも返戻金がある
■メリット
・長期的な保障と資産形成が可能
・解約しても返戻金がもらえる
■デメリット
・保険料が比較的高額である
・コストに見合う効果があるか、検討する必要がある
■活用のポイント
・長期的な事業承継計画がある企業に適している
・将来の資金需要に備えたい場合に有効
長期平準定期保険
長期平準定期保険は、毎年の支出が一定であるため、財務計画を立てやすい保険です。
ただし、近年の税制改正により、税金面での優遇が減り、以前ほど魅力的ではなくなった面があります。
■特徴
・保険料が一定で変動しない
・保障期間が長く設定されています
・比較的高い返戻率である
■メリット
・会社の支出を予想しやすい
・長期的な計画が立てやすい
■デメリット
・2019年の税制改正により損金算入条件が厳格化
・税金面での優遇が以前より減少した
■活用のポイント
・安定したキャッシュフロー管理を重視する企業に適している
・税制改正の影響を考慮した慎重な検討が必要である
逓増定期保険
会社の成長に合わせて保障額が増えていくため、将来的に大きな資金が必要になる可能性がある場合に適しています。
ただし、解約のタイミングによって得られる金額が大きく変わるため、慎重な計画が必要です。
■特徴
・長く続けるほど保険金が増えていく
・前半と後半で期間が分かれており、保険料が異なる
・後半に入ると保険料が高くなる
・解約返戻金のピークが設定されている
■メリット
・事業の成長に合わせた保障設計が可能
・特定のタイミングでの高額な資金確保が可能
■デメリット
・解約時期により返戻金額が大きく変動
・返ってくるお金が多い保険の税金面での優遇が減った
■活用のポイント
事業承継の時期が明確な企業に適している
解約時期の戦略的な設定が重要である
各保険タイプの特徴を理解し、自社の財務状況、事業計画、税務戦略を総合的に考慮して最適な保険を選択することが、効果的な事業承継対策につながります。
専門家のアドバイスを得ながら、慎重に検討しましょう。
事業承継で生命保険を活用する際の注意点
生命保険を事業承継に利用する際の重要な注意点を3つ解説します。
会社のキャッシュフローに気をつける
生命保険に入ると、会社の税金が少し減るメリットがあります。
しかし、保険料の支払いで会社の財務状況を慎重に考慮する必要があります。
■注意するポイント
・高額な保険料や長期の保険期間は、キャッシュフローを圧迫する可能性がある
・資金不足による途中解約は、効果を損なう恐れがある
■大切なポイント
・将来的なお金の流れをよく考える
・無理のない金額の保険を選ぶ
適切な保険設計により、会社の財務健全性を維持しつつ事業承継対策を進めることが重要です。
保険解約のタイミングを見極める
保険を解約すると、受け取る保険金や返戻金は会社の利益として算入されます。
このため、解約のタイミングを誤ると思わぬ税金が発生する可能性があります。
■注意すべきポイント
・受け取る保険金や返戻金は、会社の利益として扱われる
・退職金や弔慰金の支払いに利用する場合、タイミングによっては高額な税金がかかる可能性がある
■大切なポイント
・保険を解約するタイミングを見極めることが重要
・税務上の影響を慎重に考慮して、解約時期を決定する
保険を賢く使うためには、始めるときだけでなく、解約するときも慎重に考えることが必要です。
思わぬ税金を払うことを避けるために、専門家のアドバイスも活用しましょう。
生命保険以外の選択肢も検討する
会社を次の人に引き継ぐとき、生命保険だけでなく、他の方法も考えてみることが大切です。
■最近の変化
2019年に法律が変わり、 生命保険で税金を減らす効果が小さくなりました。
そのため、他の方法も探してみる必要が出てきました。
■他の方法
- 国が用意している支援制度を使う
(事業承継税)
• 会社を引き継ぐときの税金(相続税や贈与税)が少なくなります
• 税金を後で払えることもあります
• 会社をスムーズに引き継ぐのに役立ちます - その他の方法
- 株式の種類を工夫する(種類株式)
– 会社の支配権を保ちつつ、財産を分けることができます - 経営承継円滑化法を利用
– 会社の借金の保証人を変更するのに役立ちます - M&A(会社の売却)を検討
– 会社を買ってくれる人を探す方法です
- 株式の種類を工夫する(種類株式)
一番大切なのは、生命保険だけにとらわれず、いろいろな方法を考えてみることです。自分の会社の特徴や未来の計画に合わせて、最適な引き継ぎ方を見つけましょう。
生命保険を効果的に活用するためにも、まずは事業承継の専門家にご相談下さい
事業承継は複雑な課題ですが、生命保険を効果的に活用することで、その負担を大きく軽減できる可能性があります。
しかし、生命保険だけでなく、様々な選択肢を検討することが重要です。
大切なのは、「早く知ること」。
時間があれば検討できる選択肢も広がり、最適な対策を見つけることができます。
生命保険の活用方法から税制優遇措置の適用まで、幅広い観点から、わかりやすくお伝えします。
弁護士の西田幸広です。
この記事を監修した弁護士
西田 幸広 法律事務所Si-Law代表
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