事業承継ファンドとは?活用が有効なケースやメリット・デメリットも紹介!

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事業承継ファンドとは、後継者不足や資金・人材の課題を抱える中小企業が、会社の価値や雇用を守りながら次の担い手へバトンを渡すための選択肢です。

日本では経営者の高齢化が進み、親族内での承継が難しいケースが増えています。

その結果「従業員や取引先を守りたいが、誰に託せばいいのかわからない」と不安を抱える経営者が少なくありません。

事業承継ファンドは単なる投資ファンドではなく、経営改善や人材育成をおこないながら企業を磨き上げ、最適な承継先へ橋渡しします。

本記事では、事業承継ファンドとは何か、一般的なファンドとの違い、活用が有効なケースやメリット・デメリット、さらに選ばれやすい条件までを詳しく解説します。

目次

事業承継ファンドとは

事業承継ファンドとは、非上場の中小・中堅企業の株式を取得し、一定期間にわたり経営改善と後継体制の構築を支援したあと最適な承継先へ引き継ぐ、投資をおこなうための仕組みです。

単なる買収ではなく、企業の継続性・地域への影響・雇用維持を重視するのが特徴です。

投資後は、部門別損益やKPI(重要業績評価指標)の整備・在庫や与信の管理・幹部層の強化・品質保証体制の確立など、属人的な運営から「仕組みで回る会社」への転換を進めます。

創業者の想いや文化を尊重しつつ、次世代に渡せる「整った状態」をつくることが役割で、親族承継やM&Aが難しい場合に、第三の選択肢として注目を集めています。

一般的なファンドと事業承継ファンドの違いは?

短中期の投資リターンを主眼に据え、経営への関与は限定的であるのが、ベンチャーキャピタルやヘッジファンドなどの一般的なファンドです。

一方で、多数株の取得を通じて経営の中枢に踏み込むのが事業承継ファンドです。

一般的なファンドと事業承継ファンドの違いのイメージ画像

一般的なファンドは投資家と企業をつなぐ「橋渡し役」であり、事業承継ファンドは後継者を探している会社を助ける「牽引役」といえます。

事業承継ファンドは売上や利益だけでなく、離職率や幹部育成度・主要顧客依存・内部統制など「継続の質」を測る指標を重視し、会議体・稟議フロー・人事制度の設計まで伴走します。

目的は単なる価値最大化ではなく、承継耐性の向上と段階的なバトンタッチの実現にあります。

事業承継ファンドとM&Aの違いは?

M&Aは、買い手企業への最終譲渡が前提で統合(PMI)が早期に進む分、文化摩擦や配置転換の負荷が生じる可能性があります。

これに対し事業承継ファンドは、中間保有の期間に業務標準化・KPI運用・幹部育成を定着させます。

従業員や取引先の不安を和らげながら、適切な承継先(M&A・MBO・IPO等)へ橋渡しします。

言い換えれば、M&Aが「ゴールの手段」であるのに対し、事業承継ファンドは「ゴールへ至るプロセスの設計者」として機能する点が違いです。

事業承継ファンドの種類

事業承継ファンドには、投資哲学や出資者、運営主体によりいくつかの種類があります。

  • PE(プライベートエクイティ)ファンド
  • 公的機関が関わるファンド
  • 地域密着型のファンド
  • サーチファンド

ここではそれぞれの種類について、詳しく解説します。

PE(プライベートエクイティ)ファンド

PE(プライベートエクイティ)ファンドは、資金力と改善ノウハウで短中期に価値向上を図る主流派です。

多数株を取得し、原価の見える化や価格戦略の再設計、在庫・調達・生産・物流の最適化、人事制度や評価の刷新、販路拡大など、企業価値向上の打ち手を実装します。

事業承継という状況において、属人運営を「会社の型」に置換え、後継体制が回る土台を短期間で整えるのが強みです。

要求水準は高い反面、改善の速度と確度が期待でき、最終譲渡の選択肢(M&A・MBO・IPO)を広げます。

稟議や統制が厳格化する点は、事前合意でなるべく摩擦を減らすのがよいでしょう。

公的機関が関わるファンド

公的機関が関わるファンドは、雇用維持や地域産業の持続性を重視し、地場の技術や文化の承継に配慮します。

中小企業基盤整備機構や自治体、地域金融機関が関与する枠組みは、採算だけで判断せず、雇用・地域・技術の継承に軸足を置きます。

慎重さに時間を要する場面もありますが、地場産業のサプライチェーンや文化資産に配慮が行き届くのがメリットです。

老舗や伝統工芸、地域特化の食品・観光など「地域の顔」を持つ企業に親和的で、ステークホルダーの理解を得ながら、無理のない承継設計を進められます。

地域密着型のファンド

地域密着型のファンドは地銀・信金・地元企業が出資し、地元ネットワークを活かして連携や販路を補強します。

主要顧客や仕入先に対して、地元の信用を背景に丁寧な説明が可能で、連携・再編のコーディネートにも長けます。

地場産業の再生や販路拡大、後継者人材の探索など、地域ならではの課題に具体的な打開策を示せるのが魅力です。

地元の顔を保ちながら承継したい企業に向いています。

サーチファンド

サーチファンドは、起業志望者が投資家支援を受けて後継者となる仕組みで、オーナーシップの連続性を保ちやすいモデルです。

個人や少人数チームが投資家の支援を受けて承継対象を探索・取得し、自ら経営を担います。

意思決定の速さや現場密着の改善力が持ち味で、創業者の理念を色濃く受け継ぎやすいのが特徴です。

一方、体制の薄さや経験不足のリスクもあり、対象規模が比較的小さい会社に適合しやすくなっています。

職人技や顧客密着の価値を長く守りたい企業にとって、当事者意識の強い後継者を得られる有力な選択肢となります。

​​事業承継ファンドの出口は?

​​事業承継ファンドの出口をイメージした画像

事業承継ファンドの関与は永続ではなく、投資初期から出口仮説を置き、要件に向けた磨き上げを積みます。

代表的な出口は、以下の3つです。

  • M&A(他社への売却)
  • IPO(株式公開)
  • MBO(マネジメント・バイアウト)

重要なのは、どの出口でも通用する「承継耐性」の整備です。

部門別損益・KPI運用・品質保証・内部統制・幹部層の厚み・契約や知財の整頓を在任期間に仕上げ、受け手が安心して引き継げる状態を作ります。

M&A(他社への売却)

まず最も一般的な出口が、M&A(他社への売却)です。

ファンド在任中に財務体質を改善し、価格戦略や調達の再設計、販路強化、人材の最適配置を進めることで、買い手にとって魅力的な企業へ磨き上げます。

売却後は大手グループの資本力・ブランド・ネットワークを活かせる反面、PMIでの文化摩擦や役割変更の不安が生じる可能性があります。

業務標準化とKPI運用を事前に定着させ、移行計画とコミュニケーションを丁寧に設計するようにしましょう。

IPO(株式公開)

IPO(株式公開)は、上場により資金調達力と社会的信用を獲得する出口です。

成長ストーリー、会計・内部統制、開示体制の三条件が求められ、対象は限定されますが、独立性を保ったままスケールできるメリットがあります。

上場準備の過程で管理会計や統制水準が高度化し、採用や取引での信用創造効果も大きくなります。

一方、コストや継続開示の負担が増えるため、持続可能な運用体制を事前に組み込むことが重要です。

MBO(マネジメント・バイアウト)

MBO(マネジメント・バイアウト)は、現経営陣・幹部が株式を取得して独立する出口です。

文化の連続性が保たれ、従業員の当事者意識が高まりやすい点がメリットになります。

ファンドは在任中に管理会計・人事制度・内部統制を整え、レバレッジと返済可能性のバランスを見極めて無理のない独立を支援します。

金融機関との信頼関係やキャッシュ創出力の安定が成否を左右しますが、段階的な株式取得やアーンアウト条項を活用するなどして、リスクを抑えるようにすることも可能です。

事業承継ファンドの活用が有効なケースは?

事業承継ファンドは万能ではありませんが、時間・資金・人材の制約を抱える局面で強みを発揮します。

なかでも有効なのは、以下のようなケースです。

  • 後継者がいない場合
  • 後継者の経営ノウハウが不十分な場合
  • 後継者はいるが十分な資金がない場合
  • 経営陣に引き続き経営を任せたい場合
  • 経営の立て直しや事業の再成長を目指す場合
  • 会社の理念や文化を尊重したい場合

それぞれについて、詳しく解説していきます。

後継者がいない場合

親族や社内に後継者としての適任がいない場合、廃業の影響は雇用や地域のサプライチェーンにおよびます。

ファンドは筆頭株主として一時的に受け皿となり、18〜36ヵ月を橋渡し期間に設定し、以下のような内容を段階的に進めていきます。

  • 業務標準化
  • 部門別損益
  • 幹部任命と評価制度
  • 主要顧客との関係維持計画
  • 暗黙知の棚卸し

顧問として一定期間関与し、人脈の引継ぎを計画的に実行するのが創業者です。

結果として同業へのM&Aや地域グループ入り、MBOなどの「選べる承継」が可能になります。

後継者の経営ノウハウが不十分な場合

後継者はいるけれども経営ノウハウが不十分な場合は、KPI会議の伴走で就任プロセスの設計が可能です。

後継予定者が若く、PL・BS・CFや人材マネジメントに不安がある場合、ファンドは経営人材を派遣し、月次KPI会議を通じて、適切な経営判断プロセスを確実に身につけさせます。

半年ごとに、金融機関折衝の同席からの単独化、幹部会議の議長交代、予算編成の主務化など計画的な就任に転換します。

後継者はいるが十分な資金がない場合

後継者はいても十分な資金がない場合には、段階的な株式移転をおこなう方法もあるでしょう。

自社株評価が高く、後継者の手元資金や借入余力では承継できないというのは、優良企業ほど陥りやすいジレンマです。

ファンドが一部から過半数を取得し、議決権と配当権の設計、段階的な株式買戻し(アーンアウト・SO・種類株)で「身の丈承継」を実現します。

相続・贈与の設計と連動させ、親族間の公平性と納税資金の確保に道筋をつけられる点もメリットです。

無理のない資本政策で、会社と家族の双方にとって納得度の高い承継が可能になります。

経営陣に引き続き経営を任せたい場合

オーナーは退くけれども経営陣に引き続き経営を任せたい場合、ファンドは裏方を強化します。

財務戦略や統制設計・契約や知財・労務コンプラを整え、現場の意思決定を支える体制を敷くことが可能です。

価格改定はコスト積み上げ一択から、価値基準・競合相場・需要弾力の三点で判断するルールへ移行し、営業の心理的負担を減らしながら粗利率を守ります。

元オーナーが不在でも、組織が自立的に回る型を実装できるのが強みです。

経営の立て直しや事業の再成長を目指す場合

経営の立て直しや事業の再成長を目指す場合にも、第三者の実装力は効果的です。

収益構造が歪んだ会社には、単価・歩留まり・稼働率・製販連携といった粗利段階のボトルネックと販管費の固定費化を同時に診断します。

短期のキャッシュ創出(在庫適正化、調達再交渉、不採算撤退)と、中期のミックス転換(重点顧客・製品の再定義、チャネル再設計)をおこなうことが効果的です。

最初の短期集中期間で、現場の信頼を得ることが重要です。

それをもとに経営基盤(人事・IT・会計など)の抜本的な改善を進めれば、企業を持続的な成長の道筋に戻していくことができるでしょう。

会社の理念や文化を尊重したい場合

会社の理念や、職人技・顧客との約束・地域との絆といった数字に表れにくい価値を守りたい場合、ファンドは「文化の脚注化」をおこないます。

行動規範や品質基準、意思決定の価値基準を制度と評価に埋め込み、単なるスローガンではなく、成果を生み出す仕組みを創造します。

採用・育成・表彰に理念を反映させることで、承継後も企業らしさを出すことが可能です。

文化の可視化は、買い手や金融機関への説得力を高める副次効果も生みます。

なお、事業承継ファンドを活用する場合は、事業承継税制との関連性についても事前に専門家へ相談をするようにしましょう。

事業承継ファンドを活用するメリット

事業承継ファンドを活用するメリットには、以下のようなものがあります。

  • 資金調達を超えた経営ノウハウが獲得できる
  • スムーズに事業のバトンタッチができる
  • 会社の未来と従業員の雇用を守れる

ここではそれぞれのメリットについて、詳しく解説します。

資金調達を超えた経営ノウハウが獲得できる

事業承継ファンドの最大の利点は、資金調達を超えた経営ノウハウが獲得できる点です。

ファンドは単なる出資者ではなく、実行・実現を共にする伴走者です。

原価の見える化や価格ポリシー、在庫回転と与信の基準、品質保証・監査の仕組み、評価と育成の体系、契約・知財・コンプラの体制まで、従業員が日常的に活用し、自律的に運用できるシステムとして構築します。

後継者の力量差に依存せずに成果が出やすく、銀行・主要顧客の信頼も高まります。

ノウハウの移植は、最終的な買い手候補の安心材料にもなり、出口の選択肢を広げることにつながります。

スムーズに事業のバトンタッチができる

ファンドは承継準備をプロジェクト化します。

ベテラン社員の持つノウハウや経験則の言語化やマニュアル化、人脈の引継ぎ、幹部の権限移譲、主要契約といった事業の根幹となる要素の構築を、段階的な計画に基づいて進めます。

段階的承継の設計により、経営者交代の「瞬間の不安」を小さくでき、従業員・取引先への説明も一貫するため、スムーズに事業のバトンタッチができるのもメリットです。

移行計画とコミュニケーション計画をセットで運用することで、混乱を最小化し、日常業務の継続性を担保できます。

会社の未来と従業員の雇用を守れる

事業承継ファンドを活用することで、段階的な承継設計により従業員・取引先の不安を抑えた移行が可能になります。

雇用や文化を守りながら、未来の成長力を高められることもメリットです。

雇用・地域・文化を守る条件を初期に明文化して取締役会・株主間契約や譲渡契約に反映させるため、受け手が変わっても守るべきラインがぶれにくくなります。

最終譲渡先の選択肢を広げながら、従業員の処遇・教育投資・安全衛生など「未来の働く場」を強化できます。

結果として、関係者の不安を抑え、承継後の離職や混乱を減らし、企業の持続可能性を高める効果が期待できるでしょう。

事業承継ファンドを活用するデメリット

事業承継ファンドを活用するデメリットをイメージした画像

事業承継ファンドを活用することで、メリットだけでなくデメリットが生じることもあります。

  • 経営の自由度が制限される可能性がある
  • 企業文化の変化や従業員の反発のリスクがある
  • 短期間での売却を前提とした経営が必要になる
  • 譲渡価格が低くなる可能性がある
  • 提供情報の漏洩リスクがある

それぞれの内容について解説します。

経営の自由度が制限される可能性がある

事業承継ファンドの関与は、透明性や統制の強化と引き換えに、意思決定の自由度が一部制限されることを意味します。

モニタリング会議や稟議ルール、コンプライアンスが厳格化し、意思決定に説明責任が伴うのです。

スピードと透明性を両立させるには、意思決定基準を共有し、緊急時の例外処理を決めておくのが有効です。

重要施策は目的・評価軸・期限を事前定義し、効果を検証する運用に切り替えます。

基準が明確になれば、現場の裁量は安定的に機能します。

企業文化の変化や従業員の反発のリスクがある

外部の制度や人材が入ると、慣れ親しんだ企業文化に変化がもたらされ、従業員からの反発が生まれることがあります。

この反発を乗り越え、変革をスムーズに進めるためには、トップダウンで押し付けるのではなく現場を巻き込むことが不可欠です。

キーパーソン(現場の重要人物)を早い段階で話し合いに巻き込み、新しい制度設計を一緒におこなう機会を設けてください。

まずは小さな部門やチームでテスト導入をおこない、小さな成功体験を積み重ねることで、「この変化は自分たちのためになる」という納得感を広げます。

また、「なぜ変わるのか」という理由と「変わった先で何が良くなるのか」という効果を具体的に伝えることで、従業員の納得感を高めます。

さらに、現場の声を反映するフィードバック窓口を設置することで摩擦を未然に防ぎ、従業員の不安を最小限にすることができるでしょう。

短期間での売却を前提とした経営が必要になる

事業承継ファンドは、短期間での企業売却を前提としているため、経営戦略や投資の配分が「早期の価値向上」を意識した設計に偏る傾向があります。

これは、成果が出るまでに時間のかかる中長期的な成長投資、特に研究開発(R&D)などとは緊張関係(対立)を生むことがあります。

ファンドの目標が短期的な利益に集中することで、将来の競争力を高めるための種まきがおろそかになるリスクがあるためです。

この問題を避けるためには、ファンドと「投資の目的」を明確に共有することが不可欠です。

短期的な成果を出すための投資と、将来の譲渡価値を高めるための投資をはっきり区別し、その進捗と効果を継続的に共有しましょう。

そうすることで、短期的な利益に流されることなく、中長期的な成長に向けた投資の正当性を確保できるはずです。

譲渡価格が低くなる可能性がある

事業承継ファンドの関与で、期待していた譲渡価格との差が生まれたりレポーティング負担の増加があるなど、現実のコストも無視できません。

これらはNDAと段階開示、例外承認の設計、譲れない価値の明文化をおこなうことで、ファンド側とのギャップを少なくするようにしておきましょう。

DD(デューデリジェンスや企業の財務・法務等の詳細調査)で潜在リスクが顕在化したり、景況変動でマルチプルが下がると希望価格と乖離が生じますが、整頓することで防ぐことができます。

決算の透明化・簿外の解消・主要契約と知財の棚卸し、部門別損益の整備、係争・環境・労務のリスク把握を事前に進め、調査対象となる項目をなくしておくとよいでしょう。

根拠を示すことのできる資料が揃えば、提示価格を維持しやすくなります。

提供情報の漏洩リスクがある

DD・交渉で機密情報の開示は不可避のため、漏洩リスクがあることもデメリットです。

NDAに再委託・持ち出し制限・ログ管理を明記し、データ室のアクセス権を最小化、開示は段階的に進めてください。

複数の買い手候補に打診する際は、匿名化・範囲限定を徹底し、終了時の返却・破棄義務を確認します。

社内の情報管理教育も同時に実施し、ヒューマンリスクを抑えることが大切です。

事業承継ファンドから選ばれやすい7つの条件

選定は「伸ばせるか・守れるか・整っているか」という3つの視点でおこなわれます。

ここでは、選定の際に事業承継ファンドから選ばれやすい7つの条件をご紹介します。

  • 安定した収益力があること
  • 独自の強みや技術を持っていること
  • 顧客や取引先との関係が良好であること
  • 業界全体が成長しているかニッチな市場で強みがあること
  • 組織体制がしっかりしていること
  • 財務状況が健全であること
  • 経営者自身が前向きであること

財務データなどの数値情報と、ノウハウ・組織力などの非数値情報の両方から、 事業が問題なく継続できる基盤の強さを提示できるかが鍵になります。

一方で未整備でも、現状と改善計画を言語化すれば前向きな評価を受けることにも繋がります。。

安定した収益力があること

まずは、安定した収益力があることです。

単に単年度の黒字・赤字を見るのではなく、市場の変動や不況でも崩れない「粗利率の高さ」と、固定費を柔軟に調整できる「弾力性」、そして「現金を継続的に生み出す力(キャッシュ創出力)」が特に高く評価されます。

収益の再現性(将来も稼ぎ続けられる保証)を伝えるために、部門・製品・顧客ごとの粗利と、その増減の理由を明確に説明できることが重要です。

さらに、季節による変動や原材料費の高騰といった外部からの影響をどのように乗り越えてきたか、そして運転資金の回転(売掛金・在庫・買掛金の管理)に関する明確な方針を示すことで、高い業務運営能力を印象づけることができます。

独自の強みや技術を持っていること

次に、独自の強みや技術を持っていることです。

  • 工程ノウハウ
  • 特殊治具
  • 検査基準
  • 短納期体制
  • アフター品質
  • 商標・意匠・特許

これらの要素こそが、他社が簡単に真似できない競争優位性の根本となります。

その強みを語る際は、「顧客が抱える具体的な問題や悩みをどう解決しているか」という視点で説明すると説得力が増します。

手順書・教育カリキュラム・品質記録・動画で再現可能性を示し、人が替わっても成果が出る状態に近づけるほど、承継耐性が高い企業と評価されやすいです。

顧客や取引先との関係が良好であること

顧客や取引先との関係は単なる取引の長さだけでなく、代替できない強さ(代替困難性)と、特定の相手に依存しないリスクの低さ(分散)も重要です。

価格改定の受容実績、複数業界への売上比率、意思決定層との複線的な関係、品質協定・SLA(サービス品質保証)の整備は強い証拠になります。

四半期ごとの満足・要望メモや、担当異動時の関係維持策(複数担当制、役員往訪)まで運用できていれば、関係の安定度は高く評価されます。

業界全体が成長しているかニッチな市場で強みがあること

業界全体が成長しているか、ニッチな市場で強みがあることも大切です。

成長する市場の波に乗って勝つのか、それとも強固な独自の優位性で市場を守って勝つかを明確にします。

上位競合との比較(価格・品質・カスタマイズ・リードタイム・保証)と、顧客の意思決定軸(品質重視か価格重視か、安定供給か)を整理すれば、自社の立ち位置が伝わります。

組織体制がしっかりしていること

「社長の頭の中」から「会社の仕組み」へ変換できており、組織体制がしっかりしていることも大きなポイントです。

役割と権限、会議体(頻度・アジェンダ・責任者)、評価・報酬・育成の骨格、災害・不測事態時の代行順位を文書や規定ではっきりと定めるようにしてください。

月次KPI会議の運営要領と、部門KPIの定義・責任者・報告様式を整えておくだけでも、規模以上に強い会社と見なされます。

財務状況が健全であること

次に、財務状況が健全であることです。

自己資本比率やネット有利子負債・EBITDA(企業が本業でどれだけキャッシュ(現金)を稼ぐ力があるか)だけでなく、与信ルール、在庫の可動・不動区分、設備年齢と更新投資の見込み、運転資金の季節変動まで把握しているかが焦点です。

会計事務所・監査法人のレビューや、経営者の見立てメモを添えると、数字への納得度が増し、ディスカウント要因を減らせます。

経営者自身が前向きであること

譲れない価値観を持ちながら合理的な話し合いを受け入れる柔軟性があるという、経営者自身が前向きである姿勢は重要です。

目的・制約・評価軸といった意思決定の前提を共有し、合意形成のプロセスを言語化できる経営者は、現場の信頼を失わず変革を進められます。

初回面談で歴史の転機や学び、守る領域と変える領域を率直に語れば、ファンドは「ともに走れる相手」として評価します。

その他にも事業承継ファンドについて迷うことやご不安があれば、「TORUTE株式会社」もお力になれるはずです。

まとめ

事業承継ファンドは、会社を未来へつなぐ「時間」と「仕組み」を同時に提供する伴走者です。

一般の投資ファンドと異なり、承継耐性の強化、文化の継承、雇用と地域への配慮を前提に、最終譲渡(M&A・MBO・IPO)までの道筋を段階的に設計します。

もちろん、自由度の低下や出口前提の緊張、情報管理のリスクといった現実のコストも伴います。

だからこそ、最初に「譲れない価値感」と「変えるべき経営課題」を明確にし、その線引きに共感して実際に改善を実行できるパートナーを選ぶことが肝要です。

経営者の重要な経営判断として、、会社の物語と誇りを次世代へ渡す確かな手段の一つとして、事業承継ファンドを冷静に比較検討していただければ幸いです。

西田 幸広 弁護士

この記事を監修した弁護士

西田 幸広 法律事務所Si-Law代表

弁護士・法律事務所Si-Law/(株)TORUTE代表・西田幸広 熊本県を中心に企業顧問70社、月間取扱160件以上(2025年8月時点)。登録3,600社・20超業種を支援し、M&A・事業承継を強みとする。弁護士・司法書士・社労士・土地家屋調査士の資格保有。YouTubeやメルマガで実務解説・監修/寄稿多数。LINE登録特典で「事業承継まるわかりマニュアル」提供。

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