事業承継に使える補助金は?2025年度のスケジュールや申請方法・対象経費なども解説!

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事業承継に使える補助金は、後継者の設備投資やM&A費用、承継直後の販路開拓まで幅広くカバーできる有用な制度です。

とはいえ、「どの補助金が自社に合うのか」「2025年度のスケジュールや申請方法や対象経費が分からない」という声は少なくありません。

そこで本記事では、主要制度の種類と使い分け、2025年の公募スケジュール、実務でつまずきやすい申請手順や書類の整え方まで、経営者目線で整理しました。

親子間・個人事業主の利用可否についても触れています。

この記事を監修した弁護士

西田 幸広 弁護士

西田 幸広 法律事務所Si-Law代表

弁護士・法律事務所Si-Law/(株)TORUTE代表・西田幸広 熊本県を中心に企業顧問70社、月間取扱160件以上(2025年8月時点)。登録3,600社・20超業種を支援し、M&A・事業承継を強みとする。弁護士・司法書士・社労士・土地家屋調査士の資格保有。YouTubeやメルマガで実務解説・監修/寄稿多数。LINE登録特典で「事業承継まるわかりマニュアル」提供。

事業承継に使える補助金は?

事業承継の中心制度は、中小企業の承継・再編時に必要となる費用を下支えする「事業承継・M&A補助金(旧:事業承継・引継ぎ補助金)」です。

承継に合わせた設備更新、M&Aにともなう専門家費用、承継後の統合作業(PMI)、さらには計画的な廃業費用まで、類型(枠)ごとに対象が定義されています。

参考:中小企業庁|事業承継・M&A補助金

申請は原則オンラインで、事前にgBizID(GビズID)を取得して、Jグランツから電子申請するのが基本ルートです。

参考:GビズID

まずは「自社の課題は投資なのか・M&A周りの専門家費用なのか・PMIか・廃業整理か」を明確化し、該当枠を選ぶことが最初の一歩になります。

ここでは事業承継・M&A補助金の類型それぞれの内容と、その他に活用できる主要な補助金をご紹介します。

事業承継・M&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金)

2024年度までは「事業承継・引継ぎ補助金」と呼ばれていた補助金が、2025年度からは「事業承継・M&A補助金」に変更されました。

制度名は改称されていますが、「承継の質とスピードを高めるための費用を補助する」という本質は変わりません。

親族内・社内・第三者承継いずれにも対応し、計画の合理性と承継後の成長・生産性向上への波及が評価のカギです。

設備・システム導入、店舗改装、ITツール、M&Aのデューデリジェンス(DD)、FA・仲介、PMIの体制づくり、廃業に係る整理費用など、枠ごとに定められた対象経費と補助率・上限に沿って設計します。

事業承継・M&A補助金は、以下の枠組みで分類されています。

  • 事業承継促進枠(経営革新枠)
  • 専門家活用枠
  • PMI(Post Merger Integration)推進枠
  • 廃業・再チャレンジ枠

それぞれの枠の申請条件や対象経費、その考え方を解説します。

事業承継促進枠(経営革新枠)

以前は「経営革新枠」と呼ばれていた枠組みが、2025年の「事業承継・M&A補助金」への名称変更の際、「事業承継促進枠」へと変更になりました。

申請条件と主な対象経費は、以下のとおりです。

【申請条件】

  • 中小企業者等、親族内承継・従業員承継を計画
  • 承継を機に生産性向上につながる投資を実施
  • (原則)他枠との同時申請は不可/廃業費の上乗せは可

【主な対象経費】

  • 設備費(機械・装置、内装・改修工事)
  • IT・システム導入(基幹、販売、在庫 等)
  • 外注・委託・謝金・旅費・知財関連費 など

事業承継促進枠は、事業承継を機に老朽設備の入替や自動化、省人化、品質向上投資をおこなうケースで使います。

ポイントは、単なる更新ではなく「生産性や付加価値の伸び」に結びつく設計にすること。

例えばボトルネック工程の自動化+リードタイム短縮の数値目標、歩留まり改善の根拠、売上構成の変化(単価アップ・粗利率改善)を計画に落とし込むと、審査での説得力が高まります。

採択後は、計画とズレないよう仕様・見積・発注時期を管理し、期中の設計変更は必ず事務局の承認ルートで進めるのが鉄則です。

専門家活用枠

「専門家活用枠」は、M&Aの買い手・売り手が、登録済みのM&A支援機関や中立的な専門家(FA、弁護士、公認会計士、税理士など)を活用する際の費用を補助します。

【申請条件】

  • 中小企業者等、M&A支援機関登録制度の登録FA・仲介や要件を満たす専門家を活用
  • 交付決定後・事業期間内の契約・発注・支払が必須

【主な対象経費】

  • FA・仲介報酬、DD費用(財務・税務・法務・ビジネス)
  • 株式価値評価、セカンドオピニオン
  • マッチングサイト利用料、表明保証保険料 など

留意すべきは「登録された支援機関の活用が前提」であることと、契約・見積・請求・支払の名義と日付が一貫していることです。

クロージング日との前後関係、着手金・成功報酬の支払時期などを交付決定日・事業期間と矛盾なく設計する必要があります。

PMI推進枠

「PMI推進枠」は、承継・M&A成立後の統合(PMI)を後押しする枠です。

申請条件と主な対象経費をまとめると、以下のようになります。

【申請条件】

  • 譲受後(または譲受予定)の統合(PMI)計画があること
  • 類型:①PMI専門家活用 ②事業統合投資

【主な対象経費】

  • PMI専門家活用:専門家の謝金・委託・旅費
  • 事業統合投資:設備や工事・システム連携・データ移行・業務標準化にともなう外注
    ※統合投資類型では FAや仲介・DD・PMIコンサル費は対象外

狙いは、シナジーの早期実現です。

重複拠点の再編・稟議フローや権限設計・定例会議体の整備も「運用」として明示し、投資と体制を一体で示すことが鍵になります。

廃業・再チャレンジ枠

「廃業・再チャレンジ枠」は、不採算部門を計画的に閉じ、承継後の新しい柱へ資源を振り向けるための整理費用を支援する枠です。

【申請条件】

  • 譲渡できなかった事業の計画的廃業、または他枠と併用して一部廃業
  • 単独申請も各枠に上乗せしての申請も可

【主な対象経費】

  • 解体や原状回復・在庫廃棄・リース解約
  • 廃業手続の専門家費・(併用時の)移転や移設費
    ※売却で対価を得る在庫等の処分費は対象外

実務のコツは「廃業=ネガティブ」に見せないことです。

撤退判断の合理性、主力事業への集中による採算性改善、従業員の配置転換や再教育といった「前向きな再構築ストーリー」を計画書で可視化すると評価されやすくなります。

他枠と並走させ、一体の再編計画として位置づけると、資金計画の整合も取りやすくなります。

それぞれの枠の共通の注意事項として、交付決定前の契約・発注・支払いはNGであり、事業期間内に完了させる必要があります。

証憑は名義・日付・金額の整合を取り、目的が重なる費用の二重計上は避け、枠ごとに時期・対象を切り分けます。

最終ルールは最新の公募要領がすべてなので、対象外経費や加点要件は申請直前に必ず再確認するようにしてください。

参考:中小企業庁|事業承継・M&A補助金

その他の主要な補助金

事業承継と同時に成長投資や事業転換を加速したい場合、以下の制度も候補に挙がります。

重複計上はできませんが、対象と時期を切り分けることで全体資金を最適化できます。

事業再構築補助金

「事業再構築補助金」は、新市場進出・業態転換・事業や業種転換・事業再編など「思い切った再構築」を支援します。

承継後に主力製品を刷新する、サービスをサブスクに転換する、海外販路を開拓するなど、ビジネスモデルの変革をともなう投資に向いています。

評価の焦点は「新規性×実現性×収益性」。

過度な設備偏重にせず、収益シナリオ(KPI)と体制を描くことが鍵です。

参考:事業再構築補助金

ものづくり補助金

「ものづくり補助金」の中核は、生産性向上のための設備・システム導入です。

例えば承継前から課題だった工程のボトルネック解消や、承継を機に踏み切る自動化・省エネ投資、複数工程の一気通貫化などに合致します。

審査では、「定量的な生産性指標(労働生産性・原価・歩留まり・LT)」の改善根拠が重要です。

導入機の仕様・能力値と、改善シミュレーションの前提(稼働率・タクト・シフト)を数字で語ると評価が安定します。

参考:ものづくり補助金

小規模事業者持続化補助金

「小規模事業者持続化補助金」は販路開拓・業務効率化が目的で、承継直後の売上立ち上げ施策に相性がよい制度です。

Webサイト改修・ネット広告・チラシ・展示会出展・予約管理や顧客管理(CRM)など、小口ながら「早い打ち手」に活用できます。

実務では、商工会議所・商工会との連携(事業支援計画書)や、費目の根拠整理(見積書、仕様書、媒体資料)の早期着手がスムーズです。

参考:中小企業庁|小規模事業者持続化補助金について

各自治体独自の補助金・助成金

国の制度のほか、各都道府県や市区町村にも、承継・PMI・M&A専門家費用の一部を支援する補助金や助成金があります。

名称や要件・上限や補助率・募集時期は自治体ごとに異なるため、所在地+「事業承継 補助金」などのワードを検索し、公募ページを都度確認しましょう。

地域の産業政策に合致した成長投資や賃上げ・雇用維持・脱炭素・デジタル化などの観点が、セット要件になる場合もあります。

自社の計画と政策目的を言語化しておくとよいでしょう。

事業継承の補助金や助成金については、以下の記事でも詳しく解説したので参考にしてください。

関連記事:事業承継の補助金や助成金は?2025年度はいくらもらえるのか・対象経費も解説!

親子間でも事業承継・M&A補助金は使える?

親子間でも補助金は使えるかをイメージした画像

親子間でも、事業承継・M&A補助金は使えます。

親族内承継(親子・親族間)や従業員承継も対象に含まれており、承継に合わせた設備投資や体制整備を支援する類型が用意されています。

注意点は、単なる名義変更ではなく、承継によって経営課題がどう解決し、生産性や付加価値がどう伸びるかを計画で示すことです。

例えば、後継者の得意領域(デジタル・海外・内製化)を起点に、具体的に投資・組織・KPIが連動している構成にすると説得力が増します。

加えて、親族間売買にともなう資金計画や税務(株式評価・納税資金)も計画書の前提として明確にしておくと審査・金融機関双方に通りやすくなります。

個人事業主でも事業承継・M&A補助金は使える?

個人事業主も、事業承継・M&A補助金は対象になり得ます。

個人の事業譲渡で、買い手側のDDや専門家費用、承継後の設備・内装の一部、さらには計画的な廃業に係る整理費用など、要件に合致すれば申請が可能です。

個人の場合は、開業・廃業等の事実や、取引・支払の証憑(請書・見積・請求・振込記録)を名義・日付・金額の一貫性で丁寧に揃えることが成功のカギになります。

屋号・口座名義が変わるタイミングは特に注意し、交付決定前後と事業期間の線引きを誤らないようにしてください。

参考:中小企業庁|事業承継・M&A補助金

判断に迷ったり不安があったりする場合は、一度「TORUTE株式会社」にご相談ください。

2025年の事業承継・M&A補助金の公募スケジュールは?

例年、夏〜初秋に公募要領・様式が更新され、申請受付は初秋に締切というサイクルが続いています。

2025年度についても、すでに「第11次公募」から「第13次公募」までの公募が実施されました。

【2025年度の主な公募日程】

公募申請受付期間採択日交付決定日
第11次公募5月9日(金)~6月6日(金) 17:00まで7月11日(金)7月18日(金)以降 順次
第12次公募8月22日(金)~9月19日(金)17:00まで10月27日(月)11月4日(火)以降 順次
第13次公募10月31日(金)~11月28日(金)17:00まで2025年11月時点では公表されていないため、詳細は公式サイトをご確認ください

参考:事業承継・M&A補助金

すでに2025年度の公募は終了していますが、来年以降のスケジュールが見えていない段階でも、今からできる準備は多くあります。

  1. 1.gBizIDの取得
  2. 2.見積・仕様の確定
  3. 3.直近決算と生産性KPI整理
  4. 4.賃上げ・雇用方針の明文化
  5. 5.事業計画ラフ版の作成

以上の5点に着手しておけば、要領公開後に一気にエントリーすることができます。

締切直前は申請が集中するため、1〜2週間前には送信を目標に据えるのが安全運転です。

2026年以降のスケジュールは?

2026年以降のスケジュールについては、2025年11月現在でまだ発表されていません。

制度は毎年、枠名や要件の微修正がおこなわれます。

承継や再編の促進・成長投資や生産性向上・PMIの着実化・円滑な事業再編といった大枠の目的は継続する見込みです。

しかし、賃上げ・GXやDX・インボイス・インボイス登録状況 などの補助率・上限・加点要件が調整されることは珍しくありません。

2026年以降の申請を見据える場合は、毎年の要領公開前から自動化・データ連携・脱炭素・海外展開といった投資テーマを中期計画に埋め込み、どの制度のどの枠で申請するかを検討しておくとよいでしょう。

事業承継・M&A補助金の申請方法

事業承継・M&A補助金の申請方法のイメージ画像

ここからは、申請から実績報告までの実務フローを段階ごとに整理します。

  1. 1.申請用アカウントの取得
  2. 2.サポート機関への相談
  3. 3.公募要領の熟読と必要書類の準備
  4. 4.Jグランツでの電子申請
  5. 5.補助事業の実施と実績報告

特に重要なのは、以下の2点です。

  • 交付決定前に契約・発注・支払をしない
  • 証憑の整合性を徹底

これだけで目先のトラブルは回避できます。

申請用アカウントの取得

Jグランツから申請するには、「gBizID(GビズID)」が必要です。

発行には日数を要するため、要領公開前から動いておくのがおすすめです。

法人代表者の本人確認書類・印鑑証明・登記事項証明などの準備も忘れないようにしてください。

誰が作成・提出・承認するかという社内アカウントの運用ルールを決め、IDの属人化を避けることも実務上のリスク低減になります。

参考:GビズID

サポート機関への相談

M&A費用を計上するなら、M&A支援機関登録制度に登録されたサポート機関の活用が前提となっています。

早期に候補機関へ相談し、見積・スコープ・成果物(DD報告書、評価書、契約草案レビューなど)をすり合わせてください。

商工会議所や商工会・よろず支援拠点・金融機関・自治体のワンストップ窓口など、無料・低廉な伴走支援もフル活用しながら計画の実現性を高めます。

専門家が入ることで、事業計画の客観性や証憑の整合が担保され、採択後の精算もスムーズになります。

公募要領の熟読と必要書類の準備

公募要領は「唯一のルールブック」です。

  • 対象経費の定義
  • 補助率・上限
  • 事業期間
  • 見積の取り方
  • 相見積の必要性
  • 支払方法(原則振込)
  • 印字の要件
  • 加点・減点要素

このような内容をひとつずつ読み込んでください。

チェック欄を自作して潰し込んでいくのもおすすめです。

必要書類は、以下のとおりです。

  • 履歴事項全部証明書
  • 納税証明
  • 決算書
  • 同意・誓約書
  • 見積・比較見積
  • 仕様書
  • 図面
  • 媒体資料、契約書(予定)
  • 賃上げに関する方針書 など

書けるところから仕上げていくのではなく、足りない書類を最初に洗い出すのが段取り上のコツです。

Jグランツでの電子申請

Jグランツの電子申請フォームでは、事業者情報・事業計画・経費明細・添付資料をアップロードします。

注意点は、ファイルの命名規則と版管理です。

提出後に差し替えが必要になった場合に備え、ローカルの申請フォルダで「提出版(日時付)」と「編集版」を分け、社内で最新かわかる状態にしておくのがおすすめです。

送信後はマイページで、到達・受付・審査中・採択などのステータスを確認できます。

通信混雑やブラウザ依存の不具合も想定し、締切直前の深夜送信は避けるようにしてください。

補助事業の実施と実績報告

採択後の流れは、以下の順に進めます。

  1. 1.交付決定
  2. 2.契約・発注
  3. 3.納品
  4. 4.検収・支払
  5. 5.実績報告
  6. 6.確定通知・交付

最も多いトラブルは、以下の3点です。

  • 交付決定前に注文してしまった
  • 社長個人カードで支払ってしまった
  • 名義違いで請求書が出た

いずれも対象外・減額の原因です。

  • 契約書
  • 発注書
  • 納品書
  • 検収書
  • 請求書
  • 振込明細

これらの書類を名義・日付・金額がつながる形でファイリングし、電子帳簿保存法の要件も満たしておくと安心です。

中間・事後の報告(モニタリング)にも備え、KPIの実績値をダッシュボードで見える化しておくと、次年度以降の申請にも活きます。

参考:事業承継・M&A補助金

事業承継の補助金のご相談は「TORUTE株式会社」へ

事業承継は、法務・税務・労務・金融・補助金が同時並行で絡み合います。

TORUTE株式会社では、親族内・社内・第三者承継それぞれの特性に合わせ、スキーム設計や契約書レビュー、DD支援、PMIの労務、ガバナンス整備までをサポートいたします。

補助金についても、どの枠で何を計上すべきか、投資・専門家・PMI・廃業の切り分けから証憑の整え方、Jグランツ申請・実績報告の段取りまで、実装できる計画に落とし込みます。

まずはご相談のうえで、現状の課題と「2〜3年でどこまで承継を進めたいか」を共有ください。

最短経路の計画を一緒に描けますと幸いです。

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まとめ

事業承継に使える補助金の要は「事業承継・M&A補助金」です。

投資・専門家活用・PMI・廃業の4視点で費用を設計し、自社課題に合う枠を選ぶのが基本になります。

事業再構築補助金・ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金など、目的の違う制度と時期・対象を切り分けると、総資金計画が最適化します。

スケジュールも含めた最新要領を都度確認し、今からできる準備を進めていくようにしてください。

スキーム設計と補助金計画を同時進行させることで、採択率も実行確度も高まります。

迷うことがあれば、TORUTE株式会社にぜひ一度ご相談ください。

まずはお気軽にご連絡ください

0120-055-737

受付時間/AM8:30~PM5:30(土日・祝休)

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