事業承継ガイドラインとは?概要や策定の背景をわかりやすく解説

中小企業の経営者の高齢化や後継者不在は、日本経済にとって大きな課題となっています。その解決策として、中小企業庁が「事業承継ガイドライン」を作成しました。

この記事では、事業承継ガイドラインについて、わかりやすく解説します。

事業承継ガイドラインとは?

対象 中小企業、小規模事業の経営者
内容 自社の事業を次の世代に円滑に引き継ぐための手引き
いつ 中小企業庁が2006年に作成
主な内容 ・事業承継の重要性の理解へ
・引き継ぎの準備事項
・起こりうる課題と対処法
・具体的な手順や事例、ポイント

このガイドラインは、事業承継の重要性を中小企業の経営者に伝えることを目的としています。

策定された背景

日本の企業の99.7%を中小企業が占め、地域経済を支える存在です。
しかし近年、経営者の高齢化と後継者不足が深刻な問題となっています。
このガイドラインは、こうした課題に対処し、事業を次の世代へとつなぎ、日本経済の活力を維持するために策定されました。

事業承継における中小企業の現状や課題は?

「中小M&Aガイドライン」との違いは?

中小M&Aガイドラインは、中小企業がM&A(合併・買収)を行う際の手引きです。
「事業承継ガイドライン」と、「中小M&Aガイドライン」の違いは以下の通りです。

事業承継ガイドライン 中小M&Aガイドライン
対象者 経営者や後継者、事業売却を考えている方 中小企業の経営者や投資家、M&Aを検討している方
対象範囲 会社の引き継ぎ全般を扱う 特にM&A(買収・売却)に特化
内容 事業承継の重要性や準備事項、課題と対処法など M&Aの手順や具体的な進め方、留意点など
対象ケース 自社の後継者に事業を引き継ぐ場合、第三者に事業を売却する場合 M&A(買収・売却)をする場合

事業承継ガイドラインは、自社を次の世代に引き継ぐ方法や、他社に売却する方法について詳しく説明しています。
一方、中小M&Aガイドラインは、M&A(買収・売却)に関連する具体的な手順や進め方が書かれています。

【2022年】事業承継ガイドラインの改訂ポイント

事業承継ガイドラインは2016年、2022年と2度にの改訂を経て、現在は第3版が公開されています。

最新情報の追加

新しい統計データや政策情報が加えられ、経営者や後継者は現在のビジネス環境や政策動向を正確に把握できます。
ビジネス環境の変化や税制改正に対応するための情報が提供されています。

詳細な手順やポイントの追加

従業員による事業の引き継ぎやM&Aについて、より具体的な説明がされています。
具体的な手順やポイント、注意すべき点が記載されており、経営者は事業の継承や統合に関するリスクやチャンスをより明確に把握できるようになりました。

後継者の目線に立った説明を強化

後継者が理解しやすいように、説明が強化されました。
会社を引き継ぐ際に、後継者が直面する課題や対策、成功事例などが具体的に紹介されています。

このように、ガイドラインは改訂を重ねることで、より詳細で理解しやすくなっています。

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事業承継ガイドラインの概要

事業承継ガイドラインは、以下の6章から成り立っています。

  • 第一章:事業承継の重要性
  • 第二章:事業承継に向けた準備の進め方
  • 第三章:事業承継の類型ごとの課題と対応策
  • 第四章:事業承継の円滑化に資する手法
  • 第五章:個人事業主の事業承継
  • 第六章:中小企業の事業承継をサポートする仕組み

第一章:事業承継の重要性

第一章では、以下のような事業承継の重要性が丁寧に解説されています。

■会社の存続を守れる
事業承継のタイミングや手順を学べば、自社の事業を次世代に確実に引き継ぐことができます。

■従業員の雇用を守れる
スムーズな事業承継により、従業員の皆さんの雇用と生活を守ることができます。

■顧客との信頼関係が続く
事業が次の世代へ引き継がれることで、古くからの顧客との付き合いも続きます。

■経営者自身の老後を守れる
適切なタイミングで事業を引き継げば、経営者やご家族の生活と資産を守ることができます。

第二章:事業承継に向けた準備の進め方

第二章では、事業承継に向けた具体的な準備の進め方が以下の5つのステップで解説されています。

1.事業承継に向けた準備の必要性の認識

事業承継を行う上で、その重要性を認識することが第一歩です。
経営者や関係者が事業の将来を見据え、承継の必要性を共有しましょう。

2.経営状況・経営課題等の把握(見える化)

自社の経営状況や課題を把握し、明確に整理することが必要です。
数字やデータを見える化することで、課題解決の方向性が見えてきます。

3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

事業を引き継ぐために、経営や組織を改善する作業です。
売上増加やコスト削減など、事業の価値を高める取り組みが必要です。

4.事業承継計画の策定

承継の計画を具体的に立てます。
親族内や従業員への承継の場合は、後継者の育成や組織体制の整備が必要です。
一方、M&Aや他社への引継ぎの場合は、適切な買い手の選定などが含まれます。

5.事業承継の実行

最終段階で、計画を実行に移します。
関係者とのコミュニケーションや調整が欠かせません。段階を追って着実に進めていきましょう。

事業承継の計画について

第三章:事業承継の類型ごとの課題と対応策

第三章では、事業承継の類型ごとに発生する課題と対応策、留意点について解説されています。

【親族内承継における課題と対応策】

課題:親族間の感情的な葛藤や意見の不一致が発生しやすい。
対応策:公正な手続きと明確なルールを設定し、トラブルを未然に防ぐ。

課題:後継者のスキルや経験不足がリスクとなることがある。
対応策:後継者のトレーニングや専門家の助言を活用し、後継者を育成する。

【従業員承継における課題と対応策】

課題:組織文化や価値観の変化が、事業の安定性に影響を与える可能性がある。
対応策:従業員とのコミュニケーションを重視し、組織の安定性を保つ。

課題:経営者と従業員との間に信頼関係を築くことが難しい場合がある。
対応策:透明性の高い情報公開や、従業員の参画を促進する。

【社外への引継ぎ(M&A)の手法と留意点】

会社の売買や合併などがあるM&Aは、基本的に3つの手法があります。

  • 売却:自社を他の会社に売る方法
  • 合併:他の会社と一緒に新しい会社を作る方法
  • 買収:他の会社を買って、自分の会社に組み込む方法

留意点:適切な買い手の選定が肝心であり、買い手との相性やビジョンや文化の合致が重要である。
留意点:M&Aによる事業継承は組織の変革を伴うため、従業員や取引先との関係性を考慮する必要がある。

親族内承継とは

従業員承継(社内承継)とは

事業承継におけるM&Aとは

第四章:事業承継の円滑化に資する手法

第四章では、事業を引き継ぐ際に役立つ手法が紹介されています。

【種類株式の活用】
種類株式は、株主たちが経営の権利を守るために使えるものです。
会社を引き継ぐとき、経営者の権限をしっかり守りながら、税金の計画を立てたり、資産を効率よく使うことができます。

【信託の活用】
信託は、信頼できる人にお金や財産を預けることができる仕組みです。
会社を引き継ぐときには、後継者にきちんと財産を引き継ぐために役立ちます。

【生命保険の活用】
生命保険は、亡くなったときにお金がもらえる保険です。
会社を引き継ぐときには、後継者がお金に困らないようにするために使えます。
相続税や家族の生活費も考えて、しっかり準備しておきましょう。

【持株会社の設立】
持株会社は、複数の会社をまとめて管理するための会社です。
会社を引き継ぐときには、経営の仕組みを整えたり、会社同士のつながりを強くしたりするのに役立ちます。

第五章:個人事業主の事業承継

第五章では、個人事業主の事業承継について詳しく解説されています。

後継者の育成や事業の評価がポイントです。
適切な後継者を選び、スキルを継承し、事業の価値を正確に評価することが重要です。
また、税金や法的手続きもきちんと整える必要があります。

個人事業主の事業承継を詳しく解説!

第六章:中小企業の事業承継をサポートする仕組み

第六章では、中小企業の事業承継を支援する仕組みについて解説されています。
商工会議所や取引のある金融機関、事業承継・引継ぎ支援センターなどが、中小企業の事業承継をサポートする役割を果たしています。

また、より専門的な支援を必要とする場合は、認定経営革新等支援機関や中小企業診断士、弁護士などの専門家に相談することでリスクを最小限に抑え、事業承継を進めることができます。

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より分かりやすく!事業承継マニュアル・20問20答の活用

事業承継ガイドラインが難しく感じた場合は、20問20答形式で、分かりやすい情報を提供する「事業承継マニュアル」がおすすめです。

事業承継マニュアル

■事業承継マニュアルとは:事業承継ガイドラインの内容をイラストなど交えてシンプルにまとめたもの

事業承継ガイドラインが難しいと感じる場合でも、事業承継マニュアルを利用することで、基本的な流れやポイントを把握しやすくなります。
イラストや図表を使い、専門用語をわかりやすく解説しており、親しみやすい表現や分かりやすい言葉を用いているため、初心者の方でも理解しやすい構成になっています。
「事業承継マニュアル」を読んで大まかな内容を把握→「事業承継ガイドライン」で詳細な情報を確認するという使い方が有効です。

事業承継ガイドライン20問20答

事業承継ガイドライン20問20答は、初心者の方でも事業承継の全体像をつかみやすいよう、わかりやすく解説されています。

■ポイント1:事業承継の必要性が明確に

“事業承継って本当に必要なの?”という疑問に丁寧に答え、経営者交代時のリスクとその対策の重要性をわかりやすく説明しています。

■ポイント2:幅広いケースに対応

親族内承継や従業員への承継、M&Aによる第三者への売却など、様々なケースに対応した手順やポイントを丁寧に解説しています。

■ポイント3:計画立案がスムーズ

事業承継計画の具体的な内容や立案プロセスを分かりやすく解説しており、どのように計画を立てればよいかが理解しやすくなっています。

■ポイント4:専門家の活用方法も明記

専門家に相談する際のアドバイスや初心者でも安心して相談できる方法が記載されており、専門家の活用方法もわかりやすく示されています。

初めての方はとくに、事業承継は難しそうに感じるかもしれません。
しかし、このガイドラインを活用すれば、事業承継に関する疑問や不安を解決しながら、効果的に準備を進めることができます。

事業承継で疑問や不安に感じることがあれば、この街の事業承継にご相談下さい

事業を次の世代に継承することは、経営上の大きな課題ですが、準備を進める際に不安や難しさを感じる方もいるでしょう。

まずは、中小企業庁の「事業承継ガイドライン」を手助けにしてみてください。
このガイドラインは、事業承継の基礎知識や進め方が分かりやすくまとめられています。

また、何か疑問や不安があれば、お気軽にご相談ください。
事業承継のことわかりやすくお伝えします。
熊本25年。弁護士の西田幸広です。

西田 幸広 弁護士

この記事を監修した弁護士

西田 幸広 法律事務所Si-Law代表

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