事例紹介「つなぐ物語」
つなぐ物語
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熊本地震、コロナ禍を乗り越え、地域と支え合い紡いできた「介護の絆」を次の世代へつなぐ。
介護事業インタビュー
事業承継をお考えになったきっかけについて教えていただけますか?
髙本:きっかけは3年ほど前になります。当時80歳になった社⾧から「会社を継ぐか?」と聞かれました。
しかし、私自身、他に農業の新しい取り組みなどやりたいこともあったので、自分の代で事業を誰かに・・と考えていました。
熊本地震や新型コロナウイルスの影響もあり、現在の5事業所も10年後には存続は難しいかもしれない、という気持ちもありました。
事業承継を考えるとき、どのような方々のサポートがありましたか?そのご経験についてお聞かせください。
髙本:商工会議所の中小企業診断士である河本氏に相談し、提案をいただいたことに本当に感謝しています。
「事業承継は⾧く時間がかかるかもしれない」と言われましたが、河本氏のおかげで西田先生とつながり、そこから具体的にどんどん事業承継が進んでいきました。
正直なところ、気持ちのほうが追いつかないくらいでした。専門家方々のサポートは安心できたと思います。
印象に残っている思い出をお聞かせいただきたいです。
髙本:思い出は、本当にたくさんあります。
事業をこれまで続けてこられたのも、地域とのつながりがあってこそだと感じています。施設の建設や土木工事、設備の修繕、お米や食材の調達に至るまで、できる限り地域の皆さんや近隣の会社にお願いしてきましたし、従業員も地域の方々に支えられてきました。
地域との縁を大切にし、共に歩んでこられたことに深く感謝しています。本社を置いていた益城町赤井の五楽地区には、観音堂があり、節目の行事にも度々お誘いいただきました。
そして熊本地震の際は、前震直後から自主避難所を運営していましたが、届かないという大変な状況の中、農家の方々が自主的に食材を提供してくださいました。
あたたかな地域で皆さんと共に歩んできた20年は、私たちの歴史そのものだと実感しています。
⾧年介護の現場に携わってこられて、この仕事の意義をどのように感じていらっしゃいますか?
髙本:介護事業は、今後一層必要となる事業だと思います。
生活インフラの一端を担っている事業であり、なくてはならないものです。でも今の日本は、フィンランドなど福祉先進国の真似をして始まったにしては、事業者任せすぎではないかと思います。
福祉先進国では介護事業従事者は「準公務員」なんだそうです。
給与や待遇が保証されており、人気職業でなりたい職業上位だといいます。
「人の役に立つ仕事」と宣伝文句がよく言われていますが、この世の中にある仕事はすべて犯罪以外「人のためになる仕事」だと思います。ただ「誰でもできる仕事」ではないと思います。
これからの介護業界について、どのような未来を描いていらっしゃいますか?
髙本:これから団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題が来ますが、20年後にはまた介護事業者は選別され集約されていくのではと思います。
その時に残る事業者は従業員を「選び・教え・育て」そして事業を広めてきたところだと思います。
生活インフラを担っていくためには必要なことではないでしょうか。
最後に、事業承継を検討されている方々へメッセージをお願いします。
髙本:事業承継は、本当に重要な決断です。
専門家の方々に相談しながら、幅広い視点で検討を重ねてください。
可能なら譲受先の会社や事業所を実際に訪問してみるのもいいと思います。自社の理念や価値観が確実に引き継がれるかどうか、慎重に進めることが何より大切です。
皆様の事業承継が成功されることを心より願っております。