事例紹介「つなぐ物語」
つなぐ物語
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「元飛行機整備士の自動車整備業が時代に沿った変化を遂げるには
距離や時間を超えた新たな出会いが必要とされた」
井上自動車
「出会い方」も時代とともに変化している。会社の後継者問題もまさしくそうだと言える。元飛行機整備士創業の「井上自動車」は突然の後継者不在により経営判断に苦しむこととなりました。
創業者の娘である進藤姉妹は、経営を引継ぎながらも、車のメカニックなど専門性には乏しく、顧客をつなぐ事に力を入れたが、このままでは上手くいかなくなる事や経営の難しさをひしひしと感じていました。
M&Aの資料にも目を通す事が増えてきたある日、商工会議所に相談したところ、事業引継支援センターに支援してもらうことで具体的な事業の引継ぎに進むことになりました。
進藤明美さんは当時をこう振り返ります。「事業承継を決意したところで、マッチングがすぐに進むということはありませんでした。お声も数件かけてもらうこともありましたが、納得できる人とのマッチングの確率は非常に低いものだと実感したしだいです。
そこから西田弁護士をご紹介いただき、さらに深く話を聞いてもらいました。西田弁護士でよかったなと思うことは、面談をしたら必ず「次」の日程を決めてくださることでした。小さな「次」の目標ができることでずいぶんと気持ちが支えられ、結果、きづいたときには大きく前進していると感じることができたことが、一番の不安解消だったように思います。」
後継者候補の方々との面談をとおして、「この方が次の後継者だ!この方なら任せられる」と感じたきっかけは何だったのでしょうか。
あるとき亡父が夢で逢いに来てくれました。「中尾社長でまちがいない」そんな印象で目が覚めた朝がありました。昔から「ご縁」や「運命の出会い」という言葉があるように、事業の後継者との出会いもまた、「ご縁」だと感じた瞬間でした。
では、事業を引き継がれた中尾社長はどのような方でしょうか?
中尾社長は熊本県とのゆかりはなかったとのことでしたが、友人が経営するレンタカー事業との協業のため自動車整備関係の事業承継に興味を持たれていたとの事でした。
同業種間の事業承継ではなくてもビジネスチャンスはあるということですね。中尾社長からみた井上自動車はどんな印象だったのでしょうか?「第一印象は、きれいな整備工場で大切にされているんだな、と思いました。熊本との直接的な関係はなかったけれど、“拠点を増やす”と考えれば縁がつながり、物理な距離は関係ないと思えた。」とおっしゃいます。
現在、“新”井上自動車は、中尾社長の改革によりますます事業拡大している。それは、創業者がこれからは「自動車の時代が到来する」と確信し事業展開をしたあの頃の何かを彷彿をさせる勢いに違いない。
進藤さんは、新たな後継者を「お優しい人柄だな」という印象をもった事を今でも覚えています。
ビジネスとして話を進めていく課程でも、人見知りをすることの多い進藤氏の性格をカバーするような対応をしてくださる姿勢に感動し、この方に父の残した井上自動車を託したいと思われたとのことでした。
事業承継の「成功」は“ご縁”の結びつきだけでは成り立たない。時代に合ったビジネスマインドと手腕が必要とされる。進藤氏が中尾氏を後継者に選んだことは直感だけではないことは明らかだろう。
最後に進藤氏は、「不安いっぱいで始まった事業承継でしたが、「一歩踏み出すこと」「頼るべきは頼る」、ここから全てが始まります。」と語った。
小さな町の自動車整備工場が、異業種との事業承継によって地域を超えたビジネスチャンスを新しく生み出そうとしています。
時代にあった変化をとげることは一見、めまぐるしい変化ばかりが起きているように見えますが、サスティナブルで循環型社会の創生です。培って来たノウハウや伝統×現代社会のスピード感を融合した事業承継を応援いたします!